『ミナ』 ~吸血鬼に愛された人間~

しげぞうじいさん

48節

 夢を見た。
 私とお嬢様、妹様、そして皆がいる夢だ。
いつかの日のように皆で笑い合いながら食事をしている。私も皆と一緒に笑っている。こんなに楽しい日がもっと続きますようにと願った。だが、一人ずつ消えていく。待って!行かないで!
 でもその願いは聞いてもらえず皆次々と消えていく。残ったのは私とお嬢様だけだ。
「残りは私たちだけになってしまったな」
 お嬢様はそう言って笑っている。
「なあ、お前はこの生活に満足していたか?」
 私はもちろんと答えた。
「そうか。それは結構。だが、そんな日々とももうお別れだな」
 お嬢様、何を言っているんですか?
「もうこの夢は覚める。その前にお前に伝えたいことがある。聞いてくれるな?」
 私は、はいと答えた。
「よし、一度しか言わないからよく聞け。私の人生はお前がいたお蔭で悪くはなかった。人でない私が人生と言うのもおかしいが、とても楽しい日々だった。ありがとう、ミナ」
 そう言ってお嬢様は消えてしまった。
 待ってください、お嬢様!

 夢から覚めた。
 私は気が付くと平原で寝転んでいた。一体どうなったのだろうか……あんなにいた屍たちも綺麗に消えている。それにお嬢様も妹様も……
 私はお嬢様の名前を呼んだ。妹様の名前も。しかし、返ってくるのは静寂だけ。二人の姿はない。
 あの夢は……

 私は城の掃除をしている召使い。いつ主が帰ってきてもいいように毎日城を掃除しています。しかし、掃除をしてもう四十年。そろそろ体にガタが来た頃でしょうか。子供だったミラは街に移り住み、たまにここに来ては一緒に掃除してくれます。ヒイさんも一緒になって掃除を手伝って来てくれます。でも、もう歳なのか、最近満足に箒を持てなくなってきたり、窓の掃除をしようと思っても腕が肩より上に上がりません。どうしたものかと悩んでいたらミラが手伝ってくれました。自分ももういい年なんだから家の事とか、家族のこととかもっと大事にしないといけませんよ。そう叱るとミラは
「ミナさんの方がもっと大事にしてください。窓を掃除してていきなり落ちたら大変じゃないですか」
と反論されてしまいました。全く、この年になってから人に怒られるなんて中々無いですよ。私よりヒイさんの方が心配なんですが、それを言うのは野暮って奴でしょうね。
 モップで床の掃除をしていたらバケツの水を零してしまいました。最近、目が悪くなったのか近くの物が遠くに見えたりするんですよ。それはヒイさんも同じだった。私より年上なのに、それでも私以上に働くんですから恐ろしいものです。
 皆が使っていた部屋を掃除していたら箪笥の中から手鏡が出てきました。それで私の顔を見ると老けたなって思います。ヒイさんにも見せるとヒイさんも、
「私も老けましたね。また小じわが増えてきました」
と言っていました。全く、年は取りたくないものですね、と話して笑いあった。その笑い声に惹かれたのか、ミラも一緒になって会話に混ざってきました。ああ、こんな話している場合じゃありませんでしたね。掃除しないと……!
 それにしても今日はいい天気ですね。洗濯物が良く乾きそうです。皆の部屋の毛布を洗っているとミラに止められました。
「もう、いい年なんですから私がやります」
って。私もいい年になったものなんですね。
 それにしてもいつになったらお嬢様たちは帰ってくるのでしょうか。私もあまり長く待てませんよ?

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