最果ての帝壁 -狂者と怪人と聖愛の女王-

極大級マイソン

第12話「和室だけどお茶は紙パックで」

「すいませんお邪魔しまーす……あっ! 炎乃ちゃん、こんな所に居たのね!」

 そして、軽井沢たちが将棋部部室で他愛もないひと時を送っていたその時に、控えめに出入り口の扉が開かれていった。
 見るとそこには、綺麗な女子生徒が立っていた。
 彼女は尾崎利里おざきりり。生徒会執行部の会計を務める人物である。
 尾崎は前の将棋部と生徒会の勝負には、彼女が所属するバスケ部の活動が忙しく、参加していなかった。

「あれ、利里先輩。何用なの?」
「それはこっちの台詞よ。なんで貴方が将棋部に……」
「暇だから来たんだってさ。有沢ちゃん、特に部活動には所属していないからね」
「ふぅん、だからって何もここじゃなくても良いでしょうに」
「まあでも、退屈はしないの。生徒会と同じで」
「将棋部と生徒会うちを同列視しないで欲しいんだけど。一応あたし達、学校の秩序を守る活動をしてるのよ」
「心外な。将棋部だって、学校の秩序を守るため活動してるよ。悪党どもを懲らしめたり、生徒たちの自由を尊重したり」
「邪魔な人たちを排除したり、好き勝手やって校内を搔き乱したりしただけじゃない」
「似た様なもんさ」
「そんな調子だから、天願寺に毛嫌いされるのよ」
「あと先代の生徒会メンバーね。いやー先輩方、今頃どうしてるんだろうなぁ」
「普通に三年生になって学校通ってるわよ」

 この高校の生徒会は、三年生になると引退し、4月にまた新しいメンバーを募集する。
 尾崎と天願寺は前年度も生徒会に所属していて、尾崎は庶務、天願寺は副会長を務めていた。

「僕は尾崎が生徒会長になって欲しかったなぁ。人気者だし気立てが良いし、面倒見だって良いしさぁ」
「えっ? そ、そうかしら……」
「あと、ちょっと悪さしたくらいで斬りかかったりしないし」
「それは天願寺くらいのものよ」
「天願寺会長はちょっとばかり不器用なの。炎乃的には、もっと軽〜い感じで緩〜くても全然okなの」
「まあそれも、生徒会長としてはどうかと思うけどね。それに将棋部あなたたちを野放しにしておくのもそれはそれで問題だろうし」

 尾崎は失礼しますと言って、畳の上に正座した。粗茶ですと言って、軽井沢が紙パックのお茶を差し出した。
 因みにこのお茶は、将棋部部室の近くに設置してある自動販売機から買ったものである。

「それで、尾崎先輩は炎乃ちゃんを探してここに来たんですか?」
「うん。それもあるんだけど、他にもあるの。天願寺から将棋部へ、例の勝負の二回戦についてのルール説明よ」
「ああ、例の勝負か」

 軽井沢はお悩み相談バトルの内容を決定する権利を、生徒会に託したことを思い出した。
 一週間前に行った、お悩み相談バトルの一回戦の内容は将棋部が決め、あとの二回戦・三回戦の内容は生徒会が決めるとなっていたのだ。
 あれから一週間。随分長い時間が経ったがようやく勝負内容を決めたらしい。

「二回戦の勝負は"迷子のペット探し"、開始は今この時から」
「ペット探し? それって生徒会が動く様な案件か?」
「実はこのお悩み相談は、つい先日生徒会に直接依頼者がきて頼まれた案件なの。どうしても見つからなくて困ってるんだって。1人でも多くの助けが必要だろうから、折角だから将棋部にも手伝ってもらおうと思って」
「そんな大事な案件、あの天願寺が僕らを関わらせようとするとは思えないんだけど」
「日ノ本さんがね、『絶対助けになるから信じてあげて!』って天願寺にお願いしたのよ。それで根負けして、貴方達にも動いてもらうことになったって訳」
「なるほど、人望の差が出たねぇ」
「同じ将棋部でも、日ノ本先輩には"実績"がありますからね。さすがの天願寺会長も、あの人の頼みは断れなかったみたいですね」
「実績、か。それなら僕らのもあっておかしくないと思うけど……」

 とにかくお悩み相談バトル、その二回戦が始まった。
 前回圧倒した将棋部は、果たして今回の勝負は乗り切ることができるのか!?

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