最強のFラン冒険者

なつめ猫

エロゲーな世界なんですか?

 冒険者ギルドのカウンターに座る受付係りより受領書を受け取りポケットにしまう。

「ダブルSランクの方ですから心配はしておりませんが、くれぐれも男性を連れて討伐に行ってくださいね。女性だけでいくなんて自殺行為ですからね!」

「……」
 何をそんなに心配そうな顔をしてるのだろう?意味不明だ。それよりも……。

「少しいいですか?実はウリボウの特徴って私が知ってたのと間違ってたら困るので一応お聞きますが茶色い毛ぽいのがあって4本足で歩いて雑食の真ん丸い体格の奴で間違いないですよね?」

「はい、間違いないですね。でも知っているようで安心しました」

「いえいえ、よく捕っていましたから」
 俺の言葉にザワザワと冒険者ギルド内に波紋が広がっていく。中にはさすがダブルSランク、勇者は桁が違うぜとかも聞こえる。はて?レオナは勇者呼ばわりされていたのか。たしか冒険者ランクは以前聞いたらSからFまでしかなかったはず。
 それがダブルSとかだと限られた冒険者だけがなれる称号みたいなものなんだろう。
 でも俺がダブルSランクって何ですか?聞くのもレオナの冒険者カードを借りてる事がバレそうで問題ありそうだしな。

「それでは、お騒がせしました」
 さっさとウリボウを探して倒して金貨1400枚ゲットしよう。微妙な雰囲気になった冒険者ギルドから出てしばらく歩きながら受領書に書かれているウリボウの最新発見情報を確認する。
 ウリボウが居るのは、北側の門から1時間ほど山道を歩いた場所らしい。
町の中を歩いていると

「レオナさん!まってくださーい」
 とレオナを呼ぶ声が聞こえてきた。同姓同名でもいるのだろうか?俺は無視して歩き始める。するとと後ろから肩を掴まれた。

「レオナさん!」
 振り返ると16歳そこらの少年が、息を弾ませて俺を見下ろしてきた。

「レオナさん、お願いがあるんですが俺も一緒に連れていってもらえませんか!」
 ふむ。レオナね……あ、そうか!そういえば俺、レオナの冒険者ギルドカードで仕事を請けてるんだから一応レオナなのか。

「いえ、お断りします」
 どんな理由かは知らないが男と2人きりになるなんてだめだろ。さっさと離れてくださいという意味をこめて彼の手を肩から離す。

「なぜですか!?ウリボウを倒しにいくんですよね?」
 いくけど、それがどうしたんだよ。まさか、楽なモンスター討伐クエストを俺が取ったからって分配宛にしてるんじゃないだろうな?でも、一応レオナの冒険者ギルドカード借りてるからな……あまり力技で却下するわけにもいかないよな。

「申し訳ありませんが貴方を連れていく理由がありません。ですから御引取りください」
 このくらいでいいだろう。
 連れていってほしいなら理由をもってこいってことだ。
 分配が欲しいからって紐は許さない。

「理由はあります。薬草を採取してた際にウリボウに昨日捕まった妹を助けたいんです!」
 意味が分からん。ウリボウってあのイノシシのウリボウだろう?雑食で食われるかもしれないからと言う理由なら分からなくも無いが捕まったって理由は無理がありすぎるだろ。

「あの子、バルスさんのところの息子じゃなかった?」
「ウリボウに女性が捕まったのか……かわいそうに」
「シータさん今頃、苗ど……」

「……」
 え?どういうことだ?ウリボウってあのウリボウだよな?最後なんて偉いアレ的な内容が聞こえてきたが……。もしかして俺が知ってるのとこの世界のウリボウは違うのか?
 そういえば、

 ゴブリン討伐 銀貨2枚 
 オーガ討伐  金貨1枚

 とか書いてあった気がする。もしかして金貨1400枚のウリボウってかなりやばいのか?情報が情報がほしい。どこかにモンペディアとか無いだろうか?仕方ないな……。

「ふう、分かりました。私の名前はレオナです、貴方の妹さんを助けるというその気持ちに打たれました。一緒の同行を許しましょう。ですが、私の指示には必ず従うことが条件です。いいですね?」

「はい!俺の名前はバズーって言います。必ずお力になります!」
 ふむ、バズーにシータにバルスか。空飛ぶ城でも落ちてきそうなネーミングセンスだな。
 しばらく歩いていると町の雰囲気が淀んで来たのが分かる。何人もの人が壁に寄りかかったまま、空を見上げてケタケタ笑ってると突然、体を掻き毟り始めたり叫んだりしている。

「バズーさん、町の北側は前からこんな物なのですか?」
 俺の質問にバズーがそんな事はないと首を振ってきた。

「前はそんな事ありませんでした。疫病が広まってからです、最初は体の指先が動かし辛くなってそのうち震えがとまらなくなるのです。
 聖女様を迎えにいった兵士の方と入れ違いに来られた聖女様が来られてから多少は違いますが、聖女様が配られる薬は、とても高価で呑んでる間は体の痛みから解放されるようなのです。
 ですが切れてしまうとあのようになってしまうのです」

「な、なるほど……」
 なんか、グレーゾーンな商売してる聖女だな。そんなんで大丈夫なのか?よく領主は許可したよな……。まぁ俺にはあまり関係ないからいいけど……。

「それにしても教会が認めた勇者一人だけに発行される冒険者ギルドカード。ダブルSランクの方はすごいですね。こんな風景を見ても眉一つ動かされないのですから、尊敬します!」
 あれ?レオナっていつの間に勇者になってたんだ?しかも一人だけって……コルクは勇者やめたのか?

「ただ……」

「――――――ん?」

「いえ、なんでもありません」
 何でもありませんとバズーは俺に語ったが、バズーがただという後に小さく呟いた言葉。勇者様がいるということはやはりあの聖女は本物と言うことかという悲痛な独り言だけは聞き逃さなかった。

城塞都市ハントの北門を出て一時間ほど歩くと

「ここです、ここでシータが……」
 それだけ言うと落ちてた籠を抱きしめてその場でうずくまってしまった。

「バズーさん、どうしてシータさんは捕まったのにそれをバズーさんが知ってるんですか?」
 少し疑問に思ったことを口に出してみたが

「シータはドーラと言う友達と薬草を取りにきていたのです。シータはドーラを助けるために囮となって捕まったとドーラが冒険者ギルドへ依頼を出したのです。ですがウリボウは強力な魔物で誰も受ける者が居なかった所でレオナさんが来られたのです!」

「なるほど、それにしても金貨1400枚はかなりの大金だと思うんですけど大丈夫なの?」

「はい、父のバルスが家の抵当権と鉱山の採掘権を手放してお金を作る事ができました。それでも討伐の相場は金貨3000枚でした。誰にも受けてもらえないと思っていたので、レオナさんには感謝してもしきれません」
 とても重いな……聞かなければよかったかもしれない。そこで強化していた聴覚に何かが迫ってきてる音が聞こえる。人間じゃないな……。

「バズー!何かが来る。戦闘準備をしてください」
 俺の言葉にバズーが腰からブロードソードを抜いて示した方向へ視線を向ける。
 俺も森の間から出てくるウリボウを待っていると大人のイノシシを20倍くらいにした巨大なイノシシがそこにはいた。

「あ、あれがウリボウです!あそこにいるのはシータ!この兄が必ず助けてやるぞ!」

「ニンゲン!貴様にはワレは倒せん、その女も頂いて孕ませてやろう!!」

「貴様の好きにはさせない!」
 バズーが雄雄しく叫んだ。
 そして俺を置いてきぼりにしてハズーと巨大なイノシシが会話をしているが俺はそのイノシシを見て思った。体毛が茶色い触手で出来て4本で歩いてるイノシシとか誰も想像できないと。
 しかもよく見たらバズーの視線の先にあるシータだけじゃなくて、10人近くの女性があらぬ姿で触手にピーなピーな状態にさせられてる。
 大変、対応に困る案件だ、やっと冒険者ギルドのカウンターの女性が男を連れていけと言った理由が分かった気がした。



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