僕のブレスレットの中が最強だったのですが
はちかいめ 実戦は楽勝かな?
「GYAAAAAAAAA!!!!」
耳が破裂するほどの大きな声を出して魔物———ウルフは倒れていく。
魔物の中でも中級で、冒険者でも倒すのに時間がかかるものである。
冒険者のランクはF、D、C、B、A、S、SSと覚えやすいアルファベットで七段階ある。
その中でもウルフの依頼を受けるにはDランクからなのだ。
「せいやあ」
血しぶきを飛ばして、ウルフの集団は散っていく。
ここは、最初にルネックスが実戦をしたときの森だ。
ウルフは狼に魔の魂が宿り、邪念が生まれて出来るまものである。
遠距離に弱く、近距離に強いという明確な弱点がある。
そしてそれほどのレベルのウルフをルネックスは一人で切り裂いていく。
「こんだけのウルフとかありえないなあ」
ウルフと言うのは中級だけあって中心都市や高度な魔力流のある森に滞在している。
魔力流というのは空気中に存在する、魔力の源のことだ。
多い少ないは魔力強度には関係ないが、多いほど気持ちがよく、体力も簡単には減らなくなる。
しかしここには見るだけでも何十匹もいる。これは異常現象だ。
「冒険者ギルドも、討伐しに来ないのかな?」
「ルネックスさん、彼らがこんな小さな村に来ると思います?」
「……うん。言われてみれば来なさそう。シェリアのことも世間に知れ渡ってるしね」
シェリアを引き渡しに来たのは相当な有名奴隷商人。
彼女を引き受ける代わりに、村には相当なお金が入り、村長も喜んでいたのだ。
そしてその代償に、村の評判は落ち、引っ越したとしてもこの村にいたということでいじめにあうのは免れないのだ。
目立っていないルネックスたちは別だが。
「僕が頑張るしかないのかなー? でもこんな量はさすがに」
ただ話しているだけではない。
話しながら楽に杖を振ってルネックスはウルフを途絶えることなく地獄に送っているのだ。
彼と魔物のレベルの差が一目瞭然。
逃げようとしてもシェリアのスキルには【動作不能眼】という鬼の能力の一種がある。
睨めば対象が動けなくなるという最強のスキルだ。
「まあそうですね、でもこうするしかないじゃないですか?」
「大精霊のちからでめっしようかー?」
「いやフェンラリアはやめて、世界が滅びる」
「えー? あたしはばくだんじゃないよー?」
「十分大爆弾です」
笑えたことではない、フェンラリアが本気を出したら世界が滅びる。
ルネックスのポケットの中からひょこりと顔をを出している。きっとかわいらしいのだろうが、その身分と発言が無視できない。
その思考の間にも、大量のウルフが屠られている。
「でもこれ、いまおもったけどおおすぎない?」
「逆に言うと今思ったのかよ!?」
ウルフは今もその数を増やし続けている。
どうやらこの森すべてのウルフが出てきたようだ。これはいけない。
世界破滅はしないようにフェンラリアに力を借りるしかないのでは。
「フェンラリア……」
「るねっくす、あたしはね。るねっくすのすきるをみがくのがいちばんだとおもう」
「うっかり世界が破滅してしまったら元も子もありません……」
射線がいつの間にかLV2になっているのが気になるため使ってみようと思う。
知っての通りフェンラリアは高度技術が求められる精霊界や神界などに滞在していた身だ。人間界でいきなり手加減して攻撃をしろと言うのはきっとムリだ。
それにまだ彼女は人間界の基準を知らない、一歩間違えたら破滅してしまう。
「そうするよ。【射線《LV2》】」
ルネックスが掌をウルフの群れに向けると、光線が何本か飛び出した。
『LV3になりました、LV4になりました、LV5になりました、LV……』
ルネックスの脳内に、レベルアップの声が響き続ける。
それと共に手から出る光線が広がり、数も増え、やがてそれが合わさりすぎて化学反応のようなものを起こし、ウルフに対してだけ強大な爆発が起こった。
その強大さと残酷さに、ルネックスとシェリアは呆然とそれを見つめていた。
「ルネックスさんでも世界破滅できるのでは?」
「いや、それは無理でしょ。魔物破滅ぐらいならできるかも?」
「殺戮者の称号はだてではなかったようですね」
フェンラリアはそれ以上の攻撃をみることが当たり前なため、それほど驚いてはいない。
時間が空いたら常識を教えよう、と心に密かに目標を立てたルネックスだった。
そして、魔物殺戮者という称号もあり、魔物を屠る時だけレベルアップが早いのかもしれない。
黒煙が晴れていく。
「きもっ!? うえぇ……いやあ殺しすぎたわ」
「ルネックスさん、これはさすがに私も無理ですっ」
そう、彼らが見たのは、黒煙が晴れた後に残った大量の血と肉塊の山だった。
命の残っているウルフはいない。
フェンラリアもポケットに顔を突っ込み、その残酷な情景から目をそらしていた。
シェリアは口を抑え、涙目になっていた。
初めてのルネックスは自分の威力に引きながら、吐き気をこらえていた。
「いや、楽すぎて怖……」
「GYEEEEEEEEEE!!!」
「はぁぁぁぁああああ!? ななななな何で!?」
怖い。と、そう続けようとしたルネックスの言葉を遮り、飛び出してきたのはキングウルフ。
このウルフたちを従えているようだが、本来は何があっても自分たちの住処にいるものなのだ。
配下が出ていったとしても此処に来ることはないはずだ。
しかし今は何を考えても無駄だ、戦わなければいけない。
今までのウルフとはるかに違うのはその真っ黒な毛が大量に増えているということ、魔術を使うことができること、頭に銀の角が生え、素材として貴重であること。
「これは、どうしようかな……スキル使わなきゃいけないよね」
スキル「魔眼」の発動準備をし、フェンラリアがキングウルフを鑑定する。
鑑定結果はこうだ。
キングウルフ
LV15
属性『火』
魔物のステータスはこう表示されるのが当たり前で、なぜ人間たちとちがうのかはまだ解明されていない。
相当強い魔物のようだが、きっとフェンラリアはごみクズのように感じているだろう。
「はあ、これで死ねばいいんだけどねー」
「ルネックスさん、闇化してますよ。さすが魔物殺戮者」
「分かったから! 分かったから黒歴史弄るのはやめて」
ルネックスにとってあの称号は黒歴史のひとつだったようだ。
フェンラリアが密かに笑っていたのは秘密にしておこう。
「もう。【魔眼《LV1》】」
ルネックスの目が赤黒く光り、電撃を放ちながらキングウルフに向かっていく。
その際キングウルフが何かしようとしたが、その速度は遅く、全く間に合わなかったのだ。
「あれえ、なんかすっごく強い!?」
そう彼が叫んだのと同時に、キングウルフもその生涯を終えたのであった。
キングウルフの腹は魔眼と同じく赤黒く染まっており、ぷすぷすと煙を立てている。
ルネックスたちが強いということを知ったキングウルフ以下の魔物は逃げていった。
「ちょっと疲れたから帰ろうかな」
「むしろこれで「ちょっと」って鬼ですか」
「いや、んー、僕は少なくとも鬼の類ではないかな。ていうかどちらかというとシェリアだよね」
「あ、そういえば鬼だったの忘れていました」
「しぇりあー。それはわすれちゃだめだよー?」
そう駄弁りながらも、フェンラリアに転移をしてもらい、ルネックスの小屋へその姿を現す。
ルネックスはベッドに寝転がり、シェリアは地べたに座り込み、フェンラリアはべちゃ、とベッドの上でつぶれている。
もちろん精神的に。
「ねえるねっくす、いっかいかんていしてみない?」
「あー凄いレベル上がってそう」
「ルネックスさん……くれぐれも世界を滅ぼさないでくださいね?」
「僕を何だと思ってるの!?」
フェンラリアが言ったセリフと同じようなセリフが繰り出される。
フェンラリアにとっては仕返し代わりになったようで、喜んで笑っていた。しかしルネックスはすでに涙目である。
「からかいはおしまい【ステータス鑑定《LVXX》】
「レベルXX!?」
「まっくすってことだよーぜんぶこんなかんじ!!」
今まではやってこなかったが、今回は見せびらかしでレベルも言ってみた、とフェンラリアは可愛く舌をぺろりと出す。
誰も想像できないだろう、フェンラリアが本気を出すときの姿を……。
ルネックス・アレキ
レベル:25
魔力:2500
体力:7800
運:8200
属性「水、風、火、???、???」未覚醒
称号「魔物殺戮者、紳士、???、???」未覚醒
スキル「魔眼LV3、射線LV15、ステータス偽造LV1、気配消しlv1、聖神召喚LV1、記憶分析LV2、ステータス鑑定LV2、アイテムボックスLV1、封印LV1、感情斬りLV2、呪いLV0、???、???、???、???、???、???、???、???」半覚醒
「増えてる! 増えてる! いろいろと増えちゃってる!」
変わり果てた自分のステータスに、ルネックスはすでに涙目だ。
「ほうら、さいしょにこえられるっていったでしょ?」
「いやフェンラリアは超えてないから大丈夫」
これは真顔で言わなければならない、フェンラリアを超えてはいけない。
シェリアも横で震え、ルネックスの成長に喜べばいいのか悲しめばいいのか反応に困っていた。
ルネックス自身もどうすればいいのか迷っており、とりあえずこれは冒険者ギルドに行かなければならないと信念を燃やしていたのであった。
「じゃあしぇりあも。【ステータス鑑定】」
シェリア・フェリス
レベル:32
魔力:5000
体力:6200
運:180
属性「闇(珍)」
称号「鬼(上級)」
スキル「呪いLV15、動作不能眼LV6、鬼の威圧LV12、鬼の角LV5」
ちなみにこれでもこの国の賢者をも上回るレベルだ。
シェリアは自分の成長に喜んでおり、ルネックスとハイタッチしていた。さっきの情景がまるでなかったかのように。
そしてこのシェリアでも運がLV180。ルネックスの反則さがわかるだろう。
「ばけものたちのしゅうごうばしょなのかな?」
「それ、フェンラリアだけには言われたくないなあ」
「でも間違ってはいないですよね」
それもそうだ、とルネックスはシェリアとフェンラリアの言葉に納得する。
まず大精霊と上級の鬼が集まっている時点で終わっている場所である。
さらにルネックスという成長が測れない少年が加われば、もう言葉では表せないほど恐ろしい。
もしこの小屋に三人が全力で張った結界があるならば、神でも破るには時間がかかるだろう。
「でも、これで冒険者になれるんじゃないですか?」
「いや十分なれすぎちゃうなあ……力の扱いもちゃんと学んでおかなきゃね」
「あたし、わかんない!」
「フェンラリアが全力を出すときとかあるのかなー」
もしあるとしたら、それは人類破滅の危機だろう。
もしそれほどの人物がいるのなら、すでにこの世界は滅びているだろう。
ルネックスとシェリアが本気を出すだけでも、きっと世界に影響を与えるだろう。
「もうふきつなかんがえはおわり! ウルフたいりょうしゅつげんのげんいんとか、むらを出ていくじゅんびとかしなきゃいけないでしょ?」
「あ、それは正論だ。よしきた、頑張ろう」
「そのまえにいっかいねたら……?」
「本当ですね、もう夜中です」
いつの間に夜中になってしまったのだろう、もう太陽は沈んでしまっている。
他のことは明日にしよう、とりあえずルネックスたちはその場で寝ることにした。
ルネックスはベッドで。
フェンラリアはシェリアの背中の上で。
シェリアは地面で。
誰かがかぜをひかないかとても心配な情景である。
耳が破裂するほどの大きな声を出して魔物———ウルフは倒れていく。
魔物の中でも中級で、冒険者でも倒すのに時間がかかるものである。
冒険者のランクはF、D、C、B、A、S、SSと覚えやすいアルファベットで七段階ある。
その中でもウルフの依頼を受けるにはDランクからなのだ。
「せいやあ」
血しぶきを飛ばして、ウルフの集団は散っていく。
ここは、最初にルネックスが実戦をしたときの森だ。
ウルフは狼に魔の魂が宿り、邪念が生まれて出来るまものである。
遠距離に弱く、近距離に強いという明確な弱点がある。
そしてそれほどのレベルのウルフをルネックスは一人で切り裂いていく。
「こんだけのウルフとかありえないなあ」
ウルフと言うのは中級だけあって中心都市や高度な魔力流のある森に滞在している。
魔力流というのは空気中に存在する、魔力の源のことだ。
多い少ないは魔力強度には関係ないが、多いほど気持ちがよく、体力も簡単には減らなくなる。
しかしここには見るだけでも何十匹もいる。これは異常現象だ。
「冒険者ギルドも、討伐しに来ないのかな?」
「ルネックスさん、彼らがこんな小さな村に来ると思います?」
「……うん。言われてみれば来なさそう。シェリアのことも世間に知れ渡ってるしね」
シェリアを引き渡しに来たのは相当な有名奴隷商人。
彼女を引き受ける代わりに、村には相当なお金が入り、村長も喜んでいたのだ。
そしてその代償に、村の評判は落ち、引っ越したとしてもこの村にいたということでいじめにあうのは免れないのだ。
目立っていないルネックスたちは別だが。
「僕が頑張るしかないのかなー? でもこんな量はさすがに」
ただ話しているだけではない。
話しながら楽に杖を振ってルネックスはウルフを途絶えることなく地獄に送っているのだ。
彼と魔物のレベルの差が一目瞭然。
逃げようとしてもシェリアのスキルには【動作不能眼】という鬼の能力の一種がある。
睨めば対象が動けなくなるという最強のスキルだ。
「まあそうですね、でもこうするしかないじゃないですか?」
「大精霊のちからでめっしようかー?」
「いやフェンラリアはやめて、世界が滅びる」
「えー? あたしはばくだんじゃないよー?」
「十分大爆弾です」
笑えたことではない、フェンラリアが本気を出したら世界が滅びる。
ルネックスのポケットの中からひょこりと顔をを出している。きっとかわいらしいのだろうが、その身分と発言が無視できない。
その思考の間にも、大量のウルフが屠られている。
「でもこれ、いまおもったけどおおすぎない?」
「逆に言うと今思ったのかよ!?」
ウルフは今もその数を増やし続けている。
どうやらこの森すべてのウルフが出てきたようだ。これはいけない。
世界破滅はしないようにフェンラリアに力を借りるしかないのでは。
「フェンラリア……」
「るねっくす、あたしはね。るねっくすのすきるをみがくのがいちばんだとおもう」
「うっかり世界が破滅してしまったら元も子もありません……」
射線がいつの間にかLV2になっているのが気になるため使ってみようと思う。
知っての通りフェンラリアは高度技術が求められる精霊界や神界などに滞在していた身だ。人間界でいきなり手加減して攻撃をしろと言うのはきっとムリだ。
それにまだ彼女は人間界の基準を知らない、一歩間違えたら破滅してしまう。
「そうするよ。【射線《LV2》】」
ルネックスが掌をウルフの群れに向けると、光線が何本か飛び出した。
『LV3になりました、LV4になりました、LV5になりました、LV……』
ルネックスの脳内に、レベルアップの声が響き続ける。
それと共に手から出る光線が広がり、数も増え、やがてそれが合わさりすぎて化学反応のようなものを起こし、ウルフに対してだけ強大な爆発が起こった。
その強大さと残酷さに、ルネックスとシェリアは呆然とそれを見つめていた。
「ルネックスさんでも世界破滅できるのでは?」
「いや、それは無理でしょ。魔物破滅ぐらいならできるかも?」
「殺戮者の称号はだてではなかったようですね」
フェンラリアはそれ以上の攻撃をみることが当たり前なため、それほど驚いてはいない。
時間が空いたら常識を教えよう、と心に密かに目標を立てたルネックスだった。
そして、魔物殺戮者という称号もあり、魔物を屠る時だけレベルアップが早いのかもしれない。
黒煙が晴れていく。
「きもっ!? うえぇ……いやあ殺しすぎたわ」
「ルネックスさん、これはさすがに私も無理ですっ」
そう、彼らが見たのは、黒煙が晴れた後に残った大量の血と肉塊の山だった。
命の残っているウルフはいない。
フェンラリアもポケットに顔を突っ込み、その残酷な情景から目をそらしていた。
シェリアは口を抑え、涙目になっていた。
初めてのルネックスは自分の威力に引きながら、吐き気をこらえていた。
「いや、楽すぎて怖……」
「GYEEEEEEEEEE!!!」
「はぁぁぁぁああああ!? ななななな何で!?」
怖い。と、そう続けようとしたルネックスの言葉を遮り、飛び出してきたのはキングウルフ。
このウルフたちを従えているようだが、本来は何があっても自分たちの住処にいるものなのだ。
配下が出ていったとしても此処に来ることはないはずだ。
しかし今は何を考えても無駄だ、戦わなければいけない。
今までのウルフとはるかに違うのはその真っ黒な毛が大量に増えているということ、魔術を使うことができること、頭に銀の角が生え、素材として貴重であること。
「これは、どうしようかな……スキル使わなきゃいけないよね」
スキル「魔眼」の発動準備をし、フェンラリアがキングウルフを鑑定する。
鑑定結果はこうだ。
キングウルフ
LV15
属性『火』
魔物のステータスはこう表示されるのが当たり前で、なぜ人間たちとちがうのかはまだ解明されていない。
相当強い魔物のようだが、きっとフェンラリアはごみクズのように感じているだろう。
「はあ、これで死ねばいいんだけどねー」
「ルネックスさん、闇化してますよ。さすが魔物殺戮者」
「分かったから! 分かったから黒歴史弄るのはやめて」
ルネックスにとってあの称号は黒歴史のひとつだったようだ。
フェンラリアが密かに笑っていたのは秘密にしておこう。
「もう。【魔眼《LV1》】」
ルネックスの目が赤黒く光り、電撃を放ちながらキングウルフに向かっていく。
その際キングウルフが何かしようとしたが、その速度は遅く、全く間に合わなかったのだ。
「あれえ、なんかすっごく強い!?」
そう彼が叫んだのと同時に、キングウルフもその生涯を終えたのであった。
キングウルフの腹は魔眼と同じく赤黒く染まっており、ぷすぷすと煙を立てている。
ルネックスたちが強いということを知ったキングウルフ以下の魔物は逃げていった。
「ちょっと疲れたから帰ろうかな」
「むしろこれで「ちょっと」って鬼ですか」
「いや、んー、僕は少なくとも鬼の類ではないかな。ていうかどちらかというとシェリアだよね」
「あ、そういえば鬼だったの忘れていました」
「しぇりあー。それはわすれちゃだめだよー?」
そう駄弁りながらも、フェンラリアに転移をしてもらい、ルネックスの小屋へその姿を現す。
ルネックスはベッドに寝転がり、シェリアは地べたに座り込み、フェンラリアはべちゃ、とベッドの上でつぶれている。
もちろん精神的に。
「ねえるねっくす、いっかいかんていしてみない?」
「あー凄いレベル上がってそう」
「ルネックスさん……くれぐれも世界を滅ぼさないでくださいね?」
「僕を何だと思ってるの!?」
フェンラリアが言ったセリフと同じようなセリフが繰り出される。
フェンラリアにとっては仕返し代わりになったようで、喜んで笑っていた。しかしルネックスはすでに涙目である。
「からかいはおしまい【ステータス鑑定《LVXX》】
「レベルXX!?」
「まっくすってことだよーぜんぶこんなかんじ!!」
今まではやってこなかったが、今回は見せびらかしでレベルも言ってみた、とフェンラリアは可愛く舌をぺろりと出す。
誰も想像できないだろう、フェンラリアが本気を出すときの姿を……。
ルネックス・アレキ
レベル:25
魔力:2500
体力:7800
運:8200
属性「水、風、火、???、???」未覚醒
称号「魔物殺戮者、紳士、???、???」未覚醒
スキル「魔眼LV3、射線LV15、ステータス偽造LV1、気配消しlv1、聖神召喚LV1、記憶分析LV2、ステータス鑑定LV2、アイテムボックスLV1、封印LV1、感情斬りLV2、呪いLV0、???、???、???、???、???、???、???、???」半覚醒
「増えてる! 増えてる! いろいろと増えちゃってる!」
変わり果てた自分のステータスに、ルネックスはすでに涙目だ。
「ほうら、さいしょにこえられるっていったでしょ?」
「いやフェンラリアは超えてないから大丈夫」
これは真顔で言わなければならない、フェンラリアを超えてはいけない。
シェリアも横で震え、ルネックスの成長に喜べばいいのか悲しめばいいのか反応に困っていた。
ルネックス自身もどうすればいいのか迷っており、とりあえずこれは冒険者ギルドに行かなければならないと信念を燃やしていたのであった。
「じゃあしぇりあも。【ステータス鑑定】」
シェリア・フェリス
レベル:32
魔力:5000
体力:6200
運:180
属性「闇(珍)」
称号「鬼(上級)」
スキル「呪いLV15、動作不能眼LV6、鬼の威圧LV12、鬼の角LV5」
ちなみにこれでもこの国の賢者をも上回るレベルだ。
シェリアは自分の成長に喜んでおり、ルネックスとハイタッチしていた。さっきの情景がまるでなかったかのように。
そしてこのシェリアでも運がLV180。ルネックスの反則さがわかるだろう。
「ばけものたちのしゅうごうばしょなのかな?」
「それ、フェンラリアだけには言われたくないなあ」
「でも間違ってはいないですよね」
それもそうだ、とルネックスはシェリアとフェンラリアの言葉に納得する。
まず大精霊と上級の鬼が集まっている時点で終わっている場所である。
さらにルネックスという成長が測れない少年が加われば、もう言葉では表せないほど恐ろしい。
もしこの小屋に三人が全力で張った結界があるならば、神でも破るには時間がかかるだろう。
「でも、これで冒険者になれるんじゃないですか?」
「いや十分なれすぎちゃうなあ……力の扱いもちゃんと学んでおかなきゃね」
「あたし、わかんない!」
「フェンラリアが全力を出すときとかあるのかなー」
もしあるとしたら、それは人類破滅の危機だろう。
もしそれほどの人物がいるのなら、すでにこの世界は滅びているだろう。
ルネックスとシェリアが本気を出すだけでも、きっと世界に影響を与えるだろう。
「もうふきつなかんがえはおわり! ウルフたいりょうしゅつげんのげんいんとか、むらを出ていくじゅんびとかしなきゃいけないでしょ?」
「あ、それは正論だ。よしきた、頑張ろう」
「そのまえにいっかいねたら……?」
「本当ですね、もう夜中です」
いつの間に夜中になってしまったのだろう、もう太陽は沈んでしまっている。
他のことは明日にしよう、とりあえずルネックスたちはその場で寝ることにした。
ルネックスはベッドで。
フェンラリアはシェリアの背中の上で。
シェリアは地面で。
誰かがかぜをひかないかとても心配な情景である。
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