【目指せ400PV】RPGっぽい世界に飛ばされて魔物と戦う話 改定版
三話目
俺は、彼女に連れ出されて街に出た。
街並みは洋風がメインに、うまい具合に和風が混ざっていた。俺の頭も、こんな洒落たデザインを合成するなんてハイスペックになったものだ。
聞かされてはいたが、道行く人々は様々で、見ていて飽きない。
中でも目を引いたのは、肌が半透明で、宝石みたいな髪の毛の色の海月族、半人半狼のハンター族、背の小さなフューリン族、お馴染みエルフなど、たくさんの人々が、露店で大きな声で会話したり、値切りあっていたり、様々だ。
先歩く彼女は、くるりと振り返り、笑みを浮かべて言った。
「どうだ?この街は、かように多種多様なのだ。だからこそ、差別されたり、少なくとも、同族間で戦争や殺し合いは起きない。」
彼女は少し間をおいて言った。
「―――だが、その平和を脅かす『魔物』がいてな。近年から、攻撃が激しくなって来ている。もし、お主が攻撃系スキルの持ち主であれば、軍人として徴兵されるかもしれん。構わないか?」
なるほどな。魔王エルフときたら魔物だと思ってたよ。
徴兵制度で志願制じゃないんだな。
「ああ」
曖昧な返事をしておく。本当にそうだったら協力してあげよう。
人々が構える雑多な露店をぬけ、人混みを過ぎて、大きな石造りの建物が見えた。
物見矢倉が二つついている。弓兵らしき人影もある。
700メートルくらい離れているのに、ピントを合わせると弓兵が見えたなんて・・・。視力が無駄に上がっているのか。ドラフの視力恐るべし。
露店や家屋に比べると圧倒的な大きさだな。コンクリみたいな材料を使ってるのかな?
もうちょっと近づいて見てみると、コンクリートではなく明るい色の御影石だった。
にしても、本当に夢なのか?
少なくとも、いま制服の靴で石畳を叩く音は本物だろう。
・・・・皆さんはもうお気付きだろうが、もうこれは―――夢じゃあない。
異世界転移だ・・・。
あの事故ったことをトリガーに、俺がこの世界に引きずり込まれたと考えて良い。
「おっと、到着だ。あそこに見えるのが、外門で、その奥が魔王城だ。でかいだろ?まず検問を通る必要がある。そこを通ってから、魔王さまに御許しを頂きドッグタグを貰う。わかったな?因みに、私も同行する。ちょっとした研究の成果を報告にな」
「わかった。行こう」
ちょっと、研究、という言葉にがやけに引っ掛かったが、まあ気にしなかった。
やっぱり、近くで見るとばかでかいな。ざっと40メートルはあるだろう壁に四方を囲まれ、醸し出す雰囲気は城というより難攻不落の要塞に近い。
「貴様らっ!止まれ!何の用だ!意味のない外門への立ち入りは禁止されている。停止線より5歩下がり用件を言え!」
ゴツい鎧を着た衛兵があらんかぎりの大声を上げて言った。声が裏返りかけていたのは秘密だ。
あ?停止線?足元をみると、石畳が削られた痕があった。全くもう。見にくいな。
光薙さんと一緒に5歩下がり、用件を言いはじめた。
「はっ!私の名は光薙ミカゲ!魔王さまに研究結果の報告に参りました!彼は戸籍取得の御許しを頂きに魔王さまに面会を申し込みに参りました!」
「その言葉、詐りがないか調べさせて貰う!女は直ちにドッグタグを差し出せ!」
「はっ!」
彼女はドッグタグを差し出して、何やら調べられていた。たぶん、嘘発見器みたいなやつだろう。魔法かな?
俺はその間にボディーチェックを受けた。入念かつ厳密に、俺のポケットの中味を調べていく。まあ、ハンカチしか持っていなかったからいいんだがな。
ちなみに今の格好は、さっきミカゲさんから貰った甚平(花柄でピンク)に、唯一無事だった制服(ズボン)だけ。何ともだっっっさいが、血まみれの制服で外に出れば、ミカゲさんにまで迷惑を掛けてしまいそうだ。まだマシだ。
「宜しい!入場を許可する!両手をあげながら中門のまで歩け!不審な動きを見せれば発砲する!」
どうやら何とも無かったようで、とりあえずは城に入れるみたいだ。良かった。
「はっ!ご苦労様です!」
ミカゲさんは兵士2人を一瞥し、両手をあげた。
閉じられた門が軋んだ音を立てて開き、大きな口を開けた。
ほぉー。なかなか広いな。右側には溜め池があり、石畳を囲んで木々が覆い茂っている。ちょっとした森林浴が出来そうだ。
暖かな光が差し込む石畳の道の正面に、中門が、その奥に威圧感バリバリの石造りの魔王城が聳え立っている。
うーん。ちょっと住むにはゴツすぎかな?
「なあ?魔王・・・・さまって、どんな人なんだ?」
「魔王さまか。とても『いい』人だ。あってみれば分かる」
きっとカバにマントと王冠とコウモリの翼つけて玉座につけさせれば事足りる外見をしているんだろうな。だいたい、魔王なのに何でこんな善良的な政してんだ?
中門に入ると、執事さんが出迎えてくれた。
「わたくし、マオーさまの執事兼小間使いであります、カムシン・ジャウーともうします。マオーさまは玉座の間におられます。わたくしが案内いたしますので、後ろへ」
カムシンさんは、すごく若くて、歳は俺や光薙さんと変わらないだろう。
敷かれた紅いカーペットを滑るようにつかつかハイペース歩いて行くカムシンさん。病み上がりの体でやっと追い付くと、玉座の間という部屋の大きな部屋の扉の前に着いた。
「マオーさま。お客人を連れてきました。お通ししても宜しいですか?」
『よろしい!通せ!』
ドア越し壁越しなんで、声はよく聞こえなかったが、カムシンさんは玉座の間の扉を開けてくれた。
―――――絶対ロクな外見してねーな。
そんなことを考え、赤いカーペットから正面に視線を移すと、
「 」
そこにいたのは、美男子だった。
同性であるはずの俺もうっとりするような。
まてまてまてまて!!俺はBLじゃないし!そんなんじゃないし!勘違いするなよっ‼
そのお色気大魔王が口を開いた。
「よく来たな!光薙の。それと・・・、お主は何者だ?初めて見る顔だ。名は?」
「ハイ・・・立儀 ユウと申します。実は、この街に住みたく存じ、戸籍を頂きに参りました」
「ほう!我が街に住みたいと!」
魔王は、新しいおもちゃを見つけた5才児の表情で、玉座の上から言った。
「よろしい!『神鏡』の宝玉を持ってこい!彼の履歴が視たい!」
「はっ!」
カムシンさんは、つかつかと歩いて部屋から出ていった。
よく考えてみると、この部屋、窓も明かりも無いぞ?なのに明かりのレベルは外かそれ以上だ。
「・・・・気になるか?窓も無いのになぜこんなに明るいのかと。――――魔法だ。玉座を眩く照らし、同時に私を縛り付ける鎖でもあるのだから―――。っと!カムシンが来たようだ!」
「お待たせいたしました」
カムシンさんの手には、絹っぽい白い布と、それにくるまれた白銀の宝石があった。
「それに手を置き、瞑想しろ 」
魔王は、カムシンさんの手に光る宝石を指差した。
「・・・カムシンさん、これは?」
「『神鏡』の宝玉に御座います。神の御力を少し拝借し、貴方の過去―――生まれやスキルなどを周囲に知らせることが出来ます」
「・・・・なるほど」
俺は、静かに宝玉に手を置いた。
すると、視界が微かに青みがかり、白い文字が表示されていく。所謂AR表示ってやつか!魔法って便利だねぇ。
『名前=立儀 ユウ たちぎ ゆう
出身=ィャヶガ‰∬ゼ¶◯ク≒ト
種族=ドラフ族(純血)
職業=無し
スキル=自己治癒 アタックカウンター 俊足 聴力強化 筋力強化 視力強化 体力増強
現在のHP=200%
レベル=0
現在までのキルカウント 0
次のレベルまで 140
』
という感じだった。俺はどうやら、予想や光薙さんの話と反して純血のドラフらしい。なかなかレアケースみたいだね。ビックリだ!
っつーか、レベルなんてあったのか。考えもしなかったな。
出身地の表示がなんかおかしいぞ。バグってる。何でだ?もしかしたら、俺が別の世界出身だからだろうか?もし、異世界出身と魔王にバレたらかなり面倒かも。
「お主・・・・・。異世界出身なのか?」
考えてる傍から気付かれた!ヤバい。
「・・・はい」
素っ気ない返事をしておこう。
「久しぶりだ!お主のように、異世界出身の者を見るのは!」
魔王は笑みを浮かべて言った。
・・・あれ?意外にも魔王は歓迎ムードだぞ。良かった・・・。消されたりしなくて・・・・。
光薙さんに目をやると、にっこりとしていた。
なかなか笑顔が素敵だな。
「よろしい!許可する!ドッグタグを!」
魔王は、少し考える素振りを見せた後、カムシンさんに言いはなった。
「ははっ!」
しばらくして、カムシンさんが何やら黒い正方形の箱を持ってきた。
「これが首輪だ。首に着ければ視認できる人や魔物のスキルや名前、生い立ちや種族、はたまた所属ギルドまで分かる優れものだ」
カムシンさんが箱を開け、中身を布にくるんで手渡してくれた。
色褪せた青銅色をしたドッグタグは、何だかFPSゲームで出てきそうなものだった。
タグ本体には俺の名前が刻印がしてあって、なかなかかっこいい。
「そうだ!ギルドに行ってみればいい。あそこなら、お主に適合する武器が見つかるかも知れん」
ギルド――――か。まあ、仕事を得れば、この異世界から生きて元の世界に戻る術を得られるかもしれない。
「はっ!ご助言有り難く存じます」
「ああ。それと、光薙の――――。何の用だ?」
「はっ!私に御託しになられた『魔導金属』が完成いたしました!」
マーゼルギア?何だそりゃ?
「マーゼルギア、か。魔力を流すと自由に変形する特殊金属か」
「左様で御座います」
光薙さんは腰に提げていたカバンから、小冊子を取り出してカムシンさんに渡した。
魔王は、それを見るとご満悦になり、
「よくやった!約束通り、資金は送らせよう!」
「有り難き御言葉‼」
もしかして彼女はほんとに科学者なんだろうか?
――――まだ誰も知り得なかった。彼女の研究―――『魔導金属』が、とある事件に使われることになってしまうことに。
この俺でさえも。
街並みは洋風がメインに、うまい具合に和風が混ざっていた。俺の頭も、こんな洒落たデザインを合成するなんてハイスペックになったものだ。
聞かされてはいたが、道行く人々は様々で、見ていて飽きない。
中でも目を引いたのは、肌が半透明で、宝石みたいな髪の毛の色の海月族、半人半狼のハンター族、背の小さなフューリン族、お馴染みエルフなど、たくさんの人々が、露店で大きな声で会話したり、値切りあっていたり、様々だ。
先歩く彼女は、くるりと振り返り、笑みを浮かべて言った。
「どうだ?この街は、かように多種多様なのだ。だからこそ、差別されたり、少なくとも、同族間で戦争や殺し合いは起きない。」
彼女は少し間をおいて言った。
「―――だが、その平和を脅かす『魔物』がいてな。近年から、攻撃が激しくなって来ている。もし、お主が攻撃系スキルの持ち主であれば、軍人として徴兵されるかもしれん。構わないか?」
なるほどな。魔王エルフときたら魔物だと思ってたよ。
徴兵制度で志願制じゃないんだな。
「ああ」
曖昧な返事をしておく。本当にそうだったら協力してあげよう。
人々が構える雑多な露店をぬけ、人混みを過ぎて、大きな石造りの建物が見えた。
物見矢倉が二つついている。弓兵らしき人影もある。
700メートルくらい離れているのに、ピントを合わせると弓兵が見えたなんて・・・。視力が無駄に上がっているのか。ドラフの視力恐るべし。
露店や家屋に比べると圧倒的な大きさだな。コンクリみたいな材料を使ってるのかな?
もうちょっと近づいて見てみると、コンクリートではなく明るい色の御影石だった。
にしても、本当に夢なのか?
少なくとも、いま制服の靴で石畳を叩く音は本物だろう。
・・・・皆さんはもうお気付きだろうが、もうこれは―――夢じゃあない。
異世界転移だ・・・。
あの事故ったことをトリガーに、俺がこの世界に引きずり込まれたと考えて良い。
「おっと、到着だ。あそこに見えるのが、外門で、その奥が魔王城だ。でかいだろ?まず検問を通る必要がある。そこを通ってから、魔王さまに御許しを頂きドッグタグを貰う。わかったな?因みに、私も同行する。ちょっとした研究の成果を報告にな」
「わかった。行こう」
ちょっと、研究、という言葉にがやけに引っ掛かったが、まあ気にしなかった。
やっぱり、近くで見るとばかでかいな。ざっと40メートルはあるだろう壁に四方を囲まれ、醸し出す雰囲気は城というより難攻不落の要塞に近い。
「貴様らっ!止まれ!何の用だ!意味のない外門への立ち入りは禁止されている。停止線より5歩下がり用件を言え!」
ゴツい鎧を着た衛兵があらんかぎりの大声を上げて言った。声が裏返りかけていたのは秘密だ。
あ?停止線?足元をみると、石畳が削られた痕があった。全くもう。見にくいな。
光薙さんと一緒に5歩下がり、用件を言いはじめた。
「はっ!私の名は光薙ミカゲ!魔王さまに研究結果の報告に参りました!彼は戸籍取得の御許しを頂きに魔王さまに面会を申し込みに参りました!」
「その言葉、詐りがないか調べさせて貰う!女は直ちにドッグタグを差し出せ!」
「はっ!」
彼女はドッグタグを差し出して、何やら調べられていた。たぶん、嘘発見器みたいなやつだろう。魔法かな?
俺はその間にボディーチェックを受けた。入念かつ厳密に、俺のポケットの中味を調べていく。まあ、ハンカチしか持っていなかったからいいんだがな。
ちなみに今の格好は、さっきミカゲさんから貰った甚平(花柄でピンク)に、唯一無事だった制服(ズボン)だけ。何ともだっっっさいが、血まみれの制服で外に出れば、ミカゲさんにまで迷惑を掛けてしまいそうだ。まだマシだ。
「宜しい!入場を許可する!両手をあげながら中門のまで歩け!不審な動きを見せれば発砲する!」
どうやら何とも無かったようで、とりあえずは城に入れるみたいだ。良かった。
「はっ!ご苦労様です!」
ミカゲさんは兵士2人を一瞥し、両手をあげた。
閉じられた門が軋んだ音を立てて開き、大きな口を開けた。
ほぉー。なかなか広いな。右側には溜め池があり、石畳を囲んで木々が覆い茂っている。ちょっとした森林浴が出来そうだ。
暖かな光が差し込む石畳の道の正面に、中門が、その奥に威圧感バリバリの石造りの魔王城が聳え立っている。
うーん。ちょっと住むにはゴツすぎかな?
「なあ?魔王・・・・さまって、どんな人なんだ?」
「魔王さまか。とても『いい』人だ。あってみれば分かる」
きっとカバにマントと王冠とコウモリの翼つけて玉座につけさせれば事足りる外見をしているんだろうな。だいたい、魔王なのに何でこんな善良的な政してんだ?
中門に入ると、執事さんが出迎えてくれた。
「わたくし、マオーさまの執事兼小間使いであります、カムシン・ジャウーともうします。マオーさまは玉座の間におられます。わたくしが案内いたしますので、後ろへ」
カムシンさんは、すごく若くて、歳は俺や光薙さんと変わらないだろう。
敷かれた紅いカーペットを滑るようにつかつかハイペース歩いて行くカムシンさん。病み上がりの体でやっと追い付くと、玉座の間という部屋の大きな部屋の扉の前に着いた。
「マオーさま。お客人を連れてきました。お通ししても宜しいですか?」
『よろしい!通せ!』
ドア越し壁越しなんで、声はよく聞こえなかったが、カムシンさんは玉座の間の扉を開けてくれた。
―――――絶対ロクな外見してねーな。
そんなことを考え、赤いカーペットから正面に視線を移すと、
「 」
そこにいたのは、美男子だった。
同性であるはずの俺もうっとりするような。
まてまてまてまて!!俺はBLじゃないし!そんなんじゃないし!勘違いするなよっ‼
そのお色気大魔王が口を開いた。
「よく来たな!光薙の。それと・・・、お主は何者だ?初めて見る顔だ。名は?」
「ハイ・・・立儀 ユウと申します。実は、この街に住みたく存じ、戸籍を頂きに参りました」
「ほう!我が街に住みたいと!」
魔王は、新しいおもちゃを見つけた5才児の表情で、玉座の上から言った。
「よろしい!『神鏡』の宝玉を持ってこい!彼の履歴が視たい!」
「はっ!」
カムシンさんは、つかつかと歩いて部屋から出ていった。
よく考えてみると、この部屋、窓も明かりも無いぞ?なのに明かりのレベルは外かそれ以上だ。
「・・・・気になるか?窓も無いのになぜこんなに明るいのかと。――――魔法だ。玉座を眩く照らし、同時に私を縛り付ける鎖でもあるのだから―――。っと!カムシンが来たようだ!」
「お待たせいたしました」
カムシンさんの手には、絹っぽい白い布と、それにくるまれた白銀の宝石があった。
「それに手を置き、瞑想しろ 」
魔王は、カムシンさんの手に光る宝石を指差した。
「・・・カムシンさん、これは?」
「『神鏡』の宝玉に御座います。神の御力を少し拝借し、貴方の過去―――生まれやスキルなどを周囲に知らせることが出来ます」
「・・・・なるほど」
俺は、静かに宝玉に手を置いた。
すると、視界が微かに青みがかり、白い文字が表示されていく。所謂AR表示ってやつか!魔法って便利だねぇ。
『名前=立儀 ユウ たちぎ ゆう
出身=ィャヶガ‰∬ゼ¶◯ク≒ト
種族=ドラフ族(純血)
職業=無し
スキル=自己治癒 アタックカウンター 俊足 聴力強化 筋力強化 視力強化 体力増強
現在のHP=200%
レベル=0
現在までのキルカウント 0
次のレベルまで 140
』
という感じだった。俺はどうやら、予想や光薙さんの話と反して純血のドラフらしい。なかなかレアケースみたいだね。ビックリだ!
っつーか、レベルなんてあったのか。考えもしなかったな。
出身地の表示がなんかおかしいぞ。バグってる。何でだ?もしかしたら、俺が別の世界出身だからだろうか?もし、異世界出身と魔王にバレたらかなり面倒かも。
「お主・・・・・。異世界出身なのか?」
考えてる傍から気付かれた!ヤバい。
「・・・はい」
素っ気ない返事をしておこう。
「久しぶりだ!お主のように、異世界出身の者を見るのは!」
魔王は笑みを浮かべて言った。
・・・あれ?意外にも魔王は歓迎ムードだぞ。良かった・・・。消されたりしなくて・・・・。
光薙さんに目をやると、にっこりとしていた。
なかなか笑顔が素敵だな。
「よろしい!許可する!ドッグタグを!」
魔王は、少し考える素振りを見せた後、カムシンさんに言いはなった。
「ははっ!」
しばらくして、カムシンさんが何やら黒い正方形の箱を持ってきた。
「これが首輪だ。首に着ければ視認できる人や魔物のスキルや名前、生い立ちや種族、はたまた所属ギルドまで分かる優れものだ」
カムシンさんが箱を開け、中身を布にくるんで手渡してくれた。
色褪せた青銅色をしたドッグタグは、何だかFPSゲームで出てきそうなものだった。
タグ本体には俺の名前が刻印がしてあって、なかなかかっこいい。
「そうだ!ギルドに行ってみればいい。あそこなら、お主に適合する武器が見つかるかも知れん」
ギルド――――か。まあ、仕事を得れば、この異世界から生きて元の世界に戻る術を得られるかもしれない。
「はっ!ご助言有り難く存じます」
「ああ。それと、光薙の――――。何の用だ?」
「はっ!私に御託しになられた『魔導金属』が完成いたしました!」
マーゼルギア?何だそりゃ?
「マーゼルギア、か。魔力を流すと自由に変形する特殊金属か」
「左様で御座います」
光薙さんは腰に提げていたカバンから、小冊子を取り出してカムシンさんに渡した。
魔王は、それを見るとご満悦になり、
「よくやった!約束通り、資金は送らせよう!」
「有り難き御言葉‼」
もしかして彼女はほんとに科学者なんだろうか?
――――まだ誰も知り得なかった。彼女の研究―――『魔導金属』が、とある事件に使われることになってしまうことに。
この俺でさえも。
「ファンタジー」の人気作品
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