外道魔術師転生から始まる異世界動物のお医者さん
10話 瘴気病
今、俺は教会の中にいる。
正確には教会の一番端っこにいる。
対角線上には避難してきた獣人達と動物が固まって、こっちを汚物でも見るように睨みつけて、シネシネシネシネ……と怨嗟の声が聞こえてくる。
泣いていいですか?
「つまり、元の身体はベグラースであり。中身は異世界の魂、そういうわけか……」
「なるほどなぁ、それならあの力も納得できるな」
「そうだな、いくらなんでもあんな力普通じゃないとは思ってたよ」
人間やその他亜人と呼ばれる種族の方には普通に受け入れられた。
べグラースは人間の間でも評判は悪いが、まぁ呪い的に嫌われないし、獣人以外は何も言わなければ大鳥大五郎の外観をした人間に見えるわけだからね。
「つまり、この街の動物、特に小型の動物から『瘴気病』になってしまっているわけニャ?」
「そうです。すでに何体かは魔物化してしまい……」
ユキミさんは大僧侶とお話中。
教会内は神に近い場所、ここでなら使ってしまった権限を取り戻す嘆願が早く神々へと届きやすいそうだ。
それにユキミさんがいれば大僧侶を始めとしたシスターたちが祈りを捧げ続けなくても結界を維持できる。流石ユキミさんだ。お陰で倒れる寸前だった僧侶たちやシスターが休憩を取ることが出来て、ユキミさんは皆に救世主のように扱われた。
もちろん、俺は獣人からゴミムシのように扱われているが、ユキミさんの口添えのお陰で建物の中にいることを許されている。泣きたい。
「そうすると、原因を取り除くしか解決策は無いニャ!」
「そうは言っても、今冒険者たちの強力でやっと周囲を守れていると言った状態で、あの瘴気と魔物の中心であるダンジョンはとても近づけません……」
「ダイゴロー、魔法は使っちゃダメだけど、外でゆーーーーーーーっくりと魔力を放出するにゃ。
これを咥えて息を吐くニャ」
ユキミさんがぽいっと笛のような物を投げてよこしてくる。
「ユキミさんこれは一体?」
「いいから言われた通りにするニャ! まだ別に許したわけじゃないニャ!」
「は、はい!」
俺は背中に罵声を浴びながら外に出る。
体育の時に使うホイッスルみたいな笛を咥えて息を……息を……吐き……たい……
「ぶはぁ!! ユキミさんこれ息がでないよ!?」
「いや、それでいいニャ。ちゃんと魔力が出てるニャ!」
「おおおおおお! 結界内の魔力がこんなに急激に!」
「へ? 全然この笛吹けないんだけど?」
「いいから続けるニャ!! 一週間ぐらい結界内を満たせる魔力濃度にしたいから、今の感じだと一時間ぐらいよろしくニャ!」
こうして俺は、吹いても吹けない笛を、力の限り吹く。という行為を一時間ほど続けさせられた……
「頭が……痛い……唇が……痛い……胸が……痛い……」
血管が切れないのが不思議だった。しんどいなんてもんじゃない。
「まぁ、ご苦労様。仕方ないから許してあげるニャ。動物たちもだいぶ楽そうになっていたニャ」
「ユキミさん。説明が欲しいです……」
「しょうがないニャぁ……」
瘴気病っていうのは瘴気に晒され衰弱した生物が、あと一歩で魔物に変わってしまうという状態で起きる変化のことで、具体的には全身に痣のようなものが広がっていき、眼球の白目が赤く変化していく。
進行を遅らせるのは神聖な魔力を大量に注ぎ込むことなんだけど、今の状況でもちろんそんな余裕もない。そこで俺の余りある、なぜかベグラース時代よりも豊富で圧倒的な魔力を、暴走しないようにゆっくりと結界内に吐き出させるのがさっきの笛だったそうだ。
お陰で結界内には瘴気病を治療出来るレベルの魔力が満たされているそうだ。
ただこれも瘴気と触れて濃度が落ちていくので、進行が始まるレベルになるまでに一週間。
その間にダンジョンに侵入して、瘴気の原因を断つ。
それがユキミさんの計画だ。
「今回は私はついていけないから、肉体で戦ってね」
「え、ユキミちゃんついてこないの?」
「ちゃん……?」
「今回はユキミさんはついて来て下さらないのでしょうか?」
「私はこの協会の結界を維持する仕事があるニャ、それに、誰かさんの性で使えなくなった権限を回復させる嘆願を続けないといけないニャ! 誰かさんの性でね!」
「はい、その節は申し訳ない……」
「さっきのオーガ戦で確信したニャ、ダイゴローはこの世界でベグラースの身体と融合して日本のときとは比べ物にならない力を手に入れている……取り戻している? まぁ、どっちでもいいニャ!
だからここのダンジョン程度一週間もあれば攻略可能ニャ!」
「ちょっとまってくれよユキミさん! このダンジョン程度って、ここのダンジョンはクラスBの中級ダンジョンだぜ? 確かにダイゴローはすげぇけど、一週間で攻略は……」
近くで話を聞いていたマスタフさんが割って入ってくる。
「そうですよユキミさん! このダンジョンは今のところ38階層まであることが確認されていますが、様々な罠と仕掛け、さらに深部にはアンデッドまで出るんですよ?」
レンジャーであるカレナさんはダンジョンの罠の恐ろしさをよく知っている。
俺の力は認めてくれているが、ユキミさんの提案に賛成は出来ないようだ。
ついでに、この緑の風というパーティは結構上級パーティでパーティランクはA+、リーダーのマスタフさんはS級の冒険者だそうだ。
最深部の38階層まで到達したパーティはこの世界で7組しかいないS級パーティだそうで……
「ダイゴローはまだ冒険者でもない、許されるはずがない」
「いや、許可しよう」
「マスター!?」
この街のギルドマスターでもある狼型『獣人』のヴァーンさん……
冷徹な目で俺を見ている。
死 ん で こ い
声には出さないが口はそう動いている。
こうして、俺の無謀なダンジョン攻略が決定してしまう。
俺、獣医師だよ?
君たちの味方なんだよ!?
泣いてもいいですか……?
正確には教会の一番端っこにいる。
対角線上には避難してきた獣人達と動物が固まって、こっちを汚物でも見るように睨みつけて、シネシネシネシネ……と怨嗟の声が聞こえてくる。
泣いていいですか?
「つまり、元の身体はベグラースであり。中身は異世界の魂、そういうわけか……」
「なるほどなぁ、それならあの力も納得できるな」
「そうだな、いくらなんでもあんな力普通じゃないとは思ってたよ」
人間やその他亜人と呼ばれる種族の方には普通に受け入れられた。
べグラースは人間の間でも評判は悪いが、まぁ呪い的に嫌われないし、獣人以外は何も言わなければ大鳥大五郎の外観をした人間に見えるわけだからね。
「つまり、この街の動物、特に小型の動物から『瘴気病』になってしまっているわけニャ?」
「そうです。すでに何体かは魔物化してしまい……」
ユキミさんは大僧侶とお話中。
教会内は神に近い場所、ここでなら使ってしまった権限を取り戻す嘆願が早く神々へと届きやすいそうだ。
それにユキミさんがいれば大僧侶を始めとしたシスターたちが祈りを捧げ続けなくても結界を維持できる。流石ユキミさんだ。お陰で倒れる寸前だった僧侶たちやシスターが休憩を取ることが出来て、ユキミさんは皆に救世主のように扱われた。
もちろん、俺は獣人からゴミムシのように扱われているが、ユキミさんの口添えのお陰で建物の中にいることを許されている。泣きたい。
「そうすると、原因を取り除くしか解決策は無いニャ!」
「そうは言っても、今冒険者たちの強力でやっと周囲を守れていると言った状態で、あの瘴気と魔物の中心であるダンジョンはとても近づけません……」
「ダイゴロー、魔法は使っちゃダメだけど、外でゆーーーーーーーっくりと魔力を放出するにゃ。
これを咥えて息を吐くニャ」
ユキミさんがぽいっと笛のような物を投げてよこしてくる。
「ユキミさんこれは一体?」
「いいから言われた通りにするニャ! まだ別に許したわけじゃないニャ!」
「は、はい!」
俺は背中に罵声を浴びながら外に出る。
体育の時に使うホイッスルみたいな笛を咥えて息を……息を……吐き……たい……
「ぶはぁ!! ユキミさんこれ息がでないよ!?」
「いや、それでいいニャ。ちゃんと魔力が出てるニャ!」
「おおおおおお! 結界内の魔力がこんなに急激に!」
「へ? 全然この笛吹けないんだけど?」
「いいから続けるニャ!! 一週間ぐらい結界内を満たせる魔力濃度にしたいから、今の感じだと一時間ぐらいよろしくニャ!」
こうして俺は、吹いても吹けない笛を、力の限り吹く。という行為を一時間ほど続けさせられた……
「頭が……痛い……唇が……痛い……胸が……痛い……」
血管が切れないのが不思議だった。しんどいなんてもんじゃない。
「まぁ、ご苦労様。仕方ないから許してあげるニャ。動物たちもだいぶ楽そうになっていたニャ」
「ユキミさん。説明が欲しいです……」
「しょうがないニャぁ……」
瘴気病っていうのは瘴気に晒され衰弱した生物が、あと一歩で魔物に変わってしまうという状態で起きる変化のことで、具体的には全身に痣のようなものが広がっていき、眼球の白目が赤く変化していく。
進行を遅らせるのは神聖な魔力を大量に注ぎ込むことなんだけど、今の状況でもちろんそんな余裕もない。そこで俺の余りある、なぜかベグラース時代よりも豊富で圧倒的な魔力を、暴走しないようにゆっくりと結界内に吐き出させるのがさっきの笛だったそうだ。
お陰で結界内には瘴気病を治療出来るレベルの魔力が満たされているそうだ。
ただこれも瘴気と触れて濃度が落ちていくので、進行が始まるレベルになるまでに一週間。
その間にダンジョンに侵入して、瘴気の原因を断つ。
それがユキミさんの計画だ。
「今回は私はついていけないから、肉体で戦ってね」
「え、ユキミちゃんついてこないの?」
「ちゃん……?」
「今回はユキミさんはついて来て下さらないのでしょうか?」
「私はこの協会の結界を維持する仕事があるニャ、それに、誰かさんの性で使えなくなった権限を回復させる嘆願を続けないといけないニャ! 誰かさんの性でね!」
「はい、その節は申し訳ない……」
「さっきのオーガ戦で確信したニャ、ダイゴローはこの世界でベグラースの身体と融合して日本のときとは比べ物にならない力を手に入れている……取り戻している? まぁ、どっちでもいいニャ!
だからここのダンジョン程度一週間もあれば攻略可能ニャ!」
「ちょっとまってくれよユキミさん! このダンジョン程度って、ここのダンジョンはクラスBの中級ダンジョンだぜ? 確かにダイゴローはすげぇけど、一週間で攻略は……」
近くで話を聞いていたマスタフさんが割って入ってくる。
「そうですよユキミさん! このダンジョンは今のところ38階層まであることが確認されていますが、様々な罠と仕掛け、さらに深部にはアンデッドまで出るんですよ?」
レンジャーであるカレナさんはダンジョンの罠の恐ろしさをよく知っている。
俺の力は認めてくれているが、ユキミさんの提案に賛成は出来ないようだ。
ついでに、この緑の風というパーティは結構上級パーティでパーティランクはA+、リーダーのマスタフさんはS級の冒険者だそうだ。
最深部の38階層まで到達したパーティはこの世界で7組しかいないS級パーティだそうで……
「ダイゴローはまだ冒険者でもない、許されるはずがない」
「いや、許可しよう」
「マスター!?」
この街のギルドマスターでもある狼型『獣人』のヴァーンさん……
冷徹な目で俺を見ている。
死 ん で こ い
声には出さないが口はそう動いている。
こうして、俺の無謀なダンジョン攻略が決定してしまう。
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