女神の加護を持つ死神

つうばく

聖女の護衛 5

 昼食を食べ終わり、ソラは皿洗いなどで厨房に、ヘーニルもソラを手伝うと言って厨房に行った。あるはというと、リビングに置いてあるソファーで寝転んでいる。

 食べた後に寝たら牛になるぞ、と言ったのだが「平気じゃ平気。牛になったとしても変化のスキルで変われるのじゃ」と言われた。
 ……そう言う為に使うものでは絶対にないと、思うのだが。……まぁ、本人がそう使うと言うのなら、それで良いのだろう。

 ちなみに俺は、ソラが作り置きしてくれていたポテチを食べながら、ごろーんとしている。だが、アルとは違ってやる事をしっかりとやっている。
 詳細地図マップと鑑定を使いながら、周辺にいる聖女への殺意を持っている者を探すという仕事をな。まぁ、依頼の内容でもあるので、してなかったら逆に駄目なのだが。
 それでもやってはいるのだし、良い方ではあるだろ。

「良い方とはなんじゃ、良い方とは? 悪い方でもあるのじゃか?」
「いや、ないけど。まあ言葉の綾みたいなもんだよ」

 やっぱり、言葉っていうのは難しいな。……けど、俺国語の成績良かったんだけどな? 昔ならもっと良い言い方が出来たかもしれない。
 日本から離れて、勉強という勉強をしてないからな。……今度一度真面目に勉強をしてみようか。流石に馬鹿になるのは嫌だしな。

「勉強などキラリに出来るのじゃ?」
「出来るわ。なめんなよ、俺結構勉強出来たんだぞ」
「学年で下の方だったのが嫌で必死に勉強をして出来るようになった、とかはありそうなのじゃ」
「……お前、俺の過去視でもしたのかよ? その通り過ぎて今マジでビビってんだけど」
「自分で言い当てたことにビビるのじゃが。そんでもってそんなキラリにもビビるのじゃ。……マジで出来たとわ……」

 アルがそう下向きな感じで言って、下を向いた。
 ……あれれ〜。もしかして。

「アルさんはどうだったのですか? 勉強とか出来るのですか?」
「……で、できるのじゃ! もう神界の中でもトップクラスだったのじゃ!!」
「へぇ〜……そうなんだ〜」
「なんじゃ。腹たつ言い方をしよって」

 本当なのかなぁ〜。……一応ヘーニルに確認だな。

『おい、ヘーニル』
『何か用か、主人』
『突然だけどさぁー、アルって勉強とか出来る?』
『そんな事か。……少しでも考えれば分かるだろ、答えなんて』
『で、どっち?』
『出来るわけないだろ。あのアルだぞ。主人の目は節穴ではないだろ? なら、アルを見てそのまんまの思った事が、全て正解だ』
『ありがとな。覚えておくよ』
『ああ。じゃあまだ洗い物の途中だから、切るぞ』
『了解』

 ヘーニルが念話での通信を切った。

 ……これで、分かったな。
 アルを見て思った事が、アルだと言うのであれば、勉強が出来ないの他にも色々分かる事がある。……多過ぎて言えないぐらいな。
 数にしたら、それこそ数えるのが面倒くさくなるだろう。

 ……とりあえず分かったのは、アルは勉強が全くと言っても良いほど出来ない事。
 それと、アルはアルという事だな。アルから感じ取れるものはそのまんまアルに通用するという事が。

「ふっふっふ」
「……なんじゃ、その気持ち悪い笑みは」
「気持ち悪いって言うなよ……。まぁ、良い。それよりもだ」
「なんじゃ? やっと私が賢いって事でも認めたのじゃ?」
「いや、そう言うわけではない」

 そもそも、アルが賢いなど天地がひっくり返る返っても認めはられないだろう。アルは馬鹿でなくてはならないのだ(笑)
 それも、びっくりする程の馬鹿でなければな。

「じゃあ何なのじゃよ? それとさっさと止めてくれなのじゃ。目が腐るのじゃ」
「さっきから人の事を悪く言い過ぎだろ!」
「あ、やっと戻ったのじゃ」

 真顔で言うアル。……嘘は全くついていなさそうなので、あの言葉は本心から思っていたのだろう。だとしたら、それはそれで最低でもあるんだけどな。

「……もう、良いわ。それと、話戻るけど、アルってやっぱり馬鹿だったんだな」
「な、何を言っているのじゃっ! 私が馬鹿などという事がある訳ないのじゃっ!!」
「本当にぃ〜? ヘーニルに聞いた時、アルは馬鹿って言っていたんだけど」
「ヘーニルめぇ!!」
「あっ、ヘーニル恨むって事は本当なんだな」
「嵌められたのじゃぁああ!!」

 アルはそう言いながら、人生が終わったようにソファーから転げ落ち、四つん這いの態勢に崩れ落ちた。……まぁ、人に自分が勉強を出来ない事を知られたら、そら崩れるわな。
 ある意味、人生が終わったとも言えるだろう。

「【悲報】最強の神、天之尾羽張の人生終わる」
「……まだ、終わってないのじゃ。というか、フルネームは止めるのじゃ。もうアルという名が慣れてしまって、なんだか、むずかゆいのじゃ」
「……それはすまん。で、天之尾羽張」
「だから、それを止めろと言ったのじゃぁ!!」
「ごめんって……流石にそこまで怒るとかよめねぇわ」
「だったら、言わない事なのじゃ!」

 先程の態勢から直りはしたが、今度は怒りを表す表現を必死にされているよう。それがどこか小学生が必死に怒っているのを伝えているかのようで、可愛く見えてくる。
 ……まぁ、言わないけど。

「そう言えば、アル」
「なんなのじゃ?」
「……さっきまで食べてたポテチ、アルのだったわ」
「…………………………」

 アルの表情が固まった。いや、一瞬だけ変わって固まった。それも「え? 今なんて」という顔で。
 ……こいつ、芸人とか目指した方が良いと思う。顔芸ハンパない。怒った顔してからのこの顔とか、並みの芸人では出来ないな。
 さては、昔から練習でもしていたのだろうか?

「…………………………!?」
「ごめんな。悪気はなかったんだけどな」

 むしろ、悪気で溢れまくっていたけど。
 ポテチを冷蔵庫から取り出した時、そこには『アル様の!!』なんていう幼稚園児か!? とでも叫びたい程の文字の汚さが見れる紙が貼ってあった。
 そして横には、俺のと思われるポテチが乗ってある皿が。

 …しめしめ。

 そんな笑顔で、俺はアルのポテチが乗った皿を冷蔵庫から出す。その際に、張り紙を見つからないように外し、そして火属性魔法で燃やし、この前に創造魔法で造った魔法ブラックホールの中にその塵と化した物を入れた。
 これで、完全なる偽装は出来た訳である。

 これだけの為にここまでするかとも言われそうだが、後からの事を考えると、俺的にはこれでも少ない。どうせなら、スキルと加護のオンパレードでもしたいものだった。

 まぁ、これで引っかかってくれたのだし、全然オッケーなのだが。

「……ラに」
「えっ。 なんて?」

 声が小さくて聞こえない。
 そもそも聞く気もないけどね!

「……ソラに言いつけてやるのじゃ!」
「あっ、ちょ、それは駄目だって!」
「ふっふ。そんでもって、次のポテチはキラリの分も貰うのじゃぁ〜!」
「おい、くそやろ! 絶対にそんな事させる訳ないだろ!」
「ふっ、それは先にソラの方に行った者が決める事じゃな!」
「あぁ!? 俺が先に行ってやるよ!」

 そんな感じで、ソラがいる厨房まで駆けていく俺たち。
 もちろんの様に俺たちは怒られてしまった。

 そんでもって、俺たちの今週のポテチはもう作らないと言われてしまった……。



 今週どうやって生けていけば良いんだよ!!

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