イケメン被りの青春オタク野郎と絶対利益主義お嬢様
19
「ねぇー、秋月君。私とキスして」
それは突然だった。唐突だった。昼休みに職員室と生徒会室から戻ってきた教室で焼きそばパンの袋を開けた瞬間の出来事だった。
普段は一人で食べる派の俺だったが今日は特別だったのだ。特別というか俺の前の席に夏影が座ってきたのだ。
そして言ってきたのがその言葉だった。
残念な事に焼きそばパンを口に含んでいなかったので吐き出す事は無かったけど、俺の心をドキドキさせるのには容易い言葉だった。
「あら? キスじゃ分かりにくかったかしら? じゃあ、接吻してください」
夏影は俺に頭を下げる。
「……………………」
夏影は勉強はできる。
だけど頭のネジが少しばかり多いのか少ないのかどちらかの人間ってことが判明した。
「あれ? おかしいわね。ネットではすぐに男の心を掴めると書かれていたんだけど……あ、もしかして貴方って童貞じゃないとか?」
「おい! ちょっと待ってくれ。教室の中でそんな言葉を使うのはやめてくれ。お前のキャラがぶっ壊れるぞ」
「あら、優しいのね。それは嬉しいわ。で、どうなの?」
「まだだよ」
「あらそう?」
「分かっていた癖に言うな!」
「それでは話を本筋に戻しましょう。それで私と」
夏影の言葉を遮って言った。
「まだ……早いよ。俺等、昨日からなんだぜ」
「まぁ、そうね。そうだったわ。なら金輪際しないわ」
それは酷い鬼畜プレイだぜ。縛り過ぎだろ。
「顔が真っ青よ、変態さん。面白かったから許してあげる。それに私もやってみたいし」
どうやら夏影でもそんな気持ちはあるらしい。
「それはありがたいな。ところで、夏影さん。俺は君に言わなきゃならないことがある」
「言わなきゃならないこと? それってメリットある?」
「寧ろ、デメリットだな」
「なら止めとくわ」
「言うと思った。だけど良い話もあるんだぜ?」
「良い話ね。まぁ、いいわ。冥土の土産というやつでしょ? 二つとも話を聞かせなさい」
なぜ、命令口調に?
まぁそんなことはさておき……
「一つ目は俺が次期生徒会長になるそうだ。つまり、俺の彼女である夏影の株も上昇することになる。ステータスが跳ね上がることだろう」
「なるほど。それは良かったわ。寧ろ、貴方と付き合う理由はそれしか無いから」
真顔だった。
「あ、そうかよ。それは良かったな」
「先に言っておくけど私は嘘つきよ。それもかなりの」
「はいはい、分かったよ」
「それで? 次は悪い話ね」
「そうだな。二つ目は夏影、とりあえず俺のラノベを返せ」
「ラノベを返せ? どういうことかしら?」
「しらばっくれるのもいい加減にしろ! 俺は聞いたんだぜ、秋里実里にな」
「秋里実里……? それは誰のことかしら?」
とぼけているのか本当に分からないのか夏影は首を傾げる。その姿がまた一々可愛いから腹が立つ。俺のペースを乱されるってか、そんな感じで。
「俺のラノベを盗んだ奴……つまり、俺に果たし状を送ってきた奴だよ」
「あら……そう? あの子の名前って秋里って言うのね。それで貴方は私に何をして欲しいの?」
どうやら理解してくれたようだ。
「とりあえず、俺のラノベを返せよ」
「返せ? それは無理よ。だって」
そう言いながら、夏影はラノベを服の中から取り出した。出来れば胸から出してほしかったけど、流石にそんな事は二次元でしかありえないことだ。
「これはもう私の物じゃない。お金も払ったし」
「はぁ〜?」
「多分知っていると思うけれど、第三者は無罪なのよ。それはご存知?」
「確かに罪には問われないはずだった気がする……」
「そうでしょ? だから無理よ」
「でも、それは第三者が知らない時の話だろ。お前は知っていた。だから今回は無理だ」
「あら、そうかしら……? 私が嘘をついているとでも?」
「勿論。っていうか、嘘しかつかないと思うんだが」
「それは失礼ね。貴方、一回死んで方がいいわ。そして生まれ変わってまた、死ねば」
一段と今日も口数が酷いものだ。
「要するに二度死ねと?」
「まぁーそうかしらね。でも、死んだら困るのよね。色々と」
「い、色々って、なんだ?」
「それは内緒よ」
彼女は嬉しそうに笑っていた。
「それで質問よ。秋月君。いや、貴方。違うわね。彼氏さん、これも納得できないわ。うーんやっぱり、ダーリン? これも違うわね。空……これがしっくりじっくりくっきりするわ」
どうやら俺の呼び方が空に決まったらしい。
それもしっくりじっくりくっきりしたらしい。
でもさ、昨日既に呼び方は決まってたよな。
「昨日、呼び方決めてたよな?」
「…………………」
夏影の顔が赤くなっていた。
これはどういう事を示しているのだろう。
10文字未満で答えよ。
照れている?
「突然、空と言い始めたら照れるじゃない? だからよ。前ぶりよ。前ぶり。これだから童貞は困るわ。年齢=彼氏いない歴は困るわ」
要するに照れ隠しと言うことか。
めつちゃ可愛いじゃんかよ。
最高じゃんかよ。
でもそれを悟られないようにしないと夏影に主導権が渡ったら大変だからな。
「あら、どうしたのかしら? ガッツポーズなんかしちゃって」
俺はどうやらいつの間にかにガッツポーズしてたらしい。心は誤魔化せても身体は誤魔化せなかったみたいだ。
「別に……なんでもねぇーよ」
「えっ? もしかして、超絶美少女のあの夏影様から名前を呼ばれて嬉しいなぁ〜とか呑気な事を思ってるんじゃないでしょうね?」
思ってます。めっちゃ思ってます。
「へぇ〜そんなわけないだろぉぉ〜」
「そ、そう。ふふっ、それならいいのよ。あ、そうだわ。ずっと気になってたんだけど……」
その時だった。
俺と夏影の前に秋里実里が現れた。
そして言葉を放つ。
それも爆弾的な発言を。
「あの、私と一緒にアニ研を作りませんか?」
その言葉と共に静まる教室。
そして教室から言葉が漏れる。
「アニ研? ナニソレ?」
「アニ研だって。ぷぷぷ、まじ笑っちゃうよね」
「もしかして秋月君ってアニオタ? まじあのルックスでオタクは無いっしょ」
あの時と一緒だ。あの時と一緒だ。
あの時もオタクはキモい。ラノベはゴミ。
そんなことを言われた。
やっぱり何も変わっていない。
今も。過去も。オタクは悪なのだ。
理不尽だ。ただ好きなだけなのに。
それだけでキモいと言われ、蔑まれるのはオカシイ。だけどそんなことを言いながらも俺だってオタクを隠して生きてきた。
やっぱり俺もただの弱虫じゃないか。
他人の目を気にして趣味を選ぶ程の人間だったということだ。でも弱虫だからこそ、俺がアニメなどを見ているとバレると学園生活に支障が出る。それだけを避けては生きてきたのに。
それなのに……こんなところで全てが終わってしまうのかよ。
それは突然だった。唐突だった。昼休みに職員室と生徒会室から戻ってきた教室で焼きそばパンの袋を開けた瞬間の出来事だった。
普段は一人で食べる派の俺だったが今日は特別だったのだ。特別というか俺の前の席に夏影が座ってきたのだ。
そして言ってきたのがその言葉だった。
残念な事に焼きそばパンを口に含んでいなかったので吐き出す事は無かったけど、俺の心をドキドキさせるのには容易い言葉だった。
「あら? キスじゃ分かりにくかったかしら? じゃあ、接吻してください」
夏影は俺に頭を下げる。
「……………………」
夏影は勉強はできる。
だけど頭のネジが少しばかり多いのか少ないのかどちらかの人間ってことが判明した。
「あれ? おかしいわね。ネットではすぐに男の心を掴めると書かれていたんだけど……あ、もしかして貴方って童貞じゃないとか?」
「おい! ちょっと待ってくれ。教室の中でそんな言葉を使うのはやめてくれ。お前のキャラがぶっ壊れるぞ」
「あら、優しいのね。それは嬉しいわ。で、どうなの?」
「まだだよ」
「あらそう?」
「分かっていた癖に言うな!」
「それでは話を本筋に戻しましょう。それで私と」
夏影の言葉を遮って言った。
「まだ……早いよ。俺等、昨日からなんだぜ」
「まぁ、そうね。そうだったわ。なら金輪際しないわ」
それは酷い鬼畜プレイだぜ。縛り過ぎだろ。
「顔が真っ青よ、変態さん。面白かったから許してあげる。それに私もやってみたいし」
どうやら夏影でもそんな気持ちはあるらしい。
「それはありがたいな。ところで、夏影さん。俺は君に言わなきゃならないことがある」
「言わなきゃならないこと? それってメリットある?」
「寧ろ、デメリットだな」
「なら止めとくわ」
「言うと思った。だけど良い話もあるんだぜ?」
「良い話ね。まぁ、いいわ。冥土の土産というやつでしょ? 二つとも話を聞かせなさい」
なぜ、命令口調に?
まぁそんなことはさておき……
「一つ目は俺が次期生徒会長になるそうだ。つまり、俺の彼女である夏影の株も上昇することになる。ステータスが跳ね上がることだろう」
「なるほど。それは良かったわ。寧ろ、貴方と付き合う理由はそれしか無いから」
真顔だった。
「あ、そうかよ。それは良かったな」
「先に言っておくけど私は嘘つきよ。それもかなりの」
「はいはい、分かったよ」
「それで? 次は悪い話ね」
「そうだな。二つ目は夏影、とりあえず俺のラノベを返せ」
「ラノベを返せ? どういうことかしら?」
「しらばっくれるのもいい加減にしろ! 俺は聞いたんだぜ、秋里実里にな」
「秋里実里……? それは誰のことかしら?」
とぼけているのか本当に分からないのか夏影は首を傾げる。その姿がまた一々可愛いから腹が立つ。俺のペースを乱されるってか、そんな感じで。
「俺のラノベを盗んだ奴……つまり、俺に果たし状を送ってきた奴だよ」
「あら……そう? あの子の名前って秋里って言うのね。それで貴方は私に何をして欲しいの?」
どうやら理解してくれたようだ。
「とりあえず、俺のラノベを返せよ」
「返せ? それは無理よ。だって」
そう言いながら、夏影はラノベを服の中から取り出した。出来れば胸から出してほしかったけど、流石にそんな事は二次元でしかありえないことだ。
「これはもう私の物じゃない。お金も払ったし」
「はぁ〜?」
「多分知っていると思うけれど、第三者は無罪なのよ。それはご存知?」
「確かに罪には問われないはずだった気がする……」
「そうでしょ? だから無理よ」
「でも、それは第三者が知らない時の話だろ。お前は知っていた。だから今回は無理だ」
「あら、そうかしら……? 私が嘘をついているとでも?」
「勿論。っていうか、嘘しかつかないと思うんだが」
「それは失礼ね。貴方、一回死んで方がいいわ。そして生まれ変わってまた、死ねば」
一段と今日も口数が酷いものだ。
「要するに二度死ねと?」
「まぁーそうかしらね。でも、死んだら困るのよね。色々と」
「い、色々って、なんだ?」
「それは内緒よ」
彼女は嬉しそうに笑っていた。
「それで質問よ。秋月君。いや、貴方。違うわね。彼氏さん、これも納得できないわ。うーんやっぱり、ダーリン? これも違うわね。空……これがしっくりじっくりくっきりするわ」
どうやら俺の呼び方が空に決まったらしい。
それもしっくりじっくりくっきりしたらしい。
でもさ、昨日既に呼び方は決まってたよな。
「昨日、呼び方決めてたよな?」
「…………………」
夏影の顔が赤くなっていた。
これはどういう事を示しているのだろう。
10文字未満で答えよ。
照れている?
「突然、空と言い始めたら照れるじゃない? だからよ。前ぶりよ。前ぶり。これだから童貞は困るわ。年齢=彼氏いない歴は困るわ」
要するに照れ隠しと言うことか。
めつちゃ可愛いじゃんかよ。
最高じゃんかよ。
でもそれを悟られないようにしないと夏影に主導権が渡ったら大変だからな。
「あら、どうしたのかしら? ガッツポーズなんかしちゃって」
俺はどうやらいつの間にかにガッツポーズしてたらしい。心は誤魔化せても身体は誤魔化せなかったみたいだ。
「別に……なんでもねぇーよ」
「えっ? もしかして、超絶美少女のあの夏影様から名前を呼ばれて嬉しいなぁ〜とか呑気な事を思ってるんじゃないでしょうね?」
思ってます。めっちゃ思ってます。
「へぇ〜そんなわけないだろぉぉ〜」
「そ、そう。ふふっ、それならいいのよ。あ、そうだわ。ずっと気になってたんだけど……」
その時だった。
俺と夏影の前に秋里実里が現れた。
そして言葉を放つ。
それも爆弾的な発言を。
「あの、私と一緒にアニ研を作りませんか?」
その言葉と共に静まる教室。
そして教室から言葉が漏れる。
「アニ研? ナニソレ?」
「アニ研だって。ぷぷぷ、まじ笑っちゃうよね」
「もしかして秋月君ってアニオタ? まじあのルックスでオタクは無いっしょ」
あの時と一緒だ。あの時と一緒だ。
あの時もオタクはキモい。ラノベはゴミ。
そんなことを言われた。
やっぱり何も変わっていない。
今も。過去も。オタクは悪なのだ。
理不尽だ。ただ好きなだけなのに。
それだけでキモいと言われ、蔑まれるのはオカシイ。だけどそんなことを言いながらも俺だってオタクを隠して生きてきた。
やっぱり俺もただの弱虫じゃないか。
他人の目を気にして趣味を選ぶ程の人間だったということだ。でも弱虫だからこそ、俺がアニメなどを見ているとバレると学園生活に支障が出る。それだけを避けては生きてきたのに。
それなのに……こんなところで全てが終わってしまうのかよ。
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