僕のブレスレットの中が最強だったのですが
さんじゅうろっかいめ 奴隷育成計画かな?②
ズドォォォォン。
黒い渦が上に向かって上がり、それを発生させた現場は大きなクレーターが生じていた。技を発動していたのはシェリア。
それを見ていた奴隷たちは体操座りで呆けている。
それもそうだろう、神のレベルを超えた技を放たれたのだから。
「いいですか? 見て覚えてくださいね。これが私の方針です。私は闇属性です。それ以外の属性の指導は難しいです。ですので魔力の扱い方などは私を見て覚えてください」
「「「「へいっ!! シェリア姉さん!!」」」」
綺麗な見た目に反してスパルタなシェリア。シェリア姉さんなんて呼ばれているくらいだ。紫と黒を混ぜたような瞳が彼らを射抜く。
シェリアは杖を振り、瞬く間にクレーターを直していく。
おお、と声が上がるがこの程度シェリアには目を瞑っていても簡単にできる。
「まず、魔力の効率的な流し方。血液中にある違和感のあるものを掴む、それが魔力です。それをどう放出するかイメージして好きな量だけそれを操るのが一番です」
今までは詠唱で魔術を行使してきた。ルネックスやシェリアにとって詠唱に頼ることそのものが不効率的でだからこそ強い魔術使いが生まれにくい。
ある才能も消されて、才能が無いはずなのに持ち上げられて。
立場が逆転するなんて笑止千万。才能ですべてが決まる世界で言い方は堅苦しくなるがはっきり言って才能が無い者が逆転する余地はない。要らないのだ。
だから這いあがって強くなって、それが、それこそが真なのだ。
「最初は爆発させる感じで……全魔力を放出してください!」
「「「「「「「うおりゃああああえええええええええ!!!!!」」」」」」」
のちに、太陽の熱さを軽く越した爆発が起こり、虹色の光が空にかかった。それが神の祝福と呼ばれるようになるのはもう少し先のことだ。
大爆発は森林をなぎ倒すと思われたが、シェリアの結界で防がれた。
シェリアも何も簡単に防いだわけではない。
結界にはひびが入っており、シェリアの腕も微かに震えている。
「よく、できましたね。全魔力を放出した疲れは分かりましたか? それが貴方達の所謂限界です。今から貴方達は、それを超えてください」
「超え、る?」
「大体何やろうとしてるのかは想定つくっす」
シェリアは杖を奴隷たちに向けた。
早く、正確に、濃密に、真剣にその杖の先にシェリアの思いを込めた魔力を練っていく。ルネックスにもらった大切な杖を、大切な思いを。
今度は自分の弟子とも言える彼らに、伝わるように。
そしてシェリアは声を張り上げて、思いを乗せて彼らに伝えた。
「今から放出するこの魔術を止めてください。手加減はしません! 死ぬ寸前まで私は術を続けます! 止めてみなさい!」
「「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」」
思いに思いで答える。
「俺達、絶対に負けませんよ!」
人生で一番憧れたシェリアの、師匠の真剣なその姿を、その思いを。聞き届けたと、過去の自分を吹き飛ばして受けとめて。
彼らは声を上げる。
彼らは宣言する。
シェリアに勝つために、自分に勝つために、絶対に負けることは無いと。
かつての自分を振り解き、憧れた光に挑む。そして散っていくなんて無様だと嘲笑い。
彼らは、自分の持つ今の一番を放つ。
「はあああっ!! 届いてください――――」
「うぉあああああっ!!」
魔力の使い過ぎで倒れそうだ、魔力が無くなって生命力が吸われて死にそうだ。それを希望と情熱でつなぎとめて生命力を回復していった。
回復能力なんて持っていない、しかしこの世界は気持ちで出来上がっている。
スキルだって、ステータスだって、称号だって。
やったことを反映すると言っても、やるための精神がなければ所詮何もできない。
スキルはもうそのまま情熱の強さ、感情、情熱によって出来上がっている。スキルの通りに這いあがれば、強くなれば、感情があれば。
どんなスキルだって獲得していけるのを知っている。シェリアも、彼らも。
世界をそのものを捻じ曲げた大賢者にどうやってそこまで這いあがったと聞いても―――必死の感情―――と彼女は答えるだろう。
死ぬ気でぶつかって当たって砕けろ、これがこの世界の真理だ。
当たって砕けて散っていったら意味がない、まだまだ這い上がっていく必要がある。
だから、死ぬ恐怖なんて知らない。いらない。
むしろそれを乗り越えて、その恐怖を使ってまだまだ強くなれるのだ。
二つの光がぶつかる。
闇だけれど、無限に道が広がる可能性の渦巻く思いで出来上がった誇りの光。
純粋な光で、経験なんて語れないけれど何処までも強くなっていく無限の光。
光は光を押しのけ合い、しかし導き合い、それぞれがそれぞれの強さを導き出す。
―――これが、世界の真理だ。真だ。
―――これを生むために世界は作り出され、神はこの世界を頑固に見守りつづけた。
「私達だからこそ出来る、無限の可能性です。他じゃできません。成長する心があり、言葉があり意志がある、私達はだからこそ最強です! だから誇れます!」
「壊しあってぶつかり合って、それが俺達に似合うんっすよ! こうしてやりあって物語を作り上げて、それこそが輝きなんっすよ! それこそが無限っす!」
流される魔力。伝わる思い。
シェリアはふっと笑った、彼らは光に貢献する魔力をもっと深めた。
「「私達(俺達は)は、無限に誇れますね!」」
笑いあって、そしてその時間は終わりだ。
お互いが本気になってその力を詰め合っていく。
戦っていて、誰も気付いていないだろう。
一人一人が神を超えてしまっていて、ルネックスの限界突破よりも深い威力を手に入れたということを。シェリア自身も気付いていないだろう。
ルネックスよりも結果を出したということを。
ルネックスに足りないものを、シェリアはそれを手に入れたということを。
「さて、終わりにしますよ」
そう言ってシェリアは足に力を込めた。全魔力を放出して杖に集める。期待も込めて、シェリアは彼らに最高の一撃を撃ちだす!
彼らもその思いに応えて自身の全てを燃やして誇りと無限の一撃を撃ちだす! すべてのスキルとすべてのステータスを活用してこの世を超える。
―――いや、ステータスが基本となる、その基本そのものを超えたのだった。
「負けないっす、シェリア姉さん!」
バチッ。
火花が飛んだ。
シェリアの結界ももはや効かずに周囲をとかそうと魔術の光が広がっていく。しかし神はこの戦闘を揺るがす事態が起こることを認めない。
周囲は溶けずに逆にさらに固まり、火花は一瞬にして勢いを増す。
死の恐怖があった。
しかしそれを糧にして生命力を吸われずにすんだ。
勝てない絶望があった。
しかしそれも思いにして全て魔術という形にして放った。
やめたい気持ちもあった。
しかしそれはただ逃げて隠れているだけだと気づいて振り払った。
―――だから、今此処に居る存在意義がある。
「うおあああああっ」
「あああああああっ」
バキッ。
この世界の常識を超えた二つの魔法球がぶつかり合って相殺し、相殺しあった威力がお互いを消し去りあって球が消えていく。
シェリアVS何百人もの奴隷たちの対決は、やっと終わったのだった。
魔力の放出を終えたシェリアと奴隷たちは深呼吸をしたリ水を飲んだり、やる事は様々だが休憩をする。限界を超えた魔力を放出し続けて疲れがたまったのだろう。
「皆さん、良くやりました! あとは細かい魔力操作ですね……それと、皆さんをここに集めた一番の重大な点があるんです」
「あぁ、やっぱりっすか……何を……するんっすか?」
「簡単に言うと、神様への対峙です。ついて、これますか?」
「それだけが……恩返しの方法だと……いうんでしたら……」
シェリアが確かめるように言った質問はあっさりと肯定された。全体を見渡しても文句を言う者はいない。
思わず、涙がこぼれる。
彼らにとってシェリアに恩を返す方法は力を証明する事それしかない。
だから、こうして任務を与えられたことそのものが嬉しかったのだ。そのやることには全く関係なく、ただ純粋に嬉しいと思ったのだ。
それに彼らは不運な人生を歩んだものだらけ。
神様のせいにした人も少なくないしはっきり言えばこの中の殆どだ。
「シェリア姉さんになら何処まででもついて行くっす!」
―――神と、対決する。
この日この時この時間、彼らは何の迷いもなくそう答えを出したのだった。
「じゃあ、解散しましょう。私はまだやる事があります」
そう言ってシェリアは微笑み、皆が解散したのを見ると駆け出した。
……
。。。
ある、真っ暗な部屋でそれにふさわしくない煌びやかな服を着た女性がいた。
「あら、シェリアじゃない、お久しぶりね。私の力を受け取る気にでもなったのかしら?」
彼女はシェリアの師匠、ミレィアだ。
一度目のラグナログで瀕死になった彼女の種族は「血族」。ヴァンパイアとかそういうのではなく、自分の血液そのものが魔力という不可解な種族。
膨大な力が注ぎ込まれるし生命力が高い。
しかし、血液を犠牲にしているので寿命そのものは低いのである。だが鬼族の強靭な肉体と混ざったらそのデメリットはなくなる。
なぜ、シェリアがその力を頑なに断り続けたのか。
「……はい」
シェリアは弱弱しい声で答えた。
「そう悲しい顔をしないで。私が消える代わりにあなたの中で生き続けるということなのよ?」
今、ミレィアの生命力は限りなく低い。
そんな時に今ある力を全て渡してしまったらその命は消え去るのだ。
「私には、師匠様だけでした。でも今は大事な仲間がいます。大事な―――愛する人がいます。だから、決断をしました」
「ふふ、貴方からそんな言葉が聞けるなんてね。行くわよ【世界的魔力付与】」
「っ……」
膨大な力を流し込まれて体が悲鳴を上げている。しかし口から悲鳴が漏れ出すことは無い。シェリアは地面に膝をついて必死に痛みに耐える。
ミレィアはそんな彼女の姿を見て「ほう」と興味深くつぶやいた。
シェリアがミレィアを見上げる。
ミレィアはクスリと笑って消え去ったのだった。
シェリアに残された最後の方法、それが師匠から力を貰うことだった。
「どうして、ですか。どうしてこんなことをする必要があったのですか。どうしてですか――神様! どうして私はこんな―――」
神に問う。
何故シェリアは今この状況に置かれてしまったのか。
神に問う。
何故師匠を犠牲にまでする必要があったのか。
神が、答えだ。
―――そう、神の存在そのものが答えだ。
だから消し去る、だから敵対する。
答えを手に入れたシェリアは部屋に背を向けて歩き出す。ミレィアが持っていたお守りと呼ぶべきもの、彼女が最後に残したものを握って。
―――最愛の人、ルネックスの元へ。
黒い渦が上に向かって上がり、それを発生させた現場は大きなクレーターが生じていた。技を発動していたのはシェリア。
それを見ていた奴隷たちは体操座りで呆けている。
それもそうだろう、神のレベルを超えた技を放たれたのだから。
「いいですか? 見て覚えてくださいね。これが私の方針です。私は闇属性です。それ以外の属性の指導は難しいです。ですので魔力の扱い方などは私を見て覚えてください」
「「「「へいっ!! シェリア姉さん!!」」」」
綺麗な見た目に反してスパルタなシェリア。シェリア姉さんなんて呼ばれているくらいだ。紫と黒を混ぜたような瞳が彼らを射抜く。
シェリアは杖を振り、瞬く間にクレーターを直していく。
おお、と声が上がるがこの程度シェリアには目を瞑っていても簡単にできる。
「まず、魔力の効率的な流し方。血液中にある違和感のあるものを掴む、それが魔力です。それをどう放出するかイメージして好きな量だけそれを操るのが一番です」
今までは詠唱で魔術を行使してきた。ルネックスやシェリアにとって詠唱に頼ることそのものが不効率的でだからこそ強い魔術使いが生まれにくい。
ある才能も消されて、才能が無いはずなのに持ち上げられて。
立場が逆転するなんて笑止千万。才能ですべてが決まる世界で言い方は堅苦しくなるがはっきり言って才能が無い者が逆転する余地はない。要らないのだ。
だから這いあがって強くなって、それが、それこそが真なのだ。
「最初は爆発させる感じで……全魔力を放出してください!」
「「「「「「「うおりゃああああえええええええええ!!!!!」」」」」」」
のちに、太陽の熱さを軽く越した爆発が起こり、虹色の光が空にかかった。それが神の祝福と呼ばれるようになるのはもう少し先のことだ。
大爆発は森林をなぎ倒すと思われたが、シェリアの結界で防がれた。
シェリアも何も簡単に防いだわけではない。
結界にはひびが入っており、シェリアの腕も微かに震えている。
「よく、できましたね。全魔力を放出した疲れは分かりましたか? それが貴方達の所謂限界です。今から貴方達は、それを超えてください」
「超え、る?」
「大体何やろうとしてるのかは想定つくっす」
シェリアは杖を奴隷たちに向けた。
早く、正確に、濃密に、真剣にその杖の先にシェリアの思いを込めた魔力を練っていく。ルネックスにもらった大切な杖を、大切な思いを。
今度は自分の弟子とも言える彼らに、伝わるように。
そしてシェリアは声を張り上げて、思いを乗せて彼らに伝えた。
「今から放出するこの魔術を止めてください。手加減はしません! 死ぬ寸前まで私は術を続けます! 止めてみなさい!」
「「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」」
思いに思いで答える。
「俺達、絶対に負けませんよ!」
人生で一番憧れたシェリアの、師匠の真剣なその姿を、その思いを。聞き届けたと、過去の自分を吹き飛ばして受けとめて。
彼らは声を上げる。
彼らは宣言する。
シェリアに勝つために、自分に勝つために、絶対に負けることは無いと。
かつての自分を振り解き、憧れた光に挑む。そして散っていくなんて無様だと嘲笑い。
彼らは、自分の持つ今の一番を放つ。
「はあああっ!! 届いてください――――」
「うぉあああああっ!!」
魔力の使い過ぎで倒れそうだ、魔力が無くなって生命力が吸われて死にそうだ。それを希望と情熱でつなぎとめて生命力を回復していった。
回復能力なんて持っていない、しかしこの世界は気持ちで出来上がっている。
スキルだって、ステータスだって、称号だって。
やったことを反映すると言っても、やるための精神がなければ所詮何もできない。
スキルはもうそのまま情熱の強さ、感情、情熱によって出来上がっている。スキルの通りに這いあがれば、強くなれば、感情があれば。
どんなスキルだって獲得していけるのを知っている。シェリアも、彼らも。
世界をそのものを捻じ曲げた大賢者にどうやってそこまで這いあがったと聞いても―――必死の感情―――と彼女は答えるだろう。
死ぬ気でぶつかって当たって砕けろ、これがこの世界の真理だ。
当たって砕けて散っていったら意味がない、まだまだ這い上がっていく必要がある。
だから、死ぬ恐怖なんて知らない。いらない。
むしろそれを乗り越えて、その恐怖を使ってまだまだ強くなれるのだ。
二つの光がぶつかる。
闇だけれど、無限に道が広がる可能性の渦巻く思いで出来上がった誇りの光。
純粋な光で、経験なんて語れないけれど何処までも強くなっていく無限の光。
光は光を押しのけ合い、しかし導き合い、それぞれがそれぞれの強さを導き出す。
―――これが、世界の真理だ。真だ。
―――これを生むために世界は作り出され、神はこの世界を頑固に見守りつづけた。
「私達だからこそ出来る、無限の可能性です。他じゃできません。成長する心があり、言葉があり意志がある、私達はだからこそ最強です! だから誇れます!」
「壊しあってぶつかり合って、それが俺達に似合うんっすよ! こうしてやりあって物語を作り上げて、それこそが輝きなんっすよ! それこそが無限っす!」
流される魔力。伝わる思い。
シェリアはふっと笑った、彼らは光に貢献する魔力をもっと深めた。
「「私達(俺達は)は、無限に誇れますね!」」
笑いあって、そしてその時間は終わりだ。
お互いが本気になってその力を詰め合っていく。
戦っていて、誰も気付いていないだろう。
一人一人が神を超えてしまっていて、ルネックスの限界突破よりも深い威力を手に入れたということを。シェリア自身も気付いていないだろう。
ルネックスよりも結果を出したということを。
ルネックスに足りないものを、シェリアはそれを手に入れたということを。
「さて、終わりにしますよ」
そう言ってシェリアは足に力を込めた。全魔力を放出して杖に集める。期待も込めて、シェリアは彼らに最高の一撃を撃ちだす!
彼らもその思いに応えて自身の全てを燃やして誇りと無限の一撃を撃ちだす! すべてのスキルとすべてのステータスを活用してこの世を超える。
―――いや、ステータスが基本となる、その基本そのものを超えたのだった。
「負けないっす、シェリア姉さん!」
バチッ。
火花が飛んだ。
シェリアの結界ももはや効かずに周囲をとかそうと魔術の光が広がっていく。しかし神はこの戦闘を揺るがす事態が起こることを認めない。
周囲は溶けずに逆にさらに固まり、火花は一瞬にして勢いを増す。
死の恐怖があった。
しかしそれを糧にして生命力を吸われずにすんだ。
勝てない絶望があった。
しかしそれも思いにして全て魔術という形にして放った。
やめたい気持ちもあった。
しかしそれはただ逃げて隠れているだけだと気づいて振り払った。
―――だから、今此処に居る存在意義がある。
「うおあああああっ」
「あああああああっ」
バキッ。
この世界の常識を超えた二つの魔法球がぶつかり合って相殺し、相殺しあった威力がお互いを消し去りあって球が消えていく。
シェリアVS何百人もの奴隷たちの対決は、やっと終わったのだった。
魔力の放出を終えたシェリアと奴隷たちは深呼吸をしたリ水を飲んだり、やる事は様々だが休憩をする。限界を超えた魔力を放出し続けて疲れがたまったのだろう。
「皆さん、良くやりました! あとは細かい魔力操作ですね……それと、皆さんをここに集めた一番の重大な点があるんです」
「あぁ、やっぱりっすか……何を……するんっすか?」
「簡単に言うと、神様への対峙です。ついて、これますか?」
「それだけが……恩返しの方法だと……いうんでしたら……」
シェリアが確かめるように言った質問はあっさりと肯定された。全体を見渡しても文句を言う者はいない。
思わず、涙がこぼれる。
彼らにとってシェリアに恩を返す方法は力を証明する事それしかない。
だから、こうして任務を与えられたことそのものが嬉しかったのだ。そのやることには全く関係なく、ただ純粋に嬉しいと思ったのだ。
それに彼らは不運な人生を歩んだものだらけ。
神様のせいにした人も少なくないしはっきり言えばこの中の殆どだ。
「シェリア姉さんになら何処まででもついて行くっす!」
―――神と、対決する。
この日この時この時間、彼らは何の迷いもなくそう答えを出したのだった。
「じゃあ、解散しましょう。私はまだやる事があります」
そう言ってシェリアは微笑み、皆が解散したのを見ると駆け出した。
……
。。。
ある、真っ暗な部屋でそれにふさわしくない煌びやかな服を着た女性がいた。
「あら、シェリアじゃない、お久しぶりね。私の力を受け取る気にでもなったのかしら?」
彼女はシェリアの師匠、ミレィアだ。
一度目のラグナログで瀕死になった彼女の種族は「血族」。ヴァンパイアとかそういうのではなく、自分の血液そのものが魔力という不可解な種族。
膨大な力が注ぎ込まれるし生命力が高い。
しかし、血液を犠牲にしているので寿命そのものは低いのである。だが鬼族の強靭な肉体と混ざったらそのデメリットはなくなる。
なぜ、シェリアがその力を頑なに断り続けたのか。
「……はい」
シェリアは弱弱しい声で答えた。
「そう悲しい顔をしないで。私が消える代わりにあなたの中で生き続けるということなのよ?」
今、ミレィアの生命力は限りなく低い。
そんな時に今ある力を全て渡してしまったらその命は消え去るのだ。
「私には、師匠様だけでした。でも今は大事な仲間がいます。大事な―――愛する人がいます。だから、決断をしました」
「ふふ、貴方からそんな言葉が聞けるなんてね。行くわよ【世界的魔力付与】」
「っ……」
膨大な力を流し込まれて体が悲鳴を上げている。しかし口から悲鳴が漏れ出すことは無い。シェリアは地面に膝をついて必死に痛みに耐える。
ミレィアはそんな彼女の姿を見て「ほう」と興味深くつぶやいた。
シェリアがミレィアを見上げる。
ミレィアはクスリと笑って消え去ったのだった。
シェリアに残された最後の方法、それが師匠から力を貰うことだった。
「どうして、ですか。どうしてこんなことをする必要があったのですか。どうしてですか――神様! どうして私はこんな―――」
神に問う。
何故シェリアは今この状況に置かれてしまったのか。
神に問う。
何故師匠を犠牲にまでする必要があったのか。
神が、答えだ。
―――そう、神の存在そのものが答えだ。
だから消し去る、だから敵対する。
答えを手に入れたシェリアは部屋に背を向けて歩き出す。ミレィアが持っていたお守りと呼ぶべきもの、彼女が最後に残したものを握って。
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