『ミナ』 ~吸血鬼に愛された人間~

しげぞうじいさん

28節

 夢を見た。
 皆の死体が山になっている。私はその前に跪いて、謝罪の言葉を繰り返し話した。でも、返ってくるのは静かな音、私の声だけ。私はその声でさらに泣き、もっと謝罪の言葉を口にした。
 だが、しばらくすると、肩に誰かの手が当たったような感覚があった。私は肩を見てみると、私を育ててくれたおじさん、おばさんの姿があった。
『もう謝らなくていい』
『私たちはこうなる運命だったんだから』
 二人はそう言うと死体の山に向かって歩いて行った。
『さあ、皆もそろそろ起きようか』
 おじさんがそう言葉にすると、死体の山は突然光を放ち、輝いていた。私は眩しくて目を瞑ると目の前に皆の姿があった。
「皆……!」
『あの子のことを……頼む……俺達の最後の希望だ』
「うん……うん……わかった……!だから安心して!カーミラも一緒だから!」
『そうか……安心した……』
 そこで目が覚めた。

 朝、私は少し寝坊をしてしまったみたいだ。急いで着替えて食堂に行くと案の定誰もいなかった。しかし、代わりにテーブルにメモが残してあった。
『玉座の間で待ってます』
と。
 私は急いで玉座の間に行った。扉を開けると、皆椅子に座っていた。
「よう、今日は少し寝坊したみたいだな」
「すいません!」
「いい、謝らなくて。疲れていると思って皆お前を起こしに行かなかったんだ」
 そうなのか。でも、何故皆ここにいるんだろう。
「ああ、お前は部屋に閉じこもっていたから見てなかっただろう。皆この時間になると勝手にミラの飯を食べさせるところを見たがるんだ。全く困った奴らだ」
「お嬢様がミラに変なことを教えていないか確かめに来てるんです!」
「それでもお前は立派な大人になっただろう?それでも私の育て方が心配か?」
「心配です!」
「な?こういうことだ。まあお前も見たければ見ていいぞ。邪魔さえしなかったらな」
「は、はぁ……」
 私は皆に混ざった。
 カーミラがミラにミルクを与えている。何ともない光景だが、それは可愛いものだった。
「可愛い~!」
「ほら、もっと飲め。そして早く大きくなれよミラ?」
「あーうー?」
「ハハハ!何のことを言っているのかわからんって返事だな」
 皆自分の事はほったらかしでミラの食事している風景を見てる。ものすごく見てる。
「お嬢様!次は私に抱かせてください!」
「お前は昨日抱かせてやっただろ!」
「いいじゃないですか、減るものじゃないですしー!」
「減る増えるの問題じゃない!お前らいいからさっさと自分の仕事をしてこい!」
「ミラを抱かせてくれるまではここを動きません!」
「お前に抱かせたらミラが可哀そうだ!いいから早く仕事に戻れ!それとも私と戦うか!?」
「う……それは……」
 フウさんは言葉に詰まった。昨日、カーミラに負けたのを思い出したのか、それ以上何も言わなかった。
「ほら、お前達!フウを連れて早く仕事に戻れ!」
「はーい……」
 気の抜けた返事が返って来た。
「ほら、ミナ!お前も仕事に戻れ!」
「いや、あの私まだ朝食を食べてないんですけど……」
「なんだと……?おい、フウにミイ!戻ってこい!」
 すると、勢いよく二人が帰って来た。
「なんですかお嬢様!やっぱり気が変わってミラを私に抱かせてくれるんですか!?」
「いや、お前ら今日の朝飯、作ったか?」
「あ……!」
「ハァ……さっさと作って仕事しろ」
 カーミラがそう言うと二人は食堂へ行った。
「お前も食堂に行け。ミラは私が面倒見ることになっているからな。あいつらのように頻繁に来なかったらいつでも見に来ていいぞ」
「はい、わかりました」
「じゃあ、また後でな」
 カーミラは手を振って私を玉座の間から追い出した。
 皆朝食の事をすっかり忘れていたみたいで少し遅めの朝食を食べた。そして自分の仕事に戻った。窓を拭いていると門の側で李狼の姿を見た。私は一旦仕事を止めて、李狼の所に行った。
「貴方……どこに行ってたの?」
「ああ、お前か。体調はもういいのか?」
「お蔭様でね。で、門の仕事をほったらかしてどこに行ってたの?」
「ちょっとした野暮用だ。お前が気にすることではない」
「ふうん、まあいいけど。まさかまたここで人を殺していないでしょうね?」
「していない。最近ここに来たのはあの村の連中だけだ。それ以外は来ていない。今のところはな」
「何、その言い方。まるでこれから何かが起きようとしているみたいじゃない」
「未来のことは俺にもわからん。で、お前仕事はいいのか?」
「これからするところよ。門番の仕事の邪魔して悪かったわね」
 そう言って、私は門から離れた。でも、李狼の顔を見ると、何故か不安な気持ちになった。でも、これは錯覚だ。気にすることじゃない。カーミラもそう言っていたじゃないか!
 私は自分に喝を入れると、再び仕事に戻った。そうして楽しい日々が過ぎていった。

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