最弱能力者の英雄譚 ~二丁拳銃使いのFランカー~

土佐 牛乳

57話


 僕たちは、敵陣へと着いたのであった。
 目の前にあるのは、中華風の大きな門であった。両端には、シーサーと思わるような土偶が置かれているのだった。
 これはカモフラージュだとわかった。
 シーサーのところどころの色彩に、とある規則性のようなものがあったからだ。
「この模様は…… ネストの武器にあったものだな」
 たぶんだけれど、魔術を行う媒体かなにかだ。
「よく覚えてたな」
 エマは僕に関心をしているようだった。
「まったくだ、どうしてわかったんだよぉ」
 ほえ、と頭を横に振ってトウマがその土偶を見ている。
「よし中に行くか」
 僕がその大きな門に手を取った時、何かが動くような気配があった。
「ん?」
 僕は二人を見たのだった。
「どうしたんだ?」
「はやくいくぞ」
 エマとトウマは急かしている。どうやら彼女らは気づいてはいないようだ。
「気のせいか……」
 僕が油断をしていると、その門番は動き出したのだった。
「グドゥウウウラアアアアア」
 アルミの板を鉄金具でぶち抜いたような音が鳴り響いた。
 すぐさま、後ろを僕たちは振り向いたのだった。
「な、なんだ!?」
 僕が、その物体を、その敵を視界に入れていた時には、その化け物は動いていた。
「このワンコちゃんたち動き出したぜぇ」
 トウマはビビっているのだった。
 エマは何が起こっているのか把握ができないようだった。
「エマ!! 門番だ! 敵は門番なんだ!!」
 ふとエマは、この現状を理解することができたのか、その正体不明tの大きな犬のようなシーサーを見て、戦闘モードになった。
 その犬のようなものは、先ほど僕がちらっと見ていたシーサーが大きくなったものだった。それはその土偶の外見が物語っている。
 大きさは、百七十センチある僕が二人分ほどの大きさだ。なによりも印象があったのはこの国で何度か見た電柱ほどの大きな四本の足。
「なんだありゃあ!!」
 するりと敵の攻撃を避けて、今更なツッコミをエマはしたのだった。
「今更過ぎる、魔術結社と開いてなんだ! これくらい当たり前だ」
 そうだ僕はあのスタフェリア・アブソリュータ・ウロボロウスとの戦いを経験していた。
 魔術を使ってはいなかったが、それ以上の化け物だったはずだあいつは。
 トウマに口が閉じているシーサーが畳みかけるようにして左足を上げる。
「タスクその物言いは化け物と戦ったことがありゅーんだな」
 トウマは避けながらそのようなことを言うのだった。
 二体は、閑話休題といわんばかりに、グルルとこちらを威嚇している。
「まあな、って…… 意外とこの世界は化け物だらけなんだよ」
 そういって、僕はマガジンの弾をリロードして、口を開けているシーサーに突っ込んでいく。
「そうだったのか!? 俺なんて全くあったことがねえ!!」
 エマは、タスクの化け物に対する妙な慣れのようなものに、納得している。
「ふざけやがって、能力者の化け物のほかに、敵の能力を盗む魔術師、さらにはクソ大きな犬ときて、この世界はどうなってるんだぁ!!」
 トウマは、賢明で、後ろにかけて行って、中距離狙撃銃の作成を素早く終わったのだった。さすがは、トウマであると、僕は信頼を寄せているのだった。
「おっとあぶない!」
 僕は、敵からの横払いのような前足攻撃をバク転をするようにして回避。
 カウンターに、僕は口を閉じている敵の顔面に弾丸をぶっぱなった。
 確かに当たっているが、中身が空洞とわかっただけで、敵の損害はなにもなかったようだ。これでは、焼き石に水だ。
「どりゃああああああああああ」
 エマ自慢の爆発的な火力を持っている腕力パンチでさえも、敵は避けたのだった。
「俺のパンチがあったらねえ、思ったより素早いぞこいつら!!」
 エマは、ぜえぜえと汗をかいていた。体力の調整を、さきほどの大量の敵との遭遇によって消費してしまったらしい。
『緊急連絡、チームベータ、チームガンマ、チームデルタが、第二敵勢力に捕まったわ!!』
 ミライのオペに三人は、たじろいだのだった。
『私も一緒に行くべきだったわね!!』
 僕に攻めているようにミライは言うのだった。ミライがなぜ前線を張れないのか。
 それは……
「俺様たちに任せるんだな。ミライお前、けがをしているんだろぉ?」
 トウマがリロードをしてそう言ったのだった。
『な、なんでそんなこと……』
 ミライはおどおどしながら、まるでヒロインのように言ったのだった。
「「「「むふふふふふふふ」」」」
 僕とエマはにやにやしているのだった。
 まったく、トウマとミライはお似合いなのだ。
 ミライはケガをしているからこそ、オペで出撃してくれと、僕はトウマに頼まれた。
『ちょっと敵も、私のことバカにしているじゃない!!』
 どうやら、ミライはちょうどこの場面をここら一帯を衛星で見ているようだった。
「まじだ! あいつらしゃべれたのか!!」
 敵までも一緒になっていることに驚いた。
 なんてノリがわかる敵なのだ……
「ノリがいいなんてな…… いい上司を持ってるんだろう」
 エマがそういって攻撃をしようとしている。
「えへへって! お前ら本当に言葉がわかるんだな!!」
 敵は頭を掻いてかわいくないえくぼを見せている。
 ったく、それもなにも、お前らのことなんてほめてねえんだよ!!
 そうして、すこしだけの沈黙が、敵と僕らの間で流れたのだった。
 閑話休題ような長いものが終わり、戦闘が始まる。
『さきほどの通達どおり、3チームはあなたたちのもとへは来ない。そして敵陣の中身も衛生上からは見ることができないわ』
 ミライがそう言って、ため息をつくのだった。
「ドローンからの偵察は?」
 上がだめなら下からどうなのだとミライに聞いたのだった。
『日本の機関が初めにやっていたわ。敵の“結界”がある限り意味は無いみたい……』
 クソっ! 用意周到というわけか。
「日本の連中はもうおっぱじめてるんだろう。どうするも、行くしかないか」
 僕は覚悟を決めて、敵をにらんだのだった。
『私は、三チームのオペに戻るわ! 健闘を祈ってる!』
 そうしてトウマに、特殊回線で何かを伝えたようだった。なぜわかったのか、それはトウマが、空を見てドヤ顔をしていたからだ。そして、一つの口を開けている敵に対して近づけないような素早い狙いを定めた攻撃をするトウマ。
 そしてエマは、口を閉じている敵に対して、大型のクマと人間が戦っているような戦闘をしていた。
 僕は、走って両方の注意を引き付けるように、両手に銃を持ったのだった。
「敵陣の把握すらせずに、真正面から戦いに行くなんて怒れてるんだよあいつら!!」
 愚痴を吐くように、僕は銃弾を放った。
 二体は、こちらの狙い通りにターゲットを僕に変えたようだった。
 敵が土偶の相手だ…… 何かとっておきの攻撃方法があるはずだ。
 土偶とはすなわち茶碗のようなものだ。
 それを使えないようにするのは…… 僕のツバをなぞるようにつける。
 いやまて、それは他人が使えなくなるだけだ。
 そうか、割れれば! 茶碗は割ればつかなくなる。
「トウマッ!! ロケットランチャーの用意を」
 僕は、とっさに、トウマに攻略法を言った。とうまはなるほどと、僕を感心したように見て、すぐさまロケットランチャーの準備にはいった。
「らじゃ! 5秒時間をくれ」
 エマと僕はお互いに見合わせ頷いた後、二つの敵のターゲットになった。

 5秒間ひたすら回避に専念して、トウマの攻撃が、ロケットランチャーによる敵の殲滅のための時間を稼いでいるのだった。
 なぜ敵にこの攻撃が有効か、それは土偶の体をしている相手には、決定的な破壊があればいいのである。弾丸を放って、穴が開いた攻撃で、敵は再生できないものとわかった。
 そのため、敵のおおきな土偶のシーサーのような姿をしている敵の攻略はおわった。
「準備ができたぞぉタスク!!」
 トウマがそう叫んだのであった。
 その合図に、エマと僕は、すぐさま、遠く離れるようにして回避。
「トウマ、ぶっぱなっちまえ!!」
 エマがそう叫んだ後に、僕もこういったのだった。
「容赦なくやっちまってくれ!!」
 ロックオンが承諾された音声のあとに、どんな合間も入れない勢いで、30メートル彼方の後方で、発射音が鳴り響いたのであった。
 エマと僕は、すぐさま頭のめのまえを、衝撃で吹っ飛ばされるだろうとわかっていたため、頭のまえで、ガードをするように受け身をするような恰好になった。
 花火の爆発音が何倍にも凝縮されたような音が目の前で鳴り響いたのであった。
 劈くような、音と衝撃が体全体を切り刻むように伝わる。
 爆風を見てトウマはやったかという顔をしていた。
 続けて、僕とエマも見たのだった。
 敵の土偶の生物は、木っ端みじんになり、敵がいた場所は、砂山になり果てているのだった。
「意外とあっけなかったな」
 僕が一安心して、二人に言うのだった。二人は肩透かししたように、答えた。
「まじでよお、なんなんだありゃあ」
「むちゃくちゃすぎ」
 エマは、そういうのだった。
「よし、改めて敵本拠地に乗り込むぞ」
「へい」
「らじゃ」
 門を潜り、中のほうへと進んでいった僕たちであった。

 中は、中華と日本の文化が一緒くたにして、混ぜられたような外見をした建物があふれていた。
 その異文化具合を身で加味しめて、屋敷の大門を開いた。
 入口の門と、屋敷の門の二段構えになっっている構築でさらに僕らは門を開いたのだった。
「ちょっとどけ」
「エマちょっと待ってくれ、俺様達にもな、少しぐらいは開けさせろ」
「確かに、エマはちょっと休んでいてくれるか?」
「俺が開いたほうが早いじゃねえかよ」
 エマの言っていることは正しかった。なぜなら彼女は超筋力の使い手だからだ。
「いいからいいから」
 僕はエマをなだめて、トウマと一生懸命扉を開いたのだった。
「い、行くぞ!! トウマ!!」
「早く押せぇえ!!」
 トウマさんにそう急かされて、扉を開こうとする僕たちだった。
「「ほ~~れどっこいセイウチ!!」」
「「あれ、ソーランソーランっと!!」」
 どんな掛け声だとエマが言っていた。
 あれ…… 開かない。
「二人方ちょっと、どいてみろ」
 開かなかった。僕たちの力では開かなかったのだ。
「トウマ、素直にエマに頼ろうか」
「そ、そうだな」
 さっきの化け物より強敵だなとトウマが言う。
うなずく僕を前にして、エマは前蹴りで扉をぶち壊したのだった。
「ほらよ、先行くぞ」
「「エマ様、一生ついていきます!!」」
 バカみたいなことをしながら僕たちは侵入したのだった。
 そんな僕たちの前に、一人の男がいたのだった。
「久しぶりと、いいやここは、もう数週間ぶりであると、そのようにしてこの私は言うのだろうね。水流タスクよぉ」
 あいつが、あいつが!!
「だっ!!」
 エマは、僕よりもその目の前の男をみて素早く反応したのだった。
「な、なんであの時倒したお前がここにッ!!」
 あ、ありえない!! あの監獄にお前は入れたはずだ。
 殺沼ネスト!!
「そうとも言える。だがしかし、君たちは知らないのだろぉお? 魔力というものの力がなあ!!」
 突如男の背中から、触手のような閃光物が飛び出してきた。一直線に、僕とマイ、そしてトウマを狙うべく、襲い掛かってくる。
 僕のほうへ来たのは、明らかに僕の頭を狙っているのだった。
 真正面からの攻撃だったため、反応できたが、頬をかすってしまった。
 エマは鉄拳で対抗したが、そのまま拳にその閃光物が突き刺さっていた。
 そしてトウマは、左肩にえぐれるように当たっており、ドバドバと血流が出ている。
「ちったあ、戦えるようになったんだな!!」
 僕は、すぐさま懐にあった、二丁拳銃を取り出したのだった。
 そして、タックるを決めるようにして、敵前方へと銃弾を放っていく。
「ッはあ!! 当たるかねそんな攻撃は!!」
 さらにネストの背中から、閃光の触手が、銃弾を弾いているのだった。

「エマ。あれが、お前とタスクが戦っていう相手か?」
 タスクが作っている時間を見定めて、トウマは応急処置をしながらエマに聞いた。
「ああ、二人で戦った時はクソ雑魚ナメクジだったぜ」
 エマは、自身の拳に突き刺さっていた触手をぶち抜いた。
「本当に俺様達らも知らねえような敵がこの世界にいたんだなあ!?」
 応急処置は済んだのか、トウマは中距離狙撃銃を取り出した。
「そういうもんだろう、この世界ってもんは」
 エマは、ふてくされているのか、それとも心躍っているのか不敵な笑みを見せて、先ほど拳から抜いていた地面にある触手を踏みつけたのだった。
 まるで曲線をえがくようにして、何本もの光の触手が、タスクのところへと向かってくる。
 一撃、胸を抉ってくるような一撃を、身を左回転でするりと、間一髪で甲斐くぐる。
 タスクは、ねじ込むようにして右手を、ネスト一直線に弾丸を放ったのだった。
 狙った箇所は、敵の顔面。
 あの触手がどれほどの強度なのかは、弾丸を弾いていた行動でわかった。
 ならば、即時反応することができない、顔面を狙えばとタスクは考えたのだ。
 すると放った直後に第二撃めのネストの攻撃ががタスクを襲う。
 回転をする運動作用を地上で直立跳びするための運動に変えて、地上から飛び上がり、攻撃を回避するタスクだった。
 回避のことに専念していたタスクは、先ほどの顔面へと狙った攻撃が命中したのか、確認をした。確認と同時に、タスクの頭スレスレに、光の棒が通り過ぎたのだった。
 その確認で、タスクの頭の中で、目映いばかりの閃光が駆けめぐった。
 それは、無慈悲、的確にして狙い澄まされた攻撃であったが、それを凌駕したタスクの回避。
 しかし、頬にプスリと、頬の肉をそぎ落とすかのようにして、掠ったのであった。
 そして傷に反応して、体が再生を始めるのであった。まるで元からあったようにして傷は、一瞬、いいや瞬きもできないほどに、回復した。
 タスクは、自身のあふれ出るアドレナリンの効能か、それとも無痛覚の体質なのかわからないほどに、傷口に対して反応することはなかった。
 その即時性の回復力に、ネストは驚く。
 相変わらずの奇々怪々のサマであると。
 これほどまでの再生力は、清潔純白な名高き吸血鬼の再生力を軽く踏み越えていると、同時に感想と薄ら笑いが出たのであった。
 同時に、後に驚異となるであろうこのタスクに対しての、とある秘策がネストの、いいや根隅の大衆は用意していた。
 その秘策に、ネストはニヤリと笑みが浮かんだのだった。
 タスクは止まるまでもなく、ネストの方へと、着実に、そしてスバメのように速く移動する。
 秘策のためにも、足止めをと彼は考えた。
 するとちょうどにして、一人の女性が、あのとき、タスクと共に対峙した女性が近くに居たのだった。
 はっ、と驚いたネストであったが、一つのひらめきが浮かんだのであった。
 こいつをどうにかして捕らえれば、この目の間の男の行動を抑止することができると。
 思考したのちに、すぐさま、標的をタスクから、その女性へと変えたのであった。
 無数なる触手は、いとも簡単にエマを捕らえたのだった。
「あまいねえ、武道派のお嬢さんっ!!」
 がっしりと、エマの体中に、ネストの触手が辛みついているのだった。
「く、クソがっ!!」
 必死に体に巻き付いている、金色色に光る触手をふりほどこうとあがくエマであったが、エマの超筋力であってもなかなか、結束を解除することはできない。
「ち、エマどうにかしてやるッ!!」
 トウマが後方から叫んでいることに気づいたタスク、その声に、左手で手を上げて、やめろと指示を出したのだった。
「とっさの判断は利口だねぇ、水流タスクよ」
 そう言うとネストの左手からマグナムが取り出されたのであった。
「僕はどうすりゃあいいんだ」
 トウマは後ろからタスクを見ていたのだった。この状況でこうするしかないと理解したトウマ。タスクの拳からは、再生力があるのにも関わらず、血がダラダラ出ていた。トウマもまた、唇をかみしめている。
「どうするって、そうりゃあ……」
 カチッと、エマの左のこめかみに当てられたマグナムのリロードをしたのだった。
「トウマ、援護ッ!!」
 素早いステップをするようにして、タスクはネストへと移動をするのだった。
 トウマは待っていたと言わんばかりに、ネストの手に持っていたマグナムを狙う。
 しかし、また一人、その瞬間を待っていた人物がいるのだった。
「ひっかかったなぁ!! 水流タスクよぉ!!」
 爆竹を鳴らしたような、怒濤の勢いで、彼はネストはそう言うのだった。
 タスクが気づいたときには、こめかみに当てられていたマグナムはタスクのほうを向いていたのだった。
 そんな攻撃ッ!! くらうかよ!!
 タスクは満身創痍に、ネストの攻撃を受けながらもすすもうとしていたのだった。
 横にいたエマは、窒息によって気絶している。
 はやくエマを助けなければという心理も、タスクには働いているのだった。
「第四千世界因果律魔力ッ!! 型式強化零壱ッ!」
 ネストのマグナムから、奇妙な円形の魔法陣が生成されているのがわかった。動いたからにはここで止まるわけにはいかないと、タスクはすぐに決意をして、それでもとすすんでいくのだった。
「エマぁあああああああ」
「始動!!」
 ネストの弾丸が放たれたことがわかった。それはタスクのおでこに向かっていくことが、螺旋状の機動をえがいているこの弾丸を視界で捉えたのだった。
 するとタスクの目の前は、一度九空間の割れ目のような暗闇へと、一瞬にして変わったのだった。
「だっ!!」
 まるで寝起きのような暗闇から、徐々に、どこかに移動したことがわかったのだった。
 その全貌がわかったときには、タスクは、どこかの街にいることがわかったのだった。
「な、なんなんだ、どうなってしまったんだよこれはぁ!!」
 とある都会の、大きな交差点の真ん中に立っているタスクであった。
 タスクの不意の出現に、交差点を通っていた人々がタスクを取り囲むようにして見ていた。
 あるものは、タスクをあざ笑うように、スマホでカメラを撮っている。
 タスクは、そんなこともお構いなしで情報を得ようとしている。
 エマはどうなったんだろうかという、焦りからか、額から滝のように汗が出ていた。
 すぐさまタスクは、情報を得るべくして、あたりを見渡したのだった。後ろにあった大きな電子掲示板を見るのだった。日本語をしゃべっている男性と女性がいたことで、ここが日本であることがわかったのだ。
 しかし、正確な位置がタスクにはわからなかった。スマホで撮影をしている男性にこう聞いた。
「ここは、ここはどこですか!?」
 男性は、いまだに撮影を続けながら、なにを言っているんだと、こう返した。
「東京の渋谷だよ」
 タスクの頭は真っ白になった。
 ここが…… 東京!? 僕は九州の熊本特区にいたはずだ。
 なにをなにを言っているんだこいつは。
 すると後ろから、コンクリートをえぐり取るような、凄まじい衝撃音がなった。
 タスクは、ゆっくりと後ろを確認するのだった。
 大きな鉄の四角い塊がそこにはあった。
 軍事用のなにかであると、タスクはわかった。
 おそるおそるタスクは、その大きな黒色をしている箱へと歩いていく。
 人々はのんきに、タスクと大きな箱をいまだに撮影している。
 箱には一つの紙が貼られていた。
 タスクは、ふるえる手を押さえながら、その紙を見たのだった。
『君へのささやかなプレゼントだ』
 この箱の中身がどんなものかわからない。
 しかしその答えは、紙の後ろのマークでわかった。
 ――そのマークは……

「放射能標識っ!!」

 タスクはすぐさまタスクを囲っていた日本人たちを、この場から離れるように行動を促した。
「みんな! 逃げるんだ、逃げろっ!!」
 誰一人として、動くことはなかった。例え、このハザードマークを見せたとしても誰も動かなかったのだ。
「ち、畜生が!!」
 タスクは、ミライに連絡するべきであると、携帯端末を起動する。しかし取り出したときには、その端末は木っ端みじんになっていた。
「ちょっとそれを仮してくれ、それと速く逃げるんだよっ!!」
 とある男の子のスマホを奪うようにして貸してもらった。
 この日本という国は、平和ボケが過ぎていた。自衛隊と能力者機関に飼い慣らされた結果がこれなのかもしれない。
 しかし、一人二人と感づいたのかそそくさと、逃げ出したのだ。
「地下鉄へ逃げるんだッ!! ほら速く!!」
 そう絶叫して、日本のアメリカ大使館への連絡をするタスクだった。



 ときを少し戻し、トウマの放った弾丸は、ネストの脳天に直撃した。しかし同時にネストが放った弾丸は、タスクの顔に当たり、タスクはまるでそこにいなかったように消えてしまった。
 ドサッと、ネストが倒れた次に、タスクがいなくなったことに気づいたトウマ。
 な、どうなって。しかしここは、エマの救出をとネストと一緒に倒れたエマのところへと駈けていった。
 ネストから生えていた光る触手は、いつのまにか無くなっている。エマの脈を確認するトウマ。
 どうやらエマは気絶しているだけであった。
 一安心とともに、タスクがきえてしまったことに、並々ならぬ後悔が出てきたトウマ。
 トウマは、まさかあのタスクが死んだのかと、このときばかりは、絶望してしまったのだった。
 四ツン這いになり、獣のように、大声を荒げる。
 そのトウマには、夕日が笑っているかのように当たっていた。









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