Creation World Online

かずみ

100話

「よし、それじゃあA班B班は地表部の壁画や建物本体を、C班D班は分かれて地下の調査、最後にE班は私と一緒にそこの石碑の調査及び調査結果の整理を行う。それじゃ、解散!」

 髭面の男の号令で揃いのガスマスクと緑の作業着を着たプレイヤー達がゾロゾロと遺跡の中や周辺での調査を開始する。
 シルキスを討伐した俺達はそのまま情報屋ギルド『信用会』へと行き、遺跡のことや精霊クエストについて話した。
 すると、信用会の調査組織の護衛を頼まれたのだ。報酬の高さに目が眩んだ俺はそれを引き受けることにしたのだ。
 本来はアンリやナクも来る予定だったのだが、アンリは服飾ギルド【ギリック=ギリック】の新作の発表会、ナクは62界層で発生したボス侵略クエストに助っ人として参加することになったため、急遽俺一人で受けることとなったのだ。いざとなれば俺の影の中で眠っているフラジールがいるので問題はないだろう。

「よ、元気だな。ゴイルさん」

 指示を出していた髭面の男─ゴイルに声をかけると、こちらを振り向いてにっと笑う。

「おお、シュウさん。私元気ですよ!中々に面白い遺跡ですからね…おっと、地下で隠し通路が見つかったようです。シュウさんお願いできますかな?」
「そのために来てるからな。任せろ」

 そう、今回のこのクエストは高額報酬だけでなく、遺跡で見つかったものはクエストアイテム出ない限り全ての所有権を俺がもらえることになったのだ。

  ☆

「【エア・バレット】」

 キィキィと喚きながら空を飛び回るコウモリ型のモブ達を、風の弾で撃ち落としていく。
 遺跡の隠し通路は意外と広く、これまでにも武器の強化素材やレアな鉱石、魔剣や魔導具などを見つけることができた。
 通路の曲がり角を右に曲がると、そこには広い空間が広がっており、通路というよりは小部屋といった様子だった。小部屋の中央には人型のゴーレムが立っていた。
 【看破】スキルを使用するとある程度の情報がわかる、どうやらボスクラスのモンスターのようだ。
 部屋に足を踏み入れると、ピクリとそいつが動き出す。

『侵入シャ、ハイ除?排除スる』
「【エクスプロード・ライトニング】」

 俺の頭上に展開された魔法陣から雷が放たれ、人型のゴーレムに迫るが、ぶつかる直前に障壁にぶつかり、消滅してしまう。どうやら【魔法無効化】の特性持ちらしい。

「ならこれはどうよ【錬成:エクスプロード・アロー】【マナオペレート】」

 いくつかの素材を引き換えに【錬金術】スキルで生み出した無数の爆発する矢を【無属性魔法】のスキルである【マナオペレート】で浮かび上がらせると、一斉に射出する。
 ゴーレムや床に矢が突き刺さると爆発を起こす、爆発によって生み出された黒い煙を掻き分けてゴーレムが現れる、その身体は少し欠けた程度で殆どダメージは与えられていないようだった。
 ゴーレムの身体が前傾姿勢を取る、どうやら攻撃前の動作らしい、だが所詮はゴーレム大した速度は出ないだろう。
 そう考えていた俺の予想を裏切るように、ゴーレムが地面を蹴るとまるで弾丸のような速さで突進してくる。
 慌てて【世界介入】で長剣を召喚し、振るわれた腕を受け止める。

「ぐっ…!?重っ…!」

 まるで巨大な棍棒でぶん殴られたような衝撃が腕に伝わる。
 角度を付けて長剣スキル【昇斬】を発動し、ゴーレムの腕を上に弾くと、その無防備な胴体に向かって長剣スキル【斬点穿孔】を発動、腰のひねりを加えながら長剣をゴーレムの胴体に突き刺すと、一瞬の手応えの後その身を貫通し、衝撃波がゴーレムの背中から抜けていく。
 だが、ゴーレムはあまり効いた様子はなく、すぐに俺の頭を叩き割ろうと腕を振り下ろす。
 俺は剣から手を離すと、後ろに跳んだ。
 ゴーレムは追撃を仕掛けずに、自身の腹部に突き刺さった長剣の柄を握ると、無造作に引き抜き剣を両手でへし折る。
 その間にゴーレムの胸に開いた傷がじわじわと塞がっていた。

「『物理攻撃超耐性』だけじゃなく、『自動回復』まで持ってるとなると相当厄介だな」

 このまま物理攻撃でゴリ押せば倒せないことはない、だが一歩間違えればこちらが死んでしまうような消耗戦をする気など毛頭ないのだ。
 俺はアイテムボックスからいくつかの素材を取り出す。
 【純性オリハルコン塊】【暗黒竜の魔玉】【ミスリル糸】【剛鉄線維】【空の魔核】

「さて、始めますか。【創造クリエイト】!」

 【錬金術】スキルの一つである【創造】を発動すると、素材が光を放ち次第にその形を変えていく。
 始めに純性オリハルコン塊が形を変えて、180cmほどの人間の骨格を形作ると、頭蓋の中に【空の魔核】を取り込む。次に、骨格を覆うように剛鉄線維とミスリル糸が複雑に絡み合う。それはまるで、人間の肉体を形作る骨格筋と神経のようだった。暗黒竜の魔玉が右眼窩に嵌め込まれると、残っていたオリハルコン塊が鎧のように剛鉄筋を隠す。
 そうして、俺の真横には一体のオリハルコン製のゴーレムが生み出されたのだ。だが、こいつはまだ動くことはできない、ゴーレムに通常組み込まれている人工知能が搭載されていないからだ。
 通常【創造】で生み出されたゴーレムは突進や盾になるなどの単純な指令をこなせる程度の人工知能を搭載するのだが、俺は今回あえてそれを拒否した。なぜなら─

「おい!起きろフラジール!」
『んん〜?おはよー、ご主人どったの?』

 俺の影から飛び出し、大きな欠伸をしてぷかぷかと浮かぶ少女、フラジールは眠そうにそう言った。
 俺は、ポンポンとオリハルコンゴーレムを叩いてフラジールに言う。

「これを見ればわかるだろ?」
『あ〜、りょーかい!』

 フラジールはヘラっと笑うと、ゴーレムの脊椎部に触れ、スキルを発動する。
 フラジールの姿が搔き消える、すると項垂うなだれる用に立っていたオリハルコンゴーレムがゆらりとゴーレムらしからぬ自然な動きで立ち上がった。
 ゆっくりと自身の動きを確認するように腕を持ち上げ、手の開閉を行う。

『筋肉の動きも良好良好〜。魔力回路も問題な〜し』

 軽い調子でそう言ったオリハルコンゴーレムの身体から黒い煙が巻き起こると、その身体を包み込む。
 全身にまとわりついた煙を払うように腕を垂直に振ると、口元まで隠れる外套のような布が生成される。

『【COGカスタマイズオリハルコンゴーレム:verバージョン.フラジール】始動始動〜。じゃ、始めよっか〜』

 顔を上げたフラジールの眼窩に嵌った魔玉から青白い光が放たれる。

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