女神の加護を持つ死神

つうばく

砂漠にいた転生者

「おぉ〜、速いのじゃ〜。馬車とは思えぬスピードじゃ〜」
「まぁ、引いてるの神獣だしな。それとエンジン付き出し。凄いだろう、俺の馬車」
「そうじゃな。こんな改造が出来るのはキラリぐらいじゃろうからな」

 改造がされまくった馬車に今、俺達は乗っていた。
 その改造にアルは、はしゃぎまくっている。
 だが、真面目なるヘーニルとソラは、ただでさえ神獣が引いていて速いのに、エンジンまで付けるという荒技でもっとスピードを上げていることに、若干呆れている様だった。
 だが、いつもの事なのでそこまで気にはしてい無いようだったが。

「のぉー、キラリ。これ以外にはどんな改造をしたんじゃ?」

 アルはこればっかりをさっきから俺に聞いていた。
 まぁ、俺がかたくなに質問に答えてい無いからなんだが。
 だって、言ったらロマンがなくなるでしょ。

「ロマンか。じゃあ仕方ないか」

 あっ、それで許してくれるのね。
 最初からそうしておけば良かった。

「おーい、主人。あとどれぐらいヒスイまで掛かるんだ?」
「そうだな……このスピード意地だと、三日ぐらい? かな」
「結構ながいんだな。こんなに速度を出しているのに」
「まぁ普通の馬車だったら一ヶ月近く掛かるところだからな。常識的に考えたら早過ぎるぐらいだけど」

 ヘーニルには一ヶ月ぐらいと言ったが、実際には普通の馬車だともっとかかるかもしれ無い。
 それは、あの村からヒスイまで行くには、砂漠を通らなければいけ無いからだ。
 しかも、この世界で一番強い砂嵐が起きるという砂漠をだ。
 その砂嵐に巻き込まれると絶対的に命は無いと言われるほどの。

 まぁこの馬車があればそれを無視出来るからこんなにも速いんだが。
 しっかりとその砂嵐対策はしているし。

「それで、さっきから聞きたかったんじゃが、なんでこんなに馬車の中でかいのじゃ? それとなんで家が中に建っているのじゃ?」
「フッフッフッ、それはだな……家、入れてみたからだ。あと中がとても広いのは無限収納アイテムボックスと同じ原理を試してみたら出来ちゃって、それを付与してみたからだ。まさか、ここまで広くなるとは予想外だったけどな」
「つまり、中は無限収納アイテムボックスと一緒ってことじゃな」
「まぁ、厳密には違うが、ほぼ一緒だな。馬車の方は広さに上限があるけど」

 そう、俺はなんでも入れれるためと、馬車の中に無限収納アイテムボックスを付与してやったのだ。
 試しにと家を一つ買って、入れてみたら余裕で入ったので、今入れてある。
 入れる時に、ソラに、何してるんですか? 的な感じの目で見られたが、それを無視しやってやった。

『キラリ様。アル様、ヘーニル様。ご飯が出来ました。家の一階にあるグレートホールまで来てください』

「オッケー。じゃあ行くか」
「そうじゃな」
「分かった。それよりも今日のご飯作るのって主人じゃ無かったか?」
「……」

 こいうのはな、無視して行くんだよ。
 それと、忘れてた訳じゃ無いぞ。
 俺が作ろうとしたら、ソラが「キラリ様。私が変わってお料理をしますので、お外でごゆっくりとしていらしてください」と言われたから、してないんだ。

「全てをソラのせいにしてるー。あれは駄目な奴じゃな、ヘーニル」
「そうだな。あんなのにはなりたく無い」
「おーい、そこ。全部聞こえてるぞ〜。お前ら俺になんか恨みでもあるのかよ」

 まぁこんないつも通りのくだらない雑談をしながら、馬車の中へと入り、家の方まで向かっていった。
 因みに、馬車は神獣が行き先を覚えているので、何も指示しなくても進む。
 流石は神獣と言ったところだな。

  




 食事を済ませた俺たちは、また気ままにのんびりと過ごした。
 アルは馬車の中にある芝生で寝てるし、ヘーニルはソラと一緒に食器を洗っていた。

 俺は、久々に銃の強化をしていた。
 試練の迷宮の時は忙し過ぎて何も出来なかったが、あの時に改造したいところは色々と見つかっていた。
 だから、そこら辺を時間が空いた今、やっていた。
 例えばだと、グリップに付いている滑り止めの力が余り無いというところだ。
 勢い良く撃っていると、偶に落ちそうになって焦った時は、マジでヤバかった。
 なので、そいう地味な感じのも含めて、強化をする。



 丁度強化が終わった時、

 ーーガチャァァンッッ!!

 という、物凄い音が外からした。
 ついでに馬車が少し揺れた。

 俺は何事か! と思い、外へと出た。
 そこにあったのは、胴体が食い千切られた様になっていて、少し取られてない部分でギリギリ身体が繋がっている狼型の魔物だった。
 何故こんなものが、そう思ったが、それの答えが見つかるのはものの数秒だった。

 だって…………ここ、魔物が大量に出てくるところだから当たり前じゃん。

 多分、共食いでも起きて、それが砂嵐とかに巻き込まれて飛んできたのが、馬車に当たったのだろう。
 それであんなにもでかいの音が聞こえたのだろうな。

 それよりもここが魔物が大量に出るって事をすっかりと忘れてたは。
 ちゃんと、守るやつ出さなきゃ。

 ーーガッシャンッ!

 その音と共に、馬車から銃を持った鉄の手や、ナイフを持った鉄の手、槍を持った鉄の手など、全三十種類もの武器を持った鉄の手が馬車から生えた。
 これは俺が改造した中で一番手の込んだやつだ。

 名付けて、最強の手マイティ・ハンドだ。

 これがあれば、どんな魔物でもお任せ。
 的なヤバイやつだ。
 銃はハンドガンとライフル、ショットガンそれにマシンガンまであるので、結構遠くても楽々駆除出来る。
 なので、ほっといても安心だろう。

 さぁ、戻って何かしようか。
 取り敢えず……寝るか。

 俺は家にある俺の部屋のベットに横になった。
 疲れなどは無いはずだが、一瞬で俺は寝てしまった。





 寝てから、七時間ぐらい経ったのだろうか。
 俺は目が覚めたので、詳細地図マップで今がどのあたりかを調べた。
 まだ、砂漠は抜けておらず、それどころか、砂漠のど真ん中だった。

 これじゃあ外には出れないし、ここを出るまでは暇になるだろう。
 何して時間を潰そうかな。

『キラリ様。時間がある様ならば、少しこちらに来てもらっても良いですか?』

「んん、良いぞ。ちょっと待っとけよ」

『かしこまりました』

 ソラから《念話》で呼び出された。
 場所は、キッチンらしい。

 俺は、早歩き程度に歩いてキッチンへと向かった。
 キッチンへのドアを開けると、ソラが迎えてくれた。

「それで、どうしたんだソラ?」
「キラリ様に色々と道具を作って欲しくて」
「料理に使う?」
「そうです」

 何だそんなことか。
 料理に使う道具って事は、レンジとかそいうのだろう。
 何気に何もそいうのは作ってなかった。

「分かった。じゃあ、じゃんじゃん言ってこい。全部作ってやる」
「有り難うございます。ではーー」

 そう言ってかれこれ一時間、俺は料理に使う道具を作り続けた。
 レンジに冷蔵庫、炊飯器、ミキサーにフライパンに圧力鍋、その他様々。
 あと新しい包丁やまな板とかも作ってやった。
 結構疲れた。
 冷蔵庫や炊飯器、ミキサーなどは電気で使う物だが、勿論この世界に電気などは無い。
 なので、全て魔力で使える様に改造する事などや、魔法などを付与して更に使いやすくするなどをした。

「有り難うございます。キラリ様」
「良いよ。これぐらい。けどちょっと疲れたから休むね。昼食ぐらいに起こしてくれ」
「かしこまりました。お休みなさい、キラリ様」

 そう言うと俺はベットへ直行して寝た。








「起きてください。キラリ様。昼食が出来ましたよ」

 疲れた後に寝ると、一気に疲れが吹き飛ぶね。
 起きた俺はそんな事を思っていた。

「おう。おはよう、ソラ。もうそんな時間か」

 俺はベットから起き上がり、うーんと背伸びをしながらバンザイ的なポーズをすると、ソラと共にグレートホールへと向かった。
 そこへ着くと、もうアルとヘーニルは席に座っていた。

「遅いのじゃキラリ。待ちくたびれたぞ」
「そうだ。アルはさっき来たからそんな訳は無いとしてでも、我はもう十分は待っていた」
「ごめんって。先まで寝てたんだから」

 そう謝り、俺とソラも席へと座った。
 昼食はビーフシチューだった。
 いや、これはビーフなのか。
 この世界の食べ物だとビーフとは言わないだろう。

 まぁそんな事は気にしなくても良いか。

「「「「いただきます」」」」

 結果、上手い。
 ソラが作ったのだから当たり前かも知れないが、それでも上手い。
 こんなのは地球でも食べられないだろう。






「あー、食べた、食べた」
「そんな事言ってるけど、キラリそんな食べて無いじゃろう」
「お前がおかしんだよ。俺は俺の基準で結構食べたの。お前と比べんな」

 そう、アルは食べる量がおかしいのだ。
 あんな身体をしているのに、どこへ消えているのかと疑うほどに。
 一人で最低でも今日は十回おかわりしていたぞ。
 それに一杯が結構な量だったので食べている量も多い筈なんだがな。

「キラリ。今どれぐらいなのじゃ。結構経ったと思うのじゃが」
「そうだな。砂漠の中心を抜けたあたりだな。外へは出れるぞ」
「そうか。なら、一緒にお昼寝しようなのじゃ。太陽の下で寝るのは気持ち良いのじゃ」
「良いな、それ。じゃあ、外へ行こうか」
「主人はどれだけ、寝れば気がすむんだ。さっきも寝ていたのだろうに」

 ヘーニルの突っ込みが入っているものの気にせずに、アルと馬車の外へと出た。
 馬車の後ろにはもう一つ台がありそこで、昼寝をする。
 因みにこの台は、見せかけの荷物を乗せるところだ。
 長旅だと普通はこいう事をするそうなので、怪しまれない様にと付けてある。
 今は何も乗っていないが、ヒスイに近付いたら乗せるつもりだ。

「気持ちいな。暖かい日差しと、丁度良い温度の風。サイコー」
「そうじゃな。こいうのを日向ごっこというのじゃろう」
「そうだな。それは全世界共通だろう」

 と、目を閉じながら雑談をしていると、何か一つの気を感じた。

「おい、今の気は何だ。こんなところに人が一人でいる訳無いだろうし」
「いや、人の気じゃ。今のは。それもまだ子供のじゃ」

 アルも感じたらしく、それも俺よりも詳しく。
 俺とアルは、その気を感じた右の方向へと振り向いた。
 見つけたのは、百メートル程離れた所に血だらけで倒れている少女。

 「悪い、任せるぞ!」
 「分かったのじゃ! キラリは早く行ってこい!」

 俺は、馬車のことをあるに任せ、少女の元へと飛行魔法を使い行った。

 近付いて行く程、その少女の怪我は酷く見えた。
 俺は、少女を抱き上げると、急いで馬車へと戻る。
 馬車の中へと入り、そのまま家のアルとヘーニルとソラが揃っている場所へ。
 そこへ着くとアルが指示したのか、完璧な治療の準備がされていた。
 怪我の具合から俺の付け焼き刃程度の回復魔法では治せないと判断し、急いで治療をアルにしてもらう事にした。
 少女の怪我はそれほどの重症だった。

 何とか、アルの魔法で治せたが、アルによると一歩遅ければ死んでいたと。
 それ程までに怪我は酷かった。
 臓器が抉れその殆どが活動を停止しており、生きているのが不思議と言えるぐらいに。

 その少女は今、部屋で休ませている。
 あと一時間もすれば起きるだろう、とアルは言っていた。
 俺たちはこの少女をどうするかと言う話になったが、俺がパーティーに加えたいと言い張り、皆んな諦めたのか、それで良いということになった。

 ……俺がこれ程に、この少女をパーティーに入れたいのには訳がある。
 それは、ステータスを見れば分かる。


 《エルザ・エリファス》

 【種族】人間
 【職業】無し▽
 【称号】転生者、公女
 【レベル】126
 【HP】2400000/2400000
 【魔力】96500000
 【攻撃力】9600000
 【防御力】2400000
 【俊敏力】4300000
 【魅了】435680000
 【器用】4320000
 【運】6000000

【スキル】 魔力上昇。MP回復上昇。HP回復上昇。技能習得率上昇。
      攻撃力上昇。魔力コントロール。夜目。気力放射。視覚強力。

【魔法】 全種類(初級、中級、上級)


 やっと、やっと、出てきたんだよ。
 俺が今まで望んでいた属性が。
 そう、転生者が!

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