『ミナ』 ~吸血鬼に愛された人間~
17節
この宴は夜が明けるまで続いた。村のほとんどの人は二日酔いでフラフラしていたが、カーミラだけはケロッとしていた。
「カーミラ、お酒強いの?」
「ああ、強いよ。並の人間よりはるかにな。こんなに騒いで酒を飲むなんて何百年ぶりだろうか。楽しかったよ、本当に」
「大袈裟だと思うけど……楽しかったらいいじゃない」
「ああ、私も大袈裟だと思う。でも、それがいい」
「ふうん。まあでも、今夜の吸血鬼退治に支障がないようにね」
「ああ、わかっている……」
カーミラは私と逆方向の方を見た。何かを考えているのだろうか。私はカーミラの顔を横目で見ようと思い、カーミラの横に移動した。横顔を見てみると、悲しそうな顔をしていた。
「カーミラ、悲しいの?」
「いや、なんでだ?」
「なんだか……悲しそうな顔をしていたから……」
「お前が気にすることじゃない。これは私一人の問題だ。お前の方こそ、今夜の支度しないで大丈夫なのか?」
「これからやろうと思っていたところなのよ」
「サッサと行け、しばらくしたら私も戻る」
「そう……わかったわ」
私は自分の家に戻り、支度をしていた。カーミラが負けるとは思えないが、相手は純粋な吸血鬼。勝てるのかわからない。私は何が起きても対処出来るように荷物をまとめた。
家の中で李狼は座ったまま寝ていた。東の方ではこのまま座った状態で寝る人がいるらしいと聞いたことがあるが、李狼は東の国の出身なのだろうか。今度時間があるときに聞いてみよう。
支度を終えた私は村の皆に挨拶して回った。今夜は決戦だから応援しててね、と。皆やる気全開だった。二日酔いしている人達を除けば。
カーミラは先に家に帰ったのだろうか、周りを見てもいない。肝心な主役がどこに行ったのか。
家の中を見ても、李狼しかいない。じゃあどこへ行ったのだろう?
私は辺りを探した。そして見つけた。大きい石の上に座って空を見ている。何を考えているのだろうか?
「カーミラ、ここで何をしているの?」
「ん?ああ、お前か。いやなに、少し考え事をしていたんだ」
「考え事?今夜の吸血鬼に関すること?」
「ああ、果たして半分化け物の私が勝てるのだろうかってな。負けるつもりは毛頭無いが、万が一と言う時もある。その時に備えて今の内に存分と太陽の光を浴びて、雲の動きを見ていたんだ」
「その吸血鬼は貴女より強いの?」
「恐らくな、相手は純粋な吸血鬼。半端者の私と勝負しても相手の方が有利だろう。だが、私は負けない。皆の事もある、村の事もある。私は必ず勝ってみせよう」
「……意外ね」
「何がだ?」
「いや、昨日はあんなに騒いでいたのに、今日は大人しいって思って……」
「騒げる時は騒ぐ。それが私の生き方だ。人間らしい生き方だ。それを私は真似しただけ。気にすることはない」
「そう……じゃあ、ここで飽きるまで空を見てるの?」
「ああ、そうさ」
「じゃあ、私も付き合う」
「なんでだ?」
「貴女の事を……少しだけ信じられるようになった……からかな?自分でもよくわからない」
「なんだ、それは」
カーミラはポカンとした顔をしている。私にはそれが面白かった。こんな楽しい時間いつまでも続けばいいのに。あ、そうだ。あの城の人達をこの村に来させて一緒に暮らせばいいんだ。そうすれば一緒に居られるし……
「それだと、私一人残されてしまうじゃないか」
カーミラは私が思っていたことに返事を返した。私の考えが顔に出ていたのか……?
「確かにその考えは素晴らしい。でも、私は吸血鬼だ。寿命も人間達とは違う。そんなことをしたらいつかバレてしまう。私はあの日の日の二の舞にしたくないんだ」
「あの日って何?」
カーミラはしまったと言う顔をした。本人も顔によく出るタイプのようだ。人のことを言えないんじゃないか。
「……気にするな。忘れろ」
気にするなと言われれば余計に気になる。私はカーミラの言葉を無視して聞き続けた。
「お前は本当に正直だな!わかったそこまで言うのなら話してやろう!ただし、今回の件が終わってからだ!」
私はわかったと言うと、カーミラと一緒に空を見上げた。しばらく見ているとカーミラからこんな言葉が出てきた。
「空は良いな、何も変わらなくて」
何が良いのだろうか?私にはわからない。
「そう?何も変わらないからつまらないんじゃないの?」
「流れて変わる雲と何も変わらない空、まるで私のようだ」
「貴女は……変わらないの?」
「変わりたくても……変われないんだ……皆私を置いて変わってしまう」
「変われるわよ、貴女はならきっと……」
「そうか……そう言ってくれるとありがたい……」
私はそう聞くと瞼を閉じた。カーミラといるこの時間を大切にしないと。
「カーミラ、お酒強いの?」
「ああ、強いよ。並の人間よりはるかにな。こんなに騒いで酒を飲むなんて何百年ぶりだろうか。楽しかったよ、本当に」
「大袈裟だと思うけど……楽しかったらいいじゃない」
「ああ、私も大袈裟だと思う。でも、それがいい」
「ふうん。まあでも、今夜の吸血鬼退治に支障がないようにね」
「ああ、わかっている……」
カーミラは私と逆方向の方を見た。何かを考えているのだろうか。私はカーミラの顔を横目で見ようと思い、カーミラの横に移動した。横顔を見てみると、悲しそうな顔をしていた。
「カーミラ、悲しいの?」
「いや、なんでだ?」
「なんだか……悲しそうな顔をしていたから……」
「お前が気にすることじゃない。これは私一人の問題だ。お前の方こそ、今夜の支度しないで大丈夫なのか?」
「これからやろうと思っていたところなのよ」
「サッサと行け、しばらくしたら私も戻る」
「そう……わかったわ」
私は自分の家に戻り、支度をしていた。カーミラが負けるとは思えないが、相手は純粋な吸血鬼。勝てるのかわからない。私は何が起きても対処出来るように荷物をまとめた。
家の中で李狼は座ったまま寝ていた。東の方ではこのまま座った状態で寝る人がいるらしいと聞いたことがあるが、李狼は東の国の出身なのだろうか。今度時間があるときに聞いてみよう。
支度を終えた私は村の皆に挨拶して回った。今夜は決戦だから応援しててね、と。皆やる気全開だった。二日酔いしている人達を除けば。
カーミラは先に家に帰ったのだろうか、周りを見てもいない。肝心な主役がどこに行ったのか。
家の中を見ても、李狼しかいない。じゃあどこへ行ったのだろう?
私は辺りを探した。そして見つけた。大きい石の上に座って空を見ている。何を考えているのだろうか?
「カーミラ、ここで何をしているの?」
「ん?ああ、お前か。いやなに、少し考え事をしていたんだ」
「考え事?今夜の吸血鬼に関すること?」
「ああ、果たして半分化け物の私が勝てるのだろうかってな。負けるつもりは毛頭無いが、万が一と言う時もある。その時に備えて今の内に存分と太陽の光を浴びて、雲の動きを見ていたんだ」
「その吸血鬼は貴女より強いの?」
「恐らくな、相手は純粋な吸血鬼。半端者の私と勝負しても相手の方が有利だろう。だが、私は負けない。皆の事もある、村の事もある。私は必ず勝ってみせよう」
「……意外ね」
「何がだ?」
「いや、昨日はあんなに騒いでいたのに、今日は大人しいって思って……」
「騒げる時は騒ぐ。それが私の生き方だ。人間らしい生き方だ。それを私は真似しただけ。気にすることはない」
「そう……じゃあ、ここで飽きるまで空を見てるの?」
「ああ、そうさ」
「じゃあ、私も付き合う」
「なんでだ?」
「貴女の事を……少しだけ信じられるようになった……からかな?自分でもよくわからない」
「なんだ、それは」
カーミラはポカンとした顔をしている。私にはそれが面白かった。こんな楽しい時間いつまでも続けばいいのに。あ、そうだ。あの城の人達をこの村に来させて一緒に暮らせばいいんだ。そうすれば一緒に居られるし……
「それだと、私一人残されてしまうじゃないか」
カーミラは私が思っていたことに返事を返した。私の考えが顔に出ていたのか……?
「確かにその考えは素晴らしい。でも、私は吸血鬼だ。寿命も人間達とは違う。そんなことをしたらいつかバレてしまう。私はあの日の日の二の舞にしたくないんだ」
「あの日って何?」
カーミラはしまったと言う顔をした。本人も顔によく出るタイプのようだ。人のことを言えないんじゃないか。
「……気にするな。忘れろ」
気にするなと言われれば余計に気になる。私はカーミラの言葉を無視して聞き続けた。
「お前は本当に正直だな!わかったそこまで言うのなら話してやろう!ただし、今回の件が終わってからだ!」
私はわかったと言うと、カーミラと一緒に空を見上げた。しばらく見ているとカーミラからこんな言葉が出てきた。
「空は良いな、何も変わらなくて」
何が良いのだろうか?私にはわからない。
「そう?何も変わらないからつまらないんじゃないの?」
「流れて変わる雲と何も変わらない空、まるで私のようだ」
「貴女は……変わらないの?」
「変わりたくても……変われないんだ……皆私を置いて変わってしまう」
「変われるわよ、貴女はならきっと……」
「そうか……そう言ってくれるとありがたい……」
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