男女比が偏った歪な社会で生き抜く 〜僕は女の子に振り回される
35話
彩瀬さんの懸垂は250回で終わった。まだ余裕があったように見えたので、彼女の身体能力の高さに関心してしまう。
その後も順調に懸垂の測定が進み、女性が一巡したところで授業のチャイムが鳴った。
これで本日の授業は終わり。手早く帰宅の準備を進めて学校を出ると、電気屋に立ち寄ることにした。
◆◆◆
「いらっしゃいませー! 売り場にご案内しますね♪」
何かと親切に解説してくれる女性定員を引き連れて、ゲーム売り場に向かう。
ロングフィットのパッケージは、下着にしか思えないほど面積の少ない服を着た女性二人が、細く引き締まった筋肉を披露しているデザインだった。
僕からするとR18ゲームに見えてしまうので、買うのを少し躊躇してしまったけど、スイッチとか他のものに挟み込んで何とかレジに持っていくことができた。ゲームを買うだけなのに、サンドイッチ戦法を使うとは思いもしなかった。
お支払いはすべてカード。「これで欲しいものは何でも買いなさい」と母さんから渡されたまま、お財布の奥底に眠っていただよね。
会計を終わらして家に帰る途中、一緒に体が鍛えられると、楓さんも喜んでいたのでみんなで楽しめそうだ。体を動かして心身共に健康になろう!
――ということで家に入るとすぐに、ゲーム機器をテレビにつなげて初期設定を終わらせる。リング型のリモコンを持って立っていた。
運動するので制服から着替えている。下は薄い生地のジャージと、上はタンクトップの上にTシャツといった姿だ。
後ろには順番を待っている彩瀬さんと楓さんが控えていて、母さんと飯島さんがソファーに座って様子を見ている。一緒に遊ぶ組と観戦組に分かれたようだ。
「私が一番ー!! 今日は、ユキちゃんに良いとこ見せちゃうぞー!!」
「少し落ち着いたらどうですか? ゲームを買ったのはユキトさんなんだから、あなたは後に決まってます」
「えー! 先に手本を見せようよー! なんなら私と楓の二人でやる?」
「なんでそんな考えになるんですか。手本なんて必要ありません。彩瀬、ちょっとこっちに来てください」
楓さんの唇が彩瀬さんの耳につくほど近づく。
キスしているようにも見えてドキドキしてしまった。
「男――汗だ――――姿を見――――――?」
ポンッと音が出るんじゃないかと思うほど、彩瀬さんの顔が一瞬にして真っ赤になり、挙動不審になりながらも返事をした。
「え、あれ? うん……いい、見たい」
いつも元気な彼女とは違う反応だったので、話した内容が気になる。いったい何を見たいのだろう?
声をかけようと口を開くが――
「ユキトさん、話はまとまりました。先にプレイしてください」
と言われてしまって、言葉にならなかった。
二人は何かを期待するような目で僕を見ている。
ここにはレディファーストといった概念はない。むしろ、こういった場面では男性が優遇される。気になることはあるけど、断る理由はなかった。
「じゃぁ、僕からやるね。準備するからちょっと待ってて」
ケーブルの接続を確認してから電源をつける。テレビにゲームタイトルが浮かび上がった。
40cm程度はあるリング状のコントローラーを、両手で持っている女性がこちらを見ている。「一緒に鍛えましょう!」といったメッセージと共にスタート画面が表示された。
もちろんそのままスタートを押してゲームを始める。するとリングの使い方を説明するチュートリアルが表示された。
両手で左右を持って押しつぶすようにする操作や上下に振る動作など、一通りこなしていく。この時点ですでに汗がうっすらと出ていて、少し息が上がっていた。
効果が出ている証拠だ。頑張ろう。
「さて、どれからやろうかな?」
使い方が分かったので、これから本番だ。
テレビには、ランニングやパラーシュートといったミニゲームがずらりと並んでいる。ふくらはぎ、肺活量、二の腕といったパーツごとでも鍛えられるようになっているみたい。
僕の体は貧弱なので鍛えたいところだらけ。何を選べば良いか悩んでいると、楓さんから声がかかかった。
「決められないようでしたら、オススメがあります」
「助かるよ!!」
「足腰は動作の基本。先ずはしっかりとした下半身に作り替えましょう。壺作りにチャレンジしませんか?」
確かに日常生活で階段を上る、重い荷物を持って立ち上がるといった動作はするから、鍛えて損はなさそうだ。
「ありがとう。そうするね」
楓さんにお勧めされたとおりにゲームを選択した。
画面が切り替わり、縦に三分割される。左側にプレイヤーが取って欲しいポーズ、真ん中はお手本の形、右側は実際に壺を作っている画面だ。
お手本にあわせて足を曲げたり、伸ばしたりしている。スクワットと同じ動作だったので迷わず体を動かす。
「うんうん」
「これは……」
初めてにしては順調に進んでいる。上手く操作できているのに驚いているのか、彩瀬さんと楓さんは前のめりになりながら見てくれていた。
注目されているんだ、もっと頑張ろう!!
「おっと、今度はこのパターンだね! ちょっと厳しいかな!?」
お尻を突き出しながら中腰の状態になる。
クッ! 太ももの負荷がすごい! 効いてる! 効いてるよ!!
突如として脳何に出現した謎のマッスルお兄さんに励まされながらゲームを続ける。
「ま、負けない! 僕は壺を作るんだ!」
顔から汗が流れ落ちる。息が荒くなり、呼吸音がうるさい。
「「ハァ、ハァ、ハァ」」
なんだか二重になって聞こえるけど気のせいだろう。
マッスル! マッスル! と叫ぶ脳内お兄さんと一緒に、指示を一つ一つ丁寧にクリアしていくと、最後に「パーフェクト!」の文字が表示されて、ゲームが終了した。
なんと、完璧な壺が作れてしまった!
「やった!!」
思わず両手を挙げて喜ぶ。マッスルお兄さんも笑顔だ。
「うぁー。汗いっぱいかいちゃった。服が張り付いて気持ち悪い」
達成感に満たされた僕は、Tシャツを脱いでタンクトップ姿になる。
肌が空気にさらされて気持ちが良い。
「「「アッ、アアッ!!」」」
さらに服をパタパタとさせると、さらに冷えて気持ちが良かった。
お腹が丸見えになってしまうけど、服で顔の汗を拭う。
「あらあら、ユキちゃんは大胆ね」
「母さん、からかわないでよ」
母さんが僕の隣に立っていた。
優しく僕の手を包むと、服から手が離れる。
「もう少し男の自覚を持った方が良いわ」
「どういうこと……?」
「周りを見てご覧なさい」
「周りって、え!?」
ソファーに座っていた飯島さんが、両手で顔を隠し、指の隙間からチラチラと僕を見ている。
彩瀬さんは楓さんに雁字搦めにされて、ウーウーと声を出しながらこっちを見ていた。
正常なのは楓さんだけか? と思ったけど、どうやら違うみたい。鼻血を垂れ流していて、目が血走っている。お経を唱えていて彩瀬さんより怖い……。
「なんで、こうなったの?」
「女性には刺激が強かったの。ゲーム会社も、まさか男性が遊ぶとは思わなかったのでしょうね。ポーズが過激だったのよ」
「うぁ……それは予想できなかった」
思春期真っ盛りの男子中高生だってあんな反応はしない。彼女たちの反応を見ると母さんが言っていることは正しいんだと思う。
理性が吹き飛んで本能がむき出しになった獣のような女性。この世界には早すぎたのか……。
「彼女たちのためにゲームは終わりにしましょ」
「うん、そうするよ」
ハーレムメンバーを犯罪者にしたくないし、この惨劇を見てまで続けようとは思わない。
でも、僕の考えだけは伝えておかないと。
「次の配信でロングフィットを使った企画をしたいんだけど良いかな? 皆で健康になろう! みたいな感じで、楽しめたらいいなぁーって思ってるんだ」
「3Dモデルなら、汗や匂いは伝わらないから大丈夫よ。やってみましょ」
よし、母さんの許可は下りた。バーチャルの良さがここで活きてきたようだ。
僕の体が鍛えられるし、配信も出来る。一石二鳥の作戦。身長や筋肉が成長できるように頑張ろう!
「話は終わりね。後片付けは私がやるから、お風呂に入って着替えてきなさい」
楓さんを背に乗せたまま、彩瀬さんがほふくぜんしんで迫ってくる。
母さんの提案を拒否する気にはなれず、顔を引きつらせながらうなずく。
「後は女性だけで楽しんでね……」
僕は逃げ出すようにして脱衣場に向かった。
その後も順調に懸垂の測定が進み、女性が一巡したところで授業のチャイムが鳴った。
これで本日の授業は終わり。手早く帰宅の準備を進めて学校を出ると、電気屋に立ち寄ることにした。
◆◆◆
「いらっしゃいませー! 売り場にご案内しますね♪」
何かと親切に解説してくれる女性定員を引き連れて、ゲーム売り場に向かう。
ロングフィットのパッケージは、下着にしか思えないほど面積の少ない服を着た女性二人が、細く引き締まった筋肉を披露しているデザインだった。
僕からするとR18ゲームに見えてしまうので、買うのを少し躊躇してしまったけど、スイッチとか他のものに挟み込んで何とかレジに持っていくことができた。ゲームを買うだけなのに、サンドイッチ戦法を使うとは思いもしなかった。
お支払いはすべてカード。「これで欲しいものは何でも買いなさい」と母さんから渡されたまま、お財布の奥底に眠っていただよね。
会計を終わらして家に帰る途中、一緒に体が鍛えられると、楓さんも喜んでいたのでみんなで楽しめそうだ。体を動かして心身共に健康になろう!
――ということで家に入るとすぐに、ゲーム機器をテレビにつなげて初期設定を終わらせる。リング型のリモコンを持って立っていた。
運動するので制服から着替えている。下は薄い生地のジャージと、上はタンクトップの上にTシャツといった姿だ。
後ろには順番を待っている彩瀬さんと楓さんが控えていて、母さんと飯島さんがソファーに座って様子を見ている。一緒に遊ぶ組と観戦組に分かれたようだ。
「私が一番ー!! 今日は、ユキちゃんに良いとこ見せちゃうぞー!!」
「少し落ち着いたらどうですか? ゲームを買ったのはユキトさんなんだから、あなたは後に決まってます」
「えー! 先に手本を見せようよー! なんなら私と楓の二人でやる?」
「なんでそんな考えになるんですか。手本なんて必要ありません。彩瀬、ちょっとこっちに来てください」
楓さんの唇が彩瀬さんの耳につくほど近づく。
キスしているようにも見えてドキドキしてしまった。
「男――汗だ――――姿を見――――――?」
ポンッと音が出るんじゃないかと思うほど、彩瀬さんの顔が一瞬にして真っ赤になり、挙動不審になりながらも返事をした。
「え、あれ? うん……いい、見たい」
いつも元気な彼女とは違う反応だったので、話した内容が気になる。いったい何を見たいのだろう?
声をかけようと口を開くが――
「ユキトさん、話はまとまりました。先にプレイしてください」
と言われてしまって、言葉にならなかった。
二人は何かを期待するような目で僕を見ている。
ここにはレディファーストといった概念はない。むしろ、こういった場面では男性が優遇される。気になることはあるけど、断る理由はなかった。
「じゃぁ、僕からやるね。準備するからちょっと待ってて」
ケーブルの接続を確認してから電源をつける。テレビにゲームタイトルが浮かび上がった。
40cm程度はあるリング状のコントローラーを、両手で持っている女性がこちらを見ている。「一緒に鍛えましょう!」といったメッセージと共にスタート画面が表示された。
もちろんそのままスタートを押してゲームを始める。するとリングの使い方を説明するチュートリアルが表示された。
両手で左右を持って押しつぶすようにする操作や上下に振る動作など、一通りこなしていく。この時点ですでに汗がうっすらと出ていて、少し息が上がっていた。
効果が出ている証拠だ。頑張ろう。
「さて、どれからやろうかな?」
使い方が分かったので、これから本番だ。
テレビには、ランニングやパラーシュートといったミニゲームがずらりと並んでいる。ふくらはぎ、肺活量、二の腕といったパーツごとでも鍛えられるようになっているみたい。
僕の体は貧弱なので鍛えたいところだらけ。何を選べば良いか悩んでいると、楓さんから声がかかかった。
「決められないようでしたら、オススメがあります」
「助かるよ!!」
「足腰は動作の基本。先ずはしっかりとした下半身に作り替えましょう。壺作りにチャレンジしませんか?」
確かに日常生活で階段を上る、重い荷物を持って立ち上がるといった動作はするから、鍛えて損はなさそうだ。
「ありがとう。そうするね」
楓さんにお勧めされたとおりにゲームを選択した。
画面が切り替わり、縦に三分割される。左側にプレイヤーが取って欲しいポーズ、真ん中はお手本の形、右側は実際に壺を作っている画面だ。
お手本にあわせて足を曲げたり、伸ばしたりしている。スクワットと同じ動作だったので迷わず体を動かす。
「うんうん」
「これは……」
初めてにしては順調に進んでいる。上手く操作できているのに驚いているのか、彩瀬さんと楓さんは前のめりになりながら見てくれていた。
注目されているんだ、もっと頑張ろう!!
「おっと、今度はこのパターンだね! ちょっと厳しいかな!?」
お尻を突き出しながら中腰の状態になる。
クッ! 太ももの負荷がすごい! 効いてる! 効いてるよ!!
突如として脳何に出現した謎のマッスルお兄さんに励まされながらゲームを続ける。
「ま、負けない! 僕は壺を作るんだ!」
顔から汗が流れ落ちる。息が荒くなり、呼吸音がうるさい。
「「ハァ、ハァ、ハァ」」
なんだか二重になって聞こえるけど気のせいだろう。
マッスル! マッスル! と叫ぶ脳内お兄さんと一緒に、指示を一つ一つ丁寧にクリアしていくと、最後に「パーフェクト!」の文字が表示されて、ゲームが終了した。
なんと、完璧な壺が作れてしまった!
「やった!!」
思わず両手を挙げて喜ぶ。マッスルお兄さんも笑顔だ。
「うぁー。汗いっぱいかいちゃった。服が張り付いて気持ち悪い」
達成感に満たされた僕は、Tシャツを脱いでタンクトップ姿になる。
肌が空気にさらされて気持ちが良い。
「「「アッ、アアッ!!」」」
さらに服をパタパタとさせると、さらに冷えて気持ちが良かった。
お腹が丸見えになってしまうけど、服で顔の汗を拭う。
「あらあら、ユキちゃんは大胆ね」
「母さん、からかわないでよ」
母さんが僕の隣に立っていた。
優しく僕の手を包むと、服から手が離れる。
「もう少し男の自覚を持った方が良いわ」
「どういうこと……?」
「周りを見てご覧なさい」
「周りって、え!?」
ソファーに座っていた飯島さんが、両手で顔を隠し、指の隙間からチラチラと僕を見ている。
彩瀬さんは楓さんに雁字搦めにされて、ウーウーと声を出しながらこっちを見ていた。
正常なのは楓さんだけか? と思ったけど、どうやら違うみたい。鼻血を垂れ流していて、目が血走っている。お経を唱えていて彩瀬さんより怖い……。
「なんで、こうなったの?」
「女性には刺激が強かったの。ゲーム会社も、まさか男性が遊ぶとは思わなかったのでしょうね。ポーズが過激だったのよ」
「うぁ……それは予想できなかった」
思春期真っ盛りの男子中高生だってあんな反応はしない。彼女たちの反応を見ると母さんが言っていることは正しいんだと思う。
理性が吹き飛んで本能がむき出しになった獣のような女性。この世界には早すぎたのか……。
「彼女たちのためにゲームは終わりにしましょ」
「うん、そうするよ」
ハーレムメンバーを犯罪者にしたくないし、この惨劇を見てまで続けようとは思わない。
でも、僕の考えだけは伝えておかないと。
「次の配信でロングフィットを使った企画をしたいんだけど良いかな? 皆で健康になろう! みたいな感じで、楽しめたらいいなぁーって思ってるんだ」
「3Dモデルなら、汗や匂いは伝わらないから大丈夫よ。やってみましょ」
よし、母さんの許可は下りた。バーチャルの良さがここで活きてきたようだ。
僕の体が鍛えられるし、配信も出来る。一石二鳥の作戦。身長や筋肉が成長できるように頑張ろう!
「話は終わりね。後片付けは私がやるから、お風呂に入って着替えてきなさい」
楓さんを背に乗せたまま、彩瀬さんがほふくぜんしんで迫ってくる。
母さんの提案を拒否する気にはなれず、顔を引きつらせながらうなずく。
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