【目指せ400PV】RPGっぽい世界に飛ばされて魔物と戦う話 改定版

ノベルバユーザー203195

八話目

「うっげええええええ‼気持ちわりぃ~っ‼」


そう―――――。俺は今、馬車に乗っている。
『カテマラ大量討伐』クエスト行きの軍用馬車に、だ。
いきなりだなと思うだろうから、簡単に今の状態を説明すると、


① 乗り物酔い


以前はそんなに酔う方ではなかったのだが、異世界に飛ばされたからかなのか、ドラフになったからなのか、それは解らないが酔いやすくなっているのかもしれない。
しかも、治癒スキルも乗り物酔いには効かないらしい。クソッ。


② 景色


カテマラとは、『肉食蟲目甲虫科』の大型人喰い蟲。蟲は大嫌いな俺にとって、弱点でしかない。はっきり言っておく。俺は主人公なのに、無駄にヘタレだ。


カテマラはクモと斑竃馬カマドウマを足して二で割ったような形をしていて、実に大きさ2メートル弱。ヘタレのこの俺が気持ちわりぃって叫ばない訳がない。
さらにそんなもんに群れられたらひとたまりもない。ただでさえ、ゴキ◯×も無理なのに・・・。
ゴキ◯×も無理なのに体長2メートルくらいのカテマラなんて無理に決まっている。おええ。
つまり、『気持ちわりぃ蟲』と『乗り物酔い』のダブルタックルなのだ。


ああ、折角覚悟新たに蟲殺しのクエストに出発したのになぁ・・・。
でも、元の世界にもどる為の方々を模索する手段としてクエストを選んだ俺は、もう後戻り出来ない。
俺たちは、移動中にめちゃくちゃ攻撃的な興奮したメスカテマラの群れに遭遇してしまっていた。


「うぷっ・・・・。ミカゲさん・・・何とかならないのかよ・・・?」


「我慢しろ。この群れを切り抜けるまではな」


彼女は、ボルトアクションライフル「草薙ノ剣」(自作)で一匹一匹カテマラを馬車の出入り口から狙撃していた。
しかし、硬いカテマラの甲殻の前に、ライフルはあまり効果を成さなかった。


彼女は袴姿に近い格好をしていた。袴姿といっても、俺の見たことのある弓道や剣道のものではなく、胴当てと肩当て、特殊ブーツがついていた。
彼女曰く保険らしく、万が一に備えての物らしい。


「ちっ・・・・!数が多いな。面倒だ。少しはお前も戦え!」


「うぷっ!うえっ!?」


草薙ノ剣を構えて叫ぶ彼女。
そんな彼女から乱雑に投げつけられたのは――――。


「うぷっ・・・ウィンチェスターライフル・・・」


そう。ウィンチェスターライフルだった。
ストックを長くして銃身を切り詰めてあるため、あまり射程距離はなさそうだ。
だが、


「ど、どうしろと!?」


「魔法銃でさ!魔力をコッキングで圧縮するんで!」


馬車前方から大声が聞こえた。御者のハゲだ。
御者のハゲだって死にたくないんだろう。必死で叫んだ。
ハゲは、ぺちぺちとムチで馬車を牽く二頭の軍用馬を叩いていた。


「わ、わかった!」


そっ、そうか!ミカゲさんは、純人種だから、魔法が使えないのか!まともに撃てるのは俺だけか!?
レバーに手を掛けて、グッと後ろに引いた。
何となくだが、銃にパワーがこもった気がする。魔力という奴かもしれない。
そして、群がるカテマラの一匹に照準を合わせ、トリガーを引いた。


ズドンッ!


「うおっ・・・!」


凄まじい衝撃と轟音が轟き、真っ白な閃光が視界を包み込んだ。


次に目を開けた時には、奥の背景を構成していた森林も、カテマラを貫通してきた光弾に貫かれ、大爆炎と灰燼を撒き散らしながら霧散していった。
当然、照準を合わせたカテマラは、哀れ真っ黒焦げになって走り去る馬車の遥か後方に吹き飛ばされていった。


「!! この威力・・・!凄まじい魔力量だな・・・」


ミカゲさんは呆気に取られている。
何だ?銃の性能がすごいんじゃないのか?


「基本、魔法銃の類いは、使用者の魔力量に左右される。だから、硬いカテマラを一撃で焼肉にしたのか・・・!」


やめてくれ・・・。蟲を焼肉とか・・・。せめて黒焦げとかの表現にしてくれよ・・・。
まあいいや。とにかく、俺はもう一撃決めようとレバーに手を掛けて、トリガーを引いた。


「おわっ・・・!」


すさまじい衝撃がまたもや轟き、容赦なくカテマラの群れを焼き払う。背景の森も灰になっていく。


「これが・・・ユウの魔力量・・・」


ミカゲさんは、ぐちゃみそに焼け焦げるカテマラの死体に視線が釘付けになっていた。


しばらくミカゲさんとカテマラを撃ちづつけ、馬車は、森の小道に入った。


すると、カテマラの群れを切り抜けた。
いや、正確には、カテマラの方から逃げたのだ。
森のあるところを境界線に、撥ね飛ばされるように引き返していった。
生物がこんな行動をとるときはひとつしかない。


自分達より強い生き物の縄張りに入ってしまいそうになったときだけだ。
俺達は、カテマラを撃つのに夢中になっていた。
それを今、俺たちが気付けていれば        良かったのかもしれない・・・。

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