『ミナ』 ~吸血鬼に愛された人間~
8節
夢を見た。
真っ白い空間の中、私一人いた。
私の手が血まみれで、目の前に男性の死体が転がっている。どこかで見たことがある顔だが、どうにも思い出せない。誰だったっけ?でもそんなことを気にしている場合じゃない。早く帰らないと。あれ、帰る家なんてあったっけ?すると死体が起きあがってきた。私は当然のように血まみれの手でそいつを掴むと、首をねじ切った。転がる首、体から噴き出す血の雨。何もかもがおかしい。私はここで一体何を……
その時、落ちた首がこちらを向きこう言った。
「お前に帰る場所もない。お前は化け物の手先になった。お前は私たちの敵だ。敵だ」
敵、敵、敵、敵、敵……そればかり連呼している。私はそれが耳障りだったので、足でその首を踏み潰した。
すると、真っ白だった世界が死体の山に変わった。その死体の中にはよく知っている顔があった。ああ、おばさん、おじさん、皆も……でも……
「なんで……そこにいるの?」
そう言った瞬間、死体全員がこちらを向き、
「お前は敵だ。吸血鬼の手先になって私たちを殺したんだ。お前は敵だ、敵だ」
数百人はあろうかという声で敵、敵、敵を連呼されては耳が痛い。私はその場でうずくまった。止めて、もう止めて!
夢はそこで覚めた。
「ハァ……ハァ……」
気が付くと私の体は汗で濡れていた。
「何の……夢だったの……?」
私は夢の内容を忘れていた。何か言われた気がするが思い出せない。だが、全身汗だくで寝ていたとすると、恐らく悪夢だろう。
濡れた服を着替える為、昨日メイドに言われたクローゼットを開けた。そこにはびっしりとメイド服が並んでいた。これを着るのか……しかし、他に着る服も無いし……仕方なくそれに着替えた。こういう服はこうやって着るのだろうか。慣れない服に着替えるのも一苦労だ。
着替えた私は朝食を食べに食堂に行った。
来るのが遅かったのか、食堂には誰もいなかった。ご飯を食べ損ねたと思ったら、テーブルの上に一人分の朝食が置いてあった。その横に手紙でこう書かれていた。
『朝はもう少し早く起きてください。朝食を置いておきますので、食べたらお嬢様に会いに行ってください』
と。
私は朝食を急いで食べ、カーミラに会う為に玉座の間に向かった。その途中に会ったメイドや執事におはようと言うと、おはようと返してくれた。
玉座の間に入ると、カーミラはまるで私が来ることがわかっていたかのように笑っていた。
「やあ、おはよう。今日もいい天気だな」
「貴女は、昼間に活動しても平気なんですか?」
「貴女じゃなく、お嬢様と呼んでほしいが、まあいい。次からそう呼んでくれ。私が昼間に活動しても平気か、だったな。その答えはイエスだ。私は太陽の光など怖くもない。むしろ、太陽の光を望んで浴びる。どうだ、大変健康的な生活をしているだろう?」
カーミラは昨日と同じ、どうだ?と言う顔をしている。私はそれを無視した。
「何故平気なんですか?」
「どんどん質問してくるな。それはいい。部下も主のことを知っておかなければいけないからな。その質問だが、私は純粋な吸血鬼ではない。半分化け物で、半分人間だ。だから純粋な吸血鬼とは違い、太陽の光を浴びても大丈夫なんだ」
半分吸血鬼半分人間……それは人間にも化け物にもなれなかった悲しい存在。半端者。
「じゃあ、お嬢様はどうやって今まで生きてこられたんですか?」
「その質問にも答えてやりたいが、今日はお前に仕事を与えなければいけない。おい」
カーミラは指をパチンと鳴らすと、目の前にメイドが出てきた。
「御前に」
「今日からお前たち同様の仕事をさせろ。何、無理なく出来る範囲でいい。一気に押し付けるな」
「かしこまりました」
メイドはカーミラに軽く頭を下げ、私の方に向かって行った。
「来なさい」
「は、はい」
玉座の間から出ていく時、カーミラに頑張ってなと言われた。私は、はいと答えるとカーミラは笑顔になった。
メイドに城の掃除の仕事を与えられた。まずは窓ふき、太陽の光が入ってくるようによく拭いておくように言われた。だが、この城の窓を全部拭けと言われて、私は絶望した。窓だけでも、数十枚ある。それを全部拭けとなると、一苦労などではない。だが、カーミラとの約束があるので、私は拒否できなかった。仕方なく窓を拭いていると、他のメイドに拭き方が足りないと言われてショックを受けた。
窓を全部拭き終わったのは二時間後だった。その次の仕事は城内の掃除、埃を掃う仕事だった。私はメイドに言われた通りに箒を持って掃いた。城内全てではなく、一階の広間と二階だけでいいと言われたので、その通りに掃除した。城の外の門を見てみると、そこには門番のはずだった李狼の姿は無い。どこに行ったのだろうか。
順調に掃除をしていると、他のメイドや執事が陰からこちらを見ている。私はニコッと笑って見せた。すると、その人たちはすぐに隠れた。私の顔、そんなに変かな?かわいいと言われたことは何度もあるけど、鏡を見たことがないのでどんな顔かわからない。掃除が終わったら、部屋に置いてあった手鏡で自分の顔を見てみよう。
教育係のメイドから昼食の時間になったから掃除は一旦止めるように言われた。
食堂に行くと、執事からこんなことを言われた。
「朝はだいぶお休みになられたようですね」
「ええ、よく眠れました。昨日のことが嘘みたいです」
私はこの食堂にいる人たちが信用できなかった。いつ襲われてもいいように私は服の中に短剣を隠していた。
「それは良かった。昨日のことは私たちの間で噂になっていたんです。良ければお話を聞かせてもらってもいいですか?」
昨日の襲撃事件はもう執事やメイドたちの間で噂になっていたようだ。でも、私は
「ごめんなさい。あまり話したくないの。でも、いつか話す時が来ます」
と答えた。
執事は、そうですかと言うと席に戻った。短剣は必要なかったのだろうか。
真っ白い空間の中、私一人いた。
私の手が血まみれで、目の前に男性の死体が転がっている。どこかで見たことがある顔だが、どうにも思い出せない。誰だったっけ?でもそんなことを気にしている場合じゃない。早く帰らないと。あれ、帰る家なんてあったっけ?すると死体が起きあがってきた。私は当然のように血まみれの手でそいつを掴むと、首をねじ切った。転がる首、体から噴き出す血の雨。何もかもがおかしい。私はここで一体何を……
その時、落ちた首がこちらを向きこう言った。
「お前に帰る場所もない。お前は化け物の手先になった。お前は私たちの敵だ。敵だ」
敵、敵、敵、敵、敵……そればかり連呼している。私はそれが耳障りだったので、足でその首を踏み潰した。
すると、真っ白だった世界が死体の山に変わった。その死体の中にはよく知っている顔があった。ああ、おばさん、おじさん、皆も……でも……
「なんで……そこにいるの?」
そう言った瞬間、死体全員がこちらを向き、
「お前は敵だ。吸血鬼の手先になって私たちを殺したんだ。お前は敵だ、敵だ」
数百人はあろうかという声で敵、敵、敵を連呼されては耳が痛い。私はその場でうずくまった。止めて、もう止めて!
夢はそこで覚めた。
「ハァ……ハァ……」
気が付くと私の体は汗で濡れていた。
「何の……夢だったの……?」
私は夢の内容を忘れていた。何か言われた気がするが思い出せない。だが、全身汗だくで寝ていたとすると、恐らく悪夢だろう。
濡れた服を着替える為、昨日メイドに言われたクローゼットを開けた。そこにはびっしりとメイド服が並んでいた。これを着るのか……しかし、他に着る服も無いし……仕方なくそれに着替えた。こういう服はこうやって着るのだろうか。慣れない服に着替えるのも一苦労だ。
着替えた私は朝食を食べに食堂に行った。
来るのが遅かったのか、食堂には誰もいなかった。ご飯を食べ損ねたと思ったら、テーブルの上に一人分の朝食が置いてあった。その横に手紙でこう書かれていた。
『朝はもう少し早く起きてください。朝食を置いておきますので、食べたらお嬢様に会いに行ってください』
と。
私は朝食を急いで食べ、カーミラに会う為に玉座の間に向かった。その途中に会ったメイドや執事におはようと言うと、おはようと返してくれた。
玉座の間に入ると、カーミラはまるで私が来ることがわかっていたかのように笑っていた。
「やあ、おはよう。今日もいい天気だな」
「貴女は、昼間に活動しても平気なんですか?」
「貴女じゃなく、お嬢様と呼んでほしいが、まあいい。次からそう呼んでくれ。私が昼間に活動しても平気か、だったな。その答えはイエスだ。私は太陽の光など怖くもない。むしろ、太陽の光を望んで浴びる。どうだ、大変健康的な生活をしているだろう?」
カーミラは昨日と同じ、どうだ?と言う顔をしている。私はそれを無視した。
「何故平気なんですか?」
「どんどん質問してくるな。それはいい。部下も主のことを知っておかなければいけないからな。その質問だが、私は純粋な吸血鬼ではない。半分化け物で、半分人間だ。だから純粋な吸血鬼とは違い、太陽の光を浴びても大丈夫なんだ」
半分吸血鬼半分人間……それは人間にも化け物にもなれなかった悲しい存在。半端者。
「じゃあ、お嬢様はどうやって今まで生きてこられたんですか?」
「その質問にも答えてやりたいが、今日はお前に仕事を与えなければいけない。おい」
カーミラは指をパチンと鳴らすと、目の前にメイドが出てきた。
「御前に」
「今日からお前たち同様の仕事をさせろ。何、無理なく出来る範囲でいい。一気に押し付けるな」
「かしこまりました」
メイドはカーミラに軽く頭を下げ、私の方に向かって行った。
「来なさい」
「は、はい」
玉座の間から出ていく時、カーミラに頑張ってなと言われた。私は、はいと答えるとカーミラは笑顔になった。
メイドに城の掃除の仕事を与えられた。まずは窓ふき、太陽の光が入ってくるようによく拭いておくように言われた。だが、この城の窓を全部拭けと言われて、私は絶望した。窓だけでも、数十枚ある。それを全部拭けとなると、一苦労などではない。だが、カーミラとの約束があるので、私は拒否できなかった。仕方なく窓を拭いていると、他のメイドに拭き方が足りないと言われてショックを受けた。
窓を全部拭き終わったのは二時間後だった。その次の仕事は城内の掃除、埃を掃う仕事だった。私はメイドに言われた通りに箒を持って掃いた。城内全てではなく、一階の広間と二階だけでいいと言われたので、その通りに掃除した。城の外の門を見てみると、そこには門番のはずだった李狼の姿は無い。どこに行ったのだろうか。
順調に掃除をしていると、他のメイドや執事が陰からこちらを見ている。私はニコッと笑って見せた。すると、その人たちはすぐに隠れた。私の顔、そんなに変かな?かわいいと言われたことは何度もあるけど、鏡を見たことがないのでどんな顔かわからない。掃除が終わったら、部屋に置いてあった手鏡で自分の顔を見てみよう。
教育係のメイドから昼食の時間になったから掃除は一旦止めるように言われた。
食堂に行くと、執事からこんなことを言われた。
「朝はだいぶお休みになられたようですね」
「ええ、よく眠れました。昨日のことが嘘みたいです」
私はこの食堂にいる人たちが信用できなかった。いつ襲われてもいいように私は服の中に短剣を隠していた。
「それは良かった。昨日のことは私たちの間で噂になっていたんです。良ければお話を聞かせてもらってもいいですか?」
昨日の襲撃事件はもう執事やメイドたちの間で噂になっていたようだ。でも、私は
「ごめんなさい。あまり話したくないの。でも、いつか話す時が来ます」
と答えた。
執事は、そうですかと言うと席に戻った。短剣は必要なかったのだろうか。
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