TUTORIAL-世界滅亡までの七日間-
第13話-神器-
「さて、多少の違いはあったが無事に神器も手に入れた。そしてそろそろ」
「ダンナのとこに、まぁ向かい側の部屋にメイド魔族が来るってことやな。」
私たちは神器を受け取り、国王様から7日間というタイムリミットを告げられた後、各部屋に案内されたが、そこから拳成君を部屋に残して残りの皆はその向かいの阿樟君の部屋に集まっていた。
そこで息を潜め、メイドが拳成君に接触してくるのを待つこと数時間。
「あ、誰か来た。」
夜も更け、城のみんなも寝静まった頃、私の広げた探索の魔法にこちらに向かってくる人の気配が。
私の言葉を聞いて、みんなも表情を引き締める。
キィンッ
「・・・?音が聞こえなくなった?もう部屋の前に着いたのか?」
私たちが、向かいの部屋の会話を聞くために耳をそばだてていると、廊下から僅かに聞こえていた床の軋みが聞こえなくなる。
「いや、まだ歩いてるけど、音だけが聞こえなくなってる。多分、魔族が遮音の魔法を使ったんだと思うけど。」
答えつつ私は神器を取り出す。
「"魔法創造"、<虚なる勇者が命じる。秘め事をここに書き写せ。>"魔法命名"、"隠し事はすぐバレる"。」
私はすぐに新たな魔法を造り上げ、私に与えられた神器である神の秘書を広げる。
アルス・ノトリアを開いて少し待つと、白紙のページにジワジワと文字か浮かび上がる。
<コンコン>
<夜分遅くに申し訳ございません。鞍馬様にどうしてもお会いしたいという方がいらっしゃっていますが、どういたしましょうか。>
<勇者に、ではなくて俺にですか?>
<はい。>
<その人は信用できる人ですか?>
<そうですね、お城に良く品物を売りに来ていただいている商人さんですので、信用はできるかと思います。>
<取り合えず会いに行きます。>
アルス・ノトリアには二人の会話から擬音に至るまで記される。
これが私の新たな力。
アルス・ノトリアの魔法創造だ。
これは私の想像した魔法を虚属性魔法として生み出すことが出来る。勿論唱えるだけで相手の命を奪ったり、死者を蘇らせる魔法とかは造れないし、既存の魔法は新たに生み出せない。
それに、生み出す魔法は発動から効果を現すまでを正確に想像出来なければならず、私の持つイメージへの難易度に比例する魔力がなければならない。
便利だが、色々と制限が多い魔法だ。
そして今回生み出した魔法、隠し事はすぐバレるは本来届かない場所の音声をアルス・ノトリアへ書き記すだけの魔法だ。
この魔法を使用するには、音声を聞きたい場所の座標が分かっていないと無理であるが、今回は扉の真ん前だ。
というか、拳成君よ、相手の正体を暴かなければならないからっていっても少しあっさりと信じすぎなんじゃないかい?
<ガチャ>
<鞍馬様っ!>
<なっ、えっ!何を!?>
<申し訳ありません、今の話は嘘なのです。>
扉を開けた拳成君が困惑している。
正体でも現したかとも思ったが、仮にそうなら拳成君が神器を発動してるはずだ。
まさか・・・
「魔族のやつ、正体を現したのか?」
「いや、多分今、扉の前ではラブストーリーしてるんじゃないかな?」
剣慈君の言葉に私は思い付いた可能性を述べる。っていうか、リーさんも言ってたな。過去の勇者たちは魔族に嵌められるか背中を刺されるかしたって。
今回は刺されるパターンか。
<実は私、この城に仕えてから何度も国王の寝所へ来るよう声がかかっているのです。ですが、その度にお断りをしていて、もうそろそろ強引な手に出るんじゃないかと不安で夜も寝られなくて。>
話の流れにみんな同じように微妙な顔をしている。
そりゃそうだ。今日はじめてこの世界に来た勇者にする相談じゃないよ、これ。
流石に拳成君も呆れ顔に・・・
「そうだったんですか。なら俺に任せてください!国王様を説得してみます!」
んんっ!?
拳成君、演技に熱が入りすぎじゃない??
意外と演技派なのかい?
私たちはついつい扉の外の声に耳を傾ける。あれ?"隠し事はすぐバレる"の効果が切れてる。
「よろしいのですか?拳成様はまだこの世界に来たばかりで何もしがらみがないのですよ?」
「そんなことは関係ありません!俺が必ず「エエ加減にせんかいっ!」ぐはっ!」
拳成君の言葉に耐えきれなくなった聡介君が扉を開けて・・・ない?
拳成君に突っ込んだ台詞が関西弁だったからてっきり聡介君かと思ったら、聡介君も隣で目をパチクリさせている。
「だ、誰!?」
「いってぇなぁ!いきなり何するんだ、四葉!」
「何するんだ?それは私の台詞やわ!何べんこの女に騙されりゃ気が済むねん。こんな行き遅れの格好した女にあの渋めの国王が声掛けるわけないやろ!」
「どこに居るの!出てきなさい!」
どうやら四葉という声の主が、魔族に騙され掛けていた拳成君の気を取り戻させたようだ。
「女の声?」
「鞍馬の知り合い、なわけないよな?」
聞き耳をたてている私たちも声の主の正体に心当たりがなく困惑する。
「裕美、何か知ってるのか?」
そんな中、裕美さんだけが訳知り顔だった裕美さんに剣慈君が声を掛ける。
「知っているも何もみんな神器を受け取ったときに聞いてないのか?彼らが力を貸すと。」
「いや、聞いたけど。それは神器を強化する的な意味だろ?」
「どうやって強化する?」
「どうやってって、そんなん神器与えてくれるときに神器に・・・それか?」
裕美さんの言葉で聡介君が答えに辿り着く。
神器に過去の勇者が・・・ってことはリーさんも?
「あぁ、言い忘れてたね。っていっても、ピンチになるまでは黙っているつもりだったんだけど、先に四葉ちゃんが出ちゃったか。」
私の心の声に神器がリーさんの声で喋りだす。
「本がっ!」
「いや、真帆ちゃんの神器、ってことは昔の真帆ちゃんと同じ属性の勇者?」
「正解だよ。今代の風の勇者君。確か、君の担当は桜さんだね。彼女は多くを語らないだろうから知らないのも無理ないかな?まぁこんな感じで僕達は各々自分と同じ属性の勇者の神器に憑いてるんだよ。」
ドゴッ
リーさんと会話していると壁に何かがぶつかる音がする。
「拳成!」
その音にすぐさま反応した阿樟君が部屋を飛び出す。
彼ってそこそこ拳成君のこと好きだよね。
阿樟君に続いて部屋を出ると、そこには無傷で手に見覚えのないグローブをはめた拳成君と、壁に寄りかかるようにして倒れている魔族の構図。
「違うぞ?これは俺の意思じゃなくて黒羽四葉っていう暴力女子が、「誰が暴力女子じゃ!」ぐはっ!」
拳成君の言葉に反応した黒羽さんが神器を操作して拳成君を殴る。
その神器は拳成君の手にはまってるわけで、つまり、拳成君が女声で腹話術しながら自分で自分を殴り付けているようにしか見えない。
「神器ってあんなに勝手に動くの?」
「いや、彼女は少し、器用でね。他の神器ではああいったことはないから安心して。」
「お?その声はダイヤン?・・・・あーっはっはっダ、ダイヤン。もしかして本が好きすぎて自分まで本にしてもうたん?やば、ツボる。くふっ。」
私の疑問に答えるリーさんの声に反応した拳成君の神器さんは、拳成君に一人コブラツイストを掛けた状態で爆笑する。
それより、関西人ってあだ名付けるの好きだな。
「なんや、真帆ちゃん。あんなんと一緒にせんといてーな。」
「それより、早くこのメイドに化けた魔族を何かで縛らないか?」
そんな騒がしい深夜の廊下でのやり取りは裕美さんの冷静な一言で幕を閉じた。
「ダンナのとこに、まぁ向かい側の部屋にメイド魔族が来るってことやな。」
私たちは神器を受け取り、国王様から7日間というタイムリミットを告げられた後、各部屋に案内されたが、そこから拳成君を部屋に残して残りの皆はその向かいの阿樟君の部屋に集まっていた。
そこで息を潜め、メイドが拳成君に接触してくるのを待つこと数時間。
「あ、誰か来た。」
夜も更け、城のみんなも寝静まった頃、私の広げた探索の魔法にこちらに向かってくる人の気配が。
私の言葉を聞いて、みんなも表情を引き締める。
キィンッ
「・・・?音が聞こえなくなった?もう部屋の前に着いたのか?」
私たちが、向かいの部屋の会話を聞くために耳をそばだてていると、廊下から僅かに聞こえていた床の軋みが聞こえなくなる。
「いや、まだ歩いてるけど、音だけが聞こえなくなってる。多分、魔族が遮音の魔法を使ったんだと思うけど。」
答えつつ私は神器を取り出す。
「"魔法創造"、<虚なる勇者が命じる。秘め事をここに書き写せ。>"魔法命名"、"隠し事はすぐバレる"。」
私はすぐに新たな魔法を造り上げ、私に与えられた神器である神の秘書を広げる。
アルス・ノトリアを開いて少し待つと、白紙のページにジワジワと文字か浮かび上がる。
<コンコン>
<夜分遅くに申し訳ございません。鞍馬様にどうしてもお会いしたいという方がいらっしゃっていますが、どういたしましょうか。>
<勇者に、ではなくて俺にですか?>
<はい。>
<その人は信用できる人ですか?>
<そうですね、お城に良く品物を売りに来ていただいている商人さんですので、信用はできるかと思います。>
<取り合えず会いに行きます。>
アルス・ノトリアには二人の会話から擬音に至るまで記される。
これが私の新たな力。
アルス・ノトリアの魔法創造だ。
これは私の想像した魔法を虚属性魔法として生み出すことが出来る。勿論唱えるだけで相手の命を奪ったり、死者を蘇らせる魔法とかは造れないし、既存の魔法は新たに生み出せない。
それに、生み出す魔法は発動から効果を現すまでを正確に想像出来なければならず、私の持つイメージへの難易度に比例する魔力がなければならない。
便利だが、色々と制限が多い魔法だ。
そして今回生み出した魔法、隠し事はすぐバレるは本来届かない場所の音声をアルス・ノトリアへ書き記すだけの魔法だ。
この魔法を使用するには、音声を聞きたい場所の座標が分かっていないと無理であるが、今回は扉の真ん前だ。
というか、拳成君よ、相手の正体を暴かなければならないからっていっても少しあっさりと信じすぎなんじゃないかい?
<ガチャ>
<鞍馬様っ!>
<なっ、えっ!何を!?>
<申し訳ありません、今の話は嘘なのです。>
扉を開けた拳成君が困惑している。
正体でも現したかとも思ったが、仮にそうなら拳成君が神器を発動してるはずだ。
まさか・・・
「魔族のやつ、正体を現したのか?」
「いや、多分今、扉の前ではラブストーリーしてるんじゃないかな?」
剣慈君の言葉に私は思い付いた可能性を述べる。っていうか、リーさんも言ってたな。過去の勇者たちは魔族に嵌められるか背中を刺されるかしたって。
今回は刺されるパターンか。
<実は私、この城に仕えてから何度も国王の寝所へ来るよう声がかかっているのです。ですが、その度にお断りをしていて、もうそろそろ強引な手に出るんじゃないかと不安で夜も寝られなくて。>
話の流れにみんな同じように微妙な顔をしている。
そりゃそうだ。今日はじめてこの世界に来た勇者にする相談じゃないよ、これ。
流石に拳成君も呆れ顔に・・・
「そうだったんですか。なら俺に任せてください!国王様を説得してみます!」
んんっ!?
拳成君、演技に熱が入りすぎじゃない??
意外と演技派なのかい?
私たちはついつい扉の外の声に耳を傾ける。あれ?"隠し事はすぐバレる"の効果が切れてる。
「よろしいのですか?拳成様はまだこの世界に来たばかりで何もしがらみがないのですよ?」
「そんなことは関係ありません!俺が必ず「エエ加減にせんかいっ!」ぐはっ!」
拳成君の言葉に耐えきれなくなった聡介君が扉を開けて・・・ない?
拳成君に突っ込んだ台詞が関西弁だったからてっきり聡介君かと思ったら、聡介君も隣で目をパチクリさせている。
「だ、誰!?」
「いってぇなぁ!いきなり何するんだ、四葉!」
「何するんだ?それは私の台詞やわ!何べんこの女に騙されりゃ気が済むねん。こんな行き遅れの格好した女にあの渋めの国王が声掛けるわけないやろ!」
「どこに居るの!出てきなさい!」
どうやら四葉という声の主が、魔族に騙され掛けていた拳成君の気を取り戻させたようだ。
「女の声?」
「鞍馬の知り合い、なわけないよな?」
聞き耳をたてている私たちも声の主の正体に心当たりがなく困惑する。
「裕美、何か知ってるのか?」
そんな中、裕美さんだけが訳知り顔だった裕美さんに剣慈君が声を掛ける。
「知っているも何もみんな神器を受け取ったときに聞いてないのか?彼らが力を貸すと。」
「いや、聞いたけど。それは神器を強化する的な意味だろ?」
「どうやって強化する?」
「どうやってって、そんなん神器与えてくれるときに神器に・・・それか?」
裕美さんの言葉で聡介君が答えに辿り着く。
神器に過去の勇者が・・・ってことはリーさんも?
「あぁ、言い忘れてたね。っていっても、ピンチになるまでは黙っているつもりだったんだけど、先に四葉ちゃんが出ちゃったか。」
私の心の声に神器がリーさんの声で喋りだす。
「本がっ!」
「いや、真帆ちゃんの神器、ってことは昔の真帆ちゃんと同じ属性の勇者?」
「正解だよ。今代の風の勇者君。確か、君の担当は桜さんだね。彼女は多くを語らないだろうから知らないのも無理ないかな?まぁこんな感じで僕達は各々自分と同じ属性の勇者の神器に憑いてるんだよ。」
ドゴッ
リーさんと会話していると壁に何かがぶつかる音がする。
「拳成!」
その音にすぐさま反応した阿樟君が部屋を飛び出す。
彼ってそこそこ拳成君のこと好きだよね。
阿樟君に続いて部屋を出ると、そこには無傷で手に見覚えのないグローブをはめた拳成君と、壁に寄りかかるようにして倒れている魔族の構図。
「違うぞ?これは俺の意思じゃなくて黒羽四葉っていう暴力女子が、「誰が暴力女子じゃ!」ぐはっ!」
拳成君の言葉に反応した黒羽さんが神器を操作して拳成君を殴る。
その神器は拳成君の手にはまってるわけで、つまり、拳成君が女声で腹話術しながら自分で自分を殴り付けているようにしか見えない。
「神器ってあんなに勝手に動くの?」
「いや、彼女は少し、器用でね。他の神器ではああいったことはないから安心して。」
「お?その声はダイヤン?・・・・あーっはっはっダ、ダイヤン。もしかして本が好きすぎて自分まで本にしてもうたん?やば、ツボる。くふっ。」
私の疑問に答えるリーさんの声に反応した拳成君の神器さんは、拳成君に一人コブラツイストを掛けた状態で爆笑する。
それより、関西人ってあだ名付けるの好きだな。
「なんや、真帆ちゃん。あんなんと一緒にせんといてーな。」
「それより、早くこのメイドに化けた魔族を何かで縛らないか?」
そんな騒がしい深夜の廊下でのやり取りは裕美さんの冷静な一言で幕を閉じた。
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