外道魔術師転生から始まる異世界動物のお医者さん
41話 キノコ
「う……んーーーー……!」
目を覚ますと辺りは白けた日の出直前と言った感じだ。
森の合間に霧が出ていて、そこに谷があると知っていないと危ないかもしれない。
「起きたかダイゴロー、何にせよ。
よく頑張ったな」
ネズラースの言葉に目頭が熱くなるのを感じる。
そうだ、夢じゃない。
ここは、地上なんだ!
「ん? ……あったかい……」
首元が温かいのを感じて触れてみるとフィーが首に巻き付いて眠っている。
優しく撫でるともぞもぞと動いてくすぐったい。
ほっこりするね、もっと早くこうなってればもっとこの素晴らしい感触を楽しめたのに……
「さて、ここはどこだ……森の中みたいだけど、こんな巨大な谷は知らないし……
大森林の中なら知らないところも多そうだな……」
「すでにどれだけ移動したかもわからないからな……見当もつかないな……」
「ちょっと上から見てみるか……」
今背もたれにしていた気を見上げる。
とりあえず幹に抱きついて登り始める。
ロッククライミングをして思ったが、今の身体は非常に動きやすかった。
無駄なものが削ぎ堕ちて、必要なものを研ぎ澄ました肉体。
以前の闘い続けて肥大した筋肉も、圧倒的な力の代わりに機動性が落ちていたんだなと今ならわかる。
長い洞窟生活で手も足も自分の思い通りに使うことを憶えた。
「ほんと、猿族って言われても否定できないな……」
我ながらすごいスピードでスルスルと木を登れていることに驚いてしまう。
あっという間頂上付近まで登ってきてしまう。
周囲には似たような木が大量に並んでいて、少なくとも見える範囲に開けた場所や、集落の気配はない。頭の上でネズラースが立ち上がって周囲を見渡している気配がする。
「ダメだな、一面の森、だが。あちらは高くなっている。迷ったら高台へ、だ」
とりあえず、歩き出す方向が決まった。
地下と違って、なんというか俺も楽観的になっている。
「とりあえず降りようか……」
木を降りるのも、なんというか本当に自分の体かというほどスムーズに素早く降りる。
身体の使い方が以前とは違っているのを感じる。
自分と見つめ合い続けた二ヶ月近い時間は自分に身体の本当の使い方を教えてくれたようだ。
「よいしょっと! しっかし、外はホントに色々な臭がするなぁ~!
土と苔の匂いに慣れてしまってたから、ビックリしちゃうね!」
改めて周囲を確かめる。
生い茂った緑の絨毯に刺繍のように可愛らしい花、立ち並ぶ木々にその根本にはまた可愛らしいキノコが生えている。
吸い込めば清々しい空気が肺を満たして、キノコ!!!!!!!
「キノコ!!!!」
木の根元にえのきに似たキノコ!!
木の幹には舞茸っぽいキノコがある!!
まて、冷静になれ!!
キノコといえば山における地雷食材の一つ!!
一つ間違えば命にかかわる!!
「ネズラース……このキノコはいけるかい?」
こういう時に頼りになるのはネズラースだ。
キノコは薬の原料にも多く使用される。魔術師としてのネズラースの知識は非常に頼りになる。
「下のキノコは止めておいたほうがいい、似た姿で下剤の原料になるシタミズダケと区別がつかん。
上のビラビラしたのは問題ない、サカナタケ。喜べ、大変美味だぞ」
「うおおおお!!!」
俺は夢中になってそのビラビラしたキノコを木の幹から剥がす。
ふよふよと柔らかい、生でも行けそうな触り心地だ。
大急ぎで加熱調理器を出す。
残りの量が心配になってきた塩と油で焼く。
凄まじくいい匂いが立ち上がる。
唾液が……止まらない……
しっとりとしなっとなってきた。
もう、我慢できない!!
「い、頂きます!! アチィ!!!
……うっまーーーーーーーーいいいいいいいいいいぃぃぃぃ!!!」
やばい! 何だこれ! え? カニ? サカナ!?
旨い!! 旨すぎる!!
「私にももらえるか?」
「ああ……ああ……食べて、食べて!!」
「うむ……必要ないとは言え、食事は……いいな……」
ネズラースももぐもぐと確かめるように味わっている。
「キューン……」
匂いにつられてフィーもクンカクンカ鼻を動かしている。
「おお、フィーも食べるか? 油少ないここらへんをどーぞ」
くんくんと匂いをかいでパクリと齧りつく、もぐもぐとしばらく噛むと、猛烈な勢いでガツガツと食べ始めた。
「もっと、あるよな?」
周囲を見渡すと何本かの幹に同じ物がくっついている。
俺は取りきらないよう注意しながら、保存用と追加でサカナタケと呼ばれるキノコを採取する。
「ん? さっきの下のやっぱり食べられるな。毒性をもつシタミズダケはここまで群生しないぞ、そこの大量にあるやつは平気だ。無毒なアジワイタケだな」
更にありがたいことにしめじに似たキノコも食べられると知りすぐに調理する。
「甘み、甘みを感じる……キノコの風味も素晴らしい! これは、これはいいものだ!!」
フィーはサカナタケの方が好きだったが、俺にとってはどちらも素晴らしかった!
地上バンザイ!!
実は地下でもキノコは見かけたが、何故か全て強力な毒キノコばかりだった……
「ああ、なんという満たされた満腹……」
途中ミミズ肉と炒めてみたが、キノコの旨味が有るだけでここまで変わるか? というほど美味しかった。
「考えてみれば、そこら中に食材が落ちているんだよな……」
足元を見ればどんぐりのような木の実が落ちている。
確か皮を剥いて灰汁を取れば小麦粉みたいに使えたはずだ……
なんということでしょう!
地上に出るだけで、食糧問題はここまで改善するのです!!
「よーーーし! 張り切って進むぞー!!」
木の上から確認した丘に向かって元気に歩き出す。
こんなに満たされた気分はいつぶりだろうか……
「すまない、ダイゴロー。あんな香りを出せば当然だが、敵襲だ……」
森の中で油を使って料理すれば、そうなるよね……
俺にも感じる、何かが走って向かってくる振動が……
木々の間を茶色い影が急速に接近してくる。
「あー、まずいな魔獣じゃない……」
「普通に狼だな……」
動物に危害を加えると酷い体調不良になってしまう俺にとって、これは困った事態だ……
「全部で二匹か……」
俺は久しぶりの威圧を試みる。
戦えないなら引かせればいい、ということで編み出した威圧。
仲間がいれば保定して任せちゃえばいいけど……
俺は体内で魔力を練る。
臍下でうごめく温かい流れを感じる。
これに、威嚇するよな意思を混ぜ込んでいき、弾けるように体外に放出する!
「ハァッ!!」
周囲に俺のはなった魔力が……魔力だけじゃなくて突風が……あれ?
一応指向性を持たせて突っ込んでくる狼に向けたのだが、周囲が吹き飛んだ……
しかも、いままでキャインキャインと逃げ出していたはずが……
泡を吹いて……気絶している。
「ダイゴロー、今のはなんだ!? あと、フィーが泡吹いてるぞ!」
「ああ、フィー!? フィーーー!!」
フィーはバイタル、検査上は問題なく、そっとしておいたら目を覚ましたが……
「ダイゴロー、多分地下で魔力を循環させたり操作を延々行ったせいで、魔力量や使用効率がとんでもなく向上してしまっているんだと思う……」
ネズラースの分析ではそういうことらしい。
とりあえず気絶した狼もじきに目が覚めるだろうから急いで移動を開始する。
フィーとネズラースには土の魔石を利用した魔法を阻害する首輪作ってあげる。
これで俺の魔力から少しは守られるだろう……
「今度から気をつけよう……」
俺は少しづついろんなことを確かめながら慎重に行動することを心に誓うのでありました。
目を覚ますと辺りは白けた日の出直前と言った感じだ。
森の合間に霧が出ていて、そこに谷があると知っていないと危ないかもしれない。
「起きたかダイゴロー、何にせよ。
よく頑張ったな」
ネズラースの言葉に目頭が熱くなるのを感じる。
そうだ、夢じゃない。
ここは、地上なんだ!
「ん? ……あったかい……」
首元が温かいのを感じて触れてみるとフィーが首に巻き付いて眠っている。
優しく撫でるともぞもぞと動いてくすぐったい。
ほっこりするね、もっと早くこうなってればもっとこの素晴らしい感触を楽しめたのに……
「さて、ここはどこだ……森の中みたいだけど、こんな巨大な谷は知らないし……
大森林の中なら知らないところも多そうだな……」
「すでにどれだけ移動したかもわからないからな……見当もつかないな……」
「ちょっと上から見てみるか……」
今背もたれにしていた気を見上げる。
とりあえず幹に抱きついて登り始める。
ロッククライミングをして思ったが、今の身体は非常に動きやすかった。
無駄なものが削ぎ堕ちて、必要なものを研ぎ澄ました肉体。
以前の闘い続けて肥大した筋肉も、圧倒的な力の代わりに機動性が落ちていたんだなと今ならわかる。
長い洞窟生活で手も足も自分の思い通りに使うことを憶えた。
「ほんと、猿族って言われても否定できないな……」
我ながらすごいスピードでスルスルと木を登れていることに驚いてしまう。
あっという間頂上付近まで登ってきてしまう。
周囲には似たような木が大量に並んでいて、少なくとも見える範囲に開けた場所や、集落の気配はない。頭の上でネズラースが立ち上がって周囲を見渡している気配がする。
「ダメだな、一面の森、だが。あちらは高くなっている。迷ったら高台へ、だ」
とりあえず、歩き出す方向が決まった。
地下と違って、なんというか俺も楽観的になっている。
「とりあえず降りようか……」
木を降りるのも、なんというか本当に自分の体かというほどスムーズに素早く降りる。
身体の使い方が以前とは違っているのを感じる。
自分と見つめ合い続けた二ヶ月近い時間は自分に身体の本当の使い方を教えてくれたようだ。
「よいしょっと! しっかし、外はホントに色々な臭がするなぁ~!
土と苔の匂いに慣れてしまってたから、ビックリしちゃうね!」
改めて周囲を確かめる。
生い茂った緑の絨毯に刺繍のように可愛らしい花、立ち並ぶ木々にその根本にはまた可愛らしいキノコが生えている。
吸い込めば清々しい空気が肺を満たして、キノコ!!!!!!!
「キノコ!!!!」
木の根元にえのきに似たキノコ!!
木の幹には舞茸っぽいキノコがある!!
まて、冷静になれ!!
キノコといえば山における地雷食材の一つ!!
一つ間違えば命にかかわる!!
「ネズラース……このキノコはいけるかい?」
こういう時に頼りになるのはネズラースだ。
キノコは薬の原料にも多く使用される。魔術師としてのネズラースの知識は非常に頼りになる。
「下のキノコは止めておいたほうがいい、似た姿で下剤の原料になるシタミズダケと区別がつかん。
上のビラビラしたのは問題ない、サカナタケ。喜べ、大変美味だぞ」
「うおおおお!!!」
俺は夢中になってそのビラビラしたキノコを木の幹から剥がす。
ふよふよと柔らかい、生でも行けそうな触り心地だ。
大急ぎで加熱調理器を出す。
残りの量が心配になってきた塩と油で焼く。
凄まじくいい匂いが立ち上がる。
唾液が……止まらない……
しっとりとしなっとなってきた。
もう、我慢できない!!
「い、頂きます!! アチィ!!!
……うっまーーーーーーーーいいいいいいいいいいぃぃぃぃ!!!」
やばい! 何だこれ! え? カニ? サカナ!?
旨い!! 旨すぎる!!
「私にももらえるか?」
「ああ……ああ……食べて、食べて!!」
「うむ……必要ないとは言え、食事は……いいな……」
ネズラースももぐもぐと確かめるように味わっている。
「キューン……」
匂いにつられてフィーもクンカクンカ鼻を動かしている。
「おお、フィーも食べるか? 油少ないここらへんをどーぞ」
くんくんと匂いをかいでパクリと齧りつく、もぐもぐとしばらく噛むと、猛烈な勢いでガツガツと食べ始めた。
「もっと、あるよな?」
周囲を見渡すと何本かの幹に同じ物がくっついている。
俺は取りきらないよう注意しながら、保存用と追加でサカナタケと呼ばれるキノコを採取する。
「ん? さっきの下のやっぱり食べられるな。毒性をもつシタミズダケはここまで群生しないぞ、そこの大量にあるやつは平気だ。無毒なアジワイタケだな」
更にありがたいことにしめじに似たキノコも食べられると知りすぐに調理する。
「甘み、甘みを感じる……キノコの風味も素晴らしい! これは、これはいいものだ!!」
フィーはサカナタケの方が好きだったが、俺にとってはどちらも素晴らしかった!
地上バンザイ!!
実は地下でもキノコは見かけたが、何故か全て強力な毒キノコばかりだった……
「ああ、なんという満たされた満腹……」
途中ミミズ肉と炒めてみたが、キノコの旨味が有るだけでここまで変わるか? というほど美味しかった。
「考えてみれば、そこら中に食材が落ちているんだよな……」
足元を見ればどんぐりのような木の実が落ちている。
確か皮を剥いて灰汁を取れば小麦粉みたいに使えたはずだ……
なんということでしょう!
地上に出るだけで、食糧問題はここまで改善するのです!!
「よーーーし! 張り切って進むぞー!!」
木の上から確認した丘に向かって元気に歩き出す。
こんなに満たされた気分はいつぶりだろうか……
「すまない、ダイゴロー。あんな香りを出せば当然だが、敵襲だ……」
森の中で油を使って料理すれば、そうなるよね……
俺にも感じる、何かが走って向かってくる振動が……
木々の間を茶色い影が急速に接近してくる。
「あー、まずいな魔獣じゃない……」
「普通に狼だな……」
動物に危害を加えると酷い体調不良になってしまう俺にとって、これは困った事態だ……
「全部で二匹か……」
俺は久しぶりの威圧を試みる。
戦えないなら引かせればいい、ということで編み出した威圧。
仲間がいれば保定して任せちゃえばいいけど……
俺は体内で魔力を練る。
臍下でうごめく温かい流れを感じる。
これに、威嚇するよな意思を混ぜ込んでいき、弾けるように体外に放出する!
「ハァッ!!」
周囲に俺のはなった魔力が……魔力だけじゃなくて突風が……あれ?
一応指向性を持たせて突っ込んでくる狼に向けたのだが、周囲が吹き飛んだ……
しかも、いままでキャインキャインと逃げ出していたはずが……
泡を吹いて……気絶している。
「ダイゴロー、今のはなんだ!? あと、フィーが泡吹いてるぞ!」
「ああ、フィー!? フィーーー!!」
フィーはバイタル、検査上は問題なく、そっとしておいたら目を覚ましたが……
「ダイゴロー、多分地下で魔力を循環させたり操作を延々行ったせいで、魔力量や使用効率がとんでもなく向上してしまっているんだと思う……」
ネズラースの分析ではそういうことらしい。
とりあえず気絶した狼もじきに目が覚めるだろうから急いで移動を開始する。
フィーとネズラースには土の魔石を利用した魔法を阻害する首輪作ってあげる。
これで俺の魔力から少しは守られるだろう……
「今度から気をつけよう……」
俺は少しづついろんなことを確かめながら慎重に行動することを心に誓うのでありました。
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