TUTORIAL-世界滅亡までの七日間-
第1話-召喚-
私の名前は嘉多無真帆。
私は今まさに不思議体験真っ只中であった。
私は何時も通り、図書委員の仕事が終わり、図書室の鍵を職員室に返して、これまたいつも通り一人帰路についた。そこまでは覚えてる。
その下校途中、突然の立ち眩みに襲われ、次に目を開けたときには見慣れた登下校路ではなく見覚えのない広間だった。
いや、似たような造りの広間はよく知ってる。
映画でよく見るお城とかにある広間だ。
その証拠に私達の左右には一切の乱れもなく整列した全身鎧を着た者。
彼らの肩が僅に上下している事が置物ではなく人だという証明だろう。
そして何より私達の目線の先、そこにはThe・王様といった風貌のロマンスグレーの顎髭が特徴のナイスガイな少し困惑気味な男性、その横にちょこんとお人形のように佇む儚げな、こちらも少し困惑気味な少女。
私が目を開けてからもう十数秒経つが未だに固まったまんまだ。
もしかして、ハリボテ?
「ごほん。すまない、勇者様方。少し予定外の事が起こったので待たせてしまった。何がなんだかわからないだろうから、まずは食事でもどうかな?落ち着いた頃に人を遣ろう。」
私のそんな思考を困惑から立ち直ったナイスガイな男性の渋い声が引き戻し、私達の先導を左目の泣き黒子がいやらしいおっとりとした雰囲気のメイドさんに任せる。
あぁ、なんて良い声なのだろうか。
私、年上男性に弱いんだよな。
それにこのメイドさん、未亡人感がプンプンするけど、訳ありだったりしないのかな?
案内された豪華な部屋で私がそんなことを考えている内に私以外の私と同じ境遇らしい6人の男女、といっても男5人の女1人だけど。もそれぞれ席につき、目の前の豪華な食事に目を奪われる。
「毒とか入って無いだろうな?」
席につき、開口一番そんな失礼なことを言い出したのはムキムキマッチョで黒髪ウルフヘアーの厳つい男子。ただ、厳ついと言ってもやんちゃという意味ではなく、素で目付きが悪いっぽい感じがする。座る時に椅子を引いてくれた執事さんに小さくお礼を言ってたし。
言ってることは失礼だけど。
「えぇ、勿論でございます。我々の希望である勇者様にそんな非道なことはいたしません。どうしても心配というのでしたら私めが僭越ながら毒味をさせていただきますが。」
そんなマッチョ君の失礼な言葉にも笑顔で答える執事さん。まさに執事の鑑やー。
っていうかまた私達のことを勇者とか言ったよね?
ごく普通の学生だよ?少なくとも私は。
「失礼だよ拳成。せっかく用意してもらったのに。」
その様子を見ていたマッチョ君の隣に座った中肉中背の坊主頭の男子が口を出す。
マッチョ君の名前を呼んだところをみると知り合いかな?
坊主君の気弱そうな雰囲気だけ見たらマッチョ君、じゃない。拳成君のパシリっぽいな。
「わぁーったよ。疑ってすまないな、おっさん。何しろ俺は今のところ、こいつ以外信頼できる相手がいないんでな。」
拳成君はそう言って坊主君を親指で差す。
そんな彼の粗野な物言いにも笑顔で頭を下げる執事さん。
「ほぅ。」
「と、とにかく食べませんか?ほら、折角の料理が冷めちゃいますよ?ね?」
拳成君の信頼できない発言によって少しピリッとした私以外のもう一人の女の子。黒髪ボブの性格がキツそうな、女の子にしては背の高いその子を、その正面に座ったこの中で一番背の低い気弱そうなマッシュで眼鏡の男子、いや、男の子が止める。
くっ、ここも知り合いなのか。
もしかして、ボッチ私だけ?そんなことないよね?
そんな期待を込め、未だ言葉を発さない男子二人を見る。
「ほら、裕美。落ち着けって。お前だって俺と淳以外の人たちのこと、信用しきれていないだろ?」
そんな私の視線に気づかずお局様、じゃなかった。裕美さんに隣に座った黒髪アシンメトリー系イケメンが話し掛ける。
そこもかっ!?そこも知り合いなのか?
も、もう貴方しかいない。
私は最後にすがるような視線を、これまで沈黙を貫いている金髪でツーブロックのチャラ男に向ける。少し、いや、かなり苦手な部類なのだが、もう彼しか望みはないんだ。
「ん?どないしたん?・・・あっ、もしかして君もこん中に知り合い居らん子?よかったぁー。俺もやねん。仲間よーしたってな。」
あっ、この人見た目がチャラいだけでめちゃくちゃ優しいっぽい。
あぁ、私の唯一のオアシス。
「よ、よろしくお願いします。」
私がボッチ仲間を見つけ、裕美さんと拳成君がお互い隣に座る人に宥められ、落ち着いた頃、互いの自己紹介が軽く行われた。
第一グループ
黒髪ウルフのマッチョ君、鞍馬拳成。
中肉中背の坊主頭君、火野阿樟。
第二グループ
黒髪ボブの高身長ドS系女子、氷村裕美。
ミニマムサイズのマッシュで眼鏡の男の子、土居淳。
長身黒髪アシンメトリー系イケメン、光園寺剣慈。
ボッチグループ、・・・グループ?
金髪ツーブロックのチャラ男風関西人、風見聡介。
そして私こと、黒髪ポニテの図書委員長、嘉多無真帆。
自己紹介のあと、僅に緩んだ雰囲気の中、食事が終わり、部屋にノックが響く。
そのノックにいつもの習慣なのかただ単にドアが近かったからなのか、立ち上がろうとした拳成君を執事さんが制し、代わりに扉の外にいる人と二言三言交わして扉を閉める。
多分拳成君って育ちが良いよね。
「皆様。お食事も終わりましたのでそろそろ国王から直々に今の状況説明が行われます。今一度、先ほどの謁見室に戻りましょうか。」
執事さんの先導で再び戻ってきた謁見室。
そこには先ほどと変わらず、部屋の左右に全身鎧を着た人達が並び、部屋の先にナイスガイなタイプの男性と可愛い少女が居た。
「勇者様方。お食事の方はお口に合いましたかな?一応過去の勇者の文献を元に味付けをしてみたのですが・・・その様子だと合わないということはなかったようですな。」
謁見室に入ってきた私達の顔をみて、緊張が解れたことに気づいたナイスガイな男性、この国の国王様が満足げに頷く。
「はい、初めは見たことのない料理だったので困惑はしましたが、味に関しては私達の口に合う、美味しい料理でした。」
そんな国王の言葉に一歩前に歩み出て頭を下げた剣慈君が答える。
うん。イケメンがこういう仕草をするのは中々絵になるね。
っていうか慣れてるな。
「そうか。では、早速君たちが何故、ここに突然来たのか。どうすれば元の世界に帰ることができるか。それを話そう。地図と玉をここに。」
国王がそう言うと左右に控えた数人の騎士がバスタオルサイズの紙を二人掛かりで掲げ、拳サイズの透明なビー玉のようなものを私達にそれぞれ一つずつ手渡す。
地図は、右上の1/3以外赤く塗られている。
「そうだな。何から話したものか。・・・まずは、君たちをここに呼んだのは誰か、ということから話すか。端的に言うと、君たちをここに呼んだのはこの世界の神々だ。」
「神々?って神さまですか?」
国王の言葉に阿樟君が返すが、国王様は首肯で返した。
神様ねぇ。胡散臭いなぁ。
ってことはここもしかしてだけど・・・
「質問良いだろうか?ここは、地球ではないのか?」
私の考えていたことを裕美さんが先に尋ねる。
「地球。歴代の勇者の故郷だな。残念ながら違う。この世界がなんと呼ばれているかはわからんが、少なくとも地球というものではない。証拠は、そうだな。夜になると月が7つ空に輝くことだと過去の勇者は言っていたそうだ。」
月が7つ。なるほど。
星じゃなくて月ならそりゃ地球じゃないね。
願い事は叶ったりしない、よね。
「まぁその事は追々自らの目で確かめてくれ。では次に、呼び出した目的について話そう。神々の目的は常に一つ。魔神側の勇者である4人の魔族の王を討伐、もしくは封印することだ。彼らは魔神の力が最高潮に達する時に現れ、魔神の復活を目論むそうだ。魔神は復活と共に世界を滅ぼし、0から再建する。・・・地図を見てもらえばわかると思うが、赤い部分は過去、魔神が滅ぼし、人が住めなくなった土地だ。なんとかこの国を含むいくつかの国は勇者の結界によって守られ、現在も復興作業が続いている。世界の人口の8割りはその時に滅んだとされている。」
「その魔神の復活を阻止することが神々の目的であり、俺たちがその手段だと?」
そこまで説明を聞き、剣慈君が話を簡単にまとめる。
うん。
私には無理だな。っていうかごくごく普通の高校生に何やらそうとしてるの!神さま!
私はそこら辺の小学生とも相討つ自信しかないんですけど?
「毎回勇者の召喚のタイミングはバラバラだが、勇者は決まって6人呼ばれる。その内の4人。火、風、水、土の属性を持つ者がそれぞれ4人の魔王を倒し、光、闇の属性を持つ者が魔神を封じるとされている。」
「ちょっと待ってんか?そらおかしない?俺らどう見ても7人居るで?」
聡介君が堪らず口を挟む。
確かに。勇者は決まって6人。
でも私たちは7人居る。神様のミス?
「そこで、玉だ。それは手に持って念じることで光を放ち、自らの属性を見ることが出来る。試しに自分の属性を確認してはくれまいか?もしかすると巻き込まれただけの者が居るかもしれんしの。」
それ絶対私だよー。
ほら、剣慈君とか拳成君とか確実に物語じゃ勇者じゃん。
王様の言葉にみんなは渋々、何人かはノリノリで玉を握りしめる。
パァァァァ
玉を握ると、それは白銀の光を放った。
あぁ、光ってしまった。
私は一般人でありたかったのに・・・
「おぉ!光った。」
「キレイだな。」
「ちょっ、俺の色薄ない?」
「まぶしっ、おい、こんな光るなら先に言ってくれよ!」
みんな手元で輝く玉にそれぞれ感想を抱く。
それによく見るとみんな色が違う。
阿樟君は赤色。
拳成君は紫色。
裕美さんは水色。
淳君は黄色。
剣慈君は黄金色。
聡介君は緑色。
互いに光量の差はあれど、玉は確かに光を放つ。
「白銀?」
そんな中、国王は私を見つめて目を見開く。
いや、国王だけでなく隣の少女も、左右の騎士たちも、執事とメイドでさえ私を見ている。
あれ?もしかして私、何かした?
「あの?」
「あ、あぁ。すまない。何しろ白銀というのは聞いたことも見たこともなかったのでな。色は火、風、水、土、光、闇の順に赤、緑、青、黄、金、紫の六色に近くなるはずなのだ。やはり今回の勇者召喚は何らかの異状が起こったと・・・」
「王よ。一つ良いですかな?」
王様の言葉の途中に執事さんが声をかける。
「なんだ?」
「これは私の曾祖父から聞いた話なのですが、過去にも一度だけ、白銀の勇者が現れたことがあるそうでございます。」
「真か?」
「えぇ。ですが、その、非常に言いにくいのですがその勇者は戦場に赴かなかった。いえ、これでは印象が悪いですな。正確には戦場に赴くことが出来るほどの実力が無かったそうでございます。ですから他の6人の戦闘を知識でカバーした、と。」
「なるほど。」
「あの、過去の私と同じ色の勇者が知識で戦闘をカバーした、と聞こえたんですが私、ケンカとかしたこともないし役に立つ助言なんてとても。」
「そうか。呼び出したのはこちらの都合だ。無理強いはできんな。君は城で保護しよう。外に出ると狙われるやも知れんしな。城は安全だと思いたいが、念のため彼女に二人ほど護衛をつけよ。」
私の言葉に国王は執事に指示を出し、居住まいを正す。
「あ、あの。それなら僕もケンカとかし、したことないんですけど。」
国王がこの話を切り上げようとした頃、淳君も手を上げて告白する。
その声に続くように阿樟君、剣慈君も手をあげる。
「あぁ、それについては問題ない。基本の6色の勇者にはそれぞれ神器が授けられ、神器を受け取ったときに過去の勇者の経験がその身に宿るという。もし、神器を受け取った後、それでも無理だと思うのなら彼女と共に城で保護しよう。」
国王は言葉に異議が無いことを確認すると再び説明を戻る。
「では、次に魔神の復活までの時間についてだが、これは非常に言いにくいのだが・・・今日を入れて7日だ。」
「たった7日!?」
「そんな短期間でこの国の人達が倒されへん魔王を倒せ言うんか?そりゃいくらなんでも横暴ちゃうか?」
「そうだな。実践も知らない素人にそれは不可能だろう。」
7日の宣告にみんなざわつく。
が、国王はそれを手で制する。
「安心したまえ。言っただろう?神器を受けとれば過去の勇者の経験が身に付く、と。つまり、神器に触れた瞬間に君たちは素人ながら魔王を倒すことの出来るレベルの実力を手に入れられるのだ。・・・そうだな。何か質問はないか?質問が無いなら先に神殿へ向かい、神器を授けよう。」
「あ、あの。帰れるん、ですよね?」
私は国王が言い忘れている核心をつく。
すると国王の顔は一瞬だけ曇る。
「・・・隠しても仕方がないな。結論から言うと、不明だ。」
「そんな!帰れないんですか?」
「いや、過去の勇者はみんな、魔王を討伐し、魔神に封印を施した後、数日すると消えるのだ。この世界の何処かに転移した、とかではなく、この世界から消えるのだ。勇者は再びこの世界に戻ってくることもない、神々から神託のようなものもない。だから私達はそれを帰還だとしている。」
国王の言葉で私達を重い雰囲気が包む。
「・・・話が重くなってしまったな。では、神殿へ向かおうか。なにもしなければどの道みんな殺される。」
私は今まさに不思議体験真っ只中であった。
私は何時も通り、図書委員の仕事が終わり、図書室の鍵を職員室に返して、これまたいつも通り一人帰路についた。そこまでは覚えてる。
その下校途中、突然の立ち眩みに襲われ、次に目を開けたときには見慣れた登下校路ではなく見覚えのない広間だった。
いや、似たような造りの広間はよく知ってる。
映画でよく見るお城とかにある広間だ。
その証拠に私達の左右には一切の乱れもなく整列した全身鎧を着た者。
彼らの肩が僅に上下している事が置物ではなく人だという証明だろう。
そして何より私達の目線の先、そこにはThe・王様といった風貌のロマンスグレーの顎髭が特徴のナイスガイな少し困惑気味な男性、その横にちょこんとお人形のように佇む儚げな、こちらも少し困惑気味な少女。
私が目を開けてからもう十数秒経つが未だに固まったまんまだ。
もしかして、ハリボテ?
「ごほん。すまない、勇者様方。少し予定外の事が起こったので待たせてしまった。何がなんだかわからないだろうから、まずは食事でもどうかな?落ち着いた頃に人を遣ろう。」
私のそんな思考を困惑から立ち直ったナイスガイな男性の渋い声が引き戻し、私達の先導を左目の泣き黒子がいやらしいおっとりとした雰囲気のメイドさんに任せる。
あぁ、なんて良い声なのだろうか。
私、年上男性に弱いんだよな。
それにこのメイドさん、未亡人感がプンプンするけど、訳ありだったりしないのかな?
案内された豪華な部屋で私がそんなことを考えている内に私以外の私と同じ境遇らしい6人の男女、といっても男5人の女1人だけど。もそれぞれ席につき、目の前の豪華な食事に目を奪われる。
「毒とか入って無いだろうな?」
席につき、開口一番そんな失礼なことを言い出したのはムキムキマッチョで黒髪ウルフヘアーの厳つい男子。ただ、厳ついと言ってもやんちゃという意味ではなく、素で目付きが悪いっぽい感じがする。座る時に椅子を引いてくれた執事さんに小さくお礼を言ってたし。
言ってることは失礼だけど。
「えぇ、勿論でございます。我々の希望である勇者様にそんな非道なことはいたしません。どうしても心配というのでしたら私めが僭越ながら毒味をさせていただきますが。」
そんなマッチョ君の失礼な言葉にも笑顔で答える執事さん。まさに執事の鑑やー。
っていうかまた私達のことを勇者とか言ったよね?
ごく普通の学生だよ?少なくとも私は。
「失礼だよ拳成。せっかく用意してもらったのに。」
その様子を見ていたマッチョ君の隣に座った中肉中背の坊主頭の男子が口を出す。
マッチョ君の名前を呼んだところをみると知り合いかな?
坊主君の気弱そうな雰囲気だけ見たらマッチョ君、じゃない。拳成君のパシリっぽいな。
「わぁーったよ。疑ってすまないな、おっさん。何しろ俺は今のところ、こいつ以外信頼できる相手がいないんでな。」
拳成君はそう言って坊主君を親指で差す。
そんな彼の粗野な物言いにも笑顔で頭を下げる執事さん。
「ほぅ。」
「と、とにかく食べませんか?ほら、折角の料理が冷めちゃいますよ?ね?」
拳成君の信頼できない発言によって少しピリッとした私以外のもう一人の女の子。黒髪ボブの性格がキツそうな、女の子にしては背の高いその子を、その正面に座ったこの中で一番背の低い気弱そうなマッシュで眼鏡の男子、いや、男の子が止める。
くっ、ここも知り合いなのか。
もしかして、ボッチ私だけ?そんなことないよね?
そんな期待を込め、未だ言葉を発さない男子二人を見る。
「ほら、裕美。落ち着けって。お前だって俺と淳以外の人たちのこと、信用しきれていないだろ?」
そんな私の視線に気づかずお局様、じゃなかった。裕美さんに隣に座った黒髪アシンメトリー系イケメンが話し掛ける。
そこもかっ!?そこも知り合いなのか?
も、もう貴方しかいない。
私は最後にすがるような視線を、これまで沈黙を貫いている金髪でツーブロックのチャラ男に向ける。少し、いや、かなり苦手な部類なのだが、もう彼しか望みはないんだ。
「ん?どないしたん?・・・あっ、もしかして君もこん中に知り合い居らん子?よかったぁー。俺もやねん。仲間よーしたってな。」
あっ、この人見た目がチャラいだけでめちゃくちゃ優しいっぽい。
あぁ、私の唯一のオアシス。
「よ、よろしくお願いします。」
私がボッチ仲間を見つけ、裕美さんと拳成君がお互い隣に座る人に宥められ、落ち着いた頃、互いの自己紹介が軽く行われた。
第一グループ
黒髪ウルフのマッチョ君、鞍馬拳成。
中肉中背の坊主頭君、火野阿樟。
第二グループ
黒髪ボブの高身長ドS系女子、氷村裕美。
ミニマムサイズのマッシュで眼鏡の男の子、土居淳。
長身黒髪アシンメトリー系イケメン、光園寺剣慈。
ボッチグループ、・・・グループ?
金髪ツーブロックのチャラ男風関西人、風見聡介。
そして私こと、黒髪ポニテの図書委員長、嘉多無真帆。
自己紹介のあと、僅に緩んだ雰囲気の中、食事が終わり、部屋にノックが響く。
そのノックにいつもの習慣なのかただ単にドアが近かったからなのか、立ち上がろうとした拳成君を執事さんが制し、代わりに扉の外にいる人と二言三言交わして扉を閉める。
多分拳成君って育ちが良いよね。
「皆様。お食事も終わりましたのでそろそろ国王から直々に今の状況説明が行われます。今一度、先ほどの謁見室に戻りましょうか。」
執事さんの先導で再び戻ってきた謁見室。
そこには先ほどと変わらず、部屋の左右に全身鎧を着た人達が並び、部屋の先にナイスガイなタイプの男性と可愛い少女が居た。
「勇者様方。お食事の方はお口に合いましたかな?一応過去の勇者の文献を元に味付けをしてみたのですが・・・その様子だと合わないということはなかったようですな。」
謁見室に入ってきた私達の顔をみて、緊張が解れたことに気づいたナイスガイな男性、この国の国王様が満足げに頷く。
「はい、初めは見たことのない料理だったので困惑はしましたが、味に関しては私達の口に合う、美味しい料理でした。」
そんな国王の言葉に一歩前に歩み出て頭を下げた剣慈君が答える。
うん。イケメンがこういう仕草をするのは中々絵になるね。
っていうか慣れてるな。
「そうか。では、早速君たちが何故、ここに突然来たのか。どうすれば元の世界に帰ることができるか。それを話そう。地図と玉をここに。」
国王がそう言うと左右に控えた数人の騎士がバスタオルサイズの紙を二人掛かりで掲げ、拳サイズの透明なビー玉のようなものを私達にそれぞれ一つずつ手渡す。
地図は、右上の1/3以外赤く塗られている。
「そうだな。何から話したものか。・・・まずは、君たちをここに呼んだのは誰か、ということから話すか。端的に言うと、君たちをここに呼んだのはこの世界の神々だ。」
「神々?って神さまですか?」
国王の言葉に阿樟君が返すが、国王様は首肯で返した。
神様ねぇ。胡散臭いなぁ。
ってことはここもしかしてだけど・・・
「質問良いだろうか?ここは、地球ではないのか?」
私の考えていたことを裕美さんが先に尋ねる。
「地球。歴代の勇者の故郷だな。残念ながら違う。この世界がなんと呼ばれているかはわからんが、少なくとも地球というものではない。証拠は、そうだな。夜になると月が7つ空に輝くことだと過去の勇者は言っていたそうだ。」
月が7つ。なるほど。
星じゃなくて月ならそりゃ地球じゃないね。
願い事は叶ったりしない、よね。
「まぁその事は追々自らの目で確かめてくれ。では次に、呼び出した目的について話そう。神々の目的は常に一つ。魔神側の勇者である4人の魔族の王を討伐、もしくは封印することだ。彼らは魔神の力が最高潮に達する時に現れ、魔神の復活を目論むそうだ。魔神は復活と共に世界を滅ぼし、0から再建する。・・・地図を見てもらえばわかると思うが、赤い部分は過去、魔神が滅ぼし、人が住めなくなった土地だ。なんとかこの国を含むいくつかの国は勇者の結界によって守られ、現在も復興作業が続いている。世界の人口の8割りはその時に滅んだとされている。」
「その魔神の復活を阻止することが神々の目的であり、俺たちがその手段だと?」
そこまで説明を聞き、剣慈君が話を簡単にまとめる。
うん。
私には無理だな。っていうかごくごく普通の高校生に何やらそうとしてるの!神さま!
私はそこら辺の小学生とも相討つ自信しかないんですけど?
「毎回勇者の召喚のタイミングはバラバラだが、勇者は決まって6人呼ばれる。その内の4人。火、風、水、土の属性を持つ者がそれぞれ4人の魔王を倒し、光、闇の属性を持つ者が魔神を封じるとされている。」
「ちょっと待ってんか?そらおかしない?俺らどう見ても7人居るで?」
聡介君が堪らず口を挟む。
確かに。勇者は決まって6人。
でも私たちは7人居る。神様のミス?
「そこで、玉だ。それは手に持って念じることで光を放ち、自らの属性を見ることが出来る。試しに自分の属性を確認してはくれまいか?もしかすると巻き込まれただけの者が居るかもしれんしの。」
それ絶対私だよー。
ほら、剣慈君とか拳成君とか確実に物語じゃ勇者じゃん。
王様の言葉にみんなは渋々、何人かはノリノリで玉を握りしめる。
パァァァァ
玉を握ると、それは白銀の光を放った。
あぁ、光ってしまった。
私は一般人でありたかったのに・・・
「おぉ!光った。」
「キレイだな。」
「ちょっ、俺の色薄ない?」
「まぶしっ、おい、こんな光るなら先に言ってくれよ!」
みんな手元で輝く玉にそれぞれ感想を抱く。
それによく見るとみんな色が違う。
阿樟君は赤色。
拳成君は紫色。
裕美さんは水色。
淳君は黄色。
剣慈君は黄金色。
聡介君は緑色。
互いに光量の差はあれど、玉は確かに光を放つ。
「白銀?」
そんな中、国王は私を見つめて目を見開く。
いや、国王だけでなく隣の少女も、左右の騎士たちも、執事とメイドでさえ私を見ている。
あれ?もしかして私、何かした?
「あの?」
「あ、あぁ。すまない。何しろ白銀というのは聞いたことも見たこともなかったのでな。色は火、風、水、土、光、闇の順に赤、緑、青、黄、金、紫の六色に近くなるはずなのだ。やはり今回の勇者召喚は何らかの異状が起こったと・・・」
「王よ。一つ良いですかな?」
王様の言葉の途中に執事さんが声をかける。
「なんだ?」
「これは私の曾祖父から聞いた話なのですが、過去にも一度だけ、白銀の勇者が現れたことがあるそうでございます。」
「真か?」
「えぇ。ですが、その、非常に言いにくいのですがその勇者は戦場に赴かなかった。いえ、これでは印象が悪いですな。正確には戦場に赴くことが出来るほどの実力が無かったそうでございます。ですから他の6人の戦闘を知識でカバーした、と。」
「なるほど。」
「あの、過去の私と同じ色の勇者が知識で戦闘をカバーした、と聞こえたんですが私、ケンカとかしたこともないし役に立つ助言なんてとても。」
「そうか。呼び出したのはこちらの都合だ。無理強いはできんな。君は城で保護しよう。外に出ると狙われるやも知れんしな。城は安全だと思いたいが、念のため彼女に二人ほど護衛をつけよ。」
私の言葉に国王は執事に指示を出し、居住まいを正す。
「あ、あの。それなら僕もケンカとかし、したことないんですけど。」
国王がこの話を切り上げようとした頃、淳君も手を上げて告白する。
その声に続くように阿樟君、剣慈君も手をあげる。
「あぁ、それについては問題ない。基本の6色の勇者にはそれぞれ神器が授けられ、神器を受け取ったときに過去の勇者の経験がその身に宿るという。もし、神器を受け取った後、それでも無理だと思うのなら彼女と共に城で保護しよう。」
国王は言葉に異議が無いことを確認すると再び説明を戻る。
「では、次に魔神の復活までの時間についてだが、これは非常に言いにくいのだが・・・今日を入れて7日だ。」
「たった7日!?」
「そんな短期間でこの国の人達が倒されへん魔王を倒せ言うんか?そりゃいくらなんでも横暴ちゃうか?」
「そうだな。実践も知らない素人にそれは不可能だろう。」
7日の宣告にみんなざわつく。
が、国王はそれを手で制する。
「安心したまえ。言っただろう?神器を受けとれば過去の勇者の経験が身に付く、と。つまり、神器に触れた瞬間に君たちは素人ながら魔王を倒すことの出来るレベルの実力を手に入れられるのだ。・・・そうだな。何か質問はないか?質問が無いなら先に神殿へ向かい、神器を授けよう。」
「あ、あの。帰れるん、ですよね?」
私は国王が言い忘れている核心をつく。
すると国王の顔は一瞬だけ曇る。
「・・・隠しても仕方がないな。結論から言うと、不明だ。」
「そんな!帰れないんですか?」
「いや、過去の勇者はみんな、魔王を討伐し、魔神に封印を施した後、数日すると消えるのだ。この世界の何処かに転移した、とかではなく、この世界から消えるのだ。勇者は再びこの世界に戻ってくることもない、神々から神託のようなものもない。だから私達はそれを帰還だとしている。」
国王の言葉で私達を重い雰囲気が包む。
「・・・話が重くなってしまったな。では、神殿へ向かおうか。なにもしなければどの道みんな殺される。」
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