最弱能力者の英雄譚 ~二丁拳銃使いのFランカー~

土佐 牛乳

終局

「エマはどこなんだ?」
「どこかで君を待っているさ」
 全体をつかって息をしている。
 彼もまた、体力が残っていないようだった。
「天野路、これからどうする?」
「しらないさ、君に負けたんだから、君に刃向かわないように生きていくよ」
 彼がこれからどうするのか僕にはわからなかった。
「また会えたら、僕たち話せるかな」
「無理だよ、君はスタフェリアを奪ったんだから」
 目は遠くを見ているようだった。
「わかった、僕はいくよ」
「ああ」

 それ以上にお互いに言葉はなかった。
 一人の女の子が彼に向かって歩んでいるのがわかる。歳は五歳くらいだろうか。
「ボス、ここらへんから反応あるんだけど」
 言い終わった直後、僕に気づいたのか、じろじろと見て、すぐに走り去った。
 彼は、孤独じゃなかった。


 それから、一人アリスの線香を立てにいった。
「いろいろあったよ」
 花を変えて、お墓の周りを綺麗にした。
「まあ、僕は大丈夫だから」
 声は届かない。
「じゃあ、待っている人がいるから」
 後ろから風がふいた。
 僕を応援していると感じ取った。

 両親の墓に、エマと向かったのだった。
「おやじ、かあさん、久しぶり」
 結局僕は、この石を見たくなかったのかもしれない。
 だからこの国からも逃げていたんだ。
「ここに眠っているんだな」
「うん、二人がね」
 綺麗にして、それでエマに手を合わせることを教えた。
「行こうか、エマ」
「しんきくせー顔してんじゃねえよ、ひさしぶりにあったんだろう」
 エマにそう攻められた。
「うん」
 エマに涙を見せないように、そっぽを向いた。
「しばらく俺は、車に戻ってるよ」
「ありがとう」


「マイ、全てが終わったよ」
 死んだ都市の最上階のビルで男がつぶやいた。
「終わったんだね」人が一人入るようなカプセルから起き上がり、椅子のようにして座る。「あのタスクはどうなるの?」
「管理者になると言っていた」
「わたし。たまに、会いにいってもいい?」
 マイは聞いていた。
「ああ、君の好きなようにすればいいさ」

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