職業魔王にジョブチェンジ~それでも俺は天使です~

黒水晶

閑話~クレアシオンのお部屋。~

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 クレアシオンが転生してから、三年。アリアとイザベラは料理をしていた。彼に教わって以降、一緒に作っていたので料理の腕は中々のものになっていた。そんな彼女たちだが、ある問題にぶつかった。それは……

「飽きました」
「……飽きてしまいましたね」

 そう、飽きたのだ。彼女たちは元々料理が得意でなく、得意でない彼女たちでも作れるような料理から順に教えられていたので、むずかしい料理も出来るが、彼に教わった料理しか作れなかったのだ。三年も料理をしていると作る料理が偏ってきてしまう。そこで、

「アリア様、新しい料理に挑戦しませんか?」
「新しい……料理……?」

 イザベラの提案にアリアが可愛らしく首を傾げた。その仕草は同性のイザベラからも可愛く写ったのか、つい抱き寄せてしまう。そうなれば、イザベラの大きな双丘にアリアの顔が埋もれる訳で……。

「……当て付け……ですか」

 アリアの目にうっすらと涙が浮かび、声が少し震えている。

「す、すみません。つい……」

 イザベラは慌てて謝った。悲しいことに、神と天使は老いもしなければ成長もしない……つまり、今あるもので満足しなければならなかった。アリアの慎ましい双――平野には成長の余地はなかったのだ。

「こほんっ!それはそうと新しい料理はいいアイデアですね」
「帰ってきたアイツを驚かせましょう」
「はいっ!」

 二人は新しい料理を作る事に決めた。クレアシオンが無事に帰ってきたときに色々な料理を食べさせてあげようと料理を自分達で勉強しようと決めたのだ。

「どうやって勉強しますか?」
「たしか、クレアの部屋の本棚にあったはずです」

 イザベラがクレアシオンの部屋の料理本で勉強しようと提案する。

「クレアの部屋ですか?あまり入ったことありませんね。行って見ましょう」

 イザベラの提案にアリアは乗り気だ。それは、彼女たちはクレアシオンの部屋にあまり入ったことが無かったのだ。普段はリビングで一緒に過ごしていたので、それぞれの部屋は完全にプライベート空間になっていたのだ。なので、クレアシオンがどのような部屋にしているのか、彼女たちは気になっていた。ちょうど、クレアシオンもいないことだ。滅多にない機会だろう。クレアシオンの居ぬ間になんとやら、

「これはしょうがないことですので」
「そうですね。クレアの部屋にしかないのですから」

 そう言って、彼女たちはクレアシオンの部屋に向かっていった。

◆◇◆◇◆

「かたずいていますね……」
「……そうですね」

 アリアとイザベラはクレアシオンの部屋は散らかっているだろう、と予想をして掃除道具を持ってきていたのに、クレアシオンの部屋はかたずいていた。それどころか状態維持の魔法が部屋にかかっていて、埃すら無かったのだ。どれだけ散らかってると思っていたのだろうか?彼女たちは三角巾とエプロン、手袋にマスク、右手にそれぞれハタキとホウキというフル装備で魔境クレアシオンの部屋に挑むつもりでいたと言うのに……。

「この部屋広くないですか?」
「……帰ってきたらお説教ですね」

 クレアシオンの部屋は一階の隅にあるのだが、地下に通じるらしい階段まであったのだ。彼女たちの部屋は普通の一室だと言うのに、彼は自分の部屋を勝手に広げていたのだ。彼が帰ってきたらお説教されることが決まった瞬間だった。

「あっ、アリア様あそこに本棚が」
「本当ですね。ジャンルごとにわけられてます」

 イザベラの指差す方には大量の本があり、魔術書、魔物の生態などありとあらゆる種類の本が置いてあった。……料理本の方が多いのは気にしない。

 そこであるものがアリアの目に止まった。

「……禁書?」
「どうしたのですか?」

 アリアが見つけたものは禁書と書かれたプレートのかかっている棚にある本達だった。よく見るとジャンルごとに禁書があるようでどの本棚にも禁書の棚が一つはあった。だが、

「……料理本の禁書ってなんですか!?」

 アリアの突っ込みはもっともだろう。当たり前のように料理本の本棚に禁書が十冊並んでいたのだ。

「……クレアシオン考案レシピ集①……ですね」

 イザベラが一冊の表紙を読み上げた。恐らく禁書指定されたレシピ集があと九冊もあるということだ。

 二人は恐る恐るページを開けた。

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禁書 クレアシオン考案レシピ集①

 【暴食のイチゴ大福】 討伐難易度 神域の魔物以上。凶悪な牙をもち、古龍を与えたら瞬く間に食べ終えた。食べさせれば食べさせるほど美味くなり、食べさせたものの質により美味さに差がでる。だが、美味くなるほど、狂暴性が増し、強くなるので大変危険。最低でも、神域の魔物より強く完成間際の強さは最低でも中位邪神に相当する。魔法や魔術に留まらず、物理的なエネルギーも食べられてしまい、討伐するには大量の保有魔力と体力、回避力が必要。また、攻撃をすればするほどエネルギーを食べて強くなるので終わりが見えないような感覚に陥るので折れない心が必要。お前が作り出した悪魔だ。お前が完成させなければ、世界はイチゴ大福に食べ尽くされるだろう。

 イチゴ大福は甘いが、食べるまでは甘くないぞ!!

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 レシピ集の最初のページにこう書かれていた。このあとに数ページにわたり、作り方から立ち回りまで書かれていた。

 完成するまであらゆる物を食べつくし、攻撃をしても全て吸収。悪夢だろう。終わりの見えない戦いをしなくてはならない。攻撃をすればするほど強くなっていくなっていくのだ。攻撃をしなくとも、あらゆる物を食べて強くなっていく。

 二人は深呼吸をして……

『何、上手いこと言っているのだ(ですか)!?』

 クレアシオン考案レシピ集を叩きつけた。

 レシピ集には一冊に十前後の【暴食系スイーツ】の作り方が書かれており、全部で百ぐらいあった。しかも、完成間際の強さが最低でも、神域の魔物ほどで、【暴食のタワーパフェ~季節のスイーツを添えて~】に至っては最高位邪神に相当すると書かれていた。

 禁書指定されるのもわかる。こんな頭のおかしいなスイーツを作るのはクレアシオンしかいないだろうし、倒せるのもクレアシオンの他には創造神か、最上級武神・魔神ぐらいなものだろう。

 クレアシオンはよくこの【暴食系スイーツ】を【シュヴァレア】の広場で鬼狐の戦闘訓練に使っていた。タワーパフェはクレアシオンしか倒せないので、途中までは鬼狐が攻撃して、最後にはクレアシオンが完成させていたのだ。

 【暴食系スイーツ】は倒す難易度に見あった美味しさが有るか?と聞かれたら首をひねらざるを得ない。倒せなかったら世界がスイーツに食べられるのだから……。だが、この上なく美味しいのはたしかだった。

 クレアシオンが新しい魔術の威力を試したり、体を動かすのに便利で、完成させたら極上のスイーツだ。彼にとっては色んな意味で美味しかった。

「……よく見たら、クレアがたまに持ってくるあれじゃないですか?」

 イザベラがレシピ集に載っている完成写真をみて、気がついた。

「……美味しかったですね」 

 その写真をみて、アリアは虚空を死んだような目でみて、そう言った。……食べてたのだ。二人とも、美味しそうに……。

「まぁ、まあ!変な物も入ってませんから大丈夫ですよ!?」

 イザベラが慌ててフォローをした。そう、材料はありふれた物だった。ありふれた食材で世界を滅ぼせるスイーツをクレアシオンは作っていたのだ。

「そ、そうですよね。他の料理本を借りていきましょう」
「そ、そうですよ!いきましょう」

 二人は禁書をもとの位置に戻した。まるでなにも見なかったかのようにして、クレアシオンの部屋から出ていった。若干、疲れていたのは気のせいだろう。そう、なにも見なかったのだ。世界を滅ぼせるスイーツのレシピなんてなかった。そう、普通の異世界ごとにわけられた料理本から地球や地球に似た食文化の世界の料理本を数冊かりただけだ。

 二人は忘れていた。クレアシオンの部屋には地下があるということを――


ありがとうございました。

プロット書いてるノートみたら箇条書きで、ストーリーの流れ書いてるだけのプロット(笑)なんですけど、まだ、ノートの13行分しか使ってなかった……。14行目から神託の儀のこと書いてるのに……。9万文字以上かいてまだプロットの13行……。プロット通りに進んでない……。神託の儀が遠いぜ☆

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