女神の加護を持つ死神

つうばく

臨時報告

 はぁー。
 ただ、ステータスを見るだけなのに緊張してきた。

 緊張を解くためには、違う事を考えるのが一番だと、聞いた事がある。
 だから、違う事、違う事。

 ん? そう言えば……ソラ最近喋り掛けてこないな。
 あれ? 俺がヘーニルの主人になったとも言って来なかったなー、そう言えば。
 いつもなら、あいう事も言ってくるだろうに……。

『お呼びでございますか』

 うわっ!?

『すみません。色々とあり、少しの間留守にしてしまって』

「いや。戻って来てくれたのなら、それで俺は嬉しいよ」

 嘘では無い、本音だ。
 もし、あの時、ソラがいなかったら、ここまで来れなかったろう、という場面が数多くあるしな。

「そんな事より、今までどうしてたの? ……あっ、言えない事なら、無理に言わなくても良いからね」

『いえ。話しても良いと、許可は貰っているので、大丈夫です。実はーー』

 ソラがそう言って、今までいなかった間にあった事を説明してくれた。


 ーーしかし、実はキラリが聞いた事は殆どが嘘だった。
 真実は、こいう感じだったーー



 ◆◆◆◆◆◆



「臨時報告お願い」

 そう喋り掛けて来たのは、私を創り、キラリ様に加護としてお付け下さった、全ての世界の女神、ルナ・へーラー様だった。

「はい。キラリ様は、天之尾羽張神の試練の迷宮を順調に登り進めております。現状は、罠に引っかかってしまい、八十九階層から、百階層まで転移してしまい、そこの階層ボスの試練を受けているという状況です」
「はぁー……キラリ君らしいっちゃらしいけど。まぁ、無事ならそれで良しだね。あと、今後はそいうのは止めたあげてね。キラリ君、勝手に突っ走って行くところあるから。……その表情だと、もしかして、もうやっちゃった系?」
「はい。ルナ様のお言葉を借りると、やっちゃった系ですね」

 そう話すと、「もっと早くに言っとけば……」とルナ様が後悔してらっしゃった。

「なら、次は強引にでも、止めなきゃね! 対策♪ 対策♪ ほら、早く、こっちで考えるよ」

 そう仰られると、私の手を引くルナ様に付いていき、別の部屋へと移動した。




「さあっ、【キラリ君会議】始まり、始まり。『パチパチ、パチパチ』」

 部屋へと移動すると、その部屋の真ん中にはテーブルが置いてあり、手前にルナ様、奥に私という座り方で座った。
 私が座るのを確認すると、ルナ様が会議の始まりの挨拶をした。
 あの『パチパチ、パチパチ』は、私がやっている。
 ルナ様の気が下がらない様にする為にだ。

「それでキラリ君が、強引に一人で突っ走っていかない様にはどうすれば良いのかが、今回の会議内容だね。何か提案ある? ソラ」
「はい。私が止めるというのはどうでしょうか?」

 さっきから、私はそうすれば例えキラリ様でも、止められると思っていた。
 しかし、この提案には欠点があった。

「それは無理だよ。だって、レベルが上がらないと、その姿にはここ以外では、なれないから。まだ、レベルニでしょう。四ぐらいなら、身体を向こうの世界に実体化出来るけど」

 この姿で、キラリ様に会いたい、という、願いを私はもっていた。
 しかし、レベルを上げない限り、向こうの世界では、実体化する事は出来ない。

 だから、それが叶うのは、私は、まだまだ先だな、と思っていた。
 だって、

「キラリ様は、レベルを上げる気など全くない」
「キラリ君は、レベルを上げる気などないからねー」

 と、私とルナ様は、思っていたからだ。

「で〜も。そこを可能にするのが、私ーー女神の役目だよ」
「そう、言われましても、対策なんてあるんでしょうか?」
「チッチッチ」

 ルナ様が、私の疑問に対して、指を時計の針が動く様にして振り「詰めが甘いね〜」と仰られた。

「貴方を創ったのは、誰だった?」
「ルナ様でございます」
「そうでしょ。なら、ちょっと設定を弄るぐらい、ちょちょいのチョイだよ。から、少し待ってて」

 そう私に、仰られるのと同時に、ステータスを開かれた。
 私は……言われた通り待って置こう。







「出来た! やっと終わった〜」
「お疲れ様です。して、どの様に設定を変えられたのですか?」

 私は早速、変えられた設定について聞いた。

「ふっふん〜。聞いて驚け、見て笑え!」
「笑うのですか?」
「いや、ネタだよ!? まぁ、通じないとは思ってたけど……そんな事より、弄った設定はーー」

 失礼かも知れないが、感情豊かで、疲れるだろうなぁ、そう思ってしまった。
 そんな事、今は関係ないので、ルナ様が変更した、設定をしてみる事にした。

「ステータス」

 そして、下にある、ボタンのONに手を伸ばし押した。

 ルナ様の説明によると、この、ON/OFFボタンは、ONにすると、この姿で向こうの世界に行けるそうだ。
 OFFにすると、頭の中に声が入る。
 ので、今まで通りとの事だそうだ。

 これをしたので、レベルが上がった時の、ボーナスを一から変更したそうだ。
 それに伴い、レベルは一になったそうだ。

 しかし、このレベルニの能力は持ったまま、レベル 一に戻るとの事なので、特に心配はしなくても良いと、私は思っている。

 他には、《データベース》と言う賢者スキルの上位版【世界の真理】と言うのを付けてくださった。
 この【世界の真理】は「全ての知識がまとめて入っている本、みたいなものよ」とルナ様に言われた。

 実際に使ってみ、確かめることにし、「◯◯はどこ」と頭の中で問うと、「それは、◯◯にあります」と返ってきた。
 他にも「キラリ様の様子」と問うと、言葉では無く、映像が頭に流れて来た。

 他にも検証してみて分かったのだが、いつ、どこで、何、とかの質問だと、言葉で。
 誰、とかの質問だと映像で、返って来る事が分かった。

「大体、扱える様になりました」
「ほう。なら、これで、キラリ君のアシストが出来るね」

そうだ。
これでやっとキラリ様のお役に立てるんだ!

「じゃあ、帰ってよし! そんで直ぐにキラリ君の所に行く事!」
「はいっ! 行ってきます!」

私は椅子から立ち上がり、ルナ様に頭をペコッと下げてから、瞬間移動ならぬ転移でキラリ様のところまで行った。

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