『ミナ』 ~吸血鬼に愛された人間~
20節
「カーミラ!気が付いた!?もう大丈夫だから!」
「嘘だろ……!?あの傷でもう意識が回復したのか!?」
医者がそう言うと医者の家を囲っていた村人たちは慌てだした。
「人間にも吸血鬼にもなれない私は……どこへ行っても邪魔者だな……」
「……」
村人たちは何も言わない。言葉が見つからないのだ。
「いい……そんな扱いは慣れている……さあ、城に……帰ろう……」
「うん……」
私は再びカーミラを抱いた。そして村の皆に、
「皆……さようなら……」
別れを言った。村人達はその場から動かず、何も言わなかった。
城へ戻る道で何度か魔物に襲われたが、李狼が全て追い払ってくれたお蔭で、無事に城に戻れた。
城に戻ったらメイドと執事が血相を変えて駆け寄って来た。
「お嬢様は……!?」
「大丈夫、意識を失っているだけ。それよりどこに運んだらいいの?」
「それなら玉座の間の奥……お嬢様の寝室に」
「そう、わかった」
私は必要最低限の言葉を交わして、カーミラを寝室に運んだ。
カーミラをベッドの上に寝かせ、私は目覚めるまで傍にいた。李狼は皆に事情を説明してくると言って部屋を出ていった。
時間がどれぐらい経っただろうか。カーミラが目覚めた。
「!カーミラ!」
「今は『お嬢様』だろう、ミナ?」
「もう……心配させないでよ!」
私は起き上がったカーミラに抱き着いた。
「ハハ……まるで子供みたいだな」
「まだ結婚出来る歳じゃないから子供みたいなものだけどね」
私たちは冗談を交わした。私はカーミラが無事に治ったかどうか気になった。
「大丈夫だ、もう治った」
「本当に?」
「ああ、本当だ。お前の村の医者はすごいな。あんな傷を縫合出来るなんて、その辺の医者でも出来ないぞ。それと敬語が抜けているぞ。今は主と召使いだろ」
「わかりました、お嬢様」
「嫌味たらしく言うなお前は」
笑いあった。良かった、本当に無事なんだね。
「さて、私が起きた事を皆に知らせよう」
「いや、お嬢様は寝ててください。私が呼んできます」
「そうか、助かる。久しぶりに死にそうになった。でもこれでお前は正式に我がしもべになったわけだ」
「大丈夫です。お嬢様があの吸血鬼を倒してくれた時に私はもうお嬢様の召使いです」
「で、あいつはどうした?」
「どうしたって……お嬢様が手首を切断した後動かなかったからそのまま触れずに置いてきましたけど……」
「お前!ああ……!もう手遅れだ……!」
カーミラは頭を抱えてベッドに倒れた。
「どういうことです?」
「吸血鬼がそんな簡単に死ぬと思うか?私みたいに」
「でも、お嬢様は不死殺しの剣を持ってあいつを斬ったじゃないですか」
「たとえ不死殺しの剣で斬られても脳か、心臓を破壊しない限り奴らは死なない。私の詰めが甘かったか……あいつは傷を治す為にあの村を再び襲うぞ」
「そん……な……」
私は固まった。いくらあんな扱いを受けたとしてもあの村は私の故郷だ。また壊滅に陥るとなると、また助けに行かないと……!でも、カーミラはもう一緒に来てくれないだろう。
「……お前は……あの村を助けたいと……そう思っているな?」
「……はい」
「そうか……なら、次もあの村を守ろうじゃないか」
「え……?」
「お前の故郷を壊されたら、お前はショックで仕事もまともに出来んだろう?それでは目使いとして役に立たん。それにあの村の医者は凄腕だ。見逃すのは惜しい」
「じゃあ……!」
「ああ、あと何回、何十回あの村が襲われようとも、私はあの村を助けよう。それがお前との約束だったからな。それに……」
「それに……?」
「私は人間が大好きだからな。あんな扱いされても私は凹まんぞ。慣れているからな」
「お嬢様……!」
私は再びカーミラに抱き着いた。今度の抱擁は似たようなものだがさっきとは違う。嬉しさと暖かさが混じった抱擁だ。
私はカーミラに抱き着いた後、皆にカーミラが起きたことを知らせた。カーミラが目覚めたと知ると、皆カーミラの元に駆け寄って来た。私をどかして。
「お嬢様、ご無事ですか!?」
「ああ、心配かけたな。だが、もう大丈夫だ」
「よかった……お嬢様が無事で……」
フウさんは泣き出してしまった。それにつられてミイさんもヨウさんも泣き出した。執事たちは泣くことを我慢している。
「これ、お前達。泣くのを我慢するな。人間泣きたい時は泣いていいんだ。前にも言っただろう?」
そう言うと執事達も泣き出してしまった。カーミラの寝室の床は皆の涙でびしょびしょだ。
「まったく……これでは私が落ち着かんではないか。しかし、腹が減ったな。おいミナ。何か作ってきてくれないか?」
「え、あ、はい。わかりました」
私は食堂に行った。食堂の近くにキッチンがあるので、そこで村の皆に教わった料理を作った。昔から失敗していたのでうまく出来たかどうかわからないが、多分大丈夫だろう。出来た料理を持ってカーミラの寝室に行った。
「はい、お嬢様」
「おお、助かる」
そう言ってカーミラは料理を口に運んだ。
「……何とも形容しがたい味だな……」
不味かったようだ。私は自分の料理の腕にショックを受けた。
「だが……何だか暖かいな」
カーミラはそう言って料理を次々と口に運ぶ。私が無理をしないでと言ってもカーミラは聞かない。そしてあっという間に完食した。
「たまにはこういうのもいいな。よし、ミナお前は一週間に一度、料理当番をやれ」
「え?いや、無理ですよ!私なんかが……!」
「大丈夫だ。フウ、ミイ、ミナに料理を教えてやれ。これから一週間に一度、ミナに料理を作らせろ」
「かしこまりましたお嬢様」
フウさんとミイさんはカーミラの話を聞いて、やる気満々のようだ。
「お前に新しい仕事が出来たぞ。良かったな」
カーミラは笑いながらそう言うが、私は得意ではない料理をさせられると言うことで慌てていた。フウさんから大丈夫と言われても安心できなかった。もし、さっきみたいに料理が失敗したら、皆に迷惑がかかっちゃう!
「嘘だろ……!?あの傷でもう意識が回復したのか!?」
医者がそう言うと医者の家を囲っていた村人たちは慌てだした。
「人間にも吸血鬼にもなれない私は……どこへ行っても邪魔者だな……」
「……」
村人たちは何も言わない。言葉が見つからないのだ。
「いい……そんな扱いは慣れている……さあ、城に……帰ろう……」
「うん……」
私は再びカーミラを抱いた。そして村の皆に、
「皆……さようなら……」
別れを言った。村人達はその場から動かず、何も言わなかった。
城へ戻る道で何度か魔物に襲われたが、李狼が全て追い払ってくれたお蔭で、無事に城に戻れた。
城に戻ったらメイドと執事が血相を変えて駆け寄って来た。
「お嬢様は……!?」
「大丈夫、意識を失っているだけ。それよりどこに運んだらいいの?」
「それなら玉座の間の奥……お嬢様の寝室に」
「そう、わかった」
私は必要最低限の言葉を交わして、カーミラを寝室に運んだ。
カーミラをベッドの上に寝かせ、私は目覚めるまで傍にいた。李狼は皆に事情を説明してくると言って部屋を出ていった。
時間がどれぐらい経っただろうか。カーミラが目覚めた。
「!カーミラ!」
「今は『お嬢様』だろう、ミナ?」
「もう……心配させないでよ!」
私は起き上がったカーミラに抱き着いた。
「ハハ……まるで子供みたいだな」
「まだ結婚出来る歳じゃないから子供みたいなものだけどね」
私たちは冗談を交わした。私はカーミラが無事に治ったかどうか気になった。
「大丈夫だ、もう治った」
「本当に?」
「ああ、本当だ。お前の村の医者はすごいな。あんな傷を縫合出来るなんて、その辺の医者でも出来ないぞ。それと敬語が抜けているぞ。今は主と召使いだろ」
「わかりました、お嬢様」
「嫌味たらしく言うなお前は」
笑いあった。良かった、本当に無事なんだね。
「さて、私が起きた事を皆に知らせよう」
「いや、お嬢様は寝ててください。私が呼んできます」
「そうか、助かる。久しぶりに死にそうになった。でもこれでお前は正式に我がしもべになったわけだ」
「大丈夫です。お嬢様があの吸血鬼を倒してくれた時に私はもうお嬢様の召使いです」
「で、あいつはどうした?」
「どうしたって……お嬢様が手首を切断した後動かなかったからそのまま触れずに置いてきましたけど……」
「お前!ああ……!もう手遅れだ……!」
カーミラは頭を抱えてベッドに倒れた。
「どういうことです?」
「吸血鬼がそんな簡単に死ぬと思うか?私みたいに」
「でも、お嬢様は不死殺しの剣を持ってあいつを斬ったじゃないですか」
「たとえ不死殺しの剣で斬られても脳か、心臓を破壊しない限り奴らは死なない。私の詰めが甘かったか……あいつは傷を治す為にあの村を再び襲うぞ」
「そん……な……」
私は固まった。いくらあんな扱いを受けたとしてもあの村は私の故郷だ。また壊滅に陥るとなると、また助けに行かないと……!でも、カーミラはもう一緒に来てくれないだろう。
「……お前は……あの村を助けたいと……そう思っているな?」
「……はい」
「そうか……なら、次もあの村を守ろうじゃないか」
「え……?」
「お前の故郷を壊されたら、お前はショックで仕事もまともに出来んだろう?それでは目使いとして役に立たん。それにあの村の医者は凄腕だ。見逃すのは惜しい」
「じゃあ……!」
「ああ、あと何回、何十回あの村が襲われようとも、私はあの村を助けよう。それがお前との約束だったからな。それに……」
「それに……?」
「私は人間が大好きだからな。あんな扱いされても私は凹まんぞ。慣れているからな」
「お嬢様……!」
私は再びカーミラに抱き着いた。今度の抱擁は似たようなものだがさっきとは違う。嬉しさと暖かさが混じった抱擁だ。
私はカーミラに抱き着いた後、皆にカーミラが起きたことを知らせた。カーミラが目覚めたと知ると、皆カーミラの元に駆け寄って来た。私をどかして。
「お嬢様、ご無事ですか!?」
「ああ、心配かけたな。だが、もう大丈夫だ」
「よかった……お嬢様が無事で……」
フウさんは泣き出してしまった。それにつられてミイさんもヨウさんも泣き出した。執事たちは泣くことを我慢している。
「これ、お前達。泣くのを我慢するな。人間泣きたい時は泣いていいんだ。前にも言っただろう?」
そう言うと執事達も泣き出してしまった。カーミラの寝室の床は皆の涙でびしょびしょだ。
「まったく……これでは私が落ち着かんではないか。しかし、腹が減ったな。おいミナ。何か作ってきてくれないか?」
「え、あ、はい。わかりました」
私は食堂に行った。食堂の近くにキッチンがあるので、そこで村の皆に教わった料理を作った。昔から失敗していたのでうまく出来たかどうかわからないが、多分大丈夫だろう。出来た料理を持ってカーミラの寝室に行った。
「はい、お嬢様」
「おお、助かる」
そう言ってカーミラは料理を口に運んだ。
「……何とも形容しがたい味だな……」
不味かったようだ。私は自分の料理の腕にショックを受けた。
「だが……何だか暖かいな」
カーミラはそう言って料理を次々と口に運ぶ。私が無理をしないでと言ってもカーミラは聞かない。そしてあっという間に完食した。
「たまにはこういうのもいいな。よし、ミナお前は一週間に一度、料理当番をやれ」
「え?いや、無理ですよ!私なんかが……!」
「大丈夫だ。フウ、ミイ、ミナに料理を教えてやれ。これから一週間に一度、ミナに料理を作らせろ」
「かしこまりましたお嬢様」
フウさんとミイさんはカーミラの話を聞いて、やる気満々のようだ。
「お前に新しい仕事が出来たぞ。良かったな」
カーミラは笑いながらそう言うが、私は得意ではない料理をさせられると言うことで慌てていた。フウさんから大丈夫と言われても安心できなかった。もし、さっきみたいに料理が失敗したら、皆に迷惑がかかっちゃう!
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