職業魔王にジョブチェンジ~それでも俺は天使です~

黒水晶

暴走の爪痕~歪められし剣~

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 【暴食】 【捕食者の矜持】 毒無効。狙った獲物を逃がさない。何処に逃げようが、獲物の魔力で追跡可能。

      【捕食者の威圧】 絶対的な捕食者がみせる視線。ただ、自分が捕食される立場でしかないと自覚させる。

      【暴食のアギト】 魔力から形作られる口のみの龍。あらゆるものを貪り喰らい、エネルギーにかえる。食べた生物のステータスの一部を自分の物にできる。使用者の最大保有魔力量により、龍の数が決まる。使用者が身体を保てないほどエネルギーを使い果たし、弱体化すると暴走し、身体を維持しようと見境なく辺りの物を食べ尽くす。

      【食道楽】 料理に補正あり、美味しい物ほど、食べるとエネルギーを回復できる。

      【暴食の料理人】 料理に補正大。農作業に補正大。食材採取に補正大。目利きの腕がよくなる。

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「……【暴食】だけ毛色が違うのですが」

 前半の能力は確かに大罪系スキルの名に恥じない強力な能力だが、後半がおかしい。暴食は際限なく貪り喰らうスキルだ。生物だろうが、無生物だろうが食べ尽くし、相手のステータスだろうが、スキルだろうが、記憶すら喰らい、全て自分の物にするスキルだった。

 それなのにクレアシオンの【暴食】は――

「俺の趣味だ」

 料理に関した能力だった。エレノアが料理系の職業を持っていると思ったのも、全てこの【暴食】のせいだったのだ。

 ソフィアはあまり深く聞かないように決めたようだ。クレアシオンが自信満々に趣味だ、と言い切った。ある意味、三つもある大罪系スキルの中で最もそれらしいスキルだとも言えるのだろう。

 『スキだから、やる』これが行きすぎて罪になった物が大罪系スキルなのだから。

「では、次へ参りましょう」

 深く聞いても理解出来る物ではない。欲望の成れの果て【化け物】なのだから――

 考えても理解できるはずがない。理屈などないのだから、考えても仕方ない、とソフィアは考えた。

◆◇◆◇◆
 
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 【神器召喚】 《ヴェーグ》 クレアシオンの神器、圧倒な質量と切れ味で障害を薙ぎ倒せる大剣。望む未来を切り開けるように、道を切り開けるようにと名付けられた。真に使いこなせれば名に恥じない威力を発揮する。威力を求めたため、見た目以上に重い。

        《???》 召喚不可能。クレアシオン=ゼーレ=シュヴァーレンの力を封じたカギ。クレアシオ&%¥#$法陣を弄く£#¢め、大幅に変質。神器を喰らい、¢☆¢¢&§$。¥*##&£が壊れし時、¢&£@☆%£☆。%¥$£#☆器に£☆§%&£#¢ができる。【$*&¢£§%・ウエポン】幾千も§@$が$¥を支配%£。¥&*$¢神器%#§、☆§@£#%£。

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 鑑定の結果を見て、二人は息を吸って吐いて落ち着いてからもう一度みた。

――《???》って創造神様に渡されたあの剣か……。神器ではなかったと思うが……。

 クレアシオンがそんな事を考えていると、

「……ご主人様、ヴェーグはすごく重い剣だってわかるのですが……

「……うん、めちゃくちゃ重い」
「???って何ですか!?神器を喰らうとか、壊れし時とか、支配するとか、色々言いたいことは有りますけど……」

 《???》クレアシオンが転生した時より、気になっていた神器のほとんどが鑑定不能。鑑定出来た所は不気味な文言が……。しかも、その原因は――
 
「クレアシオンが弄ったため、て書いてありますよね?」
「……はい」
「弄ったのですか……?」
「……」

 クレアシオンはソフィアの問に口をつぐんで顔をそらした。お母さんに怒られた子供のように、都合の悪いことから目を背けた。

「正座して、一から説明してください」

 だが、ソフィアは見逃してくれなかった。今までの不自然な所や理解出来ないこともあるが、これは無視できないと思ったのだろう。

「……はい」

 クレアシオンは正座をして転生前になにがあったか、何のために転生したかを話していく。……堕天したことや、魔王と呼ばれていた事を伏せて、女神アリアの天使だと、天使だと言うことを強調して……。嘘は言っていない。本当の事も都合が悪い所だけ伏せていたが。
 
 小さな所からコツコツと、イメージの植え付――イメージの回復を。

 この世界が悪神と邪神の手に堕ちかけていて、それを止めるために、勇者と共に倒すために転生したと、転生するときに転生用魔法陣を弄ったかも知れない……と。

 全てを聞いたソフィアは、

「ご主人様、妄想もいい加減にして、本当の事を言ってください」

 信じてくれなかった。そして、諭すように、優しい慈愛に満ちた顔をして、

「絵本の読みすぎです」

 その優しいようで現実を突きつけるような言葉を口にした。だが、

「俺のスキルや称号はどう説明する?」
「っ……!?」

 確かにそうだった。普通はあり得ないスキルに称号。ソフィアの疑問、これら全て、クレアシオンの話しが本当なら、全ては納得できないが、説明は出来た。普通の子供、というより、天使の生まれ変わりと言われた方が納得できた。

「どうした?言い返してみろ?」
「……」

 言い返せず、難しい顔をして考えていた彼女を煽ったクレアシオンの足をを無言でツンツンする。

「いたい!!痛いって!!」

 説明が長くなり、その間ずっと正座していた彼の足は痺れていた。彼は足を刺激され耐えられずに足を崩すが……。

「……誰が足を崩して良いと言いましたか?」

 ソフィアが許してくれなかった。

――やっぱり、トゲがあるよな!?
 
◆◇◆◇◆

 正座から解放されたクレアシオンは(足の血のめぐりの)自由を噛み締めていた。

 ソフィアはクレアシオンの言うことを一応信じて話しを進めることに決めた。現状、状況証拠が有りすぎるため、信じることにしたのだろう。

「ご主人様の言っていることが本当なら、かなり不味くないですか?」
「……ああ」

 彼が魔法陣を弄ったせいで、彼の力を封じたダンジョンを開けるカギが召喚不可能になっているのだ。それに、大幅に変質、とあるが、何がどのように変質しているかわからないが、創造神が渡したとき、クレアシオンが受け取った時は神器等ではなかった。儀式用の封印魔術が施された鍛冶の神が作った、ただの剣――それでも神が作っただけあり、美しく非の付け所のない見事な剣――だった。

 それが、クレアシオンが魔法陣を弄ったことにより、巻き込まれて形を変えていた。

「封じられたご主人様の力がどらほどの物かわかりかねますが……、どうするのですか?」

 ソフィアが調べた情報では、約二十数年前、悪魔が人々を襲い、一つの大陸を占拠している。悪魔ですら、人で対抗出来るものがほんの一握りだった。悪魔の数が多く人が押されていたとき、空より降ってきた謎の流星が魔族を殺していったが、それが無ければ人は危なかった。
 
 悪魔が崇める存在。それを殺すには、封じられた力がどうしても必要に思えた。

「出来ないものはしょうがない。今すぐ必要なものでもないしな。今はスキルの確認をして、今後の方針を決める」

 ソフィアにはクレアシオンを測りかねていた。バカに見えるが状況を冷静に見極めようとしている。流石に神もこんな危機的状況にバカを送るとは思えないし、思いたくもなかった。

 しかし、クレアシオンがただのバカなら、ここまでややこしくならなかった。無駄に回転の早い頭で創造神が創った幾重にも重なった複雑な魔法陣を読み解き、無駄に有り余る発想と無駄に洗練された無駄のない魔術で一瞬で書き換えてしまったので、今こうなってしまっているのだ。

 クレアシオンの知人からは、無駄に洗練された無駄のない無駄な技術、と定評があった。

 だが、その無駄な技術と発想で思いも寄らない結果を導き出す。それが、創造神がクレアシオンに任せた理由の一つでもあった。

 実際、クレアシオンの咄嗟の行動で女神フローラは助かっている。時間が有ればきちんと問題が起こらないように書き換えられたと思うが、時間がなかった。あの瞬間に書き換えたにしては上出来と言えるだろう。

 だが、ソフィアは知らない。彼女は彼を見定めるような目でみた。眷属と言えども、絶対服従ではない。相手を見極め、ついていくか決めることがある。特に知能の高い者ほどその傾向が大きくなる。

――まだ、それを決めるのは早計ですけどね……。これからゆっくり見定めさせてもらいましょうか?

「では、ご主人様、次に参りましょう」

 そう、笑顔で言った。


ありがとございました。
 
クレアシオンはバカでは有りませんが、考えなしの行動やめんどくさがっての行動、咄嗟の行動が多くあります。

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