Creation World Online
第62話
「…はあ?なに言ってんの?」
「そ、そうですよ!シュウ殿!わ、私が宵影さんと一騎打ちなんて…」
慌てすぎて口調が崩れているニイナをスルーして俺は続ける。
「わからないか?一騎打ちをしろって言ってるんだ。勝てばニイナの武器をやる、ただし…負けた場合は、お前ギルド抜けろ」
「…くくっ、良いよ。で、いつやる?今から?」
「そうこなくっちゃな。ただ、今はまだだ。期間は1週間後、場所は1界層の闘技場な」
1界層の闘技場、それは俺とシラクモが戦った場所である。
宵影は、「ふーん、別にいいけど?」と言うと出口に向かう。
そしてニイナを見て、ニヤリと笑う。
「それじゃあ、1週間後に。ニイナ…逃げるなよ?」
そう言って、転移アイテムを使用して何処かへと転移して行った。
「これでよし!」
「良くなあああい!」
ニイナがそう叫びながら、俺の腹にパンチを打ってくる。だが、いかんせんステータスの差が激しいため、俺に微塵のダメージを与えることも出来なかった。
「マジどうしてくれるんですか…宵影さんと一騎打ちなんて無理ですよ…」
「おーい、大丈夫かー?口調、崩れてるぞー?」
地面に崩れ落ちて、シクシクと泣くニイナにそう声を掛けるが返事はない。
一応策はあるんだけどな…
「なあ、ニイナ」
「…なんでござるか?」
「今から俺にちょっと付き合えよ」
☆
「ってなわけでお願いできないか?」
「ふーん、それで僕の所にね…」
俺達が今居るのは、第1界層のレストラン『森海』。そこのオーナーであり、メインシェフでもあるクリアは俺の頼みに溜息を吐いていた。
「あのねえ、シュウ君。君の頼みでもそれは無理だよ。店があるんだから…ただでさえ人手不足で忙しいって言うのに…」
「そこをなんとか!頼む!」
「えー…あっ、いいことを思いついた」
「おっ、なんだ?」
そう尋ねると、クリアはエアディスプレイを操作してある服を2着取り出した。
そして、その内の1つを俺に手渡す。
広げて見れば、黒を基調とした執事服のような物だった。
となりのニイナの手に渡されて居るのは、メイド服。
…嫌な予感がするな。
「なあ、なんとなく察しはついて居るんだが…これは?」
「ニイナちゃんの師匠をしてあげるかわりに、2人とも1週間バイトしてよ。それが条件だよ」
だよな…だと思った。
溜息を吐いてニイナを見ると「接客…?メイド服で…?無理だよぅ…」と呟いていた。
すると、クリアがじっとニイナを見つめる。
「ねえ、ニイナちゃん」
「は、はい!なんでござるか?」
「君はお姉さんの形見を奪われてもいいの?」
「っ!い、嫌だ!」
「だったら…頑張ろっか?」
クリアがニコッと笑うと、ニイナは渋々ながら承知した。
こうして俺達のバイトが始まるのであった。
☆
「シュウ君!3番テーブルにコレとコレとコレね!」
「了解!」
「オーダーでござる!ピザ、シーフードサラダ、アクアパッツァ!」
「何番!?」
「4番でござる!」
時間は昼時、プレイヤー達が腹を空かせてやってくる時間帯だ。
店内には、老若男女問わず沢山のプレイヤー達でごった返していた。
俺とニイナは、そんな中をせわしなく動き回っていた。
その時、来店を告げるベルが鳴った。
「いらっしゃいま_って、お前らかよ…」
「やっほー、シュウ君。来ちゃいました」
「ん、シュウ。執事服も似合ってる」
そこには、私服姿のアンリとナクが立っていた。
取り敢えず、窓際の席に案内して注文を取る。
「で、何にする?」
「じゃあ、おススメでお願いします」
「ナクは?」
「私もそれでいい」
クリアに注文を伝えると、休憩しても良いと言われたのでその言葉に甘えることにする。
アンリとナクの座っている席に着くと、テーブルに身体を投げ出す。
「疲れた…」
「お疲れ様です。中々ハードみたいですね」
そう言ってアンリに頭を撫でられる。
珍しく歳上らしい事をしてるじゃないか。
「ははっ、シュウ君。お疲れ様」
「ん?ああ、そう言えば休憩ってどのくらい取っても良いんだ?」
「んー…今日はピークも、もう過ぎてるし、早めに店を閉めてニイナちゃんの訓練に当てようか」
クリアはそう言うと、エアディスプレイを操作して、店の扉に『Close』の文字を表示させる。
そう言えば、ニイナはどうしたんだ?
周囲を見渡すと、扉の横の壁にもたれかかって死んだような目をして燃え尽きていた。
うわ…今はそっとしておいてやろう。
すると、良い匂いが漂ってくる。
見て見ればいつの間にかクリアが料理を運んで来ていた。
「はい、どうぞ。今日のおススメの『カポナータ』、『ガスパチョ』、『幻覚鳥のグリエ』だよ」
次々と出される料理、待ちきれないとばかりにアンリはヨダレを垂らしていた。
ナクも無表情な様に見えて、よくよく見ればその目は、キラキラと輝いていた。
「さ、どうぞ」
クリアの言葉と同時に、俺達は目の前の料理を掻っ込む。
はあ…美味い…
最早、美味すぎて美味い以外の言葉が出てこない様な料理を食べ続けるのであった。
☆
食事を終えた俺達は、近くの平原に来ていた。
理由は、当然ニイナの特訓のためである。
いつものコック服から一転、薄手のパーカーを着たクリアは、その両手に2本の真っ白な短剣を握って、軽く素振りをしていた。
クリアが素振りをする度に、武器からは白い冷気が軌跡を描いていた。
武器の名は【凍双剣・冬納】
クリアの固有武器だった。
「さ、ニイナちゃん。かかっておいで」
準備運動を終えたクリアがそう言って、かかって来いとハンドサインをする。
ニイナは警戒しながらも、クリア目掛けて駆け出す。
うわっ、中々速いな。
肉眼で追えない程では無いが、ニイナの速度は中々なものだった。
しかしクリアはそんな攻撃を_
「攻撃が単調すぎる。工夫が足りないね」
「くっ…!」
軽々と弾いてしまう。
弾かれたニイナは、一旦距離を取るために後方へ跳んだ。
そんなニイナ目掛けてクリアが駆けて行くと、一気に距離を詰めて斬りつける。
ギリギリのところで受け止めたニイナだったが、クリアの連撃に防戦一方となってしまう。
「ほら、ここがガラ空きだ」
「がふっ…!」
何度目かの攻防の時、クリアの斬撃を受け止めたニイナのガラ空きだったわき腹に、クリアの蹴りがクリーンヒットする。
耐えきれずニイナは、その場に崩れ落ちてしまった。
その首筋に刃を添え、クリアは微笑む。
「はい、終わり」
「まだ…まだぁっ!【獣化】!」
そう言ってニイナは、自身の固有スキルを発動する。
白い光に包まれ、エフェクトによってクリアの刃が弾かれ、後退する。
エフェクトに包まれたニイナの頭から丸みのある獣の耳が生え、腰からフカフカとした尻尾が8本生えてくる。
エフェクトが収まって時、そこにいたニイナの姿は、まるで狸のようだった。
「さあ、ここからでござる!」
「ふーん、獣化か…にしても、ただの狸じゃないね?」
「ふふん!【八尾狸】でござる!行くでござるよ!」
ニイナの尻尾がブワッと膨らむと、ニイナの姿が8人に分身する。
おお、凄いな。しかも、俺の察知スキルに全員引っかかってやがる。つまり、実物と変わらないということだろう。
そんなニイナ達が一斉にクリア目掛けて殺到する。
「んー、40点…ってとこかな」
そう言うと、クリアは短剣を途轍もない速さで振る。
たったそれだけ、それだけの行動でニイナの分身はかき消され、ニイナ本体も腕を切り飛ばされてしまった。
絶叫が響き渡る。
「見え見えなんだよ。その分身は飾りかい?」
「痛い…痛いよぅ…」
「うるさい、騒ぐな」
「うぐぅ…!」
クリアの蹴りによってニイナはまるでボールのように飛んでいき、近くの岩にぶつかって、静止する。
これは止めた方がいいんじゃないか?
呻くニイナに、短剣降って付着した血液を落としながらクリアが近づく。
「ほら、早く立てよ」
「うぅ…」
舌打ちをして、クリアは短剣を振り上げる。
「このグズが、いっぺん死んでこい」
「そこまでだ」
ニイナとクリアの間に、土壁を作り出して止める。
「…ごめん。やり過ぎた」
「まったく…おい、大丈夫か?」
回復魔法をかけながらニイナを起こすと、その身体は小刻みに震えていた。
いや、まあ怖かっただろうな。うん。          
「そ、そうですよ!シュウ殿!わ、私が宵影さんと一騎打ちなんて…」
慌てすぎて口調が崩れているニイナをスルーして俺は続ける。
「わからないか?一騎打ちをしろって言ってるんだ。勝てばニイナの武器をやる、ただし…負けた場合は、お前ギルド抜けろ」
「…くくっ、良いよ。で、いつやる?今から?」
「そうこなくっちゃな。ただ、今はまだだ。期間は1週間後、場所は1界層の闘技場な」
1界層の闘技場、それは俺とシラクモが戦った場所である。
宵影は、「ふーん、別にいいけど?」と言うと出口に向かう。
そしてニイナを見て、ニヤリと笑う。
「それじゃあ、1週間後に。ニイナ…逃げるなよ?」
そう言って、転移アイテムを使用して何処かへと転移して行った。
「これでよし!」
「良くなあああい!」
ニイナがそう叫びながら、俺の腹にパンチを打ってくる。だが、いかんせんステータスの差が激しいため、俺に微塵のダメージを与えることも出来なかった。
「マジどうしてくれるんですか…宵影さんと一騎打ちなんて無理ですよ…」
「おーい、大丈夫かー?口調、崩れてるぞー?」
地面に崩れ落ちて、シクシクと泣くニイナにそう声を掛けるが返事はない。
一応策はあるんだけどな…
「なあ、ニイナ」
「…なんでござるか?」
「今から俺にちょっと付き合えよ」
☆
「ってなわけでお願いできないか?」
「ふーん、それで僕の所にね…」
俺達が今居るのは、第1界層のレストラン『森海』。そこのオーナーであり、メインシェフでもあるクリアは俺の頼みに溜息を吐いていた。
「あのねえ、シュウ君。君の頼みでもそれは無理だよ。店があるんだから…ただでさえ人手不足で忙しいって言うのに…」
「そこをなんとか!頼む!」
「えー…あっ、いいことを思いついた」
「おっ、なんだ?」
そう尋ねると、クリアはエアディスプレイを操作してある服を2着取り出した。
そして、その内の1つを俺に手渡す。
広げて見れば、黒を基調とした執事服のような物だった。
となりのニイナの手に渡されて居るのは、メイド服。
…嫌な予感がするな。
「なあ、なんとなく察しはついて居るんだが…これは?」
「ニイナちゃんの師匠をしてあげるかわりに、2人とも1週間バイトしてよ。それが条件だよ」
だよな…だと思った。
溜息を吐いてニイナを見ると「接客…?メイド服で…?無理だよぅ…」と呟いていた。
すると、クリアがじっとニイナを見つめる。
「ねえ、ニイナちゃん」
「は、はい!なんでござるか?」
「君はお姉さんの形見を奪われてもいいの?」
「っ!い、嫌だ!」
「だったら…頑張ろっか?」
クリアがニコッと笑うと、ニイナは渋々ながら承知した。
こうして俺達のバイトが始まるのであった。
☆
「シュウ君!3番テーブルにコレとコレとコレね!」
「了解!」
「オーダーでござる!ピザ、シーフードサラダ、アクアパッツァ!」
「何番!?」
「4番でござる!」
時間は昼時、プレイヤー達が腹を空かせてやってくる時間帯だ。
店内には、老若男女問わず沢山のプレイヤー達でごった返していた。
俺とニイナは、そんな中をせわしなく動き回っていた。
その時、来店を告げるベルが鳴った。
「いらっしゃいま_って、お前らかよ…」
「やっほー、シュウ君。来ちゃいました」
「ん、シュウ。執事服も似合ってる」
そこには、私服姿のアンリとナクが立っていた。
取り敢えず、窓際の席に案内して注文を取る。
「で、何にする?」
「じゃあ、おススメでお願いします」
「ナクは?」
「私もそれでいい」
クリアに注文を伝えると、休憩しても良いと言われたのでその言葉に甘えることにする。
アンリとナクの座っている席に着くと、テーブルに身体を投げ出す。
「疲れた…」
「お疲れ様です。中々ハードみたいですね」
そう言ってアンリに頭を撫でられる。
珍しく歳上らしい事をしてるじゃないか。
「ははっ、シュウ君。お疲れ様」
「ん?ああ、そう言えば休憩ってどのくらい取っても良いんだ?」
「んー…今日はピークも、もう過ぎてるし、早めに店を閉めてニイナちゃんの訓練に当てようか」
クリアはそう言うと、エアディスプレイを操作して、店の扉に『Close』の文字を表示させる。
そう言えば、ニイナはどうしたんだ?
周囲を見渡すと、扉の横の壁にもたれかかって死んだような目をして燃え尽きていた。
うわ…今はそっとしておいてやろう。
すると、良い匂いが漂ってくる。
見て見ればいつの間にかクリアが料理を運んで来ていた。
「はい、どうぞ。今日のおススメの『カポナータ』、『ガスパチョ』、『幻覚鳥のグリエ』だよ」
次々と出される料理、待ちきれないとばかりにアンリはヨダレを垂らしていた。
ナクも無表情な様に見えて、よくよく見ればその目は、キラキラと輝いていた。
「さ、どうぞ」
クリアの言葉と同時に、俺達は目の前の料理を掻っ込む。
はあ…美味い…
最早、美味すぎて美味い以外の言葉が出てこない様な料理を食べ続けるのであった。
☆
食事を終えた俺達は、近くの平原に来ていた。
理由は、当然ニイナの特訓のためである。
いつものコック服から一転、薄手のパーカーを着たクリアは、その両手に2本の真っ白な短剣を握って、軽く素振りをしていた。
クリアが素振りをする度に、武器からは白い冷気が軌跡を描いていた。
武器の名は【凍双剣・冬納】
クリアの固有武器だった。
「さ、ニイナちゃん。かかっておいで」
準備運動を終えたクリアがそう言って、かかって来いとハンドサインをする。
ニイナは警戒しながらも、クリア目掛けて駆け出す。
うわっ、中々速いな。
肉眼で追えない程では無いが、ニイナの速度は中々なものだった。
しかしクリアはそんな攻撃を_
「攻撃が単調すぎる。工夫が足りないね」
「くっ…!」
軽々と弾いてしまう。
弾かれたニイナは、一旦距離を取るために後方へ跳んだ。
そんなニイナ目掛けてクリアが駆けて行くと、一気に距離を詰めて斬りつける。
ギリギリのところで受け止めたニイナだったが、クリアの連撃に防戦一方となってしまう。
「ほら、ここがガラ空きだ」
「がふっ…!」
何度目かの攻防の時、クリアの斬撃を受け止めたニイナのガラ空きだったわき腹に、クリアの蹴りがクリーンヒットする。
耐えきれずニイナは、その場に崩れ落ちてしまった。
その首筋に刃を添え、クリアは微笑む。
「はい、終わり」
「まだ…まだぁっ!【獣化】!」
そう言ってニイナは、自身の固有スキルを発動する。
白い光に包まれ、エフェクトによってクリアの刃が弾かれ、後退する。
エフェクトに包まれたニイナの頭から丸みのある獣の耳が生え、腰からフカフカとした尻尾が8本生えてくる。
エフェクトが収まって時、そこにいたニイナの姿は、まるで狸のようだった。
「さあ、ここからでござる!」
「ふーん、獣化か…にしても、ただの狸じゃないね?」
「ふふん!【八尾狸】でござる!行くでござるよ!」
ニイナの尻尾がブワッと膨らむと、ニイナの姿が8人に分身する。
おお、凄いな。しかも、俺の察知スキルに全員引っかかってやがる。つまり、実物と変わらないということだろう。
そんなニイナ達が一斉にクリア目掛けて殺到する。
「んー、40点…ってとこかな」
そう言うと、クリアは短剣を途轍もない速さで振る。
たったそれだけ、それだけの行動でニイナの分身はかき消され、ニイナ本体も腕を切り飛ばされてしまった。
絶叫が響き渡る。
「見え見えなんだよ。その分身は飾りかい?」
「痛い…痛いよぅ…」
「うるさい、騒ぐな」
「うぐぅ…!」
クリアの蹴りによってニイナはまるでボールのように飛んでいき、近くの岩にぶつかって、静止する。
これは止めた方がいいんじゃないか?
呻くニイナに、短剣降って付着した血液を落としながらクリアが近づく。
「ほら、早く立てよ」
「うぅ…」
舌打ちをして、クリアは短剣を振り上げる。
「このグズが、いっぺん死んでこい」
「そこまでだ」
ニイナとクリアの間に、土壁を作り出して止める。
「…ごめん。やり過ぎた」
「まったく…おい、大丈夫か?」
回復魔法をかけながらニイナを起こすと、その身体は小刻みに震えていた。
いや、まあ怖かっただろうな。うん。          
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