最果ての帝壁 -狂者と怪人と聖愛の女王-

極大級マイソン

第18話「死亡フラグとか関係なく死ぬ時は死ぬ」

 一方その頃、有沢炎乃と野木世二は日ノ本夏輝が待つ公園へとやって来ていた。
 滑り台やシーソーなどの遊具に、子供たちが遊ぶ砂場。そして2人は、その少し離れた場所にある高い木の側に、日ノ本夏輝が立っているのが見て取れた。

「あ、炎乃ちゃん! それに野木くんも、応援に来てくれたのね!」
「日ノ本先輩! 一体何が起こったっていうの!?」

 あの軽井沢春太が慌てるほどの異常事態。
 おそらくとんでもないことが発生したと予感する有沢は、日ノ本夏輝の戸惑った様子から注意深くその意味を汲み取ろうとする。

「えっと、どう説明したらいいのか……。と、とにかく、あれを見て欲しいのよ!」

 日ノ本夏輝は、すぐ隣にある高い木の上の部分を指差した。
 有沢と野木はつられてその方向に視線を向け、、、驚愕した。
 そこには、例の依頼者の写真に写っていた仔犬と、

 ……大きな"ドラゴン"が居たからだ。

「な、なななな何でやんすかアレはッ!!?!」
「ド、ドラゴンなの!? 本物を見るのはリアルで初めての経験なの! これは滾るの!!」
「滾るってなんでやんすか!?」
「あのドラゴン? が邪魔しているせいで、隣にいる仔犬を保護できなくて困ってたのよ」

 見ると仔犬は、ドラゴンの真隣で枝の上でおすわりする格好で3人を見下ろしていた。
 ドラゴンは、低く嘶いてはいるが大人しく、すぐに何かを行動する様子ではなかった。

「……あんなドラゴンみたいなのが隣に居て、あの仔犬は恐ろしくないんでやんすかね?」
「ライオンの頭に乗るネズミと同じ理屈なの。強者の側にいることが、何者にも襲われない絶対の安全地帯なの」
「……? つまり、あの仔犬はドラゴンから自分の身を守って貰っているんでやんすか? 何のために……、いやそもそも、あのドラゴンはどこから湧いて出てきたんでやんすか!?」
「世の中、アナコンダやタランチュラみたいな危険な生き物を趣味として飼っている変わり者は大勢居るの。それを考えれば、ドラゴンを飼っている酔狂な人がいたとしても不思議はないの」
「いやいやそういう問題じゃなくて! ドラゴンは空想の生き物でやんすから!!」
「まあどこかの異能者が召喚したか合成したか、、、はたまたとある生物研究所から逃げ出したとか、そんなところなの。とはいえ、ドラゴンをこの目で見ることが出来たのは良い経験だったの!」
「……炎乃ちゃんは、何というか、とってもマイペースな子でやんすね」
「『独断専行』が、炎乃の座右の銘なのっ!」

 さて、何はともあれ仔犬は見つかった。あのドラゴンがどこの何物なのかは分からないが、今は依頼通り仔犬を保護することが先決だろう。

「じゃあここはおいらに任せて欲しいでやんすよ! このNogiPodΣの力があればあんなドラゴン、簡単に追い払ってやるでやんす!」
「あ、抜け駆けはずるいの!」

 野木は、NogiPodΣを操縦し高い木の上の方まで飛んで行った。
 ドラゴンは、仔犬と比較してみると大分大きく感じたが、こうして近づいてみると、ドラゴンの大きさは体長約1メートルぐらいで、人間と比較すればそこまでのサイズではなかった。
 ドラゴンは野木に警戒しているのか、低い唸り声を出して威嚇している。

「まあまあ、そんなに怖い眼をしないで欲しいでやんすよ。えー、あんたが何者かは知らないでやんすが、おいらたちはその仔犬を保護するために馳せ参じたんでやんす。だから、その犬をこちらに渡してくれたら、お礼に良いものをプレゼントするでやんす」

 野木はポケットから、缶ジュースらしき物をかざしてドラゴンに見せた。
 その缶には、ラベルで大きく『ミリオンエナジードリンクΩ』と書かれていた。

「これは、選ばれた物しか口にしてはならない究極のエナジードリンクでやんす! 最強の魔物と敬われるドラゴンには、ふさわしい代物のはずでやんすよね!」

 ドラゴンは、その缶を注意深く観察しているようだ。
 何か思うところがあったのか、ドラゴンは少し警戒が薄れたように見えた。
 好機! 野木はこれをチャンスだとばかりに推していこうとする。

「本当は軽井沢くんにプレゼントするつもりだったけど、あんたにあげるでやんすね」

 野木は、ミリオンエナジードリンクΩをドラゴンの口元にポイっと放り投げた。
 ドラゴンはそれを、反射的に口でキャッチし、それを缶ごと噛んで飲み込んでしまう。
 そして、



「GUXAHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」



 ドラゴンが咆哮し、
 途端にドラゴンの口から、摂取1,000,000度を越える破壊光線が、野木世二の身に降りかかった!!

「ぎゃああああああああああでやんすぅぅ!!?!」

 野木は抗えようのない破壊光線の光の熱を直撃し、
 そのまま跡形もなく塵と化した。

「の、、、野木くぅうううううううううううんッッ!!!!」

 日ノ本夏輝の絶叫が、夕日の明かりで包まれた公園に響き渡っていった。

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