浦島太郎になっちゃった?
峻に問いたい。今朝見た夢は現実世界と違って楽しかったですか?
目覚まし時計の小ぶりな割にけたたましいアラームで目が覚めた。
アラームを止め窓を見る。カーテン越しに陽光が射し込んできていた。
「朝ってこんなにまぶしかったっけ?」
思わず目をすぼめた俺はそう自問して、ゆっくり布団をまくる。
久しぶりに夢を見ていた。とても長い夢だったが、現れた人たちの顔や格好が思い出せずぼやけていて細かい台詞も覚えていない。でも覚えていることがある。
俺はいろんな名前で呼ばれていた。シュン君やら君やらじきなんとかやら、お主とも呼ばれてた。江戸時代かよ。江戸時代で先方のことをどう呼んでたかは、詳しく知らないけど。
内心突っ込んで、窓横にかけてあるカレンダーに目を遣った。
月曜日だ、学校がある。途端嫌な気分になって溜息がこぼれた。
「行くだけ行くか」
行ったところで何か明確な目的があるわけでもない。
「冷蔵庫にあるテキトーなもんでもつまんでから行くか」
冷蔵庫にあった焼きそばパンを四口で腹に詰めて、スクールバックを肩に提げ家を出た。
相も変わらず長ったらしい授業は黒板の文字や数式をノートに写すだけで過ごし、いつの間にか放課後になっていた。
誰とも挨拶を交わさず、一人校門をくぐった。
帰路に書店があるので暇つぶしにのぞいてみることにした。
入ってすぐに現在人気売り出し中の小説が、表紙を上にして並べて積んであった。
『好きと言えるなら』か、恋愛小説かな?
ん? 今、なにか思い出した。
『好き』って夢の中で誰かに告白された気がする。年上っぽい落ち着いた声だった気がする。
でも誰から言われたのか、顔も姿も思い出せない。
まぁ、苦労して思い出すことじゃないな夢だし。
そのあとは店内をあてなく見て回り、結局何も買わず店を出た。
帰路を進んでいると段々住宅街にさしかかってきていた。空がオレンジに染まっている。
時間帯になればよほど見られる夕焼けに綺麗と思うはずもなく、ぼんやりと見上げて家々に挟まれた道を歩いていく。ここの角を曲がればすぐ自宅だ。
俺が曲がる十字路の真ん中で、赤いワンピースが汚れたままの小学校低学年ぐらいの女の子がうずくまっている。
近くで見ると、顔を両手で覆って肩を上下させて泣いていた。
「おい、どうしたんだ?」
俺がしゃがんで話しかける。両手で覆っていた顔をむせびながらも向けてくれた。
「なんかあったのか?」
「ひっ、ひっ」
「なにか落としたのか?」
ううんと女の子は首を振った。頬に痛ましい切り傷がある。
それもナイフで切られたような横一線の傷。
いじめにでもあったのかな?
「この傷は?」
俺が頬を指さして尋ねると、女の子はよろよろ立ち上がって正面の道へ走っていった。
俺は慌てて追いかけた。
女の子は近くの横断歩道を渡ろうとしていた。
歩行者側の信号は赤だった。足が勝手にアスファルトを蹴立てていた。
女の子の横からトラックが突っ込んできていた、俺の手が女の子に伸びる。
女の子の背中を押してトラックの車線から遠ざけられた、と気づいた時にはとてつもない衝撃が俺を襲っていた。
そのあとのことは、どうなったのか俺は知らない。
アラームを止め窓を見る。カーテン越しに陽光が射し込んできていた。
「朝ってこんなにまぶしかったっけ?」
思わず目をすぼめた俺はそう自問して、ゆっくり布団をまくる。
久しぶりに夢を見ていた。とても長い夢だったが、現れた人たちの顔や格好が思い出せずぼやけていて細かい台詞も覚えていない。でも覚えていることがある。
俺はいろんな名前で呼ばれていた。シュン君やら君やらじきなんとかやら、お主とも呼ばれてた。江戸時代かよ。江戸時代で先方のことをどう呼んでたかは、詳しく知らないけど。
内心突っ込んで、窓横にかけてあるカレンダーに目を遣った。
月曜日だ、学校がある。途端嫌な気分になって溜息がこぼれた。
「行くだけ行くか」
行ったところで何か明確な目的があるわけでもない。
「冷蔵庫にあるテキトーなもんでもつまんでから行くか」
冷蔵庫にあった焼きそばパンを四口で腹に詰めて、スクールバックを肩に提げ家を出た。
相も変わらず長ったらしい授業は黒板の文字や数式をノートに写すだけで過ごし、いつの間にか放課後になっていた。
誰とも挨拶を交わさず、一人校門をくぐった。
帰路に書店があるので暇つぶしにのぞいてみることにした。
入ってすぐに現在人気売り出し中の小説が、表紙を上にして並べて積んであった。
『好きと言えるなら』か、恋愛小説かな?
ん? 今、なにか思い出した。
『好き』って夢の中で誰かに告白された気がする。年上っぽい落ち着いた声だった気がする。
でも誰から言われたのか、顔も姿も思い出せない。
まぁ、苦労して思い出すことじゃないな夢だし。
そのあとは店内をあてなく見て回り、結局何も買わず店を出た。
帰路を進んでいると段々住宅街にさしかかってきていた。空がオレンジに染まっている。
時間帯になればよほど見られる夕焼けに綺麗と思うはずもなく、ぼんやりと見上げて家々に挟まれた道を歩いていく。ここの角を曲がればすぐ自宅だ。
俺が曲がる十字路の真ん中で、赤いワンピースが汚れたままの小学校低学年ぐらいの女の子がうずくまっている。
近くで見ると、顔を両手で覆って肩を上下させて泣いていた。
「おい、どうしたんだ?」
俺がしゃがんで話しかける。両手で覆っていた顔をむせびながらも向けてくれた。
「なんかあったのか?」
「ひっ、ひっ」
「なにか落としたのか?」
ううんと女の子は首を振った。頬に痛ましい切り傷がある。
それもナイフで切られたような横一線の傷。
いじめにでもあったのかな?
「この傷は?」
俺が頬を指さして尋ねると、女の子はよろよろ立ち上がって正面の道へ走っていった。
俺は慌てて追いかけた。
女の子は近くの横断歩道を渡ろうとしていた。
歩行者側の信号は赤だった。足が勝手にアスファルトを蹴立てていた。
女の子の横からトラックが突っ込んできていた、俺の手が女の子に伸びる。
女の子の背中を押してトラックの車線から遠ざけられた、と気づいた時にはとてつもない衝撃が俺を襲っていた。
そのあとのことは、どうなったのか俺は知らない。
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