『ミナ』 ~吸血鬼に愛された人間~
4節
「だから、召使いだよ。この城には召使いが少なくてな。ちょうど手が欲しかったところなんだ」
「何故……私がそんなことを!」
「気に入ったからさ、お前のことが。自分のことはどうでもいい。でも、村の為に必死に逃げるお前がな。そんな考えをしている奴はこの城にはいない。働けば褒美は出すぞ。もちろん、お前が死ぬまでだが」
私にはそれが死の宣告に聞こえた。村の皆を裏切ってこの化け物に仕える、それは人間を辞めるのと同じ定義だった。
だから私は、
「そんなことはしない!私は人間だ、お前たち化け物に屈したりしない!」
と言った。
化け物はそれを聞くと、また大笑いした。
「面白い、やはり人間は面白い!これだから人間を嫌いにはなれんなぁ!」
そう言って化け物は立ち上がり、私の周りをくるくると回り始めた。何がおかしいのか、私は理解したくなかった。化け物が考えていることなど、わかりたくもない!
「貴様は……人間が好きなのか……?だったら何故我が村の人を襲う!?」
「襲うだって……?人聞きの悪いことを言うな。私は一度だって自分から人を襲ったことなどない。五百年前からずっとな」
なんだって……?人を襲ったことがない?じゃあ、私たちを襲っている吸血鬼は一体……
「嘘をつくな!現に私たちの村は吸血鬼に襲われている!それは貴様のせいだろう!」
「そうだ、そこが気になった。私は確かにこの城に住んでいるが、この辺の村など襲ったことはない。ずっとこの城の中にいるのだ。だから、貴様の言う吸血鬼とやらは私ではない。どこかのはぐれ者が私の真似でもしているのだろう」
そんな……いや、こいつが嘘を言っている可能性もある。でも、嘘をつく理由は無い……だとしたら……
「お前が私の召使いになればその吸血鬼とやらを退治しても構わんぞ。私と契約するのならな」
……どうやら残された選択肢は一つしかないようだ。
「……わかった。その契約を交わそう。ただし、お前が本当に奴を倒してくれるか保証はない。だから、それまでの間、仮の契約をする。お前が約束を破れば、私もお前の奴隷を辞める。これでどうだ?」
「奴隷じゃない、召使いだ。そこを間違えるな。だが、いいだろう。お前と約束しよう。お前の村を襲っている吸血鬼を退治した暁には、お前は私に永遠の忠誠を誓え。その件の吸血鬼は次、いつ来るのだ?」
「……四日後の夜だ」
「わかった。四日後、その吸血鬼を退治してやる」
「……交渉成立だな」
仮とは言え、契約を交わしてしまった。でも、これで村の皆の命が助かるなら、私個人の命など安いものだ。
私は立ち上がり、服の汚れを掃うと、その吸血鬼に向かい合った。
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