最弱能力者の英雄譚 ~二丁拳銃使いのFランカー~
38話
戦況は全ての始まりであるかのように、全ての元凶かのように、全ての元かのように、全ての発端かのように、全ての蛇口のように、全ての集大成のように、それはまるで行く先がわからない、ゲームエンド間近の物語のように、全ては流れる川であるかのように、それは世界の根源であるかのように、終焉を迎えようとしていた。
「タスク…… それはただの弱体化ではないか」
「弱体化なんてしてねえよ、俺は”俺”になったんだよ。それもまあよくできすぎているくらいの”俺”になあ」
「フッ、ただの人間に戻ったお前に何ができる?」
鼻で笑うかのように彼は、俺の姿をしっかりと捉えるとそのようなことを口走った。
「なにができるって……? まあお前を倒すくらいかな」
「なんだいその自身はッ! ついに気でも狂ってしまったか?」
そんなことを言われてしまっていても、俺にはまあ自信があった。
自信があった俺と、やつとの間に本当の地震が襲ってきた。
 しばらく二人でその揺れを堪能していた。
そしてオウヤが口を開いた。
「この隔絶されし進化の空間も君のおかげで壊れ始めているよ」
「もってあと3000秒ってところか……」
「神話の”前人間”達にも、対抗できるようになった僕達がたちまち外に出れば、あの島は3秒も持たず簡単に海の藻屑となってしまうだろう」
「この島に愛着なんてないけど、俺にはあそこでまっているマイが残ってるんだ。だからここで蹴りをつけさせてもらうぜ」
「この僕にも、この島はまだ利用価値があると見ているんだ。近々とある少年が虚構の力に目覚めるからね。その男は、君の運命共同体だよ」
「さっぱり何を言っているのかわかんねえよ」
「君の元の魂のことだ」
「なるほど、森 タスクのことか」
「そうだ、よく知っているね。彼はいまだ未来に対する自身の力に目覚めていない」
「これから世界と喧嘩しちまうかもしれない人間になにさせようってんだよ。っていうかそれ違う世界の話になっちまうんだろう?」
「ああ、正確には真世界というこの世界の作られた元の世界でね、どうやらここでも同じ末路をたどってしまうかもしれない」
「しれないって、じゃあここでは、この世界ではどうなるんだ?」
「彼によるさ、彼が未来に対して希望を抱いていたら何も変わらず、この世界でのうのうと暮らしていけるだろう。しかしだ、もし少しでも絶望を抱いてしまったら、間違いなく彼は世界を滅ぼす側に転げ落ちてしまうだろう。この世界の”力”を持ってしまった彼、そしてやり遂げるということに関しては能力者さえも、いや万物でさえも完封させてしまいそうな、情報操作の力がある。彼の通っていた高校のこの世界の真理にあった、死ぬはずだった女の子が死ぬ運命から救ったのがあの男だ。運命すらねじ伏せるとはまさに神同然たる力を持っているということだ。しかしその代償は今にして彼が一身に受けているのだ。なんとも笑える男だ。負荷逆の使いにして、君に似て滑稽にもほどがある。だから今現在あの男は殺されていないのだ。自我の硬い堅い殻という拒絶空間を自分のすんでいる稼動範囲に何十にも張り巡らせている。まさに規格外の存在だ」
「そうか…… 森タスクは2016年の10月15日現在、つまり今は何をしているんだ」
「REINAを使っての情報回答は、今は2016年の今日においては、家で引きこもっているとの情報がある。いまだ普通の引きこもりだ」
「こんな今後の世界を動かす男を野ざらしにはできないし、お前はどうするんだ? 俺は殴ってでも外に出させてやるよ。俺の違う意味での半身でもあるからな」
「君らしいな、僕は彼の運命を弄らせていただく、いまだ彼は深い深い絶望の海に飲まれているらしい。この僕が更なる絶望へと押し込んであげよう」
「ってことはオウヤお前、世界を滅ぼしたいんだな」
「いいや、この世界を作った真世界の西暦2039年の森 タスクを殺したい。つまり僕はこの世界の主を殺すことを成し遂げたいんだよ、そのためにはこの世界の森タスクを殺して、相座時之氏 守刄を殺して、そしてゼロ地点の制者、君たちに言う唯一神ゼウスというものだ。それをその概念を『摂取』を使ってこの僕にとりこむ。この世界を偽確定存在から確定存在へと昇華させた後、同じ平行時空間にある、真世界2039年へと飛んで森タスクのデータ媒体を壊す」少しだけの沈黙の後
「どうだ神殺しまでの完璧な道程だろう?」
「そうかそうか。誰が”俺”を殺させるかよ。あんなんでもあんなに不貞腐れてしまってもアレは俺だ。一発ぶん殴ったら、もとに戻るだろうよ」
「まったくもって君はほんとうに自分大好きな人間だな佐部タスクよ」
「まあな、俺ぐらいに自分大好きな人間はそうそういない」
「しかしだ、ここまでこの戦況を、この状態をややこしくしておいてあの男、相座時之氏 守刄は何がしたいのだ」
「誰だよそりゃあ、落語家の人か」
「落語家か、なんとも面白いじゃあないか」一つこちらを見つめると「やつはこの世界のGM〈ゲームマスター〉といっても過言ではない」
「ゲームマスターってこの世界はゲームじゃあねえんだぞ、なに言ってるんだお前」
「僕達は真世界側の人間からすると、来年に発表されるゲームのNPCという存在になってしまうのだよ。それも自我の持った確立されたNPCだ」
「俺たちは俺たちだ。んなむちゃくちゃなことが信じられるかよ」
「過去に飛べる君が言ってもなんにも説得力がないのはさすがの君でもわかっているだろう」
「それとこれは話は別だ。過去に飛べるなんて、この今ここにいるあいまいな世界じゃないと出来ない芸当だ」
「まあそうだね、ここは双方の力によって隔絶された空間だ。物体が交わるようにして、僕たちもまた互いを食い合おうとしていた」
「俺はお前を食う気なんてさらさらねえよ。お前と一緒にしないでくれるか」
「ではこの空間はどう説明が着くんだ?」
「てきとうに言うけど、人類がいずれたどり着く空間だろう。何もかもが分かち合えて、そして何もかもが思い通りに、そして過去さえも未来さえも、平行世界さえも自由に行き来できる。そんな空間だ」
「なんともまあ君は面白いことを言ってくれる。彼らのような力の持たない連中がたどり着くなんて無理に決まっているだろう。僕はあいつらが行き着くのは完全に支配者層に支配された家畜の道だろう」
「なわけあるかよ、俺がお前がそうだったように、人はどこまでも歩いていける。その証拠がこの俺たちだこの空間だ」
「それこそ愚民が持っては何を騒ぎ立ててしまうか
わからないだろう。君の言っているその先は破滅だ」
「なーいってんだ。俺が破滅すら凌駕してんだからその先にいずれはゆっくりでもたどり着けるよ」
「凌駕とは…… 君のそれは”別の何か”だろうに」
「それが進化だ。それが人間なんだよ」
「君という存在はそれでも、この僕を否定するのか?」
「否定はしていない。こういう道もあると言っているだけだ。それにオウヤ、お前は気づいていない。いいや気づかぬようにしているだけなんだよ」
「僕が否定をしているって? ましてや現実逃避などと…… 愚弄するのもいい加減にしろ半端もの」
「確かに俺は人間でも、ましてや立証されている魂でさえも俺にはない。そうだ俺はこの世界で作られた存在だ。違う世界になんて俺の存在なんて、森タスクぐらいだろうよ”お前ら”と違って。だけどな、俺はやるんだよ、決めたからやるんだ。マイのために、あの”俺”のために、そしてあの”俺”のようになってしまうかもしれない”今の俺”のためにも」
俺は一つ唾を飲み込んで。
「光を、希望を見せなきゃなんねえんだわ」
「君のそれは希望ではない、ましてや破滅主義者のうす汚いエゴにすらならないものだ。そんな君は世界を自己の破滅を願っているのか?」
「ばーか、やりたいことやってぜーんぶ掴んで、ぜーんぶやり遂げるんだよ。答えはそれだけで十分じゃねえか」
「掴めるはずはない、なぜなら君はいまだ人という枠組みの中にいるからだ。所詮は人間。君の絵空事はまさに空中に何もかけるわけでもなく、なにもない」
「じゃあよ、俺が示してやるよ。全部だ。不可能なんてなにもないって、この俺が証明してやる。そのためにならっていうか、いままでも覆してきたんだよあのランク祭で」
「奇跡を類寄せただけでいい気にならないでくれ。君という存在は常に石ころの存在であるよ。なにせ僕は君という存在に本気を出してはいなかったからね。この思い違い野朗」
「おうおう元気が出てきたなじゃああのときの続きといくかこの腐れ中二病」
「愚者風情がこの僕に勝てると思うな」
「俺から見るとお前の方がよっぽど愚かだけどな」
「君は最高にアホ面だけどね」
瞬間、二人は殴りかかった。両方はクロスされた槍のようにお互いの顔にパンチが入る。
「おらぁっ!!」
タスクは、続けてオウヤの腹へと右足で蹴りを入れた。負けじとオウヤも回し蹴るようにして、タスクのわき腹へとキックを炸裂させる。
またもや互いとも同時に攻撃が入り、そしてオウヤが締めにと大技を放つ準備をしていた。
「第三千世界因果律魔力:慙・時雨鎌イ太刀を螺旋階段状に配置、そして無上をインストールッ!」
オウヤの腕から先ほどまで持っていた鎌が突然と出現して、彼の本来の必殺技が、強化されて出力されようとしていた。
それを邪魔するかのように、瞬時に、やつの鎌を踏み台にして、彼の頭上10メートルの地点まで高く飛ぶと、急降下と同時に頭上に弾丸の雨を降らせていく。
「だりゃああああああああああああ」
彼の肩そして、彼の体、そして彼のほほに掠りながらも、彼は真っ直ぐと俺を見ている。
「ああああああ、タスクうううううううううううううううううううううううううううううう!!」
肩の筋肉組織が壊れてしまったのか、両腕はがっくりとしていた。必殺技は放たれることはなかったが……
「まだだ…… まだ終わらんよッ!!」
やつは口でその鎌を持っていた。そして必殺技を放った。
「タスクよ、死なないというのならば永遠の傷を持ってそのまま階段を…… グハッ!」
オウヤは痛みに気が付いたのか、左の胸を押さえていた。そして、じっくりではなく、ピュウピュウと出る血液に今どのようなことが自身の体に発生しているのか、しっかりと理解が出来た。
「んぐぅ…… はぁはぁはぁ…………」
うずくまるようにして彼は両膝を抱えながら四つんばいになった。心臓がとまりそうなほどの痛み、そして出てしまっている血液の量が自身の寿命なのかわかった。あきらめたように右ひざを立てて地べたに座り込む。
「なんで再生する世界の自分に飛ばなかったんだ?」
オウヤの後ろに立っていた男が一言つぶやいた。
「フフッ、何を言っているんだ」
まるであざ笑うかのように男は言う。
「もしかしてお前……」
「ああそうだ、この僕の、いいやコレは『摂取』した能力、パラレルキングダムの能力の代償は、『違う世界の自分』を代償にして使う能力なのだよ」
「……」
「へへっ、そんな目で僕を見ないでくれるか。しかしまあここまでしてでも君に勝てなかったというものがどれほどまでにむなしいものか君にはわかるか? そして僕が君を倒してこれからやる使命までも奪われるということも」
「…………」
「まあ君にはわからないさ、君がここでの主人公であるかのように、僕も…… いいやこんなことはどうでもいい。まったく君に振り回されるこっちの身にもなってほしいものだね」
「うるせえ馬鹿がッ! お前自身の存在をかけてまで戦うことはねえじゃねえか!!」
「なにを言っているんだ。僕達は」
オウヤは自身の右手に刻まれている能力刻印をこちらに見せてきた。
「これがある限りは、僕達は、戦うことは、この本のうに従うことは必然であり、そして、あたりまえのことだ」
「だからって……」
「僕はこのままの僕で、君に勝ち、この世界の君に勝ちたかった。というよりも僕はもうそのままでの僕ではないけどね」
彼の左手が分離していく。そして彼の切断されたような断面図の肩は厚い鉄板で焼かれたように焦げていた。
「やはり完全に『摂取』することはできなかったか」
その亡骸のような左腕をみて、彼はそう一言。
そしてこうも続ける。
「なにかがおかしいとは感づいてはいたが…… その状態でも生きていたのか平明 ヒラキ」
してやられたという、軽い笑顔をしているオウヤ。
その眼の先にある腕は、グニャグニャと得体のしれない生物のように動き始めると、自身尾体を増殖するかのようにして、徐々に徐々に、その対面関を増やしていく。だんだんと、体の形になってきたかと思うと、その小さな人型のかたまりを突き破るようにして、一人の男が現れた。
「やあ諸君、初めましてだね”鍵”の者たちよ」
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