最弱能力者の英雄譚 ~二丁拳銃使いのFランカー~

土佐 牛乳

TRUE WORLD

 全てを知り終わった後の物語だ。
 去年の十一月ごろだったと思う。
 俺は兄弟というものを見た。
 なぜわかったのか、それは五人で美味しく家庭の料理を食べているところだ。
 兄の方はガタイが良く、筋肉質であり、そしてなによりも顔がイケメンであり、NBLで活躍するような人だった。
 そして姉は、普通の顔でテニスのプロだった。
 ちょうど二人とも、休暇を取ったらしい。
 弟は最年少で海洋資源を扱う最高頭脳の石油王だった。

 それぞれ写真に載るような人物だった。
 俺はヒットマンだった。

 護衛の任務についていた。
 たまたま俺はその光景を見ただけで俺の家族だと思った。
 だから話しかける必要もない。
 でも悲しかった。
 俺に顔がそっくりな人たちが会話をしているからだ。
 こんなこと人に話したら俺は精神病院に連れていかれるかもしれない。
 そんな中、一報が届いた。

「JF014EAT、出られるか」
「御意、JF001WOLFご指示を」

 JF001WOLFは女性の上司だ、名前がお互いに無いので、僕はTUSKと、この通信相手の上司にはショウコと呼んでいる。

「f-14 高度1.33」
「お待ちください」
「移動した、目の前だ」

 なんだこれは……

「君だねえ」

 瞬間移動。
 ESPなのか、それとも……

 作業着で。
 外で働いている人、どうも一般人にしか見えない。

「君は何を望む」

 一体誰なんだ。

「えっ…… それでは」

 意味がわからなかった。

「十年後君は死ぬだろう。そのためだけに、君だけを選出した」

 目の前にいる。
 腰が抜ける。

「いい加減にしろ、お前はもうこちら側の人間だ」

「へえでは、これは」

 二人だけなのに場が凍りつく。

 俺は強がりを見せた。
 だっさいだろう、それが俺の選択だ。

「緊張感だけだ」

 手はハテナになり、まさに意味不明。
 これはどうするべきか。
 試される前でもなく、こう言われた。

「殺されるまで待つつもりか」

 ほう、そうするのか。
 では、これは。

「いいかげんに続けても何にもならないだろう」

 マジレス。
 逃げるが勝ちなのかな。

「あなた、誰なんですか」

「質問が遅いな、なぜ君が選ばれてここに立っており、全てを司っているのにも関わらず、のんびり過ごしているんだ。その力を世界に向けて使うべきだ。そして見るからに…… 君はプレッシャーだけは一人前だ」

「そんなことはないとは、言いたいのですが……」

 銃を額に付ける。

「打ってみろ」

 迷わず撃ち放った。

「死なない」

 ESPか、それともアンノーン。
 よくわからない。

「そうだ、君は理性だけで生きてきた。まあ環境の要因が多いが、でもな理性だけではやっていけない。あの家族を見てどう思った?」

「正直に、一緒にいたいと、懐かしい気持ちになりました」

「ほう、観察通り君は他人にだけ正直に話すんだな。この先の人生どうしたいとか、あれが目標だとか、あの人たちと一緒になりたいとかな。まあ、お前は空想再現の力を持っているんだ。わかっているだろう」

「敵なのにお説教するんですね」

「わかっていない。まあな、これが俺の仕事だ」

 謝っていた。
 すると後ろから殴られる感覚が襲った。
 すぐさま危機回避、銃弾を撃ち放った。

 ショウコさんだった。

「大丈夫、君に手荒な真似はしない」

「降参です」

 わかった戦っても無意味な相手であると。

「もう少し喋ろうじゃないか」

「はい」

「戦えない君は、除隊命令を出す」

「どうする。せっかくできた仲間だ。こんなにもお前の活躍に期待していた、それなのになぜ切り捨てられる」

「なんで前線に出てきたんですか」

「わからない条件反射だ」

「殺されるんじゃない、上司としてはショウコ、それとも別の愛称がいいかな、本当にいい仕事をしたんだ」

 なんでこんなにも上手く丸め込めるんだ。

「この世界の管理者だからだよ。名前は長いカミハでいい」

「私のタスクをどうするつもりだ」

 なんだこの人、笑えない。
 敵なのか神なのかわからないよくわからない人間。
 銃弾が通り抜ける。
 魔法があるなら効くのか?

「私は管理者だ、タスクにはこのFALSEとTUREを繋ぐ架け橋となってもらいたい。あとちなみに魔法も効かない」

「並行世界があるとそう言いたいのですか?」

「もともと世界は二つあった。それぞれの相乗効果によって、無数の世界観ができた。さらに縦の強度はその世界の強さでもある」

 意味不明。
 馬鹿らしい。

「苦しみに満ちた、あの四千回も作りきった世界をどうにか、互いに平和に導いてほしい」

 なるほど。
 ショウコさんは……

「どうか自分の力を信じて」

 そうして俺の旅が始まった。

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