最強のFラン冒険者

なつめ猫

心境変化

<a href="//655400.mitemin.net/i230471/" target="_blank"><img src="//655400.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i230471/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>

 冒険者ギルドで一悶着起こして、レオナに夕方から夜まで正座させられた翌日……。
市場で俺はウロウロしていた。
一応お咎めなしになったが、聖女として見られてしまい副業禁止なので、ここの町の冒険者ギルドはもう使えないのだ。

 何故、ここの町の冒険者ギルドだけかと言うと、この世界の冒険者ギルドと言うのは基本原則として国を跨ぐような巨大な組織ではない。
独立採算制をとっている組織でありギルドマスターの上には、必ず国王や貴族がいる。彼らの出資でギルドが回っている。
つまり冒険者ギルドの名前を掲げてはいるが立派とした国営の派遣会社なのだ。

 色々な物語で存在してるような都合のいい国家間を超える通信など気軽に使えない事も、国家間を越える超組織を作る妨げだと思う。

 ちなみにここの人口2万人を超える城塞都市ハントは、2国間を跨ってる影響からか総督府ではなく領主が存在している。この領主はヘルバルド国とエルベスカ王国に税金を納める事で自治を許されている。
つまり衛星都市や城塞都市と呼ばれてはいるが、独自の法や自治を任されてる点からここは独自の小国扱いに近い。

 そいうこともありここの領主の権限はとても強く、冒険者ギルドの職員も独立採算制の点から見てかなり成績を競い合わされていて大変らしい。
 なので金貨1400枚の依頼を俺が成功させた時に、あの女性ギルド職員は飛び跳ねる程喜んだらしい。何せ俺一人の成功で3ヶ月分のノルマを達成してしまったからだ。それを俺の一存で無かった事にされれば怒るのは当然だろう。

 考えながら歩いていると、きゅるるるるると俺のお腹が鳴った。
実は、俺が借りてる高級ホテルは金貨3枚なのだが食事をつけると手持ちが足りなかったので俺だけ食事無しプランでホテルを借りていたのだ。だからこうして市場に来て安い屋台を探してたりする。

「お腹すいた……」
 昨日から何も食べてない。とてもひもじい……。
 アイテムボックスから、お手製のがま口を取り出して中身を見る。銀貨2枚と銅貨8枚……日本円に直すと2080円とても経済的にやばい。
 この際だから、モンスターか野生の動物で倒して。その場で焼いて食べる生活するしかないかな。

「お姉ちゃん!」
 昨日、助けたシータが俺を目掛けて走って近づいて抱きついてきた。シータが走ってきた方向からは、冒険者ギルドで見た女性が歩いて近づいて来た。

「昨日は、ありがとうございました。私はヴェネと言います。おかげで家族で前どおり生活が送ることができます」

「お姉ちゃん、昨日はありがとう!」

「いえいえ。だいじょ「きゅるるるる」」
 話してる途中でお腹が抗議してきた。少しは空気を読んでほしい……。

「よ……良かったら、これから朝食ですので食べて行かれませんか?聖女様のような上流階級の方のお口に合わないかも知れませんが、精一杯おもてなしさせて頂きますので……」
 そう言われたら断れないじゃないですか。断るつもりもないけど……ぜひご飯を食べに行かせて頂きますよ?

「こちらこそ、ご迷惑にならないのでしたらぜひ」
 こうして俺はバルス一家のご自宅に招待された。自宅は北門エリアに近い。
 バルス一家の家は石造りのきちんとしたつくりになっていて部屋は全部で5部屋ありそのうち一つが竈などがある部屋になっていた。
 俺は、バルスの奥さんが料理をしてる間、採掘現場を見に行って戻ってきた旦那さんであるバルスさんや息子のバズーさんに何度もお礼を言われてしまいとても居心地が悪かった。

 しばらくすると、料理が運ばれてきたのでそれらがテーブルの上に置かれていき食事の用意ができた。

「いただきます」
 ほかの人たちはリメイラール様、今日も生きる糧を与えてくださりと言っている。聖女なのに俺だけまったく違う作法をした事に彼らは驚いていたが深く追求はなかった。

「そういえば聖女様は。この町には何をしにこられたので?」

「ただ立ち寄っただけでしょうか?とくに他意はないんです」
 俺の言葉にバルスさんは納得したような表情をしている。
 バルスさんに突っ込まれないように俺は野菜の炒め物をパンに挟んで食べていると

「お姉ちゃんは聖女様なんだよね?困ってる人を助けてくれる?」
 規約を思い出す。そういえば助けるような事を書いてあった気がする。
 でもレオナに昨日の夜、危険な事はするなと再三言われたからな。今度、破ったら一人での出歩き許可下りなさそうだし。でもな、そんな期待された目で見られると断り辛いんだよな。

「友達のお父さんが病気にかかってね、すごい苦しんでるの。お姉ちゃん助けて……」
 俺が見てる前で、シータの目には涙が溜まっていくのが分かる。仕方ないな……。俺は、溜息をつきながらシータの頭を撫でる。

「大丈夫、私はリメイラールの聖女だからね。だから一度見てあげるよ?」
 そう言うとシータが満面な笑みを見せてきた。
 まぁ子供の笑顔は宝だからな。
 きっと説明すればレオナだって分かってくれるといいなー。

 食事を取った後、俺は冒険者の服装のままシータの友達の家に向かったが場所はさらに北門に近い。おかげで治安もあまり良いとは思えないが護衛としてバズーがついてきたのだが、役に立つのだろうか?

「お姉ちゃんここ!」
 俺は連れて来られて到着した建物を見るがその建物は、バルスさんの自宅と同じくらい立派な物であった。壁を見るとどうもコンクリートらしくもしかしたら神代時代の建物をそのまま利用してるのかもしれない。
 横ではアルネちゃーんと叫んでるシータが居る。しばらくしてからあまり体調が良いとは思えない女性が出てきた。

「シータちゃん……」
 とだけ言って女性は泣き崩れた。
 あれ?アルネちゃんは?とシータは聞いているが女性は中々返答を返さない。

「すいません、教会関係者の治療師ですがすぐに容態を見せてもらってもいいですか?お金は取りませんので安心してください」
 俺の言葉にようやく女性は反応しすぐに家に上げてくれた。そして見た光景は……。

「――――――ひどい」
 体の四肢から壊死が始まっている、しかも大人であるアルネの父親は皮膚がまだ変色してるだけで済んでいるが子供の方は普通なら手遅れだ。

「せめて子供にリメイラール教会の方から聖言だけでも頂ければ……」
 聖言、それは死者を埋葬し浄化する儀式の言葉らしいがそこには特になんの効果もない。日本で言うところのお経みたいなものだ。

「すいませんが、聖女は何をしているのですか?」

「私達のような高額の治療費を払えない者を見てはくれません」
 冗談だろう?聖女を名乗ってるんだからやることやっておけよ。俺とかいつもいつも大変なんだぞ!
 俺はアイテムボックスから杖を取り出すとヒールを唱える。魔術式は最適な魔術式に組み変わり一瞬でアルネの体を壊死していた部分を含めて修復し回復させた。アルネの父親のリンガスの体も健康状態まで回復させるとアイテムボックスに杖を入れてその場で溜息をついた。

「もう大丈夫です。一応、栄養価の高い物を食べさせて……これをどうぞ」
 俺はアイテムボックスから金貨1枚で購入した石鹸を2個取り出して渡した。家の中を一瞥しただけで栄養価の高い物を食べさせられる程、家計に余裕があるとは思えなかったのだ。

「これは……?」
 石鹸を受け取ったシータのお母さんであるキルネは渡された物を見て俺を顔を見てきた。

「それは石鹸といいます。商店に売って栄養価の高い物でも旦那さんと子供さんに食べさせてあげてください。それと病気は完治させましたが少し詳しいお話をお伺いしてもいいですか?どうしてこのような病気になったのか調べたいと思います」
 俺の言葉を聴いてバズーとシータが尊敬な眼差しで俺を見ているがこれは俺の自己満足だ。
 ただ、この現状を見せられて何もしないのは人として駄目だと思っただけに過ぎない。

「はぁ……」

「お姉ちゃん?」
 心配そうに語りかけてきたシータの頭を撫でながら俺も甘くなったものだなと心の中で毒づいた。日本で生活してた時は、他人なんてどうでもいいと思っていたのにな……。

「大丈夫です。それでは情報収集をしたいと思いますのでシータちゃんとバズーも手伝ってもらえますか?」
 俺の言葉にシータとバズーと何故か感謝の言葉を何度も言っていたキルネさんまでも力強く頷いてくれた。

 

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