TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

アリシアママと二人きりの休日

「それじゃあ行ってキマス!」
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい。車に気を付けてねメグちゃん、マリー」

 土曜日のお昼過ぎ、昼食を食べたメグちゃんとマリーは私とお揃いのワンピースを着て出掛けて行きました。
 今日は観光もお土産探しもお休みらしいマリーとメグちゃんは、花ちゃんとお外で遊びに行くそうです。
 私もついて行きたかったのですが、貸出期限が迫っている本があるので今日はゆっくり読書タイムです。
 あ、三人には私の両親がついて行っているので安心です!

「さて、お茶を用意してゆったり読もっと」

 快適な読書には疲れにくい姿勢と、読書を中断しないように飲み物を近くに置いておくことが大切です。
 お菓子は手が汚れてしまうので食べません。
 お茶をコップに入れてリビングへ。

「よし、お茶おっけー。ソファーの座り心地もおっけー」

 さぁ、読書開始です!

「ふぁぁ、アレ? チカだけデスカ?」
「あ、アリシアママ。おはよう」
「おはようございマス。美花ミカとユリウスお兄さんは何処デショウ?」

 アリシアママが呼んだ美花は私のお母さんで、ユリウスはお父さんの名前です。
 いつもはお母さん、お父さんとしか呼ばないので何だか新鮮に感じます。

 あ、お父さんはドイツとアメリカのハーフなのでユリウスというカッコいい名前なんですよ!
 お母さんについては日本人のお祖父ちゃんが命名して、アリシアママは今は亡きロシア人のお祖母ちゃんが命名したそうです。

「マリーとメグちゃんと花ちゃんの三人と出掛けたよ」
「ナント!? 私は置いてけぼりデスカ!?」
「いや、休日のお昼までグッスリ眠ってたからでしょ」
「ムム、でもチカも置いてけぼりデスネ! フフ、もしかしてチカもグッスリ」
「私は九時に起きたよ? マリーとメグちゃんもね」
「……そ、そういえば見たいテレビがあったのデス!」

 あ、逃げた。

「お母さんが作ったお昼ご飯がキッチンに置いてあるからね。チンして食べてね、アリシアママ」
「それではチカ、お願いします」
「自分でやろ?」
「アー、私レンジの使い方ワカリマセーン」
「レンジは大体、万国共通だと思うよ?」
「うぅ、起きたばっかりで動きたくないのデス!」

 リビングのソファ、私の隣に座ったアリシアママは私の膝に寝転がりました。
 可愛いけど、駄目な大人を見ています。
 でもアリシアママが一番苦手なものを知っているので、問題ありません。

「……アリシアママ? お母さんに言いつけるよ?」
「も、勿論私がやりマスヨ! 私がそんな無責任な訳無いデショウ!?」
「ああ、うん。そうだね」
「反応が冷たイ!」

 あしらわれて床に突っ伏したアリシアママ。
 この人はかなりユーモアがあって、話していて楽しい人だ。
 ただ、快適な読書には邪魔である。

「……」
「ね、ねぇ、チカ?」
「……」
「お、怒ってるデスカ?」
「……」
「うう、怒ってるデス……」
「ごめん泣かないで!? でも読書に集中させて!?」

 私は読書に夢中になると周りの声が聞こえなくなるタイプだ。
 しかしアリシアママはわざわざ私の前で膝を立てて泣いている。
 どれだけ構って欲しいの!?
 いい歳の大人が小学生に泣き落としなんてズルいよ!?

「はぁ。それでどうしたの、アリシアママ」
「特に用は無いデス」
「……」
「そ、そんな冷たい目で見ないで欲しいデス!」

 いや、私の快適読書ライフを返してよ。
 まぁ私もアリシアママが嫌いな訳じゃないから、仕方なく本に栞を挟んでアリシアママと会話を楽しむことにする。

「あ、お昼ごはんチンして来マスネ!」
「タイミングおかしくない!?」

 楽しそうにキッチンへと駆けていくアリシアママ。
 なんか、マリーより子供っぽいぞ?

「ち、チカー! このレンジどう使うデスカー!」
「……機械音痴なのは、やっぱり姉妹だなぁ」

 妙な所でお母さんとアリシアママの共通点を見つけ、笑ってしまった私はやれやれとキッチンへ向かいます。
 お母さんの妹は朗らかで面白くて子供っぽい、だけど少し空気の読めない人。
 年上だけど年下のようなアリシアママとの二人きりも、悪くない時間です。
 ……でも、本は読めませんでした。

「ま、また借りればいいか」
「よーしチカ! ゲームするデスヨ!」
「はいはい、今行きますよっと」

 でも迷惑は掛けられたから、後でお母さんに報告しておくね?

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