外道魔術師転生から始まる異世界動物のお医者さん
67話 追憶
「奥にも部屋が続いている……気をつけて進もう……」
やめておけ! という声が聴こえるような気がする。
オレの心はざわついたままだ……
試験管の部屋の奥の扉に手をかける。スライド式の鉄扉という明らかに時代検証に合わない扉を開くと、表現すれば、実験室……いや、拷問室……そういったほうがいい空間だった。
「こ、ここ、気持ちが悪いニャ……」
拘束具に何かを計測するような装置、『外』では見かけないような設備がそこら中にある。
魔道具ともまた違う。ホコリのかぶり方から、かなり昔から稼働していないものから、つい最近、そして今も稼働するものもある。
何に使うか考えたくもない様々な機材も置いてある。
「拷問……だけじゃない……のか……」
思い当たる節があり、俺の心が沸き立つ……
「ふむ、過去の私と似たようなことをもっと詳細に記録すると言ったところか……」
頭上の声で俺の予想が色と形をもって叩きつけられる。
「……害悪の魔術師の……実験というやつか……」
「ち、違うニャ! ダイゴローは巻き込まれただけなのニャ!」
この部屋の設備を見れば、よほど察しが悪い人間でも、どのようなことが起きていたか、どんな事がされていたのかは一部とはいえ理解できるだろう……俺の入っている器はそういうことをしてきたんだ。
奪われ薄めていた悪夢が再び脳裏に叩き込まれたような感覚がする。
「ダイゴロー、すまないがあの箱のそばに行けるか?」
ネズラースの言葉に従って、フラフラと一角に置かれた大きな箱のような装置に近づく。
よく見ると魔道具のように魔石がはめ込まれている。
「ダイゴロー、その魔石に魔力を通してもらえるか?」
「ああ……」
頭が重い、思考がはっきりとしていない、言われるがままに魔石へと魔力を供給する。
次々と何かを表示している画面が空中に浮いている。
魔道具はこんなことも出来るのか、何気なくボーっと画面の一つを見つめた時、冷水をかけられたように脳みそが覚醒する。
「ば、馬鹿な……ララ……?」
そこには、門脈シャントの症例、ララの姿。
それに、治療をしている俺とユキミの姿が映っていた……
「ニャ!? どういう事ニャ……これは最初の……」
「どうやら、ここには奪われたダイゴローの記憶が混じっているようだ……
つまり、ここの持ち主は『穢』とつながりがある人物のようだな……
それに……どうやら、穢と魔物の謎も……ここにあるな……」
ネズラースは熱心に次々と表示される資料に目を通している。
俺も一緒になって必死に探る。読めないはずの見たこともない文字だが、不思議と内容が把握できる。
「二人は古代アニモルト語が読めるのか?」
キンドゥも一緒になって覗いているが、文字が読めないようだ。
「古代アニモルト語?」
「ああ、はるか神話の世界に使われていたとされる古代語で、歴史は最も古いと言われている。
文字の種類、法則、全てが複雑怪奇で、最も古く、最も難解な言語と言われている。
一説にはこの世界を作った神が使用していた文字とも言われている」
「なんで読めるのかは分からないが、書かれていることは理解できてしまう……」
「ダイゴローは便利だな……」
しかし、書かれている内容はおいそれと例えキンドゥ達だろうが言える内容ではないのだ……
人間と獣人、動物と獣人、獣人と魔物、動物と魔物、人間と魔人。
それらの言ってみれば臨床データの比較、そして、それぞれの起源に付いての考察と、それを明かすための実験データ。
内容は、はっきりといって、生命に対する冒涜と言うしか無いようなものも多数見受けられる……
そして、明らかにこの世界の文明レベルとそぐわないデータ、現代日本から来た俺でもさっぱりわからないデータも混在している。
全体を見て受けた感覚は狂気、それも、この世界全てに対する憎悪からくる狂気を感じた……
「そうか……とんでもないことを研究していたんだなここにいた奴は……」
「ネズラース……」
俺はネズラースが内容を皆に伝えるのかと不安になる。
「極限の恐怖、怒り、そういったマイナスの感情を受け続けた魔力が『穢』と化し、穢に侵されると魔物化する……人工的に穢を作る方法、そして穢を操る方法、そして……」
そう、ここの研究は全て一点の目的のために行われている。
「「世界を壊し、神を殺す方法」」
突拍子もない話だが、ここで研究していた存在はその一点を目指して延々と太古の昔から研究を続けていたみたいだ……
「穢の噂は本当だったってことニャ……」
「じゃぁ、ここで研究していたのは魔神?
つまり、帝国に最近現れたアリストは魔神の関係者ということか……」
「魔神とか神とかホントにいるんだなぁ……」
「いや、精霊と会話できる貴方が言うことじゃないわよね?」
「しかし、それが事実だとすると、王国は魔神がついた帝国と事を構えないといけないのか?」
キンドゥが危惧するのも当然だ。
敵が魔神……人がどうすればいいのか……
「具体的にどうやって世界を壊すのニャ?」
「例の狂い人病で地上の生物を全て魔物に変えるというのが目的みたいだけど……」
「それだとダイゴローちゃん製のエーテルで解決しちゃってますね」
「不自然に記録が切れている場所がある。最新の部分だ。多分そこになにかあると考えるのが普通だな……」
ネズラースの言うとおり、記録は一部分がごっそりと抜け落ちている。
そこに書かれていることが、世界にとってあまりいいことではないことは間違いなさそうだ……
「よし、覚えた。まだ奥があるみたいだから進もう」
「え、ネズラース全部覚えたの?」
「ああ、私はそういう風になっているからな」
「ネズラースも便利なのニャ、ダイゴローと合わせて一家に一台なのニャ!」
めぼしい情報は他には見当たらなかったので更に奥へと進む。
扉を開けると廊下になっていた。
入り口の洞窟とは打って変わって、もう研究所の廊下と言っていい近代的な空間。
いくつかの扉が並んでいる。
一つ一つ調べて行くことにする。
「まぁ、あるよね……」
当然牢獄のような部屋や、隔離部屋など人体実験をする施設に必要な設備があった。
俺はすでに驚きもしなかった……べグラースがやっていたことも似たようなものだ……
「大丈夫かダイゴロー? 顔色がすでに青いを通り越して土気色だぞ」
「大丈夫、キンドゥ。少し……昔のべグラースの記憶が戻ってきたような気分になってしまった……」
そして、最後の部屋へとたどり着いた。
やめておけ! という声が聴こえるような気がする。
オレの心はざわついたままだ……
試験管の部屋の奥の扉に手をかける。スライド式の鉄扉という明らかに時代検証に合わない扉を開くと、表現すれば、実験室……いや、拷問室……そういったほうがいい空間だった。
「こ、ここ、気持ちが悪いニャ……」
拘束具に何かを計測するような装置、『外』では見かけないような設備がそこら中にある。
魔道具ともまた違う。ホコリのかぶり方から、かなり昔から稼働していないものから、つい最近、そして今も稼働するものもある。
何に使うか考えたくもない様々な機材も置いてある。
「拷問……だけじゃない……のか……」
思い当たる節があり、俺の心が沸き立つ……
「ふむ、過去の私と似たようなことをもっと詳細に記録すると言ったところか……」
頭上の声で俺の予想が色と形をもって叩きつけられる。
「……害悪の魔術師の……実験というやつか……」
「ち、違うニャ! ダイゴローは巻き込まれただけなのニャ!」
この部屋の設備を見れば、よほど察しが悪い人間でも、どのようなことが起きていたか、どんな事がされていたのかは一部とはいえ理解できるだろう……俺の入っている器はそういうことをしてきたんだ。
奪われ薄めていた悪夢が再び脳裏に叩き込まれたような感覚がする。
「ダイゴロー、すまないがあの箱のそばに行けるか?」
ネズラースの言葉に従って、フラフラと一角に置かれた大きな箱のような装置に近づく。
よく見ると魔道具のように魔石がはめ込まれている。
「ダイゴロー、その魔石に魔力を通してもらえるか?」
「ああ……」
頭が重い、思考がはっきりとしていない、言われるがままに魔石へと魔力を供給する。
次々と何かを表示している画面が空中に浮いている。
魔道具はこんなことも出来るのか、何気なくボーっと画面の一つを見つめた時、冷水をかけられたように脳みそが覚醒する。
「ば、馬鹿な……ララ……?」
そこには、門脈シャントの症例、ララの姿。
それに、治療をしている俺とユキミの姿が映っていた……
「ニャ!? どういう事ニャ……これは最初の……」
「どうやら、ここには奪われたダイゴローの記憶が混じっているようだ……
つまり、ここの持ち主は『穢』とつながりがある人物のようだな……
それに……どうやら、穢と魔物の謎も……ここにあるな……」
ネズラースは熱心に次々と表示される資料に目を通している。
俺も一緒になって必死に探る。読めないはずの見たこともない文字だが、不思議と内容が把握できる。
「二人は古代アニモルト語が読めるのか?」
キンドゥも一緒になって覗いているが、文字が読めないようだ。
「古代アニモルト語?」
「ああ、はるか神話の世界に使われていたとされる古代語で、歴史は最も古いと言われている。
文字の種類、法則、全てが複雑怪奇で、最も古く、最も難解な言語と言われている。
一説にはこの世界を作った神が使用していた文字とも言われている」
「なんで読めるのかは分からないが、書かれていることは理解できてしまう……」
「ダイゴローは便利だな……」
しかし、書かれている内容はおいそれと例えキンドゥ達だろうが言える内容ではないのだ……
人間と獣人、動物と獣人、獣人と魔物、動物と魔物、人間と魔人。
それらの言ってみれば臨床データの比較、そして、それぞれの起源に付いての考察と、それを明かすための実験データ。
内容は、はっきりといって、生命に対する冒涜と言うしか無いようなものも多数見受けられる……
そして、明らかにこの世界の文明レベルとそぐわないデータ、現代日本から来た俺でもさっぱりわからないデータも混在している。
全体を見て受けた感覚は狂気、それも、この世界全てに対する憎悪からくる狂気を感じた……
「そうか……とんでもないことを研究していたんだなここにいた奴は……」
「ネズラース……」
俺はネズラースが内容を皆に伝えるのかと不安になる。
「極限の恐怖、怒り、そういったマイナスの感情を受け続けた魔力が『穢』と化し、穢に侵されると魔物化する……人工的に穢を作る方法、そして穢を操る方法、そして……」
そう、ここの研究は全て一点の目的のために行われている。
「「世界を壊し、神を殺す方法」」
突拍子もない話だが、ここで研究していた存在はその一点を目指して延々と太古の昔から研究を続けていたみたいだ……
「穢の噂は本当だったってことニャ……」
「じゃぁ、ここで研究していたのは魔神?
つまり、帝国に最近現れたアリストは魔神の関係者ということか……」
「魔神とか神とかホントにいるんだなぁ……」
「いや、精霊と会話できる貴方が言うことじゃないわよね?」
「しかし、それが事実だとすると、王国は魔神がついた帝国と事を構えないといけないのか?」
キンドゥが危惧するのも当然だ。
敵が魔神……人がどうすればいいのか……
「具体的にどうやって世界を壊すのニャ?」
「例の狂い人病で地上の生物を全て魔物に変えるというのが目的みたいだけど……」
「それだとダイゴローちゃん製のエーテルで解決しちゃってますね」
「不自然に記録が切れている場所がある。最新の部分だ。多分そこになにかあると考えるのが普通だな……」
ネズラースの言うとおり、記録は一部分がごっそりと抜け落ちている。
そこに書かれていることが、世界にとってあまりいいことではないことは間違いなさそうだ……
「よし、覚えた。まだ奥があるみたいだから進もう」
「え、ネズラース全部覚えたの?」
「ああ、私はそういう風になっているからな」
「ネズラースも便利なのニャ、ダイゴローと合わせて一家に一台なのニャ!」
めぼしい情報は他には見当たらなかったので更に奥へと進む。
扉を開けると廊下になっていた。
入り口の洞窟とは打って変わって、もう研究所の廊下と言っていい近代的な空間。
いくつかの扉が並んでいる。
一つ一つ調べて行くことにする。
「まぁ、あるよね……」
当然牢獄のような部屋や、隔離部屋など人体実験をする施設に必要な設備があった。
俺はすでに驚きもしなかった……べグラースがやっていたことも似たようなものだ……
「大丈夫かダイゴロー? 顔色がすでに青いを通り越して土気色だぞ」
「大丈夫、キンドゥ。少し……昔のべグラースの記憶が戻ってきたような気分になってしまった……」
そして、最後の部屋へとたどり着いた。
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