終わりゆく世界の代英雄
エルフの村
〈プーロ森林〉から平原まで走って戻り、仲間を連れて再び〈プーロ森林〉に足を踏み入れる。移動しながら今までのことを話した。
「ってことは今から傭兵団と戦うってことですか?」
とラメトリアが口を開く。
「そうだなー・・・・・まあ、そういう事だな」
と笑って答える。
少し沈黙の時間が流れる。
「・・・・・正気ですか?」
とラメトリアが再び口を開く。
「・・・・・ああ」
と短く返す。
「・・・・・・・・・なにか策があるのですか?」
とマレートが入って来る。
「・・・・・ないけど?」
「え?」
とマレートが驚いた表情になる。
「・・・・・私はハルトさんについて行くから」
とアデルータが割って入ってくる。
「・・・・・ありがとな」
と答える。
「・・・・・ハルトは何で傭兵団と戦おうとするの?」
と真剣な表情でリゼッタが聞いてくる。
リゼッタの目を見つめる。リゼッタの問に対してのハルトの答えはもう出ている。ハルトは目を一瞬閉じて開ける。
「・・・・・・・・エルフを・・・・・助けたいと、救いたいと思ったからだ。彼女の眼が救いを求めている眼をしていたからだ」
とハルトは答えた。その答えにリゼッタが少しだけ笑った。
「エルフは倒さないといけない敵です。剣を向ける相手を変えるべきです!」
とラメトリアが大声で言った。
「・・・・・ラメトリア。英雄って何だ?俺はアデルータから人と異種族は仲が悪いと聞いた」
「・・・・・それで?」
「仲が悪いから滅ぼすのか?争うのか?なぜ平和に解決しようと思わない?なぜ行動出来ないのか・・・・・それは心が弱いからだろ?俺の心も弱い。きっと他の人もエルフも・・・・・・・・・魔獣という共通の敵がいて単体では勝てない。ならば、協力するべきだ。と、俺は思う」
「・・・・・じゃあ、貴方は人間とエルフの仲を良くさせるために動くというのか?・・・・・無茶過ぎる。力の無い者は何も変えることなど出来ない」
「・・・・・そうだな。俺は弱いから皆の力を貸して欲しいんだ。それに、偉業を成し遂げてこその英雄だろ?」
とハルトはその場の皆に笑って言った。
ラメトリアはハルトの笑顔を見て何も言い返せなくなってしまった。心臓の音が高鳴る。もしかして、目の前にいる少年ならこの世界の規則さえも変えていけるのかもしれないと思った。
「・・・・・私も救われたい――」
とラメトリアが小声で言ったのを誰も聞き取れなかった。
「じゃあ、エルフの所に向かいましょう」
とリゼッタが促す。
「そうだな」
と短く返して前に進む。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なぜ私はハルトと名乗ったあの少年に自分の名前を伝えたのだろうか?
なぜ私はエルフ族の危機をあの少年に話したのだろうか?
ただ、あの少年は今まで殺してきた人間とは違うものを感じた。
エルミアは殺されなかった。人間に掴まったのに、なにもされずに返されたのは初めての経験だ。
それに森が静かだ。彼に敵意があれば森が騒がしくなるはず。しかもあの少年は自分たちが今この森に迫って来ている傭兵団をなんとかすると言った。
人間の言葉を信じたのはこれで3度目だ。1回目はまだエルミアが幼き頃・・・・・・・・・・300年も前に遡る。
エルミアが1人の人間の少女の言葉を信じたせいで友人が死んだ。
その時、人間の言葉など絶対に信用しないと誓ったはずなのにエルミアは200年前、人間の青年の言葉を信じてしまった。
その青年の眩しすぎるほどの真っ直ぐな瞳に心を奪われて、青年の言葉に従ってしまった。
だが、そのお陰で一族を守ることが出来た。今では何処の誰かも分からないその人間にエルミアは先程の少年――ハルトの姿を重ねて
エルミアは森の中を走って移動しながら森の奥に存在しているエルフの村に向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
エルフの村に着いたエルミアは急いで村長の家を訪ねた。
「どうした?エルミア」
と気で出来た家から出てきた1人の青年。容姿は若く見えるがこれでも632歳だ。
この村で最年長のエルフで村長だ。エルミアは急いで今までの出来事を話した。
「・・・・・・・・・つまり、その人間の言葉を信じてこの村に人間を招き入れろと言うのか?」
「・・・・・はい」
村長の言葉にエルミアが答える。
「エルミア、もしかして操作系の魔法にかかったのか?」
「私は操られていません。私の言葉を信じて下さい」
「すまないな」
「昔、私達一族を救った人間を忘れたのですか?」
「・・・・・それは奴が特別だったのだ」
「私は先程会った少年も特別だと感じています。彼は一族を助けるために同族と戦うと言ったのです」
「・・・・・・・・きっと嘘だ」
「何故私は殺されなかったのか・・・・・・・・それは彼も特別だからです」
「・・・・・・・・・村の場所を知るために泳がされたのだ」
「違います・・・・・・・・それに私達だけでは人間に勝てません。どれだけエルフの弓矢が優れていても人間には勝てません」
「・・・・・それは分かっている」
「ならば、彼等と協力するべきです」
「・・・・・・・・・・エルミア、君はどうしてそこまで人間を信じられるんだ?今まで多くの仲間が殺されてきた。その中にはお前の友もいたはずだ」
「・・・・・・・・私も人間なんて滅ぶべきだと考えていました。でも彼に出会って昔を思い出したのです。私も昔は人間の街に憧れた。人間と仲良くなりたかった」
「それでも人間は我々を裏切り、殺し続けた」
「・・・・・はい。でも、きっといつの日か仲良くなれます。私は信じたいんです」
エルミアと村長の言い合いが続いた。そして少し沈黙の時間が流れる
「・・・・・人もエルフも他の種族も昔は仲が良かった。もう一度やり直せるのならそれが一番良い。・・・・・私の負けだエルミア」
村長が折れてゆっくりと立ち上がる。
「ありがとうございます」
エルミアは急いで立ち上がり頭を下げた。
「人間を信じるのではない。お前を信じるのだ。皆にこのことを伝えないとな」
エルミアと村長は家から出て、村中のエルフを広場に集めた。
数分後にはエルフ達が広場に集まり終わっていた。
広場の前にある木で出来た梯子を登って高台に立つ。
村長より1歩後ろに立ったエルミアはそこからの光景を眺めた。沢山のエルフがこの高台を注目していた。
ざわざわとする空気を村長の言葉がかき消した。
「我々は人間の傭兵団と戦い、生き残る為に人間と協力することを決めた」
「どういうこと?」
「なにそれ?」
と辺りが騒がしくなる。
「その人間は他の人間とは違う!我々だけでは人には勝てない。だから皆も協力してくれ」
と村長の声の後に沈黙の時間が、流れた。恐らく状況を呑み込めていない。
「みんな!お願い!」
エルミアは村長の前に出ると手すりを掴んで叫んだ。
「・・・・・私は生き残れる方を選ぶ!今まで殺されてきた仲間。その仲間の為にも私達は生きなければならない。そして今、生き残る為には人間の力が必要なの!だから、だからお願い・・・・・力を貸してください」
エルミアの言葉が終わった直後拍手が森に響く。
エルミアの目から涙が零れ落ちる。
「ありがとう」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ハルト達は森の中を歩いて進んだ。
少し歩いた時、男性のエルフが2人木の影から現れる。2人とも耳が尖っていて美しい顔立ちだ。イケメンである。左側のエルフは少し背が小さく、短い緑色の髪をしている。
右側のエルフは金髪で少し長めの髪を左右に分けている。
「・・・・・貴方がハルト殿だな」
と右側の金髪エルフが口を開く。
「・・・・・そうだけど」
と返す。
「付いて来てくれ」
と緑髪のエルフが口を開いて体を反転させて歩き出す。
ハルト達は緑髪のエルフの背中を追って歩き出す。最後尾に金髪のエルフが付いた。
無言のまま歩き続けること20分。ようやくエルフの村に着いた。
入口の立て札を越えて村の中に入る。周りからの視線が刺さる様に痛い。
村の中は静かで響くのは風が葉を揺らす音だけ。
村の中にある家は木や葉っぱなどで建てられている。
自然の家そのままだ。村の中を少し進むと広場が見えてきた。広場には高台がある。その広場を通り過ぎて少し歩いた先にある家の前で緑髪のエルフが足を止める。
「ここが村長の家だ」
と言って家の中に入るよう促す。ハルトはそのまま足を進めて木の扉を叩く。
「どうぞ」と恐らく若い男性の声が聞こえてきた。
ハルトは扉を開けて中に入った。中にはエルミアと男性のエルフが居た。
男性のエルフが立ち上がる。
「私が村長のハルラスです」
と手が目の前に出される。ハルトは驚いた。何故ならその男は20代にしか見えないからだ。
「よ、よろしくお願いします。それにしても若いのに村長なんて大変そうですね」
と手を取って握手を交わす。
「・・・・・私は632歳ですよ」
と村長のハルラスの言葉に驚いて一瞬固まってしまう。
「632歳!?」
と声を荒らげる。
「はい。そうです」
とハルラスが答える。
確かにエルフは永遠の寿命とか不老不死などと聞いたことがある。まあ、現実世界でだが・・・・・
実際に見ると外見は20代だ。ということは恐らくエルミアと名乗った少女の年齢も100歳を超えている可能性がある。もしかしたら600などと言うことも・・・・・・・・ 
年齢詐欺半端ないな
と心で呟く。
「凄いですね。私、そんな年上の人に初めて会いました」
とリゼッタが口を開く。
「とりあえず、座りましょう」
とエルミアと名乗ったエルフが促す。
ハルト達はその場に腰を下ろした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――そのころ
〈オルティネシア王国〉
「我々の目的はエルフの殲滅だ!」
と一番前に立つ黄緑色の長い髪の男性の傭兵が叫ぶ。
オルティネシア王国にある「傭兵広場」と呼ばれる場所には50を超える傭兵が集まっていた。 
目的は人間の敵――エルフ
森の妖精と呼ばれるエルフ族は不老不死や永遠の寿命と呼ばれていて奴隷でも高い値段がつく。
「男のエルフは殺せ!女のエルフは生け捕りだ!」
と男が叫ぶ。
そして一番前の男――今回のエルフ殲滅作戦に参加する傭兵を率いる男、アトモストが馬に股がる。他の傭兵も各自馬に股がった。
行くぞー!
とアトモストの号令に傭兵団が馬で駆ける。
オルティネシア王国からエルフ殲滅傭兵団が出発した。
「ってことは今から傭兵団と戦うってことですか?」
とラメトリアが口を開く。
「そうだなー・・・・・まあ、そういう事だな」
と笑って答える。
少し沈黙の時間が流れる。
「・・・・・正気ですか?」
とラメトリアが再び口を開く。
「・・・・・ああ」
と短く返す。
「・・・・・・・・・なにか策があるのですか?」
とマレートが入って来る。
「・・・・・ないけど?」
「え?」
とマレートが驚いた表情になる。
「・・・・・私はハルトさんについて行くから」
とアデルータが割って入ってくる。
「・・・・・ありがとな」
と答える。
「・・・・・ハルトは何で傭兵団と戦おうとするの?」
と真剣な表情でリゼッタが聞いてくる。
リゼッタの目を見つめる。リゼッタの問に対してのハルトの答えはもう出ている。ハルトは目を一瞬閉じて開ける。
「・・・・・・・・エルフを・・・・・助けたいと、救いたいと思ったからだ。彼女の眼が救いを求めている眼をしていたからだ」
とハルトは答えた。その答えにリゼッタが少しだけ笑った。
「エルフは倒さないといけない敵です。剣を向ける相手を変えるべきです!」
とラメトリアが大声で言った。
「・・・・・ラメトリア。英雄って何だ?俺はアデルータから人と異種族は仲が悪いと聞いた」
「・・・・・それで?」
「仲が悪いから滅ぼすのか?争うのか?なぜ平和に解決しようと思わない?なぜ行動出来ないのか・・・・・それは心が弱いからだろ?俺の心も弱い。きっと他の人もエルフも・・・・・・・・・魔獣という共通の敵がいて単体では勝てない。ならば、協力するべきだ。と、俺は思う」
「・・・・・じゃあ、貴方は人間とエルフの仲を良くさせるために動くというのか?・・・・・無茶過ぎる。力の無い者は何も変えることなど出来ない」
「・・・・・そうだな。俺は弱いから皆の力を貸して欲しいんだ。それに、偉業を成し遂げてこその英雄だろ?」
とハルトはその場の皆に笑って言った。
ラメトリアはハルトの笑顔を見て何も言い返せなくなってしまった。心臓の音が高鳴る。もしかして、目の前にいる少年ならこの世界の規則さえも変えていけるのかもしれないと思った。
「・・・・・私も救われたい――」
とラメトリアが小声で言ったのを誰も聞き取れなかった。
「じゃあ、エルフの所に向かいましょう」
とリゼッタが促す。
「そうだな」
と短く返して前に進む。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なぜ私はハルトと名乗ったあの少年に自分の名前を伝えたのだろうか?
なぜ私はエルフ族の危機をあの少年に話したのだろうか?
ただ、あの少年は今まで殺してきた人間とは違うものを感じた。
エルミアは殺されなかった。人間に掴まったのに、なにもされずに返されたのは初めての経験だ。
それに森が静かだ。彼に敵意があれば森が騒がしくなるはず。しかもあの少年は自分たちが今この森に迫って来ている傭兵団をなんとかすると言った。
人間の言葉を信じたのはこれで3度目だ。1回目はまだエルミアが幼き頃・・・・・・・・・・300年も前に遡る。
エルミアが1人の人間の少女の言葉を信じたせいで友人が死んだ。
その時、人間の言葉など絶対に信用しないと誓ったはずなのにエルミアは200年前、人間の青年の言葉を信じてしまった。
その青年の眩しすぎるほどの真っ直ぐな瞳に心を奪われて、青年の言葉に従ってしまった。
だが、そのお陰で一族を守ることが出来た。今では何処の誰かも分からないその人間にエルミアは先程の少年――ハルトの姿を重ねて
エルミアは森の中を走って移動しながら森の奥に存在しているエルフの村に向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
エルフの村に着いたエルミアは急いで村長の家を訪ねた。
「どうした?エルミア」
と気で出来た家から出てきた1人の青年。容姿は若く見えるがこれでも632歳だ。
この村で最年長のエルフで村長だ。エルミアは急いで今までの出来事を話した。
「・・・・・・・・・つまり、その人間の言葉を信じてこの村に人間を招き入れろと言うのか?」
「・・・・・はい」
村長の言葉にエルミアが答える。
「エルミア、もしかして操作系の魔法にかかったのか?」
「私は操られていません。私の言葉を信じて下さい」
「すまないな」
「昔、私達一族を救った人間を忘れたのですか?」
「・・・・・それは奴が特別だったのだ」
「私は先程会った少年も特別だと感じています。彼は一族を助けるために同族と戦うと言ったのです」
「・・・・・・・・きっと嘘だ」
「何故私は殺されなかったのか・・・・・・・・それは彼も特別だからです」
「・・・・・・・・・村の場所を知るために泳がされたのだ」
「違います・・・・・・・・それに私達だけでは人間に勝てません。どれだけエルフの弓矢が優れていても人間には勝てません」
「・・・・・それは分かっている」
「ならば、彼等と協力するべきです」
「・・・・・・・・・・エルミア、君はどうしてそこまで人間を信じられるんだ?今まで多くの仲間が殺されてきた。その中にはお前の友もいたはずだ」
「・・・・・・・・私も人間なんて滅ぶべきだと考えていました。でも彼に出会って昔を思い出したのです。私も昔は人間の街に憧れた。人間と仲良くなりたかった」
「それでも人間は我々を裏切り、殺し続けた」
「・・・・・はい。でも、きっといつの日か仲良くなれます。私は信じたいんです」
エルミアと村長の言い合いが続いた。そして少し沈黙の時間が流れる
「・・・・・人もエルフも他の種族も昔は仲が良かった。もう一度やり直せるのならそれが一番良い。・・・・・私の負けだエルミア」
村長が折れてゆっくりと立ち上がる。
「ありがとうございます」
エルミアは急いで立ち上がり頭を下げた。
「人間を信じるのではない。お前を信じるのだ。皆にこのことを伝えないとな」
エルミアと村長は家から出て、村中のエルフを広場に集めた。
数分後にはエルフ達が広場に集まり終わっていた。
広場の前にある木で出来た梯子を登って高台に立つ。
村長より1歩後ろに立ったエルミアはそこからの光景を眺めた。沢山のエルフがこの高台を注目していた。
ざわざわとする空気を村長の言葉がかき消した。
「我々は人間の傭兵団と戦い、生き残る為に人間と協力することを決めた」
「どういうこと?」
「なにそれ?」
と辺りが騒がしくなる。
「その人間は他の人間とは違う!我々だけでは人には勝てない。だから皆も協力してくれ」
と村長の声の後に沈黙の時間が、流れた。恐らく状況を呑み込めていない。
「みんな!お願い!」
エルミアは村長の前に出ると手すりを掴んで叫んだ。
「・・・・・私は生き残れる方を選ぶ!今まで殺されてきた仲間。その仲間の為にも私達は生きなければならない。そして今、生き残る為には人間の力が必要なの!だから、だからお願い・・・・・力を貸してください」
エルミアの言葉が終わった直後拍手が森に響く。
エルミアの目から涙が零れ落ちる。
「ありがとう」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ハルト達は森の中を歩いて進んだ。
少し歩いた時、男性のエルフが2人木の影から現れる。2人とも耳が尖っていて美しい顔立ちだ。イケメンである。左側のエルフは少し背が小さく、短い緑色の髪をしている。
右側のエルフは金髪で少し長めの髪を左右に分けている。
「・・・・・貴方がハルト殿だな」
と右側の金髪エルフが口を開く。
「・・・・・そうだけど」
と返す。
「付いて来てくれ」
と緑髪のエルフが口を開いて体を反転させて歩き出す。
ハルト達は緑髪のエルフの背中を追って歩き出す。最後尾に金髪のエルフが付いた。
無言のまま歩き続けること20分。ようやくエルフの村に着いた。
入口の立て札を越えて村の中に入る。周りからの視線が刺さる様に痛い。
村の中は静かで響くのは風が葉を揺らす音だけ。
村の中にある家は木や葉っぱなどで建てられている。
自然の家そのままだ。村の中を少し進むと広場が見えてきた。広場には高台がある。その広場を通り過ぎて少し歩いた先にある家の前で緑髪のエルフが足を止める。
「ここが村長の家だ」
と言って家の中に入るよう促す。ハルトはそのまま足を進めて木の扉を叩く。
「どうぞ」と恐らく若い男性の声が聞こえてきた。
ハルトは扉を開けて中に入った。中にはエルミアと男性のエルフが居た。
男性のエルフが立ち上がる。
「私が村長のハルラスです」
と手が目の前に出される。ハルトは驚いた。何故ならその男は20代にしか見えないからだ。
「よ、よろしくお願いします。それにしても若いのに村長なんて大変そうですね」
と手を取って握手を交わす。
「・・・・・私は632歳ですよ」
と村長のハルラスの言葉に驚いて一瞬固まってしまう。
「632歳!?」
と声を荒らげる。
「はい。そうです」
とハルラスが答える。
確かにエルフは永遠の寿命とか不老不死などと聞いたことがある。まあ、現実世界でだが・・・・・
実際に見ると外見は20代だ。ということは恐らくエルミアと名乗った少女の年齢も100歳を超えている可能性がある。もしかしたら600などと言うことも・・・・・・・・ 
年齢詐欺半端ないな
と心で呟く。
「凄いですね。私、そんな年上の人に初めて会いました」
とリゼッタが口を開く。
「とりあえず、座りましょう」
とエルミアと名乗ったエルフが促す。
ハルト達はその場に腰を下ろした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――そのころ
〈オルティネシア王国〉
「我々の目的はエルフの殲滅だ!」
と一番前に立つ黄緑色の長い髪の男性の傭兵が叫ぶ。
オルティネシア王国にある「傭兵広場」と呼ばれる場所には50を超える傭兵が集まっていた。 
目的は人間の敵――エルフ
森の妖精と呼ばれるエルフ族は不老不死や永遠の寿命と呼ばれていて奴隷でも高い値段がつく。
「男のエルフは殺せ!女のエルフは生け捕りだ!」
と男が叫ぶ。
そして一番前の男――今回のエルフ殲滅作戦に参加する傭兵を率いる男、アトモストが馬に股がる。他の傭兵も各自馬に股がった。
行くぞー!
とアトモストの号令に傭兵団が馬で駆ける。
オルティネシア王国からエルフ殲滅傭兵団が出発した。
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