僕のブレスレットの中が最強だったのですが
さんじゅうにかいめ 街を作るかな?
奴隷たちにとって、最初の仕事だった。
勿論力仕事は数えきれないくらいにやったことがある彼らだが、今回は唾液を飲み込むくらいの驚きだった。
なにせ貴族の敷地が何十個分もの土地にそって煉瓦で壁を作れという命令を受けたのだ。
「きつそう」
「無理かも」
「いやいや……わたし達……奴隷じゃん?」
「初めてー」
集められた何万人もの奴隷たちは口々に弱音を吐き始めた。
現在、ルネックス達が何処に居るかというと、この土地を手に入れるための手続きを完了させるためにコレムの所に行っている。
カレンやシェリア達は駆けつけた冒険者達やすでに行動を始めている奴隷たちをまとめたり指示を出したりしていた。
「君達、体調は大丈夫かな?」
手続きを終えたルネックスが奴隷達に問いかけると、小さい悲鳴を上げるもの(黄色い声)、驚きの声を上げるもの、反応は様々だった。
ルネックスの顔は良い類に入るし、性格も優しいのであり得ることだ―――とカレンやシェリア達ならそう言って納得しただろう。
「は、はい。十全に整えております、マイマスター」
中で一番気が強いと評判のリカリアーナ・メーリという名の少女である。ルネックスは奴隷の一覧表を見たときから全員の名前を記憶していた。
スキルアカシックレコードでそれぞれの過去も見た。
禁句は言わない、その過去に関係のある事に関しては触れない。ルネックスはそうしたかったために全て記憶して全て事前に見ていたのだ。
……
。。。
レンガが積み重なっていく。
もう何日の作業だというのに、奴隷たちは全く疲れてなどいなかった。一日三食食事は貰うし、定期的に休憩することもできる。
怪我をしても治してもらえるし具合が悪くなれば休める。
そんないい空間の中で辛く苦しく生きてきた奴隷たちが不満を吐くはずもなく。
「やりますよ――――――!!」
「「「「「「「「「「「「「「「「はい! 姉貴!!」」」」」」」」」」」」」」」」
リカリアーナの掛け声とともにレンガがもっと積み重なり、それとともに夜が明けた。これで四日目の朝で、もう残る土地もそこまで多くない。
レンガを積み重ねた後方を振り向くと、冒険者達が家を建てている。
奴隷たちのための家だと説明はされているが、それにしては豪華だった。
「すごい……」
「リカリアーナさん……私奴隷になって良かったって初めて思いました!」
リカリアーナとその隣にいるのはメリティヤ・ミーゼルで元貴族の生まれだ。奴隷になってからは屈辱だと毎日漏らしてはリカリアーナに慰められていた。
しかしそんな彼女にも光は差したようで。
リカリアーナはそんなメリティヤを見て嬉しそうに微笑んだ。
「―――どう? 進んでる? 調子が悪い人はいない?」
「マイマスター、ご覧の通りもうすぐ作業が終了します、今日の午後には終わる計算です。調子が悪い者はいません、全員元気に仕事をしております」
高速計算やら電脳タッチパネルやら理系なスキルばかりを持っているのはミーリア・ステル。計算などを任されており、こうしてルネックスが定期的に状態を聞いていた。
周りの者はルネックスを見ると目を輝かせ「救世主様」と口々に賞賛した。
「あ、あはは……そんなに褒められたらちょっと照れちゃうかな。家を建て終わった冒険者達に此処を任せるように言ったからもっと早く終わると思う」
「十人増えると今日の午後まで、二十人増えると午前、三十人以上増えればあっという間に終わる計算になっております、マイマスター」
ミーリアは秘書のエキスパートで、その美貌もひとつのアイデンティティ。しかしその美貌を利用されて奴隷落ちしたのだという。
こうして秘書らしい仕事をしていると彼女にとっては幸福なのだ。
ルネックスとしても秘書は必要な役で、こうして助かっているのである。ぶっちゃけ彼女がいなかったらいつ終わるか見当もつかなかっただろう。
「それじゃあ朝ごはんの時間にしようか……カレン、リーシャ」
「うん……了解」
「分かりました―――ました!!」
カレンとリーシャには奴隷たちの世話やその他を任せている。一言で言えば雑用に過ぎないが、その役があることで奴隷たちは不満を漏らしていないのだ。
ルネックスは二人を呼んで場を任せると一人でとある場所に向かっていく。
最初に此処に建てたのが食堂。
レシピの開発、食堂のデザインなどを手伝ってくれた料理人ピックの家に向かっている。
「ピックさん、おられますか? ルネックスです」
「おう、居るぜ! どうした?」
「あの、感謝の言葉を言いに来たんです。ピックさんがいなかったらどうなっていたのか分かりませんでした」
「そんなの良いぜ、俺はお前のことが気に入ったんだ。食堂運営とかそういうのだったら任せてくれていいぜ! いくらでも手伝ってやる」
やはり持つべきものは友人である。
ドアを開けて呼びかけるとすぐ出てきたということから、今日は暇だったのだろう。
もう一度感謝の言葉を言い、ルネックスはドアを閉める。
次に向かうのはレンガを提供してくれた雑貨屋のルピスの店頭だ。
「おう、ルネックスじゃねえか!」
「はい。レンガなど材料の提供ありがとうございました、感謝しています」
その後しばらく雑談をしてルネックスはルピスの店から出た。
協力してくれた方たちの店や家を回り、感謝の言葉を言い続けた。こうして午後に帰ってくると小さな街は完成していて、すでに奴隷達の準備も済ませていた。
ミーリアがルネックスを見ると嬉しそうに走って駆けてきた。
「奴隷達の準備が整いました、マイマスター。これから順調に物も増やしていけると思います。今日はもうこれで休憩なさいますか?」
「うーん……そうだね。疲れたし奴隷たちも全員で休憩するか」
ルネックス・アレキ
レベル:60
魔力:4000
体力:9000
運:9000
属性「水、風、火、土、闇、光、虚無、???」半覚醒
称号「魔物殺戮者、紳士、神を超える者、???」半覚醒
スキル「魔眼LV70、射線LV50、ステータス偽造LV20、気配消しlv80、聖神召喚LV2、記憶分析LV20、ステータス鑑定LV40、アイテムボックスLV20、封印LV20、感情斬りLV25、呪いLV60、業火の鎖LV20、スキル取得LV60、治癒魔術LV30、聖光LV35、混沌の黒道LV30、黒煙LV20、スキル強奪LV20、神なる裁きLV12、???」半覚醒
街を作っているうちに何故か新しいスキルを獲得していた。
治癒魔術で大体疲れは癒すことができるが、できればぐっすり眠りたいところだ。つまり自然治癒ということだ。そっちの方が気持ちは良い。
「マイマスター……最近一睡もせずにわたくしたちのために働いておりますので計算によると疲れは100分の九十辺り溜まっております」
「そ、そうだったんだね。本当に早く休憩しないとな。おーい、カレン、リーシャ、フレアル、リンネ、フェンラリア、シェリア! 帰るよ」
「あ、ルネックスさんから休憩信号が出たようです!」
休憩信号ってなんなんだ、と突っ込みたいところだが言われてどっと襲ってくる疲れに抗われて声を出すこともできなくなった。
幸い自分たちの家は此処から一番近い手前にある。
「あー、癒される~。やっぱり自分の家は良いね。それにしても私達は休めてたけどルネックスの方が疲れてるよね……」
ベッドに座り込んだフレアルはそう言ってルネックスの方を見た。カレン、フレアル、シェリアに割当てられたのは二階だが、今は全員でフレアルの部屋に集まっている。
ゆっくり話したいこともあるのだろう、何せ約三日ゆっくりできなかったのだから。
まさかこれが「あれ」を引き起こす何て、誰も思っていなかったのだが。
「るねっくす! あたしらくしょうだったよ~、木材をはこんだり、れんがぶっ放したりするのたのしかったよ!!」
「う、うん。フェンラリアは相変わらずおっかないことをするね……レンガをぶっ放すって……い、一体何に使ったのかな、そのレンガ」
「む! 私なんて鬼の力で重力を操作して手を使わずにレンガや木材を積み重ねたんですよ! それで結構な人数が疲れずに済んだんです!」
「リーシャは魔女の力で魔物避けの気配をレンガに取り付けました―――ました! これで魔物はそれほど寄ってこないと思います―――ます!!」
「私はぁ、奴隷たちや冒険者達にに家を建てる基本とか効率的にレンガを積み重なる方法を教えてたからぁ、時間短縮はできてたと思うよぉ」
「わたし……食堂のデザインとか……掃除とか……雑用だったけど……街を整えた……みんな喜んでくれてて……嬉しかった……」
苦笑いするルネックスの言葉を賞賛している言葉だと思ったのか、シェリア達が彼女なりにしてきたことを報告してくれた。
こんなに早く終われたのは、魔物が寄ってこなかったのは、皆の技術が上手かったのは、街がきれいになっていたのは……彼女たちの活躍のおかげだった。
ルネックスは微笑んで彼女たちの頭を撫でた。
すると、フェンラリアの後ろにモニターが映し出されて全員が振り返る。
「何が、起こるの……? フェンラリア、何かわからない?」
「ううん、あたしにもわからない。あたしがたどれないっていうことはどこかの神さまのしわざかもしれない……ディステシアさま!?」
画面にディステシアの処刑現場が映し出された。ディステシアが上級神に向かって必死に弁論している。心配そうに見つめているものの精霊たちは後方で動こうとしない。
こんな肝心な時に虚無精霊もほかの大精霊たちは誰一人としていない。
フェンラリアが向かおうにもどこで行われているのか辿れなかった。恐らくフェンラリア以上の力が働いて抑えられているのだろう。
ただ、黙って見ていることしかできなかった。
『アアアアアアアアアアッッ』
神器である槍に打たれ、血が噴き出す。ディステシアの苦しみの絶叫と真っ赤に染まるモニター画面を、フェンラリアはただ見ていることしかできない。
この場にいる全員が、助けることさえもできない。
――――――強い力を持って、何の意義がある? こんな時に助けられなくて、力を持つ意味なんてない……。
ルネックスはモニター画面が閉じると共にこぶしを握って自問自答していた。力を持つ意味を。この世界の残酷さを。
「ディステシア、さま……? どうし、て? どうして……?」
フェンラリアは泣き叫びたいのだろう、きっと。しかしそれもプライドに制されて残るのは喉から絞り出すような声のみ。
ルネックスは思い出していた、ディステシアに出会った当時のことを。
―――『もちろん! あたしは管理神サマだいすきだよ!』
そう言ったのはフェンラリア。
―――『「夢なら覚めないで欲しい」』
そう言って未来に向かって目標を立てたのはルネックス自身。
「どうしてだ」
憤怒。
喉から絞り出すような声。その声に乗せられた言葉には憤怒が込められていた。
家が、静けさに包まれている――――――――――――。
勿論力仕事は数えきれないくらいにやったことがある彼らだが、今回は唾液を飲み込むくらいの驚きだった。
なにせ貴族の敷地が何十個分もの土地にそって煉瓦で壁を作れという命令を受けたのだ。
「きつそう」
「無理かも」
「いやいや……わたし達……奴隷じゃん?」
「初めてー」
集められた何万人もの奴隷たちは口々に弱音を吐き始めた。
現在、ルネックス達が何処に居るかというと、この土地を手に入れるための手続きを完了させるためにコレムの所に行っている。
カレンやシェリア達は駆けつけた冒険者達やすでに行動を始めている奴隷たちをまとめたり指示を出したりしていた。
「君達、体調は大丈夫かな?」
手続きを終えたルネックスが奴隷達に問いかけると、小さい悲鳴を上げるもの(黄色い声)、驚きの声を上げるもの、反応は様々だった。
ルネックスの顔は良い類に入るし、性格も優しいのであり得ることだ―――とカレンやシェリア達ならそう言って納得しただろう。
「は、はい。十全に整えております、マイマスター」
中で一番気が強いと評判のリカリアーナ・メーリという名の少女である。ルネックスは奴隷の一覧表を見たときから全員の名前を記憶していた。
スキルアカシックレコードでそれぞれの過去も見た。
禁句は言わない、その過去に関係のある事に関しては触れない。ルネックスはそうしたかったために全て記憶して全て事前に見ていたのだ。
……
。。。
レンガが積み重なっていく。
もう何日の作業だというのに、奴隷たちは全く疲れてなどいなかった。一日三食食事は貰うし、定期的に休憩することもできる。
怪我をしても治してもらえるし具合が悪くなれば休める。
そんないい空間の中で辛く苦しく生きてきた奴隷たちが不満を吐くはずもなく。
「やりますよ――――――!!」
「「「「「「「「「「「「「「「「はい! 姉貴!!」」」」」」」」」」」」」」」」
リカリアーナの掛け声とともにレンガがもっと積み重なり、それとともに夜が明けた。これで四日目の朝で、もう残る土地もそこまで多くない。
レンガを積み重ねた後方を振り向くと、冒険者達が家を建てている。
奴隷たちのための家だと説明はされているが、それにしては豪華だった。
「すごい……」
「リカリアーナさん……私奴隷になって良かったって初めて思いました!」
リカリアーナとその隣にいるのはメリティヤ・ミーゼルで元貴族の生まれだ。奴隷になってからは屈辱だと毎日漏らしてはリカリアーナに慰められていた。
しかしそんな彼女にも光は差したようで。
リカリアーナはそんなメリティヤを見て嬉しそうに微笑んだ。
「―――どう? 進んでる? 調子が悪い人はいない?」
「マイマスター、ご覧の通りもうすぐ作業が終了します、今日の午後には終わる計算です。調子が悪い者はいません、全員元気に仕事をしております」
高速計算やら電脳タッチパネルやら理系なスキルばかりを持っているのはミーリア・ステル。計算などを任されており、こうしてルネックスが定期的に状態を聞いていた。
周りの者はルネックスを見ると目を輝かせ「救世主様」と口々に賞賛した。
「あ、あはは……そんなに褒められたらちょっと照れちゃうかな。家を建て終わった冒険者達に此処を任せるように言ったからもっと早く終わると思う」
「十人増えると今日の午後まで、二十人増えると午前、三十人以上増えればあっという間に終わる計算になっております、マイマスター」
ミーリアは秘書のエキスパートで、その美貌もひとつのアイデンティティ。しかしその美貌を利用されて奴隷落ちしたのだという。
こうして秘書らしい仕事をしていると彼女にとっては幸福なのだ。
ルネックスとしても秘書は必要な役で、こうして助かっているのである。ぶっちゃけ彼女がいなかったらいつ終わるか見当もつかなかっただろう。
「それじゃあ朝ごはんの時間にしようか……カレン、リーシャ」
「うん……了解」
「分かりました―――ました!!」
カレンとリーシャには奴隷たちの世話やその他を任せている。一言で言えば雑用に過ぎないが、その役があることで奴隷たちは不満を漏らしていないのだ。
ルネックスは二人を呼んで場を任せると一人でとある場所に向かっていく。
最初に此処に建てたのが食堂。
レシピの開発、食堂のデザインなどを手伝ってくれた料理人ピックの家に向かっている。
「ピックさん、おられますか? ルネックスです」
「おう、居るぜ! どうした?」
「あの、感謝の言葉を言いに来たんです。ピックさんがいなかったらどうなっていたのか分かりませんでした」
「そんなの良いぜ、俺はお前のことが気に入ったんだ。食堂運営とかそういうのだったら任せてくれていいぜ! いくらでも手伝ってやる」
やはり持つべきものは友人である。
ドアを開けて呼びかけるとすぐ出てきたということから、今日は暇だったのだろう。
もう一度感謝の言葉を言い、ルネックスはドアを閉める。
次に向かうのはレンガを提供してくれた雑貨屋のルピスの店頭だ。
「おう、ルネックスじゃねえか!」
「はい。レンガなど材料の提供ありがとうございました、感謝しています」
その後しばらく雑談をしてルネックスはルピスの店から出た。
協力してくれた方たちの店や家を回り、感謝の言葉を言い続けた。こうして午後に帰ってくると小さな街は完成していて、すでに奴隷達の準備も済ませていた。
ミーリアがルネックスを見ると嬉しそうに走って駆けてきた。
「奴隷達の準備が整いました、マイマスター。これから順調に物も増やしていけると思います。今日はもうこれで休憩なさいますか?」
「うーん……そうだね。疲れたし奴隷たちも全員で休憩するか」
ルネックス・アレキ
レベル:60
魔力:4000
体力:9000
運:9000
属性「水、風、火、土、闇、光、虚無、???」半覚醒
称号「魔物殺戮者、紳士、神を超える者、???」半覚醒
スキル「魔眼LV70、射線LV50、ステータス偽造LV20、気配消しlv80、聖神召喚LV2、記憶分析LV20、ステータス鑑定LV40、アイテムボックスLV20、封印LV20、感情斬りLV25、呪いLV60、業火の鎖LV20、スキル取得LV60、治癒魔術LV30、聖光LV35、混沌の黒道LV30、黒煙LV20、スキル強奪LV20、神なる裁きLV12、???」半覚醒
街を作っているうちに何故か新しいスキルを獲得していた。
治癒魔術で大体疲れは癒すことができるが、できればぐっすり眠りたいところだ。つまり自然治癒ということだ。そっちの方が気持ちは良い。
「マイマスター……最近一睡もせずにわたくしたちのために働いておりますので計算によると疲れは100分の九十辺り溜まっております」
「そ、そうだったんだね。本当に早く休憩しないとな。おーい、カレン、リーシャ、フレアル、リンネ、フェンラリア、シェリア! 帰るよ」
「あ、ルネックスさんから休憩信号が出たようです!」
休憩信号ってなんなんだ、と突っ込みたいところだが言われてどっと襲ってくる疲れに抗われて声を出すこともできなくなった。
幸い自分たちの家は此処から一番近い手前にある。
「あー、癒される~。やっぱり自分の家は良いね。それにしても私達は休めてたけどルネックスの方が疲れてるよね……」
ベッドに座り込んだフレアルはそう言ってルネックスの方を見た。カレン、フレアル、シェリアに割当てられたのは二階だが、今は全員でフレアルの部屋に集まっている。
ゆっくり話したいこともあるのだろう、何せ約三日ゆっくりできなかったのだから。
まさかこれが「あれ」を引き起こす何て、誰も思っていなかったのだが。
「るねっくす! あたしらくしょうだったよ~、木材をはこんだり、れんがぶっ放したりするのたのしかったよ!!」
「う、うん。フェンラリアは相変わらずおっかないことをするね……レンガをぶっ放すって……い、一体何に使ったのかな、そのレンガ」
「む! 私なんて鬼の力で重力を操作して手を使わずにレンガや木材を積み重ねたんですよ! それで結構な人数が疲れずに済んだんです!」
「リーシャは魔女の力で魔物避けの気配をレンガに取り付けました―――ました! これで魔物はそれほど寄ってこないと思います―――ます!!」
「私はぁ、奴隷たちや冒険者達にに家を建てる基本とか効率的にレンガを積み重なる方法を教えてたからぁ、時間短縮はできてたと思うよぉ」
「わたし……食堂のデザインとか……掃除とか……雑用だったけど……街を整えた……みんな喜んでくれてて……嬉しかった……」
苦笑いするルネックスの言葉を賞賛している言葉だと思ったのか、シェリア達が彼女なりにしてきたことを報告してくれた。
こんなに早く終われたのは、魔物が寄ってこなかったのは、皆の技術が上手かったのは、街がきれいになっていたのは……彼女たちの活躍のおかげだった。
ルネックスは微笑んで彼女たちの頭を撫でた。
すると、フェンラリアの後ろにモニターが映し出されて全員が振り返る。
「何が、起こるの……? フェンラリア、何かわからない?」
「ううん、あたしにもわからない。あたしがたどれないっていうことはどこかの神さまのしわざかもしれない……ディステシアさま!?」
画面にディステシアの処刑現場が映し出された。ディステシアが上級神に向かって必死に弁論している。心配そうに見つめているものの精霊たちは後方で動こうとしない。
こんな肝心な時に虚無精霊もほかの大精霊たちは誰一人としていない。
フェンラリアが向かおうにもどこで行われているのか辿れなかった。恐らくフェンラリア以上の力が働いて抑えられているのだろう。
ただ、黙って見ていることしかできなかった。
『アアアアアアアアアアッッ』
神器である槍に打たれ、血が噴き出す。ディステシアの苦しみの絶叫と真っ赤に染まるモニター画面を、フェンラリアはただ見ていることしかできない。
この場にいる全員が、助けることさえもできない。
――――――強い力を持って、何の意義がある? こんな時に助けられなくて、力を持つ意味なんてない……。
ルネックスはモニター画面が閉じると共にこぶしを握って自問自答していた。力を持つ意味を。この世界の残酷さを。
「ディステシア、さま……? どうし、て? どうして……?」
フェンラリアは泣き叫びたいのだろう、きっと。しかしそれもプライドに制されて残るのは喉から絞り出すような声のみ。
ルネックスは思い出していた、ディステシアに出会った当時のことを。
―――『もちろん! あたしは管理神サマだいすきだよ!』
そう言ったのはフェンラリア。
―――『「夢なら覚めないで欲しい」』
そう言って未来に向かって目標を立てたのはルネックス自身。
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