Suicide Life 《スイサイド・ライフ》

ノベルバユーザー203842

■第10話:神崎裕翔■




ここで、神崎裕翔について話そう。


神崎裕翔、現在18歳と6ヵ月、専業主婦(ほぼ奴隷)。
高校は高一の夏休みまでは通っていた…
学校は“退学”…

何故、裕翔は退学になってしまったのか。

それは、裕翔が所属していた部活内でのイザコザに原因があった。

東京武蔵高等学校とうきょうむさしこうとうがっこう…通称、武高ぶこう…裕翔が通っていた高校だ…

武高は、剣道部が全国大会で10年連続優勝している名門校だ。
どのくらい強いかと言うと、対戦相手は一本も取れずに敗退するレベルだ…
因みに、裕翔の母親は武高出身だった…

裕翔はそもそも、剣道がそこまで好きではない。
部活など、本当は入りたくはなかった…だが、黒薔薇の剣姫の息子ということで、勧誘のラッシュと母親の威圧に負け、仕方なく、入部したのだ。

やる気が無いのに入部したのだから、部活はほとんどサボり気味、活動したとしても、上の空であった…

その姿を見た大会を目前とした先輩達は、気にしないようにするが、裕翔の中学時代の剣道の実力、剣道個人部門全国大会優勝、その実力を持て余している裕翔を見ると、やはり、癪に障るのだ…

そんな、先輩達の視線も気付かず、気だるそうに道場の窓辺で惚けていた…

そんな裕翔に一つだけ“大切にしていた物”があった。


それは、“銀色の歯車で作られた、懐中時計のような形をしたペンダント”である。


幼い頃に手にしたものらしいが、何時何処で手に入れたのかは、裕翔も忘れてしまった…

それを、裕翔は大切そうにいつでも、肌身離さず首から下げていた。


だが、裕翔が、そのペンダントを首から外す、唯一の時間があった…


“剣道部”…


剣道の防具を着るには、ペンダントは邪魔になり、そして、危険であるため、顧問の教師からも、外すように言われていた…

仕方なく、裕翔は部活動時のみ、ペンダントを更衣室の自分の鞄の中にしまっていた…


そして、夏の大会を控えた、ある日…“事件”は起きた…


ペンダントが鞄から消えたのだ。


背筋が凍るように寒くなり、焦りが生じる…

裕翔は、勢いよくカバンの中身をぶちまけ、再度確認をする。だが、やはり見つからない。

じゃあ、道場周辺か?

有り得ない。ペンダントはここ以外で外す事など絶対にしない…

だが、有り得ないと分かっているが、それでも、もしもを考え、外に駆け出し、普段自分の歩いている道を探し回る。

見つからない。

じゃあ、校内?

探し回るが、やはり、見つからない。


では、何処にあるんだ…?


再び道場に戻ってきた裕翔は、再び更衣室を探す…


すると、探している途中、ガチャりと、扉が開いた。

先輩達6人が面以外の防具をつけたまま更衣室に入ってきた。

「何をしとるんや」と先輩達の中の1人が言った。

「先輩方には関係ないことだ。邪魔するな。」

と、敬語など無視して構わずペンダントを探す…



“チャリン”……



扉の方で、小さな金属がぶつかり合うような音がした…

パッと振り向くと、そこには…


「関係ない?これを見てもか?」


と、不吉にニヤけた先輩達の1人、一番図体がデカイ、声のよく響く先輩が手で銀色のペンダントをつまみ上げ、ゆらゆらと揺らしていた…


“俺の”ペンダントだった…


スクっと立ち上がり、ソレに手を伸ばす。
だが、先輩はそれを阻止するように、ヒョイっと上に持ち上げた…

裕翔はギロりと先輩達を睨み「何のまねだ」と怒り混じりに言う。

「そんなにコレが大切か?」

「ああ。」と素直に答える…


「これが欲しかったら面に出ろ、“稽古をつけてやる”」


「はっ!先輩方が俺に稽古?先輩方が教えることなどあるんですか?」

と挑発する…が


「コレが惜しかったら、さっさと面に出ろ。命令だ。」


と殺気を込められたその言葉ときらりと光らせるペンダントを前に、裕翔は大人しく従うしかなかった…



■ ■ ■



先輩方に連れ出されたのは道場の裏、人気が少ない静かなところである…

カランカランっと音を立て、一本の竹刀が目の前に放り投げられる…


「取れ。構えろ。」


先輩方、“全員”が竹刀を握り、そのうちの1人がそう言った…

大人しく、竹刀を拾い“片手”に握る…

先輩方はそれを見ると舌打ちをしたが、ニヤリとと笑い、ペンダントを持った先輩が竹刀を片手に握りかえ、ペンダントに竹刀を向ける…


「いいか、よく聞け。
コレが目に入るな?
コレを無事返して欲しければ…“竹刀を振るな”。」


それは、裕翔を可愛がる…もといい、リンチにするという宣言であった…

ペンダントを持った先輩以外が、竹刀を構え、力強く前に駆け出す…

「面!!!!!」

「胴!!!!」

「甲手!!!!」

鋭い一撃が、次々に体に打ち付けられる。
流石、選抜だけあって、一撃の重みが違う…
打ち付けられる度に骨が悲鳴をあげる…

だが、先輩方は次々に竹刀を打ち込んでいく…

体に打ち付けられる度、自然と体が反応してしまう…が、目の前でチラつかせるペンダントが目に入ると、無理やり体に言い聞かせるように、その攻撃、全てを受ける…

「面ッ!!!!!!」

「胴ッ!!!!!!」

「甲手ッ!!!!!!」

先輩方の竹刀の雨は次々に体を打ち砕いていく…

一撃、肋辺りに竹刀が打ち込まれた瞬間…


「…ウグッ!!!!」


鈍い音を立てながら、膝を付く…


「ハッハハハ!!!此奴肋折れやがった!!!!」

「ヒャッハハ!!ざまぁwwww!!!!」

「黒薔薇の剣姫の息子も可愛がられると只のゴミクズだな!!!!」

「何だその顔は?やれるもんならやってみろ!!!!
手ぇ出した瞬間、テメェのたぁーいせつなペンダントは処刑だけどな?」

「“部長”の一撃はイテェぞ~」

「あのペンダントなんか1発で木端微塵だけどな?
ヒャハハwww」


ペンダントを持っている先輩は剣道部部長らしかった…


「…まぁ…こんところ…誰かに見られたら、先輩方の人生は終わりですけど…ね…」


肋を抑えながら、毒づくと、先輩方は冷めたような顔をした後、そのうちの1人が肋を上から、強くかかとを落とした…

「…ぁああ!!!!」

「テメェ…調子に乗ってんじゃねぇぞ、おい。」

「立場わかってますぅ?ボクぅ?」

「現状理解が遅いですなぁおい!!!!」

もう一人の先輩が、強く蹴り上げる…

「ぁああああ!!!!!!」

激痛に悲鳴をあげる…

それに追い討ちをかけるように、竹刀を打ち付ける。
打ち付けられる度に、鈍い音を立て、体が少しづつ体が砕けていく…

道場裏に響く鈍い音と、悲鳴が、人知れず鳴り響いた…



■ ■ ■



それから数10分後…


「……ぅぐ…」


裕翔は何度も叩かれ、何度も蹴られ、何度も殴られ…
骨は何本か折れ、体はもうボロボロだった…


「ヒャハハ!!!!ザマァないね?」

「コレで少しは真面になるかなぁ?」

「また、ふざけた態度とったらいたぶってやるよ。」


先輩方は高笑いしながら、裕翔の頭をグリグリと踏みつける…


「……返…せ…」


「ああん?」

「早く…ペンダントを…返せ…!!」


「……。」


部長がゆっくりと前に歩き、裕翔の目の前に来ると…
力強く、裕翔の顔面を蹴り上げる…

「…ぐあっ…!!」

蹴り上げられた、裕翔が転がった先に再び走り込み、サッカーボールの様に蹴り上げる…

それを二三度繰り返した後、倒れ伏した裕翔の目の前でしゃがみこみ、前髪を引っ張りあげ、無理やり、目線を合わせさせる…


「おい…まだ分かってねぇのか。

“返してくださいお願いします”

だろ?」


「………返し…て…」

「ああん?聞こえねぇなぁ。」

「返して…ください…お願いします…」

部長が不吉に笑うと、前髪をパッと離し、スクっと立ち上がる…


「ああ、いいぞ。返してやる…“破壊した後にな”…」


「…やめ…!!」


ガッシャーン!!!!と音を立てながら、部長は竹刀を容赦なく振り、ペンダントが裕翔の目の前で砕け散る…

「…嗚呼…」

その破片が、ポロポロと地面に落下するのを目にしながら、それと同時に、目から涙が溢れる…

いつ手にしたのか…

いつ貰ったのか…

全く覚えていないにも関わらず、涙が止まらない…

涙が零れると同時に、ソレを奪った先輩方への怒りが溢れ出る…


「ヒャハハ!!ナイスバッティング!!部長!!」

「スッゲー!!粉々じゃん!!」

「ざまぁwwww」

「明日、部活。来なかったらお前の体にこれを撃ち込む。分かったか?」

と、言い放った後、先輩方は裕翔に背を向け、道場に入ろうとした…


“チャリ”…


「ああん?…なっ!?」

先輩方の1人がチャリという音に振り向くと、仰天した…

「ああ?どうした?…」

「嘘だろおい…」

「マジか…」

先輩方が一人挙げた声に、次々に振り向き、一人目と同じように仰天する…
部長は1人、黙ってそれを見ていた…

先輩方の視界には、フラフラと蹌踉めきながらも、砕かれたペンダントの破片を拾う、裕翔の姿があった…

それを全て拾い終わり、裕翔が片手に握られた破片を見るともう片方の手に握られた竹刀を強く握る…


「……ろ…」


「ああん?」


「全員、竹刀を構えろ…」


裕翔が発したその言葉に、1人が吹き出した。

「プッ、ハハハハ!!構えろ?構えろっつったか此奴!!」

「そんなボロボロの体で勝てると思ってんですかぁ?」

「倒れそうでも立ち上がる、ボクぅカッコイイでチュねぇ~(笑)」

挑発を繰り返す先輩方に殺気のこもった声で、裕翔は言った…


「負けるのが怖いんですか…?先輩方…」


「「「「………。」」」」

その言葉に、先輩方は目の色を変えたように、竹刀を構えた…

「舐めた口聞いてんじゃねぇぞ!!おい!!!!」

と1人が勢いよく前に飛び出した…
それに続く様に先輩方が次々に飛びかかる…

一人目の先輩が「てぇらぁ!!!!」と声を上げながら面を狙ってきた…
もちろん、竹刀は先輩の頭の上から振り下ろしている…

要するに、このタイミングで裕翔は面を打てない…
打ったとしても竹刀と竹刀がぶつかり合うだけである…

だが…

「「面ッ!!!!!!」」

と先輩と裕翔の声が重なった…

その声の後、1人目の先輩の後に続こうとしていた、先輩方の動きが止まった…
まるで、時間が止められた様に止まった…

何故なら、その1発の面の撃ち合いで、その二人の勝負が決したからだ…

カランっ…と地面に竹刀の“破片”が転がった…

竹のクズと共に、“鮮血”が飛び散った…

ドサりと“1人目の先輩は膝を付いた”…

それを避けるように、裕翔がその後にいる先輩方の方へ近づく。

裕翔が1人目の先輩を通過した瞬間…

1人目の先輩は白目を向いて、頭から血を出して前に倒れた…

倒れたと同時に、1人目の先輩の手に握られた、“竹刀の残骸”が地面に転がる…


「さっさと、かかってこい…稽古をつけてやるんじゃなかったんですか?」


「くっ…!!なめんなよ!!」


と、二人目の先輩が、“突き技”を構える。


「「胴ッ!!!!!!!!!!」」


突いた瞬間…先輩の手から竹刀が消え、その代わりに肋に強い打撃が与えられ、横に吹っ飛んだ…


「巻き上げからの居合…」


一人、部長がそう呟いた…


「よく見てますね…居合は普通、居合道の技だが…剣道でも使っていけないという決まりはない…
だから、小さい頃、剣道でも使いやすいように、居合を研究し、改良したんだ。
それと、突き技は今の剣道では危険すぎるため禁止されているはずですが…知らなかったんですかね?
この“雑魚ザコ”は?」


雑魚という言葉に部長がピクリと反応した。

部長が竹刀を構え、間合いを詰めた…

「覚悟はできてるだろうな…」と部長は威圧を込めた言葉を発した…

裕翔は「ああ…」とそれを肯定し…


「テメェを捻り潰す覚悟はできている。」


と、溢れ出さんばかりの殺気と共に、片手の竹刀を構え、一気に間合いを詰めた。

「面ッ!!!!!!」

と部長が間合いを詰めた裕翔を叩き落とす様に竹刀を面目掛けて振り下ろした。それを裕翔は軽々と受け止め、そして、受け止めた竹刀に滑らせるように、自分の竹刀を押し返しながら前に突き進む。

「-ッ!?」

それに驚いた部長はパッと自分の竹刀を裕翔の竹刀から離す。
が、既に裕翔の目的は達成されていた…

竹刀を滑らせながら、部長の正面を通過し、部長の死角に飛び込んだ…

そして、握られた竹刀と反対の手の方向に弧を描く様に腰に構える。

その姿は紛れもない、侍の居合斬りの構えそのものである…


「胴ッ!!!!!!!!」


威勢のいい声と共に、部長の腰に竹刀を打ち付ける。

そして、それを食らった部長は呻きながら吹っ飛び、倒れ伏した…

「バケモンだ!!!!」

「か、勝てるわけねぇ!!!!」

「逃げろ!!!!」

それを見ていた他の先輩方は部長が倒されたのを見ると、恐れ戦き、逃げ出した…

その先輩方を見た裕翔は、それを追うように走り、逃げ遅れた先輩の背中を斜めに斬り裂く様に竹刀を打ち付けた。

それと同時に、先輩の着ていた服が摩擦により破け、肌に斜め一直線の傷を血と共に描いた。

斬り裂いた後に、他の先輩方を追おうと思ったが、既に逃げ去ってしまった…

呆然と立ち尽くした裕翔は振り返り、先輩方の倒れ伏す姿を二度三度見た後、竹刀と反対の手に握られたペンダントの破片を見る…

やはり、完全に壊れていた…

修理も出来ないほど粉々だった…

その怒りと悲しみを晴らすべく、倒れ伏し、横たわる先輩方に追い討ちをかけるように竹刀で殴りつける…

何度も何度も…

自分のやられたように…

「ごめんなさい」と急に泣きながら謝ってきた先輩もいた…

そんな言葉なんかいらない…

返せよ…

返せよ…!!

俺の宝だぞ…!!

俺の………っ!!!!!!


ふと、竹刀を振り上げ打ち付けるのをやめた…


“疑問”に思ったからだ。


何故大切なんだ…?


何故俺の宝なんだ…?


「嗚呼…」と声を上げた後、裕翔は“思い出した”。


「嗚呼、そうか…コレは“あの時”、“あの子”から貰ったんだ…
確か名前は……」


と言おうとした瞬間。


「何しているっ!!!!」


という声と共に、竹刀を無理やり手放され裕翔は、地面に倒され、取り押さえられた。

誰だ?と思い、地面に抑えられながら、その顔を見ると、それは怒りに燃えた、剣道部の顧問の先生であった。

その後、何人かの教員が入ってきて、「大丈夫か!!!!」と倒れ伏した先輩方を運び出し、暫くすると、救急車まで来た…



■ ■ ■



数日後、裕翔は会議室に呼び出された。

理由は簡単。先日の事だ。

それから、何人もの教員に睨みつけるような眼光を受けながら、先日の事を裕翔が話した後、狸親父の様な校長はこう言った。


「神崎裕翔君。君を“退学処分”とする。」


「はぁ?何言ってんの?
悪いのは先輩方だろ!?何で俺が退学なんだよ!!」

「君は、君がしたことがわかっていないのかね?
ああ、そうか、まだ、君には話していなかったね。」

と校長はそう言うと、一枚の封筒を取り出し、その中から数枚の写真を取り出した。

“レントゲン写真”だ。

「あの後、救急車に運ばれた後に直ぐにレントゲンを撮ったんだよ。
その結果、部長の山崎君は腰の右股関節の骨折。“後遺症”が残るそうだ。もう、剣道はできなくなる。
次に倉井君。倉井君は肋骨三本、腕の尺骨の骨折。
広田君は頭蓋骨に亀裂骨折。」

次々にレントゲン写真を見せられ、裕翔はこう言った。

「骨だったら、俺も折れてます。肋骨二本と足の脛、腕も折れた。」

と言って、体に巻かれた包帯と固定器具を見せつける…

だが、校長は「はぁー」と溜息をついた後、「最後に…」と言って、裕翔の目の前に一枚のレントゲン写真を放り投げた。


「そのレントゲン写真に写っているのは倉橋君。
背骨の骨折。要するに、“脊椎損傷”というやつだよ。」


その言葉に裕翔の顔は見る見るうちに青ざめた。

脊椎損傷
脊髄損傷とは、主として脊柱に強い外力が加えられることにより脊椎を損壊し、脊髄に損傷をうける病態である。
また、脊髄腫瘍やヘルニアなど内的原因によっても類似の障害が発生する。
脊髄を含む中枢神経系は末梢神経と異なり、一度損傷すると“修復・再生されることは無い”。

つまり、治療法は“無い”という事だ。


「レベルはTH12、自力で歩くことは難しいそうだ。
車椅子無しでの生活は不可能だろうな。
まぁ、実際は彼らの自業自得だが、神崎君をリンチにしようとしたが、返り討ちにあい、重症。
神崎君からして見ればいい迷惑だろう?
だが、君のしたことの罪は重い。
元々は人を殺すための武術、だから怪我をするのはしょうがない事だ。
でもね、限度があるんだよ。
君には一生働いても返せない罪を犯したんだよ。
まぁ、良かったことに、倉橋君の母親は裁判にはしないそうだ。
君持っていた銀色のペンダントだが、調べたところによると、あれは“白金”、“プラチナ”で出来ているそうだ。
まぁ、君は知らなかったようだが。
君は“傷害罪”。彼らは“傷害罪”と“器物破損外罪”、それと、君のペンダント、つまり、君の財産を盾にして脅した罪、“脅迫罪”。
彼らが裁判で負けてしまうんだよ。
君にペンダントをくれたお友達に感謝することだね。
だが、学校としては君達を見過ごすことは出来ないんだ。
君は退学処分。
彼らは怪我の状態が良くなってから決めるよ。
分かったかな?」


校長の言葉にグウの音も出なかった…


そうして、神崎裕翔は東京武蔵高等学校を去ったのだ…

そして、その日からだ…両親が裕翔を見る目が変わったのは…


数年後、裕翔は親の虐待、威圧によりこの世を去った…


■ ■ ■



そして、現在に至る…


神崎裕翔は体が凍るように冷たく冷えていた。


神崎裕翔は、異世界でも命を落としたのだ…




『言ったはずだよプレイヤーさん?君は死ねないんだよ?
君達、プレイヤーは私の手のひらで踊り続けなければならないんだよ?
二カカカ☆』




■ ■ ■



耳に機械音のような、ピッピッピ…というような音で目が覚めた。

何故か瞼はやたらと重く、体も動かない…

息をする度にコシューと音が聞こえる…

ゆっくりと瞼を開けると、知らない天井が目に入る…


「ここは…何処だ…?」


ゆっくりと首を動かして辺りを見ると…


「-ッ!?」


ベットの隣で、自分の大嫌いな“母親”が寝ていた…


「失礼しまーす。」と言う声とともに、扉が開かれ、見知らぬ女性が入ってきた。


「裕翔君のお母様、間もなく…ッ!?
先生!!先生!!神崎裕翔君が目を覚ましました!!」


その声に母親が目を覚ましました。

ハッとなり隠れようとするが、体が思うように動かず、ベットから落下する。
その間、何かプチプチと胸から外れたが、それどころでは無かった。

「…痛い…ッ!!」

頭を抑えながら、目を開けると、母親が視界にいた…

殴られると思い強く目をつぶる…だが、痛みは何時まで経っても訪れず、それどころか、温もりに包まれた…


「ごめんね…裕翔…!!ごめんね…!!」


泣きながら、母親は裕翔を抱きしめた…


「…え…?」


母親の急変に困惑する裕翔だが、それと同時にあることに気がついた…



ここは…“元の…世界”…?


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