イケメン被りの青春オタク野郎と絶対利益主義お嬢様

片山樹

22

 俺達は先生の話を聞いた後、失礼しましたという謎の呪文を唱えて廊下へとでる。

「はぁーどうしましょうか。困ったなぁー……チラリ」
 秋里実里が俺の方を横目で見てきた。
それも変な擬音を入れている。

「それでどうしろと? 秋里さん?」

「秋月君の力でどうにかならない?」
 俺をこいつは何だと思ってるんだ。
俺はただの生徒だぞ。一般生徒だぞ。

「無理だよ」

「や、やっぱり……そうですか……」
 肩をがっくりと秋里実里は下ろした。
その姿は負のオーラを醸し出している。

「そんなに落ち込まなくてもいいんじゃないか?」

「いや、私の学園生活を楽しくする為に必要なんです!?」
 彼女の迫力に少したじろぐ。

「楽しくするねぇ〜。あのね、秋里さん。私はあまりこんな事を言いたくは無いのだけれど、部活動を作って利益メリットはあるのかしら?」
 流石だ。
もう、本当に流石としかいいようがない。
絶対利益主義夏影さん。

「利益……それはあるよ!? 友達ができるし! 友達ができるし……友達ができる……ともだちが……」
 彼女の声が少しずつ少しずつ小さくなっていく。なんとなくだけど察しがついた。
要するに部活動を作る目的は友達が欲しいから。それだけの理由らしい。まぁ、俺も友達がいないけど……ユカがいるけど、あれはノーカンだからな。

「でもそんなことは部活動を作ってまでしなければいけないのかしら?」

 ごもっともだ。ってか、俺と同じ事を考えているようだな、夏影。

「うぅ……それは……」

 涙目で俺に助けを求める秋里実里。
しかし、助けることはできない。
だって秋里実里の意見を賛成することはできないから。それに夏影の意見が正しいと思うから。
友達を作る為だけに部活を作るというのはあまりにも本気で部活動をしている人達に失礼だと思ってしまうのだ。確かに友達を作る部活動がラノベの中にはあるけどもアレはフィクションだ。だから許されるだけだ。
現実的に考えて、そんなモノを許されるはずがない。

「そこで良い話があるの」
 そう、夏影が切り出した。
興味をそそられるものだ。
この利益メリット馬鹿が思う良い話、かなり気になる。

「な、何?」
 赤くなっている目を隠しながら、秋里実里は言った。

「貴方が友達を作りたいと思うだけなら……いいえ、貴方は生徒会に入るべきだわ」

 はぁ?
生徒会?

「えぇー私なんて無理だよ!? できないよ!
勉強全然できないし、生徒会なんて入れないよ!」

「いや、それができるわ」

「ど、どういうこと……?」

「だって私達の学校の生徒会は新生徒会長が選んで良いんだから』

「で、でも……まだ……新生徒会長が……あ!?」

 秋里実里は全てを理解したようだった。

「そ、そう思えば……秋月君って学年トップだったよね?」

「あぁー勿論さ」
 どうやら部活動を作らずに済みそうだ。
でも生徒会に1人……役立たずができた。

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