最果ての帝壁 -狂者と怪人と聖愛の女王-
第19話「ぐるぐるメガネは雑魚メガネ」
前回までのあらすじ。
お悩む相談バトル二回戦で、迷子のペット探しをすることになった将棋部と生徒会は、ついにとある公園で仔犬を見つけることに成功した。
しかしそこには空想上の生き物"ドラゴン"が居て、野木世二はそのドラゴンのブレスを喰らって塵と化したのだった。
……野木世二、死亡。
   ***
『……と、思うでやんすよね?』
 「おおっとぉ!?」
日ノ本夏輝は、突然声を掛けられ驚いて振り返ってた。
見るとそこには、例のNogiPodΣがあった。
しかしそれは、野木が乗っていた物とは別の小さな個体だった。
そして在ろう事か、そのNogiPodΣのスピーカーから、甲高い男の声が流れていた。
『というかヤバいでやんすよあの化け物!! いきなりブレス吐くとか危険極まりないでやんす、飼い主はちゃんと躾していたんでやんすかね!?』
「こ、この"やんす口調"は野木先輩なの! さっきのブレスで消滅したはずじゃあ……」
そう、謎のドラゴンの強力なブレスにより跡形もなく消滅した野木世二。
しかし彼は、ロボットとなって世紀の復活を果たしたのであった!
「の、野木くんっ! 良かった無事だったのね」
『いや全然無事じゃ無いでやんすけどね。無警戒に近づいたおいらも迂闊だったでやんすが、あんな雑魚キャラみたいに殺されるとは思っていなかったでやんすよ』
野木はNogiPodΣのクラゲのような触手で落胆のポーズを取った。
そして、いきなり人工の小さなクラゲ姿と化した野木を、有沢は面白いものを見るようにずいっと近づいて観察している。
「はぁぁ野木先輩が軟体動物に……。もしかして、それも何かしらの能力を使っているの?」
『その通りでやんす炎乃ちゃん! これは自身に霊を憑依する能力、"祟中幽泳! この能力を使い、おいらの魂をこのガジェットに憑依させたんでやんすよ!』
「おお、何というチートスキル。……野木先輩って見た目とか喋り方とか完全に『噛ませ』か『金魚のフン』ポジションのキャラなのに、もしかして結構有能なの?」
『後輩にすっごい失礼なこと言われたでやんすねえ!? まあまあ、そのぐるぐるメガネだけは流石にない、と言われるおいらでやんすが、やるときはやる男だというのは分かって欲しいでやんす』
「でも、さっきドラゴンに一撃でやられていたの」
『それはそれでやんす。そもそもおいら、戦いは専門外なんでやんすよ』
野木は大袈裟に触手を広げた。『オーノー』って感じだ。
「でもどうしよう。このままだと仔犬を保護できないわ」
2人と1機は、高い木の上を仰ぎ見た。相変わらずドラゴンは仔犬の側で周囲を警戒し、誰にも近づけさせないように見張っている。
そして、何故かドラゴンの眼は血走っていた。ドラゴンの全身が、激しく脈動しているのがここからでも確認できる。
『どうやら、さっきのドリンクの効果でパワーアップしたようでやんすね』
「人の体を簡単に消し炭にする威力なの」
『これは迂闊には近づけない……と、普通なら思うところでやんすが、しかしおいら達には夏輝ちゃんがいるでやんす。彼女ならあんなドラゴン、いくら強かろうと拳一発できゃいんきゃいんでやんすよっ!』
野木は、日ノ本夏輝という少女の実力を知っていた。
確かにあれは妙ちきりんな生き物だが、彼女の力を震えば何て事のない障害である。
しかし、
「いや、私には出来ないわ」
『どうしてでやんすか?』
「だって可哀想だもん! 動物を傷つけるなんて、私には出来ないわ!」
『何ですとぉ!!?!』
日ノ本夏輝、彼女は動物好きだった。
例え相手が危険度100%のドラゴンだろうと、無闇に攻撃することは出来なかったのだ。
これが、日ノ本夏輝が仔犬を保護しなかった理由である。
「強引に仔犬を保護することも出来たのに、ドラゴンが傷付くことを恐れて敢えて手を出さなかったの!? ぅぅ、、、これは、感動ものなの!!」
「何処がでやんすか!! このままだと仔犬どころか、あのドラゴンのせいで民間人に被害が及ぶでやんすよ!?」
野木の指摘はもっともだった。強力なドラゴンを野放しにするのは、あまりにも危険。今は大人しいドラゴンも、いつ人を襲うのか分かったもではなかった。
『くッ、こんな時、あの2人が居てくれれば……!』
「そういえば軽井沢先輩はどこへ行ったの? 先に公園へ向かったはずなのに」
「春太はよく寄り道するから。取り敢えず、今の状況をLineで報告しておくわね」
日ノ本夏輝は、野木と有沢が応援に来て、野木が死んでクラゲになった事をLineで報告した。
「応援来たれり、と」
『さて、あの2人が来るのを待っている間、おいら達はどうしてるでやんすかね……』
「ふっふっふっ」
「??」
突然、有沢炎乃は不敵な笑みを浮かべ始めた。
何事か、と日ノ本夏輝と野木は彼女を注目する。
「どうしたの炎乃ちゃん」
「……どうやら、ついに炎乃の力を発揮する時が来たようなの」
「……ッ! 炎乃ちゃん、貴方まさか!?」
絶句する日ノ本夏輝を尻目に、有沢は2人を置いてドラゴンと仔犬がいる高い木へと歩み寄っていく。
彼女のその顔は自信に満ちていた。
余裕たっぷりの表情で、彼女は言い放つ。
「見せてあげるの。"全能"の力をッ!!」
有沢炎乃。
彼女の才能が、猛威を奮う瞬間が来た。
お悩む相談バトル二回戦で、迷子のペット探しをすることになった将棋部と生徒会は、ついにとある公園で仔犬を見つけることに成功した。
しかしそこには空想上の生き物"ドラゴン"が居て、野木世二はそのドラゴンのブレスを喰らって塵と化したのだった。
……野木世二、死亡。
   ***
『……と、思うでやんすよね?』
 「おおっとぉ!?」
日ノ本夏輝は、突然声を掛けられ驚いて振り返ってた。
見るとそこには、例のNogiPodΣがあった。
しかしそれは、野木が乗っていた物とは別の小さな個体だった。
そして在ろう事か、そのNogiPodΣのスピーカーから、甲高い男の声が流れていた。
『というかヤバいでやんすよあの化け物!! いきなりブレス吐くとか危険極まりないでやんす、飼い主はちゃんと躾していたんでやんすかね!?』
「こ、この"やんす口調"は野木先輩なの! さっきのブレスで消滅したはずじゃあ……」
そう、謎のドラゴンの強力なブレスにより跡形もなく消滅した野木世二。
しかし彼は、ロボットとなって世紀の復活を果たしたのであった!
「の、野木くんっ! 良かった無事だったのね」
『いや全然無事じゃ無いでやんすけどね。無警戒に近づいたおいらも迂闊だったでやんすが、あんな雑魚キャラみたいに殺されるとは思っていなかったでやんすよ』
野木はNogiPodΣのクラゲのような触手で落胆のポーズを取った。
そして、いきなり人工の小さなクラゲ姿と化した野木を、有沢は面白いものを見るようにずいっと近づいて観察している。
「はぁぁ野木先輩が軟体動物に……。もしかして、それも何かしらの能力を使っているの?」
『その通りでやんす炎乃ちゃん! これは自身に霊を憑依する能力、"祟中幽泳! この能力を使い、おいらの魂をこのガジェットに憑依させたんでやんすよ!』
「おお、何というチートスキル。……野木先輩って見た目とか喋り方とか完全に『噛ませ』か『金魚のフン』ポジションのキャラなのに、もしかして結構有能なの?」
『後輩にすっごい失礼なこと言われたでやんすねえ!? まあまあ、そのぐるぐるメガネだけは流石にない、と言われるおいらでやんすが、やるときはやる男だというのは分かって欲しいでやんす』
「でも、さっきドラゴンに一撃でやられていたの」
『それはそれでやんす。そもそもおいら、戦いは専門外なんでやんすよ』
野木は大袈裟に触手を広げた。『オーノー』って感じだ。
「でもどうしよう。このままだと仔犬を保護できないわ」
2人と1機は、高い木の上を仰ぎ見た。相変わらずドラゴンは仔犬の側で周囲を警戒し、誰にも近づけさせないように見張っている。
そして、何故かドラゴンの眼は血走っていた。ドラゴンの全身が、激しく脈動しているのがここからでも確認できる。
『どうやら、さっきのドリンクの効果でパワーアップしたようでやんすね』
「人の体を簡単に消し炭にする威力なの」
『これは迂闊には近づけない……と、普通なら思うところでやんすが、しかしおいら達には夏輝ちゃんがいるでやんす。彼女ならあんなドラゴン、いくら強かろうと拳一発できゃいんきゃいんでやんすよっ!』
野木は、日ノ本夏輝という少女の実力を知っていた。
確かにあれは妙ちきりんな生き物だが、彼女の力を震えば何て事のない障害である。
しかし、
「いや、私には出来ないわ」
『どうしてでやんすか?』
「だって可哀想だもん! 動物を傷つけるなんて、私には出来ないわ!」
『何ですとぉ!!?!』
日ノ本夏輝、彼女は動物好きだった。
例え相手が危険度100%のドラゴンだろうと、無闇に攻撃することは出来なかったのだ。
これが、日ノ本夏輝が仔犬を保護しなかった理由である。
「強引に仔犬を保護することも出来たのに、ドラゴンが傷付くことを恐れて敢えて手を出さなかったの!? ぅぅ、、、これは、感動ものなの!!」
「何処がでやんすか!! このままだと仔犬どころか、あのドラゴンのせいで民間人に被害が及ぶでやんすよ!?」
野木の指摘はもっともだった。強力なドラゴンを野放しにするのは、あまりにも危険。今は大人しいドラゴンも、いつ人を襲うのか分かったもではなかった。
『くッ、こんな時、あの2人が居てくれれば……!』
「そういえば軽井沢先輩はどこへ行ったの? 先に公園へ向かったはずなのに」
「春太はよく寄り道するから。取り敢えず、今の状況をLineで報告しておくわね」
日ノ本夏輝は、野木と有沢が応援に来て、野木が死んでクラゲになった事をLineで報告した。
「応援来たれり、と」
『さて、あの2人が来るのを待っている間、おいら達はどうしてるでやんすかね……』
「ふっふっふっ」
「??」
突然、有沢炎乃は不敵な笑みを浮かべ始めた。
何事か、と日ノ本夏輝と野木は彼女を注目する。
「どうしたの炎乃ちゃん」
「……どうやら、ついに炎乃の力を発揮する時が来たようなの」
「……ッ! 炎乃ちゃん、貴方まさか!?」
絶句する日ノ本夏輝を尻目に、有沢は2人を置いてドラゴンと仔犬がいる高い木へと歩み寄っていく。
彼女のその顔は自信に満ちていた。
余裕たっぷりの表情で、彼女は言い放つ。
「見せてあげるの。"全能"の力をッ!!」
有沢炎乃。
彼女の才能が、猛威を奮う瞬間が来た。
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