負け組だった俺と制限されたチートスキル
第四十四話 事後
誰かに揺すられている。
誰かが呼んでいる。
「――スケ、コウスケ!」
そう呼びかける声。
その声は女性のものであることは間違いない。
それにその声が俺を名を呼んでいることも。
「……ミリルか」
俺は目を開いた。
目の前にはミリルがいる。
何だかとても既視感を感じる光景だった。
それは確か……アルトとの戦いの後か。
それを思い出すと同時に悪寒が駆け巡る。
あの後も今と同じように気絶してミリルに助けてもらったのだ。
そしてその後は……ミリルがおかしくなっていた。まるで別人の彼女になって俺を襲ってきたのだ。
だから俺は今この状況に対して、かなりの危機感を感じていた。
一種のトラウマのようにもなっているのかもしれない。
「ミリル?」
確認ついでに彼女の名を呼んでみる。
しかしこれには何の効力もない。何しろ人格が変わった彼女でもそれくらいの返事は容易いのだから。むしろ俺を騙そうと、それらしく振舞ってくる可能性だってある。
するとミリルは首を傾げて俺の言葉に答えた。
若干その顔には喜びが感じられる。
……実にミリルらしい反応である、言葉でなく態度で示すあたりいつも通りといえる、がまだ分からない。
あっさりと信用してまた同じ過ちをするわけにはいかない、あの時気づいたのは本当に偶然だった。いやそれも一歩手前まで気づかなかったという事実がある。つまり俺に変貌したミリルを判断した実績はない。
「お前はミリルだよな?」
ミリルは首を傾げる。
そりゃあそうだ。
変貌したミリルだろうとなかろうとそれ以外反応のしようがないだろうから。
……待て、俺がこうして疑っている時点で彼女はいつも通りのミリルではないのか?
そう思った。
何しろ、あの時のミリルに俺は魅了されていた節があるのだ。それもきっとミリルの故意によって。
だけど今は彼女に好意を抱くどころか、警戒している。
それが何よりの証拠ではないのか。
何だか哲学的な話になってしまったが、今は確実に事実を確認する方法がないため、それを理由にして疑いを薄れさせる方が疲れないで済むことは確かだった。
だけど一応は動きに注意しておくことにする。
「ああ、なんでもない、ちょっと頭がボーっとしててな」
「……分かった」
言い訳を告げてミリルを納得させておく。
ミリルはいつも通り頷くだけ。
やはり疑いすぎていたのかもしれない。
「そういえば……」
俺は体を起こしながら呟いた。
「あの後ってどうなったんだ?」
あの後というのは、あの守人と言われていた男との会話の後、つまり俺が気を失う後のことだ。
当然今生きていることから、あの男は俺へ危害を加えなかったことが分かるし、敦たちも戻ってきていないということにもなる。
ならあの男はあの後何もしないで消えていったのだろうか?
一人で思案を巡らせる。
すると、ミリルから声がかかった。
「……ごめんなさい」
「ん?」
思わず素の声が出た。
何せ彼女が俺に謝ってきた理由が見当たらな……いや、あったな。
俺は思い当たる節に行き着いた。
そしてそれについて問いかけることにする。
「どうしてついてきたんだ?」
それは俺が勇者たちの足取りを追うと行った時に遡る。
俺はあの時ミリルとリーフにここで待っていろと命じたにも関わらず、ミリルは着いてきた。そして捕まったのだ。
あれさえなければ、俺は様子見だけで終えていたかもしれない。少なくとも敦との力の差を見せ付けられることにはならなかっただろう。
「……心配だったから」
「心配?」
予想外の回答だ。
俺が心配?
俺はミリルに心配されるほど弱くて頼りなく見えていたのだろうか。
「だってコウスケ、最近戦いばっかりだったから……」
「あ、ああ、そうだな」
確かに戦い続きだった。
森での魔物、宿敵カノスガにカインと続き聖剣の勇者アルト、その後に豹変したミリル。そして異世界勇者に化け物である敦。
こうして考えると、確かに短期間で起こった出来事だとは到底思えない。こんな経験人が一生かかっても全て体験出来ないのではないだろうか。
それを俺はたった数日で体験しているのだ。それは自分的にも他人事でもハードすぎると言い切れる。
それに全て辛勝か引き分けか敗北。何一つ楽に勝った戦いがないのだ。
そりゃあミリルにだって心配されるのも無理はない。
「そうだな、少し戦い過ぎていたかも知れない」
だから俺は素直にミリルの言い分を認めた。
それに今回の完敗は悪い経験と切り捨てるには勿体無さ過ぎるほど収穫があった。
一つは敦という化け物の存在が分かったこと。
これを知っていると知らないとではかなり今後の復讐にかなり影響を与える。知らないまま挑んでいたらきっとボロ負けだっただろうから。
もう一つの収穫は、守人という存在を知ることが出来たことだろう。
とはいえ俺の復讐、人生に直接影響を与えるような存在ではない。だが今後不測の事態が起こる可能性として、守人の存在も頭の片隅に置いておいた方がよいだろう。間違っても敵対関係にだけはならないようにもしないといけない。
更に得たものは、美月、勇人という勇者を知れたことだ。
顔はもとより、力や性格もある程度分かった。何も知らないよりは知っている方が良いに決まっている。
しかし敦に連れて行かれたため、今後どのような形になるかは全く予想できないのが悔やまれる。
最後。
正直これが一番の収穫だと思っている。
俺は念じた。
【経験確認、スキル『強化』創造可能】
俺は心の中で小さくガッツポーズを出した。
【スキル『強化』創造。残りスキル枠は0です】
幸運に幸運が重なる。
これが一番望んでいた終着点だった。
そうして出来上がった俺のステータスは――
名前 コウスケ・タカツキ
スキル 真偽 鑑定 隠蔽 同化 強化 技能創造
と言った具合である。
まさか強化スキルの経験だけでなく、スキル枠も増えていたとは嬉しい限りだった。
何よりこれで俺は大幅に戦術の幅が広がったということになるのだ。
今まではあの黒い剣の特性を生かして立ち回るか、同化で相手の同様を誘う、又は捨て身の特攻をするくらいしかなかった。
まあ真偽を使って相手の行動を読むという戦術も敦に通じたが、あれは相手が乗ってくれないと何も意味を成さないので、戦術としては穴がありすぎる。
何はともあれ、俺の戦術に力でゴリ押しするという選択が増えたのは喜ばしいことだった。
今まではどうしてもアルトを初めとしてあの魔人族の男、敦もそうだが、そのままの意味である力の差が顕著だった。でも何とかやっていけていたのは、アルトの場合だとこの黒い剣と彼の性格のお陰だった。
でも敦に関しては何をしても通用しなかった。
もちろん勇人によって強化された体でもどうしようもなかった。だからこのままもう一度挑んでも返り討ちにあうだろう。
だけどあんな化け物はそうそういないはずだ。あんな化け物がゴロゴロいる世界なら一般人はきっと生きていけないだろうから。
つまりこの強化スキルを含めた現状の力で俺はやっていける。
その間で有用なスキルを見つけ、創り、戦術を増やして、最後に敦を殺せば全てが丸く収まる。
とはいえ最後の敵を敦と置くのはまだ早計かもしれない。
あいつのほかにもまだまだ異世界の憎き勇者はたくさんいるのだ。
その中に敦に及ばないにせよ、近い存在がいないとも限らない。何はともあれ不測の事態にはならないように、最悪な展開は考えていた方が良いだろう。
まだあの大将もいるのだから……
考えが一区切りした直後にミリルが言葉を発した。
「コウスケ」
「なんだ?」
「リーフが」
「……そういえば」
今の今まで忘れていたので彼に少しだけ申し訳ない気持ちが生まれる。
あいつのお陰で美月を説得できる時間があったのは間違いないのだ。
これで死なれていては目覚めが悪い。
俺は少し苦い顔をしてミリルが向いていた方向を見た。
俺には彼がどこにいるのか分からなかったため、彼女の視線に任せるしかなかったのだ。
「は?」
俺は思わず声を上げた。
そこにはリーフがいた。
いたのだが、どうもおかしい。
おかしいとは言っても、行動とかではない。
確かあいつは……死ぬ寸前じゃなかったか?
俺は改めて記憶を呼び起こす。
確かにリーフは勇人によってボロボロにされていたはずだ。
だけど今俺の目の前にいるリーフは、そんな様子を何一つ感じない姿だった。
……待て、今気づいたがミリルもだ。
ミリルも敦に色々な箇所を傷つけられていた。つまり俺に駆け寄ってくるほどの元気があるわけがないのだ。
「ミリル……お前それどうしたんだ?」
だから堪らずに聞いた。
予想も何も出来ない。
確かにミリルには治療スキルがあったが、自分があんなにボロボロなのに、リーフのようなそれ以上の結果を出せるとは到底思えないのだ。
「えっと……男の人が……」
ミリルは思い出すように口を開いた。
男の人。
そういわれて思いつくのは、、勇人、そして守人と呼ばれていた男だ。
そしてその中でリーフとミリルを助けたと考えられる人物は守人ぐらいだろう。
敦はともかく、勇人には他人を治す力も残っていなかったはずなのだから。
「そうか」
俺は言葉が見つからずそう言うだけだ。
つくづく俺の理解を超えてくる。
なんとも困った存在である。
俺はそんなことを思いながら守人に少なからず感謝の意を込めた。
ただ一つ言うならば、何故二人は治したのに俺を治さなかったのか、であるがそれを言うのは我がままというものだろう。
実際今、俺はミリルに治療されているので何も言うことはない。
「俺の傷が治ったら直ぐにリーフの村に行こうか」
「うん」
そう目標を告げる。
色々あったが、やることは変わらない。
アルカナ連合でやることを済ませて、その後シセイ魔連国へ向かう。
今はそれが最優先だ。
誰かが呼んでいる。
「――スケ、コウスケ!」
そう呼びかける声。
その声は女性のものであることは間違いない。
それにその声が俺を名を呼んでいることも。
「……ミリルか」
俺は目を開いた。
目の前にはミリルがいる。
何だかとても既視感を感じる光景だった。
それは確か……アルトとの戦いの後か。
それを思い出すと同時に悪寒が駆け巡る。
あの後も今と同じように気絶してミリルに助けてもらったのだ。
そしてその後は……ミリルがおかしくなっていた。まるで別人の彼女になって俺を襲ってきたのだ。
だから俺は今この状況に対して、かなりの危機感を感じていた。
一種のトラウマのようにもなっているのかもしれない。
「ミリル?」
確認ついでに彼女の名を呼んでみる。
しかしこれには何の効力もない。何しろ人格が変わった彼女でもそれくらいの返事は容易いのだから。むしろ俺を騙そうと、それらしく振舞ってくる可能性だってある。
するとミリルは首を傾げて俺の言葉に答えた。
若干その顔には喜びが感じられる。
……実にミリルらしい反応である、言葉でなく態度で示すあたりいつも通りといえる、がまだ分からない。
あっさりと信用してまた同じ過ちをするわけにはいかない、あの時気づいたのは本当に偶然だった。いやそれも一歩手前まで気づかなかったという事実がある。つまり俺に変貌したミリルを判断した実績はない。
「お前はミリルだよな?」
ミリルは首を傾げる。
そりゃあそうだ。
変貌したミリルだろうとなかろうとそれ以外反応のしようがないだろうから。
……待て、俺がこうして疑っている時点で彼女はいつも通りのミリルではないのか?
そう思った。
何しろ、あの時のミリルに俺は魅了されていた節があるのだ。それもきっとミリルの故意によって。
だけど今は彼女に好意を抱くどころか、警戒している。
それが何よりの証拠ではないのか。
何だか哲学的な話になってしまったが、今は確実に事実を確認する方法がないため、それを理由にして疑いを薄れさせる方が疲れないで済むことは確かだった。
だけど一応は動きに注意しておくことにする。
「ああ、なんでもない、ちょっと頭がボーっとしててな」
「……分かった」
言い訳を告げてミリルを納得させておく。
ミリルはいつも通り頷くだけ。
やはり疑いすぎていたのかもしれない。
「そういえば……」
俺は体を起こしながら呟いた。
「あの後ってどうなったんだ?」
あの後というのは、あの守人と言われていた男との会話の後、つまり俺が気を失う後のことだ。
当然今生きていることから、あの男は俺へ危害を加えなかったことが分かるし、敦たちも戻ってきていないということにもなる。
ならあの男はあの後何もしないで消えていったのだろうか?
一人で思案を巡らせる。
すると、ミリルから声がかかった。
「……ごめんなさい」
「ん?」
思わず素の声が出た。
何せ彼女が俺に謝ってきた理由が見当たらな……いや、あったな。
俺は思い当たる節に行き着いた。
そしてそれについて問いかけることにする。
「どうしてついてきたんだ?」
それは俺が勇者たちの足取りを追うと行った時に遡る。
俺はあの時ミリルとリーフにここで待っていろと命じたにも関わらず、ミリルは着いてきた。そして捕まったのだ。
あれさえなければ、俺は様子見だけで終えていたかもしれない。少なくとも敦との力の差を見せ付けられることにはならなかっただろう。
「……心配だったから」
「心配?」
予想外の回答だ。
俺が心配?
俺はミリルに心配されるほど弱くて頼りなく見えていたのだろうか。
「だってコウスケ、最近戦いばっかりだったから……」
「あ、ああ、そうだな」
確かに戦い続きだった。
森での魔物、宿敵カノスガにカインと続き聖剣の勇者アルト、その後に豹変したミリル。そして異世界勇者に化け物である敦。
こうして考えると、確かに短期間で起こった出来事だとは到底思えない。こんな経験人が一生かかっても全て体験出来ないのではないだろうか。
それを俺はたった数日で体験しているのだ。それは自分的にも他人事でもハードすぎると言い切れる。
それに全て辛勝か引き分けか敗北。何一つ楽に勝った戦いがないのだ。
そりゃあミリルにだって心配されるのも無理はない。
「そうだな、少し戦い過ぎていたかも知れない」
だから俺は素直にミリルの言い分を認めた。
それに今回の完敗は悪い経験と切り捨てるには勿体無さ過ぎるほど収穫があった。
一つは敦という化け物の存在が分かったこと。
これを知っていると知らないとではかなり今後の復讐にかなり影響を与える。知らないまま挑んでいたらきっとボロ負けだっただろうから。
もう一つの収穫は、守人という存在を知ることが出来たことだろう。
とはいえ俺の復讐、人生に直接影響を与えるような存在ではない。だが今後不測の事態が起こる可能性として、守人の存在も頭の片隅に置いておいた方がよいだろう。間違っても敵対関係にだけはならないようにもしないといけない。
更に得たものは、美月、勇人という勇者を知れたことだ。
顔はもとより、力や性格もある程度分かった。何も知らないよりは知っている方が良いに決まっている。
しかし敦に連れて行かれたため、今後どのような形になるかは全く予想できないのが悔やまれる。
最後。
正直これが一番の収穫だと思っている。
俺は念じた。
【経験確認、スキル『強化』創造可能】
俺は心の中で小さくガッツポーズを出した。
【スキル『強化』創造。残りスキル枠は0です】
幸運に幸運が重なる。
これが一番望んでいた終着点だった。
そうして出来上がった俺のステータスは――
名前 コウスケ・タカツキ
スキル 真偽 鑑定 隠蔽 同化 強化 技能創造
と言った具合である。
まさか強化スキルの経験だけでなく、スキル枠も増えていたとは嬉しい限りだった。
何よりこれで俺は大幅に戦術の幅が広がったということになるのだ。
今まではあの黒い剣の特性を生かして立ち回るか、同化で相手の同様を誘う、又は捨て身の特攻をするくらいしかなかった。
まあ真偽を使って相手の行動を読むという戦術も敦に通じたが、あれは相手が乗ってくれないと何も意味を成さないので、戦術としては穴がありすぎる。
何はともあれ、俺の戦術に力でゴリ押しするという選択が増えたのは喜ばしいことだった。
今まではどうしてもアルトを初めとしてあの魔人族の男、敦もそうだが、そのままの意味である力の差が顕著だった。でも何とかやっていけていたのは、アルトの場合だとこの黒い剣と彼の性格のお陰だった。
でも敦に関しては何をしても通用しなかった。
もちろん勇人によって強化された体でもどうしようもなかった。だからこのままもう一度挑んでも返り討ちにあうだろう。
だけどあんな化け物はそうそういないはずだ。あんな化け物がゴロゴロいる世界なら一般人はきっと生きていけないだろうから。
つまりこの強化スキルを含めた現状の力で俺はやっていける。
その間で有用なスキルを見つけ、創り、戦術を増やして、最後に敦を殺せば全てが丸く収まる。
とはいえ最後の敵を敦と置くのはまだ早計かもしれない。
あいつのほかにもまだまだ異世界の憎き勇者はたくさんいるのだ。
その中に敦に及ばないにせよ、近い存在がいないとも限らない。何はともあれ不測の事態にはならないように、最悪な展開は考えていた方が良いだろう。
まだあの大将もいるのだから……
考えが一区切りした直後にミリルが言葉を発した。
「コウスケ」
「なんだ?」
「リーフが」
「……そういえば」
今の今まで忘れていたので彼に少しだけ申し訳ない気持ちが生まれる。
あいつのお陰で美月を説得できる時間があったのは間違いないのだ。
これで死なれていては目覚めが悪い。
俺は少し苦い顔をしてミリルが向いていた方向を見た。
俺には彼がどこにいるのか分からなかったため、彼女の視線に任せるしかなかったのだ。
「は?」
俺は思わず声を上げた。
そこにはリーフがいた。
いたのだが、どうもおかしい。
おかしいとは言っても、行動とかではない。
確かあいつは……死ぬ寸前じゃなかったか?
俺は改めて記憶を呼び起こす。
確かにリーフは勇人によってボロボロにされていたはずだ。
だけど今俺の目の前にいるリーフは、そんな様子を何一つ感じない姿だった。
……待て、今気づいたがミリルもだ。
ミリルも敦に色々な箇所を傷つけられていた。つまり俺に駆け寄ってくるほどの元気があるわけがないのだ。
「ミリル……お前それどうしたんだ?」
だから堪らずに聞いた。
予想も何も出来ない。
確かにミリルには治療スキルがあったが、自分があんなにボロボロなのに、リーフのようなそれ以上の結果を出せるとは到底思えないのだ。
「えっと……男の人が……」
ミリルは思い出すように口を開いた。
男の人。
そういわれて思いつくのは、、勇人、そして守人と呼ばれていた男だ。
そしてその中でリーフとミリルを助けたと考えられる人物は守人ぐらいだろう。
敦はともかく、勇人には他人を治す力も残っていなかったはずなのだから。
「そうか」
俺は言葉が見つからずそう言うだけだ。
つくづく俺の理解を超えてくる。
なんとも困った存在である。
俺はそんなことを思いながら守人に少なからず感謝の意を込めた。
ただ一つ言うならば、何故二人は治したのに俺を治さなかったのか、であるがそれを言うのは我がままというものだろう。
実際今、俺はミリルに治療されているので何も言うことはない。
「俺の傷が治ったら直ぐにリーフの村に行こうか」
「うん」
そう目標を告げる。
色々あったが、やることは変わらない。
アルカナ連合でやることを済ませて、その後シセイ魔連国へ向かう。
今はそれが最優先だ。
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