最強のFラン冒険者

なつめ猫

大地の神衣契約

 空を飛翔したまま眼下に王城を見下ろしながらも音素状態になった私達は、レオナやアウラストウルスの位置を確認していく。

「深度は300メートルほどですね」
 私は一人呟きながらも下降していき、コルクの側で船体に足をつける。

「前とずいぶん違うな?」
 コルクは私達の姿を見て語りかけてくる。
 以前の私の神衣を知ってるからこそ、姿形が以前と違った私に疑問を抱いたのだろう。

「コルクは王城へ行き、王城内の方々の非難をしてください。おそらくアウラストウルと戦闘になった場合、王城内に非難してる人達の被害は甚大な物になります。
その為、エアリアルブレードで他の地と空間を繋げて迅速な避難誘導をお願いします」

「それほどの相手なのか?」

「はい、敵は神核エネルギーを所持しています。その力を使えば魔法帝国ジールの王都だけではなく魔法帝国自体消滅する可能性があります」
 私の言葉にコルクは自然と唾を飲み込んでいた。

「わかった。だが無理はするなよ?」
 すぐにコルクは船内に走って入っていく。しばらくすると船体が少しづつ降下を始めた。
 いくらコルクのステータスが私との神衣で上昇してると言ってもレオナ程ではないし上空3000フィートからの落下して無事では済まないと思う。

 とりあえず王城と王都の避難はこれでいいとしましょう。
 問題は……。

「アリア、それではいきます!」
(わかりましたわ)

 私は、内面に存在するアリアに語りかけ背中の6枚の翼を展開させて空に向けて飛翔する。

「アウラストウルスの位置を検索……確定。目標までの到達距離を逆算……判明……確定。アリア!魔力収束砲を撃ちます。魔力の共振は行いますので収束をお願いします」
(ええ?ここからですの?)

「はい、時間がありませんので」
(仕方ありませんわね)

 音波により敵の位置を割り出した後、私が狙った場所の直進上に杖の先端を向ける。そこにアリアの魔力が収束していき私の共振がそのエネルギーを数千倍に増幅していく。

「まずは道を作ります」
 魔力が鈴の音を鳴らすように収束していき、その力が高まるたびに音が巨大になっていく。背中に生えた6枚の翼は、大気中に存在する精神エネルギーを残らず食い尽くして私の力へと還元していく。

「一点集中貫通モード、聖光砲撃セイクリッドブラスター!」
 打ち出した増幅版の魔力収束砲が王城の壁を消滅させ地面を消し去り地下に存在する迷宮や神代遺跡を軒並み破壊していく。

「くっ、感知された?でも……」
 私達の魔力収束砲を受け止めれた感じが杖の先から伝わってくるけど……。

「負けるかああああああ」
 さらに力を入れた途端、アウラストウルが展開していた防御壁を貫いた感触が手元から伝わってくる。

「いきます!」
 私はそのまま背中の翼から魔力を放出して推進エネルギーに変える。
 そしてそのまま、魔力収束砲が破壊しつくした通路を飛翔し降りていく。
 わずかな時間の後、巨大な広間に私達は到達していた。

 そこは私が見たことある光景、つまり軍事実験センターの姿が存在していた。

「――――――おのれ……何者だ?」
 瓦礫の中から現れたのは12歳の時のユウティーシアによく似た金髪の女。

「貴様は一体何者だ?」
 アウラストウルスは私を見ながら問いただしてくるが、私の視線は後ろのレオナに向けられていた。レオナの姿は以前、見かけたときと比べて殆ど変わってないように見える。

「レオナ!迎えにきた」
 私の発言に、精神の調停者たるアウラストウルスはその表情に苛立ちを見せた。そしてすぐに表情を変える。

「なるほど、貴様。まさか生きていたとはな……だが、その姿はまさか……そういうことか。いいだろう、レオナ!こちらも神衣で対抗する」

「ですが、あれはクサナギ殿しか無理な「うるさい!貴様の中には神衣をした際のデータが残っているだろう。それを使えばいいのだ」」
 私の前でレオナは、アウラストウルスと神衣を行う。
 その姿は、以前の私がレオナと神衣した時とまったく同じであった。

「これで草薙友哉、貴様と互角だ。そしてここに神格エネルギーを使えば貴様をはるかに超える力を発揮する事も不可能ではない!」
 アウラストウルスが、黄金に光る核心を飲み干すと神衣化したレオナの紫電を纏う刀が巨大化していく。刀の大きさは5メートルを超えたあたりで止まり、周囲には紫のイカヅチが迸っている。

(ユウティーシア様、あれは理を破壊する力です)
「わかってる。だが、今は正面から戦うわけにはいかない!相手の攻撃をいなす」
 巨大な雷神が私達に解き放たれてくるが、それを展開した翼の斥力で弾く。弾いた間に近づいてきたレオナ・アウラストウルスのが雷切を振り下ろしてくるが、それを杖で受け止める。

「どうした?その程度か?草薙友哉よ!」
 アウラストウルスが私に告げてくるけど。

「私は、草薙友哉の知識を持つユウティーシア・フォン・シュトロハイムです!」
 雷切を杖で弾き距離を取る。

(まずいです。私やユウティーシア様は接近戦には不慣れです。せめてコルクと神衣化してるならアウラストウルスの体の中にある神核を取り出せますのに)
「わかってるけど、コルクは避難を任せている。連れてくるわけにはいかない」

 私とアリアが話してる間、少しづつアウラストウルスに追い詰められていく。
相手の神衣化は以前の私と大差はない。だけど神核での全能力を爆発的にそこ上げてしていて私の神衣とほぼ同格の力を引き出している。
 その為、剣技に優れるレオナをベースにされてる以上どうしても戦闘力では一歩下がってしまう。

「―――っ!?まずい」
 払い上げられた雷切で私達の杖が手元から弾き飛ばされてしまい次の連激を受け止める事が出来ない。すると迫りくる刃が硬質の壁で受け止められた。

「何者だ?」
 私達とアウラストウルスは気配がした方へ視線を向けると地面に両手をついていた男性、クラウス殿下が立ち上がり怒った顔をして私を見てきた。

「ユウティーシア!コルクから話は聞いた。君は神兵と戦っていたんだろう?私が足手まといだと言う理由で遠ざけるならやめてもらいたい。このクラウス・ド・リースノット、自分が愛する女性は命をかけて守る事に決めている」
 なら尚更、クラウス殿下には言えない。

「分かっているさ、さっき君と口付けを交わしただろう?君のそれは死人のように冷たかった。別れが近いことも直感できた。だからこそ、最後まで君と共に一緒に戦いたい」
 蚊帳の外に置かれたアウラストウルスは、その表情を少しづつ歪ませていく。

「人間ごときがっ、私と戦うだと?」
 アウラストウルスが叫びながらクラウス殿下に近づいていく。
 そのアウラストウルスは突然、地面や空間から生まれた金色の鎖に束縛される。

{ユウティーシア様、私の魔術ではおそらく10秒も持ちません。はやく、彼と神衣契約を!)
「わかりました」

 いまのアリアとの神衣状態のままでは、どちらにしてもレオナとアウラストウルスの神衣には勝つ事ができない。なら……。
 すぐに私とアリアは分裂する。アリアはアウラストウルスの動きを魔術で押さえ込む。神衣を解除した後も、力を使い切らなければ増幅された力はしばらく残り続ける。だからこそ出来る業だ。

「クラウス殿下!」
 私は、走ってきたクラウス殿下に抱きつくと彼は力強く抱きしめ返してくれる。

「ユウティーシア、たとえ君がどのような事に巻き込まれようと俺は君を愛している。だから君も俺を愛してほしい」
 クラウス殿下の言葉に私は一瞬迷った後に頷き、口付けを交わす。
 死んでるのに、何故か昂揚する気持ちを抑えきれないまま、クラウス殿下の手に自分の手を重ねる。

「クラウス様、参ります」

「ああ、ユウティーシア」
 クラウス様の言葉を聴きながら私は心の中で神霊融合を唱えた。


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