【目指せ400PV】RPGっぽい世界に飛ばされて魔物と戦う話 改定版

ノベルバユーザー203195

魔王狩り編 一話目

自分のレベルが分かったとき、たとえそれが低い数値であってもなんだか嬉しくなる。そんな気がしたのだ。
しかし、俺の網膜に映るドッグタグの表示には、こんな事が描かれていた。


「なにぃ?立儀 ユウ、レベル68、称号『害虫駆除』?」


うーん、ミカゲさんからドッグタグを定期的に見ておけ、と言われていたが、まさか暴れ蟹ぶち殺しただけでこんなレベルが上がるとは思わなかった。
しかしまぁ、この世界に飛ばされて一週間でございますが、レベル68はさすがにヤバいだろう。ミカゲさんは同い年でレベル9だぜ?いろんなプロセスをぶち抜いてる気がする。


いつも思うが、この世界の月は大きい。きっと人工的な明かりが少ないから、大気汚染も少ないんだろう。
大体風呂から出た後いつも月の見える縁側で湯冷ましするのだが、ミカゲさんはこのとき書斎で何かを書いているらしい。まぁ、書斎は本人曰く『プライベート』らしいので、入らないようにしている。


庭には、月が映る大きめの池があり、日本庭園を簡単に模したような感じだ。何かと故郷を思い出すな・・・・。毎晩観ていても哀愁が漂う。この屋敷を建てたミカゲさんの親御さんは凄まじいセンスの持ち主だったんだろうな。


何だかんだで三十分近くぼーっとしていたが、『身体能力強化』スキルのせいか、周りの音が集音器の如く入ってきた。


羽虫の鳴く声、何処かで草木が擦れる音、大通りの喧噪・・・。そんな物が聞こえてくる中で、一際大きく耳に留まる音を聴き取った。


『きゃああああ!』


『ぐぅあっ!』


『おい!何してんスか!離れろ!』


若い男の声。中年男のうめき声。若い女の子の悲鳴。


「・・・・・・?」


俺は、更に耳を澄ませて、何処でこの音が聞こえてくるのか探った。


キリキリキリキリ・・・・・少しずつ音の方向性が絞られていき、大体自分の右斜め前方から音がするのが分かった。
閉じていた目を開き、音の聞こえる方向に視線を向けた。


二メートルくらいある屋敷の塀を一飛びで乗り越え、屋敷に隣接した路地裏に着地した。


「な、何だてめぇは!?」


「きゃああああ!」


女の子が奥の暗闇から錯乱した様子で走ってきたあと、さっき聴いた騒ぎ立てる豚人の声がする方を向き、そこにいたのは、


「か弱い女の子を夜道で襲うなんて・・・・。許せんっス!」


筋肉質で背が高く、金髪のリーゼントが夜目を引く。
黒い上着には銀色の金具が至る所に取り付けられ、カチカチと揺れている。


「ま、待ってくれ!分かった!この女は返す!もう襲ったりしない!許してくれぇぇ!」


「ダメっス」


一目で分かる、ボクサー特有のフットワーク、顔面を守る顔面ガードをし、中年豚人を正面に捉えた。


「なっ、何をする気なんだぁあああああああああ!てめぇはあああ!」


「なぁに、『治す』だけッス。てめぇの曲がった性根をなあああ!」


俺は何となくヤバい気がしたので、長身のリーゼントの男に近づき、肩をつかんで制止をかけようとした。


「待て待て待て!人んちの裏で何してんだ!」


だが、虚しくもこちらに一切意識を向けられず、豚人の顔面に右ストレートが炸裂した。


「ブギャヲッッ!」


血飛沫を撒き散らし、壁に側頭部がめり込んだ豚人は、そのままピクリとも動かなくなった。


「おい!殺して────」


「殺してねぇッスよ。急所は外したッス」


「そういう問題じゃねぇ!大丈夫かよ」


親父の意識を窺おうと肩をつかもうとしたが、


「う゛ぅ・・・」


すぐに立ちあがろうとする。


「マジでか!?大丈夫かよおっさん」


「んん?!!うわぁあああああ!」


長身の男を見るが否や、何事も無かったかのように逃げ出していった。


「何なんだ・・・?お前は・・・・!?」


有崎ありさき 紀章きしょう、15ッスよ」

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