TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―
贈り物も時には毒
小学校生活の中で一番楽しみなことは給食と答える人が多い世の中。
私の学校では、休み時間に私と話すことが過半数を占めています。
「千佳ちゃんは昨日何見たのー?」
「さっきの体育、教室で見てたよ。千佳さんは運動も得意でかっこいいね!」
「あの、千佳お姉さん! これ、家で作ってきたクッキーなんですけど、受け取ってもらえませんか!」
「千佳ちゃん、今日は愛の家でピアノの練習だよね? 一緒に帰ろうね!」
「どないしたん千佳ちゃん? ん? 私は聖徳太子じゃない? あはは、そんなん当たり前やん!」
違うんだよ湖月ちゃん。
私が本当に聖徳太子な訳じゃないんだよ。
皆がいっぱい話しかけてくるから、聖徳太子みたいに対処はできないって言ってるんだよ。
……いや、なんか対処できる気もしてきた。
私の机の上には、周りを囲む女の子たちからのお菓子やらお手紙が山盛りに詰められており、どうやって処理するかということが私の頭を悩ませています。
これまではこんなことなかったのに……。
確かあれは、昨日の昼休みのこと。
「――ち、千佳ちゃん。あの、あのね」
「落ち着いて小豆ちゃん。どうしたの?」
「あ、ありがとう。えっとね、お菓子作ったんだけど、どうかな?」
「小豆ちゃんお菓子作れるんだ! すごいね!」
「え、えへへ」
「それで貰っていいのかな?」
「は、はい! お願いします!」
まるで弟子の味を見る板前の大将にでもなった気分です。
お母さんの美味しい料理を食べている以上、採点は厳しいですよ!
「これってチーズケーキ?」
「は、はい! お母さんと一緒に作ったんです」
「いただきます。はむっ、ん、んくっ、美味しいよ!」
「ほ、本当ですか!?」
「嘘なんて吐かないよ。チーズの味もよく出てるし、生地も歯につかなくて食べやすいし」
「良かったぁ……」
私の感想に緊張の糸が切れた小豆ちゃんを、思わず撫でてしまいます。
あ、これはまずいですね。
ナデナデは千佳ポイントの景品だった気がします。
「ふわぁぁぁ……!!」
そうして恍惚とした表情を浮かべる小豆ちゃんと、一部始終を見ていたファンクラブの子たちの間でこの話が拡散されていきました。
――千佳ちゃんに手作りのものを渡すとナデナデしてもらえる、と。
「うぅ、どうしてこうなった」
山盛りの机と、その前に立って物欲しそうに私へと話しかける皆。
その目はなんだか、観光客の食べ物を狙うトンビのようです。
これは、収拾がつきそうにありません。
私が命令すれば収まりますが、それだと小豆ちゃんを優遇しているように思われるかもしれません。
私のせいで小豆ちゃんが虐められたりしたら、嫌ですから!
「いや、それはないと思うで」
「心を読まないでね、湖月ちゃん」
まぁ、ファンクラブの規則の中にファンクラブ内外で喧嘩をしないこと。
仲良くできない人はファンクラブから脱退してもらう、という旨を書いてあるので大丈夫だとは思いますが。
それに、私は皆を信頼しているからね。
え? 虐めるかもしれないって言ってた?
……なんのことやら。
「さて、どうするか」
「……任せて」
「うおっ!? 莉里ちゃんいつの間に来てたの?」
「……五分前」
「すぐに声掛けてくれてよかったのに」
「……バーゲンセールみたいで近寄れなかった」
「……さいですか」
確かに、私の机に群がってるからね。
取り合いじゃなくて、逆に置いていってるけど。
「それで莉里ちゃん。任せてってどういうこと?」
「……全てを丸く収める」
「おお! 流石莉里ちゃん、頼りになるなぁ。それで具体的な方法は?」
「……千佳が全員撫でる」
「なにも解決してないよ!? 現状しか対応できないよ!?」
「……最後に私も撫でて、万事解決」
「ただ撫でてほしいだけじゃん!!」
どうやら莉里ちゃんは救世主じゃなかったみたいです。
私としては撫でるのは吝かではないんだよ?
でもね、軽く見えるだけで四十人くらいは贈り物を持ってきてくれているの。
私の手、持たないよ?
「千佳ちゃん。お困りなようですね」
「そ、その声は!」
「ええ。ファンクラブメンバーにして運営リーダー、九重柚梨とは私のことです!」
「あ、そういうのはいいので」
「千佳ちゃんの流れに乗ったんですが!?」
「それで、柚梨ちゃんは何か方法があるの?」
「うぅ、最近千佳ちゃんが冷たい気がします。ファンクラブ運営陣で話し合った結果、千佳ちゃんの行動を阻害する行為は千佳ポイントを減点することになりました」
「寧ろ何故今までなかった」
「……ということですので! 皆さん千佳ちゃんのこともちゃんと思いやってください!」
あ、柚梨ちゃんがスルーした。
一年生の頃はかなり表情や行動が固かった柚梨ちゃんだけど、大分解れてきました。
……解れすぎているかもしれません。
「ごめんね千佳さん」
「すいません千佳ちゃん」
「ごめんなさい千佳お姉さん」
「分かってくれたならいいよ。私も別に撫でたくないとか、皆のプレゼントが欲しくないわけじゃないからね?」
「うぅ、千佳さんありがとう」
「で、でも持って帰りますね。こんなに一杯食べられないですし……」
「わ、私の分も自分で食べることにします」
「ああ大丈夫だよ。私だけで食べるってわけにもいかないだろうけど、今回の皆の分はちゃんと食べさせてもらうからね」
柚梨ちゃんが持ってきた袋に、机の上のお菓子やお手紙を丁寧に入れていきます。
流石に学校でお菓子を食べるわけにはいかないからね。
「うぅぅぅ、千佳さんが天使すぎるよぉ」
「千佳ちゃん、私感激です!」
「そんなのずるいです……。本当のお姉さんだったらいいのになぁ」
皆の熱い視線を受けながら、私はこう考えるのです。
(……胃薬、家にあったかな)
その後増えた体重と格闘することになるのですが、それはまた別のお話。
私の学校では、休み時間に私と話すことが過半数を占めています。
「千佳ちゃんは昨日何見たのー?」
「さっきの体育、教室で見てたよ。千佳さんは運動も得意でかっこいいね!」
「あの、千佳お姉さん! これ、家で作ってきたクッキーなんですけど、受け取ってもらえませんか!」
「千佳ちゃん、今日は愛の家でピアノの練習だよね? 一緒に帰ろうね!」
「どないしたん千佳ちゃん? ん? 私は聖徳太子じゃない? あはは、そんなん当たり前やん!」
違うんだよ湖月ちゃん。
私が本当に聖徳太子な訳じゃないんだよ。
皆がいっぱい話しかけてくるから、聖徳太子みたいに対処はできないって言ってるんだよ。
……いや、なんか対処できる気もしてきた。
私の机の上には、周りを囲む女の子たちからのお菓子やらお手紙が山盛りに詰められており、どうやって処理するかということが私の頭を悩ませています。
これまではこんなことなかったのに……。
確かあれは、昨日の昼休みのこと。
「――ち、千佳ちゃん。あの、あのね」
「落ち着いて小豆ちゃん。どうしたの?」
「あ、ありがとう。えっとね、お菓子作ったんだけど、どうかな?」
「小豆ちゃんお菓子作れるんだ! すごいね!」
「え、えへへ」
「それで貰っていいのかな?」
「は、はい! お願いします!」
まるで弟子の味を見る板前の大将にでもなった気分です。
お母さんの美味しい料理を食べている以上、採点は厳しいですよ!
「これってチーズケーキ?」
「は、はい! お母さんと一緒に作ったんです」
「いただきます。はむっ、ん、んくっ、美味しいよ!」
「ほ、本当ですか!?」
「嘘なんて吐かないよ。チーズの味もよく出てるし、生地も歯につかなくて食べやすいし」
「良かったぁ……」
私の感想に緊張の糸が切れた小豆ちゃんを、思わず撫でてしまいます。
あ、これはまずいですね。
ナデナデは千佳ポイントの景品だった気がします。
「ふわぁぁぁ……!!」
そうして恍惚とした表情を浮かべる小豆ちゃんと、一部始終を見ていたファンクラブの子たちの間でこの話が拡散されていきました。
――千佳ちゃんに手作りのものを渡すとナデナデしてもらえる、と。
「うぅ、どうしてこうなった」
山盛りの机と、その前に立って物欲しそうに私へと話しかける皆。
その目はなんだか、観光客の食べ物を狙うトンビのようです。
これは、収拾がつきそうにありません。
私が命令すれば収まりますが、それだと小豆ちゃんを優遇しているように思われるかもしれません。
私のせいで小豆ちゃんが虐められたりしたら、嫌ですから!
「いや、それはないと思うで」
「心を読まないでね、湖月ちゃん」
まぁ、ファンクラブの規則の中にファンクラブ内外で喧嘩をしないこと。
仲良くできない人はファンクラブから脱退してもらう、という旨を書いてあるので大丈夫だとは思いますが。
それに、私は皆を信頼しているからね。
え? 虐めるかもしれないって言ってた?
……なんのことやら。
「さて、どうするか」
「……任せて」
「うおっ!? 莉里ちゃんいつの間に来てたの?」
「……五分前」
「すぐに声掛けてくれてよかったのに」
「……バーゲンセールみたいで近寄れなかった」
「……さいですか」
確かに、私の机に群がってるからね。
取り合いじゃなくて、逆に置いていってるけど。
「それで莉里ちゃん。任せてってどういうこと?」
「……全てを丸く収める」
「おお! 流石莉里ちゃん、頼りになるなぁ。それで具体的な方法は?」
「……千佳が全員撫でる」
「なにも解決してないよ!? 現状しか対応できないよ!?」
「……最後に私も撫でて、万事解決」
「ただ撫でてほしいだけじゃん!!」
どうやら莉里ちゃんは救世主じゃなかったみたいです。
私としては撫でるのは吝かではないんだよ?
でもね、軽く見えるだけで四十人くらいは贈り物を持ってきてくれているの。
私の手、持たないよ?
「千佳ちゃん。お困りなようですね」
「そ、その声は!」
「ええ。ファンクラブメンバーにして運営リーダー、九重柚梨とは私のことです!」
「あ、そういうのはいいので」
「千佳ちゃんの流れに乗ったんですが!?」
「それで、柚梨ちゃんは何か方法があるの?」
「うぅ、最近千佳ちゃんが冷たい気がします。ファンクラブ運営陣で話し合った結果、千佳ちゃんの行動を阻害する行為は千佳ポイントを減点することになりました」
「寧ろ何故今までなかった」
「……ということですので! 皆さん千佳ちゃんのこともちゃんと思いやってください!」
あ、柚梨ちゃんがスルーした。
一年生の頃はかなり表情や行動が固かった柚梨ちゃんだけど、大分解れてきました。
……解れすぎているかもしれません。
「ごめんね千佳さん」
「すいません千佳ちゃん」
「ごめんなさい千佳お姉さん」
「分かってくれたならいいよ。私も別に撫でたくないとか、皆のプレゼントが欲しくないわけじゃないからね?」
「うぅ、千佳さんありがとう」
「で、でも持って帰りますね。こんなに一杯食べられないですし……」
「わ、私の分も自分で食べることにします」
「ああ大丈夫だよ。私だけで食べるってわけにもいかないだろうけど、今回の皆の分はちゃんと食べさせてもらうからね」
柚梨ちゃんが持ってきた袋に、机の上のお菓子やお手紙を丁寧に入れていきます。
流石に学校でお菓子を食べるわけにはいかないからね。
「うぅぅぅ、千佳さんが天使すぎるよぉ」
「千佳ちゃん、私感激です!」
「そんなのずるいです……。本当のお姉さんだったらいいのになぁ」
皆の熱い視線を受けながら、私はこう考えるのです。
(……胃薬、家にあったかな)
その後増えた体重と格闘することになるのですが、それはまた別のお話。
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