Creation World Online
93話
「のあっ!?」
そんな間抜けな声をあげて、アンリは地面に激突する。
即座に周囲とマップを見ようとエアディスプレイを展開するが、そこには『ERROR』の文字が浮かぶ。
「メニュー画面がバグってやがりますね。にしても、ここはどこでしょうか…?見たところ城の中っぽいんですけど…」
「ええ、その通りよ」
背後からそんな声が聞こえ、アンリは即座に杖を構えつつ背後を振り返る。
そこには妙に露出度の高い服を着た、美しい女性プレイヤーが立っていた。
そんな女性を見て、アンリは笑みを浮かべる。
「あなたが…ローゼさんですね。ふふっ、探す手間が省けました」
「あらあら、そんなに熱烈に求められてお姉さん困っちゃうわ〜」
「何言ってるんですか?お姉さんって歳じゃないでしょう?」
嘲るようにアンリがそう言った途端に、ローゼの笑顔が凍りつく。
次の瞬間、ローゼは鬼の如き表情にその顔を歪ませる。
「ああ?若さしか取り柄のねえ小娘が…」
「図星ですか!図星なんですね!」
「あー、もういいわ。隊長には極力傷つけるなって言われてるけど…。抵抗されたって言えばいいわよね」
ローゼはそう言うと、アンリに向かって駆け出す。
対するアンリは、杖を横に薙いで小さな魔法陣を展開する。
「【ライトニング】」
数閃の紫の雷がローゼ目掛けて飛んでいくと、彼女の前で軌道を変えて地面や壁に穴を開ける。
魔法の展開が間に合わないと判断したアンリは、手に持っていた黒竜の杖でローゼに殴りかかる。
杖はノーガードのローゼの脳天をかち割って、その中身を床にぶちまけた_はずだった。
「あらあら、どこを狙ってるのかし、らっ!」
「っ!?何故後ろに!?」
いつの間にか背後に立っていた、ローゼに驚きつつも、付与魔法【武器付与[剣]】を発動。
黒竜の杖に青白い剣の形をしたオーラが出来上がると、アンリはまるで槍のように杖を操り、ローゼに斬りかかる。
ローゼはというと、何も武器を構えずに不敵に笑っているだけだった。
そんな無防備なローゼを、アンリは魔法の剣で斬り裂いた、はずだったのだが、その剣は見当違いな空間を通り過ぎるだけだった。
「なるほど…。なんとなくあなたの能力はわかりました。あなた、さっきから私の感覚をズラしていますね?」
「あら、バレちゃった?バカだって聞いてたんだけど…。戦闘勘がすごいのかしら?」
「バカってどこ情報ですか。その情報提供したやつをここに呼んでください。焼き尽くしてやります」
ムッとした表情でアンリはそう言うと、ローゼはその姿を見てフッと笑う。
「それは出来ないわね。あなたはここで私に捕まるのよ」
「それこそ出来ないことですね」
「面白い事を言うのね。私の固有技能【歪む世界】をどうやって攻略するつもりなのかしら?」
「簡単です。こうすればいい【自爆】」
アンリが魔法を発動すると、大量の魔力が彼女の身体に収束。次の瞬間、溜められた魔力がダムが決壊するかのように放出され、周囲を破壊し尽くしていく。
数秒後、未だに白い粉塵が舞う中で咳き込みながらローゼが空間の割れ目から現れる。
流石のローゼでも全てを歪める事は出来なかったようで、その右半身はズタボロになっていた。
「ケホッ…小娘のクセになかなかやってくれるわね…。アレは死んでも死なないはず。つまり、まだどこかにいる」
「その通り」
粉塵の中から2つの火球がローゼ目掛けて飛んでくると、ローゼは無事な左腕を振るって結界を展開し、ガードする。
「ガードしましたね?」
コツコツと、靴音を鳴らしながらアンリが現れる。
その表情は、勝利を確信したかのように笑っていた。
「それがどうかしたのかしら?」
「ガードをした、つまり私の感覚は正常だった」
感覚が正常だった今と、感覚が狂っていた時との違いは何か。
「あなたは私を見ていなかった。対象を視界に入れる。それが発動条件です」
「…お見事、ね。だけど、それがわかったところでどうしようもないわ。粉塵が起こっても、こうすればいい」
ローゼはそう言うと、風魔法【ウェザー】を発動する。
彼女の掌から緑色の球体が現れると、風を生み出す。
その風によって粉塵が霧散し、2人の姿がはっきりと見えるようになる。
したり顔のローゼを見て、アンリは噴き出す。
「何がおかしいの?」
「いやぁ…その程度で防げたと思うなんて、なんともおめでたい方だなと思いまして」
そう言って、アンリが杖で床を叩くと、そこから黒い煙が溢れ出し、周囲を包み込む。
「何度やっても同じことよ!【ウェザー】!」
溢れ出す風、しかし─
「な、なぜ!?なぜ霧が晴れないの!?」
ローゼの視界は黒く塗りつぶされたままだったのだ。
「ククク…アハハハハハ!」
アンリの笑い声が響き渡る。
「な、なぜ!なんで見えないの!?」
「簡単なことですよ。私の魔法【盲目】を発動させただけですよ」
「バカな…私の状態異常耐性はかなり高いはず!簡単には通らないはずよ!」
「まあ、その通りですね。しかし、あなたが知らない秘密がこれにはあるんですよ」
そう言って、アンリは自身の手にある黒竜の杖を撫でる。
杖の名前は【SSNo.7_増加竜】。
効果は、底に仕込んだ魔法水晶の効力の増加。
シュウが丹精込めて作り上げた魔導具である。
そんな杖に嵌められた魔法水晶の出力は合計で8倍程度まで膨れ上がる。
そんな高出力で放たれた状態異常は、例えフロアボスであろうとも防ぐことは出来ないだろう。ましてや、一介のプレイヤーがそれを防ぐなど、至難を通り越して不可能と言える。
そんな盲目のローゼの目の前にアンリは立つと、杖を振りかぶってその側頭へ叩きつける。
鈍い音とくぐもった声が響くと、ローゼが側頭部から血を流しながら倒れる。
そんな彼女の頭をアンリは踏みつけると、目につく装飾品を全て剥ぎ取る。
「これだけですかね。まあ、例え少量残っていたとしても防げないでしょう」
ジャラジャラと奪い取った装飾品を掌で弄びながらアンリは、そう呟くと杖をローゼの背中に当てる。
「それじゃ、始めましょうか。なに、痛みはありませんから安心してください。それでは、おやすみなさい【睡眠】」
急速に意識を失っていくローゼが最後に見たのは、悪辣に笑うアンリの姿だったという。
そんな間抜けな声をあげて、アンリは地面に激突する。
即座に周囲とマップを見ようとエアディスプレイを展開するが、そこには『ERROR』の文字が浮かぶ。
「メニュー画面がバグってやがりますね。にしても、ここはどこでしょうか…?見たところ城の中っぽいんですけど…」
「ええ、その通りよ」
背後からそんな声が聞こえ、アンリは即座に杖を構えつつ背後を振り返る。
そこには妙に露出度の高い服を着た、美しい女性プレイヤーが立っていた。
そんな女性を見て、アンリは笑みを浮かべる。
「あなたが…ローゼさんですね。ふふっ、探す手間が省けました」
「あらあら、そんなに熱烈に求められてお姉さん困っちゃうわ〜」
「何言ってるんですか?お姉さんって歳じゃないでしょう?」
嘲るようにアンリがそう言った途端に、ローゼの笑顔が凍りつく。
次の瞬間、ローゼは鬼の如き表情にその顔を歪ませる。
「ああ?若さしか取り柄のねえ小娘が…」
「図星ですか!図星なんですね!」
「あー、もういいわ。隊長には極力傷つけるなって言われてるけど…。抵抗されたって言えばいいわよね」
ローゼはそう言うと、アンリに向かって駆け出す。
対するアンリは、杖を横に薙いで小さな魔法陣を展開する。
「【ライトニング】」
数閃の紫の雷がローゼ目掛けて飛んでいくと、彼女の前で軌道を変えて地面や壁に穴を開ける。
魔法の展開が間に合わないと判断したアンリは、手に持っていた黒竜の杖でローゼに殴りかかる。
杖はノーガードのローゼの脳天をかち割って、その中身を床にぶちまけた_はずだった。
「あらあら、どこを狙ってるのかし、らっ!」
「っ!?何故後ろに!?」
いつの間にか背後に立っていた、ローゼに驚きつつも、付与魔法【武器付与[剣]】を発動。
黒竜の杖に青白い剣の形をしたオーラが出来上がると、アンリはまるで槍のように杖を操り、ローゼに斬りかかる。
ローゼはというと、何も武器を構えずに不敵に笑っているだけだった。
そんな無防備なローゼを、アンリは魔法の剣で斬り裂いた、はずだったのだが、その剣は見当違いな空間を通り過ぎるだけだった。
「なるほど…。なんとなくあなたの能力はわかりました。あなた、さっきから私の感覚をズラしていますね?」
「あら、バレちゃった?バカだって聞いてたんだけど…。戦闘勘がすごいのかしら?」
「バカってどこ情報ですか。その情報提供したやつをここに呼んでください。焼き尽くしてやります」
ムッとした表情でアンリはそう言うと、ローゼはその姿を見てフッと笑う。
「それは出来ないわね。あなたはここで私に捕まるのよ」
「それこそ出来ないことですね」
「面白い事を言うのね。私の固有技能【歪む世界】をどうやって攻略するつもりなのかしら?」
「簡単です。こうすればいい【自爆】」
アンリが魔法を発動すると、大量の魔力が彼女の身体に収束。次の瞬間、溜められた魔力がダムが決壊するかのように放出され、周囲を破壊し尽くしていく。
数秒後、未だに白い粉塵が舞う中で咳き込みながらローゼが空間の割れ目から現れる。
流石のローゼでも全てを歪める事は出来なかったようで、その右半身はズタボロになっていた。
「ケホッ…小娘のクセになかなかやってくれるわね…。アレは死んでも死なないはず。つまり、まだどこかにいる」
「その通り」
粉塵の中から2つの火球がローゼ目掛けて飛んでくると、ローゼは無事な左腕を振るって結界を展開し、ガードする。
「ガードしましたね?」
コツコツと、靴音を鳴らしながらアンリが現れる。
その表情は、勝利を確信したかのように笑っていた。
「それがどうかしたのかしら?」
「ガードをした、つまり私の感覚は正常だった」
感覚が正常だった今と、感覚が狂っていた時との違いは何か。
「あなたは私を見ていなかった。対象を視界に入れる。それが発動条件です」
「…お見事、ね。だけど、それがわかったところでどうしようもないわ。粉塵が起こっても、こうすればいい」
ローゼはそう言うと、風魔法【ウェザー】を発動する。
彼女の掌から緑色の球体が現れると、風を生み出す。
その風によって粉塵が霧散し、2人の姿がはっきりと見えるようになる。
したり顔のローゼを見て、アンリは噴き出す。
「何がおかしいの?」
「いやぁ…その程度で防げたと思うなんて、なんともおめでたい方だなと思いまして」
そう言って、アンリが杖で床を叩くと、そこから黒い煙が溢れ出し、周囲を包み込む。
「何度やっても同じことよ!【ウェザー】!」
溢れ出す風、しかし─
「な、なぜ!?なぜ霧が晴れないの!?」
ローゼの視界は黒く塗りつぶされたままだったのだ。
「ククク…アハハハハハ!」
アンリの笑い声が響き渡る。
「な、なぜ!なんで見えないの!?」
「簡単なことですよ。私の魔法【盲目】を発動させただけですよ」
「バカな…私の状態異常耐性はかなり高いはず!簡単には通らないはずよ!」
「まあ、その通りですね。しかし、あなたが知らない秘密がこれにはあるんですよ」
そう言って、アンリは自身の手にある黒竜の杖を撫でる。
杖の名前は【SSNo.7_増加竜】。
効果は、底に仕込んだ魔法水晶の効力の増加。
シュウが丹精込めて作り上げた魔導具である。
そんな杖に嵌められた魔法水晶の出力は合計で8倍程度まで膨れ上がる。
そんな高出力で放たれた状態異常は、例えフロアボスであろうとも防ぐことは出来ないだろう。ましてや、一介のプレイヤーがそれを防ぐなど、至難を通り越して不可能と言える。
そんな盲目のローゼの目の前にアンリは立つと、杖を振りかぶってその側頭へ叩きつける。
鈍い音とくぐもった声が響くと、ローゼが側頭部から血を流しながら倒れる。
そんな彼女の頭をアンリは踏みつけると、目につく装飾品を全て剥ぎ取る。
「これだけですかね。まあ、例え少量残っていたとしても防げないでしょう」
ジャラジャラと奪い取った装飾品を掌で弄びながらアンリは、そう呟くと杖をローゼの背中に当てる。
「それじゃ、始めましょうか。なに、痛みはありませんから安心してください。それでは、おやすみなさい【睡眠】」
急速に意識を失っていくローゼが最後に見たのは、悪辣に笑うアンリの姿だったという。
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