イケメン被りの青春オタク野郎と絶対利益主義お嬢様
8
「ただいまぁー」
玄関のドアを開けてみたが、咲の声も風華の声もしない。靴を脱ぎ、リビングに向かうも咲の姿は無かった。自分の部屋にでも戻ったのだろうか?
二階に向かって「アイス買ってきたぞぉー」と声を掛けるとラインの通知音が鳴るだけだった。
『おにぃー、持ってきて』
如何にも分かりやすかった。
『わかったよ』と打ち込み、階段を上る。
左側の部屋をノックもせずに開ける。
すると風華が「ノックぐらいしてよね。私も女の子なんだけど」と毒を吐いた。
「悪い悪い」とだけ反省の気持ちは全く無いが言っておいた。
「はい。じゃあー、アイス!」
手を俺の方へ差し出し、アイスをせがむ風華。
俺は袋からジャイアントコーンを取り出し手渡す。
「ありがとー。おにぃー、ご褒美に私の唇でもいる?」
破廉恥な妹だ。
だからこそ将来が不安になる。
「その唇は本当に好きな人にでもあげてやってくれ」
「むぅ……私、本当におにぃの事好きなのに」
「俺も好きだぜ。だけどそれはダメだろ。だって、俺達は……」
言葉が詰まる。
だって俺達は……義理なのだから。
「おにぃ? そんなに暗い顔をしなくても……」
風華は手慣れた手付きでベリベリとアイスを開けて、かぶりついていた。
「暗い顔はしてねぇーよ。ところで、咲はもう寝たのか?」
「いや、上には来てないよ。あ、そう思えばおにぃが出た後に玄関が開いた音がしたんだよね。もしかしたら咲も家を出たのかも」
「何のために?」
「そんなの私が知ってる訳無いじゃん。双子だからって意識が繋がるとかいうチート双子じゃ無いんだし」
有る意味チートだけどな。
どっちともすげぇー可愛いし。
咲は部活のテニスで全国レベル。
風華はイラストレーターとして認められている。それに比べ、俺は……偏差値が高い早慶高校には入学したものの全てカメラアイというセコ技を使って学年トップを取り続けているだけだ。
「あ、そう思えばおにぃってカメラアイ持ってるんだったよね?」
「まぁ……そうだけど。何だよ?」
「いや、別に。カメラアイの能力も大変だなって思って」
風華は全てお見通しと言わんばかりだった。
俺の苦しみを知っているのだろうか。
天才と呼ばれるが天才では無いという自覚。
もしもカメラアイが無くなってしまった時、自分に残されるのは何も無い。
ただ、生まれ持った才能だけを武器にここまで頼って、努力をしなかった自分への反省。
自分への罪悪感。自分への嫌悪。
「大変なわけないだろ? カメラアイでちょちょいって感じだぜ」
俺は嘘を吐いた。
だって本当の事を言えば、泣きそうだったから。妹にそんな顔を見せたくなかったから。
弱いお兄ちゃんを見せたくない。
いつまでも強くて逞しいお兄ちゃんでいたい。
「そ、そう……?」
風華は不安げな顔をしていたが、もう何も言わなかった。
人の気持ちを分かる妹で良かった。
俺はそう思いながら、部屋を出る。
だがしかし、その前に言っておこう。
「風華……辛くなったら、助けてもらっていいか? どうしようも無くなった時だけでいいから」
「何言ってるの? おにぃー」
やはりそうだよな。人の気持ちを分かると言っても風華の友達はパソコンだけなんだ。
「私達、家族じゃん? 助け合うのが普通だよ。困ったら助けさせて。だから私が困った時も助けてね。絶対。勿論、咲が困っている時も助けてあげて。咲は能天気みたいに見えるけど実は結構考えてるから」
泣きそうだった。
いや、泣いていたかもしれない。
目が熱くなり、風華の声に返事を出せない。
だから代わりに親指を立てておいた。
すると、風華は「何それ?」と言って笑っていた。俺はそのまま部屋を出た。
玄関のドアを開けてみたが、咲の声も風華の声もしない。靴を脱ぎ、リビングに向かうも咲の姿は無かった。自分の部屋にでも戻ったのだろうか?
二階に向かって「アイス買ってきたぞぉー」と声を掛けるとラインの通知音が鳴るだけだった。
『おにぃー、持ってきて』
如何にも分かりやすかった。
『わかったよ』と打ち込み、階段を上る。
左側の部屋をノックもせずに開ける。
すると風華が「ノックぐらいしてよね。私も女の子なんだけど」と毒を吐いた。
「悪い悪い」とだけ反省の気持ちは全く無いが言っておいた。
「はい。じゃあー、アイス!」
手を俺の方へ差し出し、アイスをせがむ風華。
俺は袋からジャイアントコーンを取り出し手渡す。
「ありがとー。おにぃー、ご褒美に私の唇でもいる?」
破廉恥な妹だ。
だからこそ将来が不安になる。
「その唇は本当に好きな人にでもあげてやってくれ」
「むぅ……私、本当におにぃの事好きなのに」
「俺も好きだぜ。だけどそれはダメだろ。だって、俺達は……」
言葉が詰まる。
だって俺達は……義理なのだから。
「おにぃ? そんなに暗い顔をしなくても……」
風華は手慣れた手付きでベリベリとアイスを開けて、かぶりついていた。
「暗い顔はしてねぇーよ。ところで、咲はもう寝たのか?」
「いや、上には来てないよ。あ、そう思えばおにぃが出た後に玄関が開いた音がしたんだよね。もしかしたら咲も家を出たのかも」
「何のために?」
「そんなの私が知ってる訳無いじゃん。双子だからって意識が繋がるとかいうチート双子じゃ無いんだし」
有る意味チートだけどな。
どっちともすげぇー可愛いし。
咲は部活のテニスで全国レベル。
風華はイラストレーターとして認められている。それに比べ、俺は……偏差値が高い早慶高校には入学したものの全てカメラアイというセコ技を使って学年トップを取り続けているだけだ。
「あ、そう思えばおにぃってカメラアイ持ってるんだったよね?」
「まぁ……そうだけど。何だよ?」
「いや、別に。カメラアイの能力も大変だなって思って」
風華は全てお見通しと言わんばかりだった。
俺の苦しみを知っているのだろうか。
天才と呼ばれるが天才では無いという自覚。
もしもカメラアイが無くなってしまった時、自分に残されるのは何も無い。
ただ、生まれ持った才能だけを武器にここまで頼って、努力をしなかった自分への反省。
自分への罪悪感。自分への嫌悪。
「大変なわけないだろ? カメラアイでちょちょいって感じだぜ」
俺は嘘を吐いた。
だって本当の事を言えば、泣きそうだったから。妹にそんな顔を見せたくなかったから。
弱いお兄ちゃんを見せたくない。
いつまでも強くて逞しいお兄ちゃんでいたい。
「そ、そう……?」
風華は不安げな顔をしていたが、もう何も言わなかった。
人の気持ちを分かる妹で良かった。
俺はそう思いながら、部屋を出る。
だがしかし、その前に言っておこう。
「風華……辛くなったら、助けてもらっていいか? どうしようも無くなった時だけでいいから」
「何言ってるの? おにぃー」
やはりそうだよな。人の気持ちを分かると言っても風華の友達はパソコンだけなんだ。
「私達、家族じゃん? 助け合うのが普通だよ。困ったら助けさせて。だから私が困った時も助けてね。絶対。勿論、咲が困っている時も助けてあげて。咲は能天気みたいに見えるけど実は結構考えてるから」
泣きそうだった。
いや、泣いていたかもしれない。
目が熱くなり、風華の声に返事を出せない。
だから代わりに親指を立てておいた。
すると、風華は「何それ?」と言って笑っていた。俺はそのまま部屋を出た。
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