Creation World Online
第75話
「うぅ…怖かったですよぅ」
「よーしよしよし、もう大丈夫だぞ。それでだ」
泣くアンリの頭を撫でて俺はギロリと周囲を囲むプレイヤー達を睨む。
「で、お前らウチのアンリを囲んでどういうつもりだ?」
「か、勘違いだ!待ってくれ!」
俺が立ち上がって問い詰めると、1人の男性プレイヤーが誤解だと手を挙げる。
周囲のプレイヤーを見ても、どうやら悪意があったわけではなさそうだった。
俺は深く溜息を吐くと、発動しようとしていたスキルをキャンセルする。
「わかった、話を聞かせてもらおうか」
「あ、ああ。俺はサイ、しがない服飾ギルドのマスターをさせてもらっている。ここにいるプレイヤー達は全員ウチのギルドメンバーなんだ」
話を聞くと彼らは服飾ギルド『ギリック=ギリック』のメンバーで自分達の服を着てくれるモデルを探していたらしい。
しかし、残念ながら基本的に有名なプレイヤーは自分の領地、もしくは最前線にいて、この街にいるような有名なアイドルプレイヤーは皆、大手服飾ギルド『ドレス・オーナメント』のモデルとなっていたせいで全て断られたという。
そんなわけで困り果てた彼らの前に現れたのがアンリだった。
最早後がない彼らは少々強引にアンリを呼び止めて、現在に至るという。
「お願いします!どうか力を貸してください!」
そう言って必死にサイと『ギリック=ギリック』のメンバー達は頭を下げる。
「あらァ?ギリック=ギリックの皆さんじゃありませんこと?天下の大通りを占拠するなんて感心しませんわねえ?」
そう言って高飛車そうな女性プレイヤーが歩いてくる。
つか、香水臭っ!振りすぎだろ!
もう決めた、俺の中でこいつのあだ名は香水女だ。
「んー?見かけない顔の坊やね。でも、中々いい男じゃなぁい。どう?ウチのモデルになってみない?」
「悪いが、趣味じゃないな」
香水女の後ろに控えている男達の服を見て俺はそう答える。あのヒラヒラは何用なんだろよ。
そんな俺の態度に「ま、いいわ」とアッサリとした返事をする仮面女、何か言われると覚悟していただけに拍子抜けだった。
そんな疑問はすぐに解決することになる。
「明日のプロデューサーギルド『アイドル生み出し隊』主催のイベント『どきっ☆クリスマスの妖精達』で勝負しましょう。そして、貴方達が負けた場合は貴方達のギルドハウスを明け渡してもらうわ」
「ふ、ふざけんな!俺達はそんな勝負受けないぞ!」
「へぇ…いいのかしら?私達は素材屋にもパイプがあるの、つまり…貴方達のような弱小ギルド簡単に潰せるのよ?」
二ヤーっと笑う香水女に何も言い返せないギリック=ギリックのメンバー達。
「気に入らないな」
「あら?何か言ったかしら坊や」
「気に入らないっつったんだよ。いいぜ、その勝負受けてやる。そのかわり負けた場合はお前のギルドとその系列は全てギリック=ギリックの所有物にさせてもらうぞ」
俺がビシッと香水女を指差すと、ギリック=ギリックの面々はビクッと身体を震わせる。
逆に香水女は不遜な笑みを浮かべていた。秘策でもあるのか?
「ふーん?ま、いいわ。こっちには強力モデルがいるのよ!さ、いらっしゃい!」
「ん、あなたのハートにアイスランス。ナクちゃんでーす。ぶい」
黒髪を肩まで伸ばした、褐色美少女_ナクが無表情でそう言いながらVサインをする。
そして心臓にアイスランスなんて叩き込んだらまず間違いなくクリティカルで死ぬのでやめてもらいたい。いや、ステータスが上がりまくってる今なら大丈夫なのか?そんなことよりも。
「ナク、お前何してんだ」
「シュウ…?何でここにいるの?あっ、アンリもいる」
心底不思議といった様子でナクがそう尋ねる。
「お前達を探しに来たんだよ、お前らコールもチャットも無視しやがって」
「わ、私は出ようにも出られなかったんですよ!」
「ん、同じく無理だった」
アンリはまだしもナクは嘘だな、目が泳ぎまくってる。
とりあえず2人を見つけたんだ、早いとこ連れ帰るとしよう。
「ほら、2人とも帰るぞ。ナクもバカなことしてないで早く来い」
ナクの手を引っ張ると、パシッという軽い音と共に俺の手は跳ね除けられる。
俺の手を跳ね除けた人物、ナクは何を考えているのかわからない無表情でこちらをジッと見つめる。
「今日は帰れない。明日、イベントがある」
「なっ…!いや、そうか。わかった、好きにしろ」
「いいの?」
ナクの言葉に叫ぼうとした俺だったが、それは自分勝手だと考え許可を出す。
すると、それに驚いたのかナクが再度そう尋ねてくる。
「しつこいぞ、好きにしろ。アンリ、お前はどうするんだ?」
「えー、私ですか?私は別に_」
「逃げる?」
場の空気が凍りついた。
そんな空気を作り出した張本人のナクは全くもって意に介した様子もなく、さらに続けていく。
「アンリは私を前にして逃げる。つまり、シュウの正妻は私」
「は?何言ってんですか。私に決まってるでしょ!」
「違う、私」
「いーや!私です!」
俺を取り合って2人の美少女が喧嘩をする、これは男冥利に尽きるというやつなのかもしれないが、周囲の男性プレイヤー達の視線で俺の体に穴が開きそうなのでやめてもらいたい。
「わかりました、それなら明日の対決で勝った方が1日シュウ君と好きに過ごせる権利を得るってことでいいですね!」
「ん、その間に起こったことには一切口出しはなし」
バチバチと火花を散らすアンリとナク、そして賭けの対象である俺には拒否権の類は一切無いようだった。
そのまま2人は踵を返すと、ナクは『ドレス・オーナメント』を引き連れて何処かへと去って行く。
アンリは未だに状況が飲み込めていない『ギリック=ギリック』のメンバー達の前に立つと装備を街中の物から戦闘用の蒼ローブに変更する。
「さあ、皆さん!時間がありませんよ!どの装備を私に着せるのか決まってるんですか?」
「い、いやそれはまだ…」
「だったら早く作ってください!ほら行った行った!」
アンリの号令を受けた彼等は走って自分達のホームの方角へと向かって行った。
大変なもんだな、とそんな様子を眺めていた俺の前にアンリが立ってジーッと顔を覗き込んでいた。
「シュウ君にはこれから手伝ってもらうことがあります」
そう言って悪戯っ子のような笑みを浮かべるアンリ。
嫌な予感がするなー。          
「よーしよしよし、もう大丈夫だぞ。それでだ」
泣くアンリの頭を撫でて俺はギロリと周囲を囲むプレイヤー達を睨む。
「で、お前らウチのアンリを囲んでどういうつもりだ?」
「か、勘違いだ!待ってくれ!」
俺が立ち上がって問い詰めると、1人の男性プレイヤーが誤解だと手を挙げる。
周囲のプレイヤーを見ても、どうやら悪意があったわけではなさそうだった。
俺は深く溜息を吐くと、発動しようとしていたスキルをキャンセルする。
「わかった、話を聞かせてもらおうか」
「あ、ああ。俺はサイ、しがない服飾ギルドのマスターをさせてもらっている。ここにいるプレイヤー達は全員ウチのギルドメンバーなんだ」
話を聞くと彼らは服飾ギルド『ギリック=ギリック』のメンバーで自分達の服を着てくれるモデルを探していたらしい。
しかし、残念ながら基本的に有名なプレイヤーは自分の領地、もしくは最前線にいて、この街にいるような有名なアイドルプレイヤーは皆、大手服飾ギルド『ドレス・オーナメント』のモデルとなっていたせいで全て断られたという。
そんなわけで困り果てた彼らの前に現れたのがアンリだった。
最早後がない彼らは少々強引にアンリを呼び止めて、現在に至るという。
「お願いします!どうか力を貸してください!」
そう言って必死にサイと『ギリック=ギリック』のメンバー達は頭を下げる。
「あらァ?ギリック=ギリックの皆さんじゃありませんこと?天下の大通りを占拠するなんて感心しませんわねえ?」
そう言って高飛車そうな女性プレイヤーが歩いてくる。
つか、香水臭っ!振りすぎだろ!
もう決めた、俺の中でこいつのあだ名は香水女だ。
「んー?見かけない顔の坊やね。でも、中々いい男じゃなぁい。どう?ウチのモデルになってみない?」
「悪いが、趣味じゃないな」
香水女の後ろに控えている男達の服を見て俺はそう答える。あのヒラヒラは何用なんだろよ。
そんな俺の態度に「ま、いいわ」とアッサリとした返事をする仮面女、何か言われると覚悟していただけに拍子抜けだった。
そんな疑問はすぐに解決することになる。
「明日のプロデューサーギルド『アイドル生み出し隊』主催のイベント『どきっ☆クリスマスの妖精達』で勝負しましょう。そして、貴方達が負けた場合は貴方達のギルドハウスを明け渡してもらうわ」
「ふ、ふざけんな!俺達はそんな勝負受けないぞ!」
「へぇ…いいのかしら?私達は素材屋にもパイプがあるの、つまり…貴方達のような弱小ギルド簡単に潰せるのよ?」
二ヤーっと笑う香水女に何も言い返せないギリック=ギリックのメンバー達。
「気に入らないな」
「あら?何か言ったかしら坊や」
「気に入らないっつったんだよ。いいぜ、その勝負受けてやる。そのかわり負けた場合はお前のギルドとその系列は全てギリック=ギリックの所有物にさせてもらうぞ」
俺がビシッと香水女を指差すと、ギリック=ギリックの面々はビクッと身体を震わせる。
逆に香水女は不遜な笑みを浮かべていた。秘策でもあるのか?
「ふーん?ま、いいわ。こっちには強力モデルがいるのよ!さ、いらっしゃい!」
「ん、あなたのハートにアイスランス。ナクちゃんでーす。ぶい」
黒髪を肩まで伸ばした、褐色美少女_ナクが無表情でそう言いながらVサインをする。
そして心臓にアイスランスなんて叩き込んだらまず間違いなくクリティカルで死ぬのでやめてもらいたい。いや、ステータスが上がりまくってる今なら大丈夫なのか?そんなことよりも。
「ナク、お前何してんだ」
「シュウ…?何でここにいるの?あっ、アンリもいる」
心底不思議といった様子でナクがそう尋ねる。
「お前達を探しに来たんだよ、お前らコールもチャットも無視しやがって」
「わ、私は出ようにも出られなかったんですよ!」
「ん、同じく無理だった」
アンリはまだしもナクは嘘だな、目が泳ぎまくってる。
とりあえず2人を見つけたんだ、早いとこ連れ帰るとしよう。
「ほら、2人とも帰るぞ。ナクもバカなことしてないで早く来い」
ナクの手を引っ張ると、パシッという軽い音と共に俺の手は跳ね除けられる。
俺の手を跳ね除けた人物、ナクは何を考えているのかわからない無表情でこちらをジッと見つめる。
「今日は帰れない。明日、イベントがある」
「なっ…!いや、そうか。わかった、好きにしろ」
「いいの?」
ナクの言葉に叫ぼうとした俺だったが、それは自分勝手だと考え許可を出す。
すると、それに驚いたのかナクが再度そう尋ねてくる。
「しつこいぞ、好きにしろ。アンリ、お前はどうするんだ?」
「えー、私ですか?私は別に_」
「逃げる?」
場の空気が凍りついた。
そんな空気を作り出した張本人のナクは全くもって意に介した様子もなく、さらに続けていく。
「アンリは私を前にして逃げる。つまり、シュウの正妻は私」
「は?何言ってんですか。私に決まってるでしょ!」
「違う、私」
「いーや!私です!」
俺を取り合って2人の美少女が喧嘩をする、これは男冥利に尽きるというやつなのかもしれないが、周囲の男性プレイヤー達の視線で俺の体に穴が開きそうなのでやめてもらいたい。
「わかりました、それなら明日の対決で勝った方が1日シュウ君と好きに過ごせる権利を得るってことでいいですね!」
「ん、その間に起こったことには一切口出しはなし」
バチバチと火花を散らすアンリとナク、そして賭けの対象である俺には拒否権の類は一切無いようだった。
そのまま2人は踵を返すと、ナクは『ドレス・オーナメント』を引き連れて何処かへと去って行く。
アンリは未だに状況が飲み込めていない『ギリック=ギリック』のメンバー達の前に立つと装備を街中の物から戦闘用の蒼ローブに変更する。
「さあ、皆さん!時間がありませんよ!どの装備を私に着せるのか決まってるんですか?」
「い、いやそれはまだ…」
「だったら早く作ってください!ほら行った行った!」
アンリの号令を受けた彼等は走って自分達のホームの方角へと向かって行った。
大変なもんだな、とそんな様子を眺めていた俺の前にアンリが立ってジーッと顔を覗き込んでいた。
「シュウ君にはこれから手伝ってもらうことがあります」
そう言って悪戯っ子のような笑みを浮かべるアンリ。
嫌な予感がするなー。          
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