超越クラスの異世界談義が花を咲かせたようです! 〜愚かな国の異世界召喚術にて〜
天才戦士と天才医師
登校日の三日前。
「なんだコイツッ!!銃弾を避けてやがる!!」
「なんだよアレは!!バケモンかァッ!!」
「アイツ今、空中で二段階ジャンプしなかったか!?」
中東アジアにて、現在世界一のテロリストの元凶を潰している一つの影が残像を作りつつ、次々と敵を薙ぎ倒している。一対一万二千の攻防戦の優劣は、見事にハッキリしている。
優勢なのは
一の方であった!!
次々と迫り来る銃弾を見切り、体をひねったり、それこそ空中を蹴ったりして避けたり、刀でいなしては敵同士の潰し合いを誘発し、銃弾を避けて敵に詰めては神経だけを刈り取るように気絶させていった。そこら中に落ちてる気絶体は数千に上る。
この作戦……っていっても一人で行うものに作戦もクソもないのだが、始まってからまた数十分しか経っていない。
「ホイッ、ホラッ、ヨッと」
一人の影、神凪雅は、身長190をも超える体躯に加え、赤い髪を侍結びのようにした青年で、そんな彼の異名は
『武神』
彼はこの異名を、短くていいや、と思っている。
それでその武神は今、この現状に余裕を持て余して敵の数を減らしていた。
三十分ほど経ったあとの彼の戦果は、一万少しの気絶体作成。総数が一万二千ほどだったのを考えると、二千の相手が少なく見える。
――
その戦いというか一方的な蹂躙劇を遠くの建物の上から双眼鏡で見ている女の影があった。
「あれまー、やっぱ圧倒的だね〜雅君は。でもこっからだよ。はぁ〜なんで数が減り出すと狂戦士になっちゃうのかな〜。おかげで紫蒼君に雅君の付き添いを頼まれるハメになるし。はぁ」
淡い紫色のショートボブの髪型をした身長は時雨と同じ160前半といった、若干胸の慎ましさが目立つ白衣の美人、道術理緒は、盛大な溜息を何遍もついていた。
道術理緒は、バーサーカーとなって傷を負う雅のためだけに、紫蒼に頼まれてこの中東の地まで彼の医者としてついてきた。
彼女は、数多くの患者を救ってきた。成功率一パーセントにも満たないと言われた重体患者をも直して見せ、そこからの彼女の手術は全てにおいて神がかっていた。
ついた異名は
『全治索引書』
とある名医は言う。
「彼女は、身体を改造し、強化をする手術をしても手術後、リハビリのいらない元気な体を構成してみせるだろう」
と。
そんな彼女が双眼鏡を下ろして見つめる先には、予想通りの狂戦士がいた。
雅は、相手の数が千を切った途端、銃弾歓迎の突っ込み戦を始めた。
「ハハハハハ!! そうだもっと寄せてこい!! 俺をもっと楽しませろ!!」
一キロも離れているのに普通に聞こえてくる雅の声に、もはや理緒は呆れていた。
そして、千を切った数分後には、敵は全員、屍直前と化していた。
その一万を超える気絶体の真ん中で、雅は立ったまま空を仰いでいた。
――
五分掛け、一キロ歩いて雅の元に寄った理緒は、さっきと変わらず顔を上げ目を瞑る彼を見て、やれやれと言った感じに首を横に振った。
近づいても変わらぬ雅の格好にしびれを切らした理緒は、顔に小さな青筋を立て思いっきり彼の頭を叩いた。
「ウオッ! なんだッ! まだ敵残ってたのかッ!! って理緒じゃねーか。脅かすなよ全くッ」
「何が理緒じゃねーか、よっ!! あんたがその変な癖を直さないせいで付き添ってる私の身にもなりなさいよ!!」
口を尖らせ文句を言ってきた雅に、まくし立てるように理緒は不満の吐露を紡いでいった。
「わ、悪かったよ。でも感謝してるんだぜ! 理緒がいると、安心して狂戦士になれるからなッ!!」
謝ったと思ったら再び馬鹿を言う雅の頭に、今度は怒りの鉄槌が落とされた。
「何がなれるからなッ、よっ!! はぁもう良いわ……そういえば、あなたに何を言っても通じないってことは小さい頃から知ってたわ。それより、チャチャっと事後処理して日本に戻るわよ!!」
もう怒るのに疲れた理緒は、次の行動に移った。
「そうだな、早く皆に会いてーぜ!! けどその前に理緒、治療してくれッ!! 体が痛くてたまらんッ!!」
理緒は本日何度目か分からない溜息をつくと、雅の耳を引っ張って安息地へと向かう。
「ちょッ、痛い痛い理緒! 耳千切れるから引っ張るな〜!!」
理緒は、そんな喚きを無視することにした。
「あ〜もう面倒くさい! 日本帰ったら紫蒼君に文句言ってやるんだから!!」
そう言って連れ込んだ先の安息地の建物中からは、断末魔の叫びが上がっていた……
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