浦島太郎になっちゃった?
メモリーボックス
「全員、集まったかね。ではこれより緊急会議を始める」
絢爛な玉座の間に用意された円卓にて、俊を失神状態から救うためのの会談が行われていた。
メンバーはいざというときは静謐なオドワ・悲しみに沈むクリナ・生真面目に座るラナイト・鼻水が止まらないメラ・肩肘張っているルイネ・頬杖をついているミクミ・顔を俯けるクリナを心配そうに見ているマリの七名だ。
卓上の中央に、金糸で編まれた縄で封をしてある弁当箱に似た立派な箱が場違いに置かれていた。
「あ、あのオドワさん。その箱は何ですか?」
ルイネがたどたどしく箱のことを尋ねた。
オドワがよくぞ聞いてくれた、と大きく頷いて厳かに答える。
「現王いわく、玉手箱じゃ」
オドワは六人の少女達をぐるりと順繰りに眺めて聞いているかどうか確かめてから、話を続ける。
「玉手箱は別名『メモリーボックス』として王族に代々受け継がれてきた、竜宮の宝じゃ。一代目王の姫、つまり善悪両方の言い伝えが数々ある乙姫じゃな。その玉手箱は乙姫が、竜宮を出て家に帰ろうと決断した一代目王に最後に手渡した玉手箱の失敗作なんじゃそうだよ
」
話に律儀に相づちを打ちながら聞いていたラナイトが、ふと一つの根本的な疑問に気づく。
「そのような内輪な話を私達にして、どうしろと言うのですか?」
ラナイトの質問にオドワさんは切々と答える。
「君達との記憶を失い目を醒まさない俊君を助けてやってほしいのだよ。これは姫候補である君達にしかできないことなんじゃ」
「俊が記憶を失っただと! さらには目を醒まさないとは、どういうことだ!」
「シュシュシュ、シュンさんがもう目を醒まさないんですか! きき聞いてません」
「わらわも初耳じゃぞ、そんなこと。なんとかならんのかえ?」
「ええっ、もう一緒に時計台登れないの……」
「姫に選ばれたら、毎日一緒に食事できるはずでしたのに……ハクション、残念ですわ」
姫候補達は各々にオドワに向かって放言し始める。
その傍らで悲しみに明け暮れていたクリナが、小さく口を開いた。
「私だって……」
不意にゴニョゴニョと呟いた親友に、気遣わしげにマリは問う。
「クリナもやっぱり驚いた?」
「……私だってシュンくんと」
クリナが訥々と何か言おうとした時、オドワが静ずかにするんじゃ、と円卓を叩いて場を静める。
姫候補達は揃って口をつぐみ、沈痛に顔を俯けた。
オドワはふぅ、と一息吐き出してから玉手箱の話を再開する。
「竜宮の姫になれる資格を得た君達しか、この箱を開けることはできないらしいんじゃ。さっき『メモリーボックス』とわしは言ったじゃろ、この箱を開けた時の煙で竜宮での記憶が消される。今の俊君は竜宮に来る以前の記憶しかないんじゃよ。難解な話じゃと思うが、理解してほしい」
オドワの長々とした講釈だけが場を領した。
姫候補達は意見を差し挟まず黙々と聞いているだけだった。
しかしクリナだけが重苦しい場の中で、淡々と心情を述べた。
「私だってシュンくんともっと仲良くなりたかったわよ。シュンくんを好きな気持ちならあなたたちにだって、負ける気がしないわ。あなたたちが何もしないなら、私がやる。私がシュンくんを助ける」
そうまくし立てたクリナはオドワの方を向く。
「オドワさん、何をすればいいんです?」
「そ、それは……対象の人の近くで玉手箱を開けるだけじゃが。本当にやるのか?」
「だってこんな形でシュンくんと別れるなんて嫌だもの、あなたたちもそうでしょ?」
同調を求める質問をそれぞれ沈んでいた姫候補達に投げ掛ける。
姫候補達は強く頷いて応じる。
「ほんとに、いいのじゃな。俊君の記憶から君達は消えるのだぞ?」
覚悟を確かめる風のオドワの問いに、少女達は口々に決意の言葉を告げた。
「シュンくんが私達のことを忘れるなら、もう一度私達のことを覚えてもらえばそれでいいの」
「何度忘れられても、その度に記憶に刻んでやる」
「そうですわね、幾度でもあの大食いにチャレンジしてもらいますわ」
「わわわ私も、シュンさんにもう一度覚えてもらいます。ペンダントのこともまた話してあげます」
「わらわじゃって、忘れられたままは嫌じゃが、やり直しでも構わぬ」
「あんな風にデートして楽しかったことを、また日記に貰います」
少女達の覚悟をその目と耳でしかと確かめたオドワは、卓上の玉手箱を抱えると席を立つ。
「では王室へ向かおう」
七人は玉座の間を出て、城一に安全な内部に位置する王室へと決意を固めた表情で大挙していった。
絢爛な玉座の間に用意された円卓にて、俊を失神状態から救うためのの会談が行われていた。
メンバーはいざというときは静謐なオドワ・悲しみに沈むクリナ・生真面目に座るラナイト・鼻水が止まらないメラ・肩肘張っているルイネ・頬杖をついているミクミ・顔を俯けるクリナを心配そうに見ているマリの七名だ。
卓上の中央に、金糸で編まれた縄で封をしてある弁当箱に似た立派な箱が場違いに置かれていた。
「あ、あのオドワさん。その箱は何ですか?」
ルイネがたどたどしく箱のことを尋ねた。
オドワがよくぞ聞いてくれた、と大きく頷いて厳かに答える。
「現王いわく、玉手箱じゃ」
オドワは六人の少女達をぐるりと順繰りに眺めて聞いているかどうか確かめてから、話を続ける。
「玉手箱は別名『メモリーボックス』として王族に代々受け継がれてきた、竜宮の宝じゃ。一代目王の姫、つまり善悪両方の言い伝えが数々ある乙姫じゃな。その玉手箱は乙姫が、竜宮を出て家に帰ろうと決断した一代目王に最後に手渡した玉手箱の失敗作なんじゃそうだよ
」
話に律儀に相づちを打ちながら聞いていたラナイトが、ふと一つの根本的な疑問に気づく。
「そのような内輪な話を私達にして、どうしろと言うのですか?」
ラナイトの質問にオドワさんは切々と答える。
「君達との記憶を失い目を醒まさない俊君を助けてやってほしいのだよ。これは姫候補である君達にしかできないことなんじゃ」
「俊が記憶を失っただと! さらには目を醒まさないとは、どういうことだ!」
「シュシュシュ、シュンさんがもう目を醒まさないんですか! きき聞いてません」
「わらわも初耳じゃぞ、そんなこと。なんとかならんのかえ?」
「ええっ、もう一緒に時計台登れないの……」
「姫に選ばれたら、毎日一緒に食事できるはずでしたのに……ハクション、残念ですわ」
姫候補達は各々にオドワに向かって放言し始める。
その傍らで悲しみに明け暮れていたクリナが、小さく口を開いた。
「私だって……」
不意にゴニョゴニョと呟いた親友に、気遣わしげにマリは問う。
「クリナもやっぱり驚いた?」
「……私だってシュンくんと」
クリナが訥々と何か言おうとした時、オドワが静ずかにするんじゃ、と円卓を叩いて場を静める。
姫候補達は揃って口をつぐみ、沈痛に顔を俯けた。
オドワはふぅ、と一息吐き出してから玉手箱の話を再開する。
「竜宮の姫になれる資格を得た君達しか、この箱を開けることはできないらしいんじゃ。さっき『メモリーボックス』とわしは言ったじゃろ、この箱を開けた時の煙で竜宮での記憶が消される。今の俊君は竜宮に来る以前の記憶しかないんじゃよ。難解な話じゃと思うが、理解してほしい」
オドワの長々とした講釈だけが場を領した。
姫候補達は意見を差し挟まず黙々と聞いているだけだった。
しかしクリナだけが重苦しい場の中で、淡々と心情を述べた。
「私だってシュンくんともっと仲良くなりたかったわよ。シュンくんを好きな気持ちならあなたたちにだって、負ける気がしないわ。あなたたちが何もしないなら、私がやる。私がシュンくんを助ける」
そうまくし立てたクリナはオドワの方を向く。
「オドワさん、何をすればいいんです?」
「そ、それは……対象の人の近くで玉手箱を開けるだけじゃが。本当にやるのか?」
「だってこんな形でシュンくんと別れるなんて嫌だもの、あなたたちもそうでしょ?」
同調を求める質問をそれぞれ沈んでいた姫候補達に投げ掛ける。
姫候補達は強く頷いて応じる。
「ほんとに、いいのじゃな。俊君の記憶から君達は消えるのだぞ?」
覚悟を確かめる風のオドワの問いに、少女達は口々に決意の言葉を告げた。
「シュンくんが私達のことを忘れるなら、もう一度私達のことを覚えてもらえばそれでいいの」
「何度忘れられても、その度に記憶に刻んでやる」
「そうですわね、幾度でもあの大食いにチャレンジしてもらいますわ」
「わわわ私も、シュンさんにもう一度覚えてもらいます。ペンダントのこともまた話してあげます」
「わらわじゃって、忘れられたままは嫌じゃが、やり直しでも構わぬ」
「あんな風にデートして楽しかったことを、また日記に貰います」
少女達の覚悟をその目と耳でしかと確かめたオドワは、卓上の玉手箱を抱えると席を立つ。
「では王室へ向かおう」
七人は玉座の間を出て、城一に安全な内部に位置する王室へと決意を固めた表情で大挙していった。
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