最強のFラン冒険者

なつめ猫

ゲームとは違います

 俺を眼中外においていた2人を横に置いておいて、身体強化した状態で女性たちを助けていく。触手を断ち切り抱きかかえて一人づつ少し離れた場所へと一まとめに寝かせていく。
 シータと呼ばれる女性を最後に助け出して地面に置いたのは俺が移動を始めてからわずか1秒であった。本来ならば一人0,1秒で助けるということになると大変な過重が掛かってしまうがそこは重力魔法で発生する物理エネルギーを相対的に相殺させる事で事無きを得ていた。

「あー、ちょっと2人とも良いですか?」
 俺の言葉にようやく二人の視線が俺に向けられた。まぁ冒険者と言っても俺みたいな華奢な女を脅威として認識しないのは普通だろう。

「それで、まずはウリボウ君でしたっけ?このように女性に辱めを与えた事はどう思ってるのですか?」
 ウリボウとバズーは、俺の言葉を理解できていないようだ。

「クハハハハハ、貴様も苗床になると言うのにずいぶんと大きな態度だな?」
 よし、こいつは殺そう。ウリボウの苗床と言う発言にバズーは妹が気になったのだろう。すぐにシータが触手で絡められていた場所へ視線を向けると

「へ?」
 と間抜けな声を上げていた。そもそも、熱くなって口喧嘩するくらいならさっさと戦えばいいのに、この男は何をしてるんだろうか。まぁどっちでもいいか……。

「呆けてなくていいです。バズー、このウリボウは売れるんですか?」

「はい!肉が高く売れます」
 ふむ、なるほど。だがな……。こういうやつは生かして起きたいとは思えないな。

「そうですか、まぁ必要ないですね」
 俺の言葉にウリボウが何か叫んでいるがもう聞く必要もないだろう。世界の事象を改変し魔術を超える魔法を発動させる魔術式をくみ上げていく。組み上げるは物質の崩壊現象その名も……。

「グラビディランス!」
 俺が作り出した2メートルを越す漆黒の重力場を宿した魔法。それを俺の意思により投擲する。グラビディランスは、ウリボウが避ける暇すら与えずその胸元に突き刺さる。そして原子崩壊を誘発し力場が反転し莫大なエネルギーを開放した。
 巨大な重力崩壊の閃光が木々や大地を削り飛ばし消滅させながら一直線に全ての万物を等しく原子崩壊させていく。
 最後あたりに断末魔を聞いた気がするが気のせいだろう。
 前使った時は、アルゴ公国の山脈を消し飛ばした。だが今回はかなり手加減がうまく言ったのか森の一部が消し飛んだくらいで済んだみたいで特に問題はなさそうだな。

「バズーさん?」
 俺は女性たちをどうやって運ぼうか考えてバズーの方へ視線を向けると彼は何か恐ろしい物を見たように震えていた。やはりウリボウとやり合っていた時は虚勢だったんだな。
 まぁ男は、時には見栄を張りたいものだから仕方ないかもしれない。

「それにしても……」
 どうしたものか。ここから町まで山の中を歩いて1時間ほど掛かる。まだお昼を少し回ったくらいだからすぐには暗くならないけどどうしたものか。
 女性たちを見ると、みんなドロドロのグチョグチョになってるし……。やっぱり男がいるとまずいよな……。

「バズーさん!」
 俺の言葉にようやく彼は頷き返してくれるが足手まといにならないと言うならきちんとしてほしい。

「数本木材を斬って頂けますか?」

「木材?」

「はい、そうです。簡易的なお風呂を作りますので支柱が欲しいのです。10本くらいでいいのでお願いします」
 俺の言葉にようやく動き出すバズー。まったくウリボウにショック受けすぎだろう、よくついてこれる気になったものだ。

 バズーが支柱の材料となる木を伐ってる間に、俺は種火の魔法で地面を溶解させながら風呂釜を作っていく。次には生活魔法の水で風呂釜を満たす。最後には種火を風呂釜の水の中に発生させて出来上がりだ。
 次に女性達に近づいていき、鑑定で体をチェックしていく。シータは問題ないが残りの10人の女性が全員、妊娠(魔物の子)させられていた。
 これってどうしたらいいのだろうか?でもまだ一週間以内のが殆どだからやっぱり同じ女としては、あれだよな……。

アイテムボックスから杖を取り出す。そして女性達に向けて体内、対外が正常状態に戻るようにヒールを使うと杖が最適な魔術式を組み替え女性達の体を修復した。鑑定で見ても妊娠の状態は全部消えてるのでこれでいいのかな……。
 俺の回復魔術により肉体が正常状態になったのか目を覚まそうとしていた女性が何人かいたので俺は急いでバズーの元へ戻る。するとすでに伐採は終わっていた。

「バズー簡易の脱衣所を作るので、柱を押さえておいてください」
 俺は丸太を身体強化したまま地面に刺していきアイテムボックスから布とソーイングセットを取り出し糸で布を丸太に固定していく。簡易的なものであったので5分ほどで脱衣所が完成する。

「すごい手際がいいんですね。さっきの回復魔法とかまるで噂に聞く聖女様のようでした」
 俺はバズーを睨んだ。

「バズー、女性の体をそういう意図が無くてもあまり見るのは良いとは言えませんよ?」
 まったくデリカシーが無いのは嫌われるぞ?さて用意もできたことだし様子を見にいくか。

「言わなくても分かると思いますけど、バズーは女性がお風呂から出て身だしなみを整えるまでは周辺の警戒をしておいてください」
 俺はバズーに言いながら、パワーオフディフェンスを発動させかける。今回は神兵との戦いでは無いので10倍に抑えてある。
 バズーは、自身のステータスが向上した事に驚いていたが俺が一括するとしぶしぶ周辺の警戒に出ていった。女性達に近づいていくとすでに何人か起きていたようで俺の姿を見て最初は驚いていたようだったが俺が彼女らを助けたと説明し体の治療も施したと言うと感謝された。

「そう、レオナさんっていうんですか。本当に本当にありがとうございました。ウリボウの体液は媚薬の効果があって一生抜けないと言われているんです。それを治療してくれるなんて感謝したりません」

「バズーお兄ちゃんが、助けにきてくれたんですか?」
 とこの辺まではいい。
 他の女性達は、やはり結婚前の女性ばかりだったので無理やり性的に襲われたのは心的外傷が大きかったようで女性達の表情はとても暗かった。
 とりあえずはまずは、お風呂に入ってもらいリラックスしてもらおう。

「皆さん、じつはそこに露天風呂を作ったので体を一度洗いませんか?それだと洋服も渡せませんし……」
 俺の言葉に女性達はしぶしぶお風呂に入ってくれた。何か癒せるものがあればいいんだけどな……あったわ。

「えっと少し良いですか?」
 お風呂場に入ってきたのが同姓だと思って安心したような顔を見せてくれたのを見てから、アイテムボックスからハーブやバラやコリアンダーを混ぜた石鹸をいくつも取り出して渡していく。

「えっとこれで体をって……布も必要ですね」
 俺は購入したばかりの清潔な真っ白な木綿の布と大きめのバスタオルになりそうな布を取り出した。

「こっちの小さい布で体を洗って露天風呂で体を温めてくださいね、石鹸は小さい布で包んで泡を立ててから体をこするといいです」
 告げながら生活魔法と種火と水生成を組み合わせたシャワースポットも作っていく。

「お風呂に入るとそのままだとお湯が濁ってしまうので、ここだと頭上からお湯の雨が流れるようにしたのでここで体を洗ってから入ってください。それと皆さんに説明し忘れていましたが、私の回復魔術で一応、体の状態は魔物に犯される前に戻しておきました。それではゆっくりお湯に浸かっていてください、私も周辺を警備しておきますので」
 襲われた女性の気持ちが俺には分からないから、カウンセリングはできない。とりあえず体は純潔状態にしましたよと言うのが精一杯だった。

 バズーの近くに行くと、彼は険しい目で山向こうを見ていた。

「バズー、どうかしたんですか?」

「レ、レオナさんですか……。レオナさんって強いんですね」
 どうだろうな?俺、レオナじゃないけどステータスだけ見たら本物のレオナとか全部4桁行ってるからな。純粋な殴り合いならレオナに勝てる奴いないんじゃないかな?

「俺も、レオナさんくらい強くなれますか?」

「強くなる精進を怠らなければいつか強くなれると思いますよ」
 俺とか、生死が絡んでるから魔法とか作ってるだけだし、俺が戦う敵って神兵とかとんでも化け物ばかりだから強さの次元が違うんだよな。いつもギリギリで勝ってるし……。
 そう考えると、俺ってもっと強くならないといけないんじゃないかな?とてもメンドクサイな。気がつけば露天風呂の方から賑やかな声が聞こえてきたので少しは気分を解消出来たのかもしれない。

「バズー、私は皆さんに洋服を渡してきますのでもう少しここで待機しておいてください」

「分かりました」
 俺の言葉にバズーは素直に頷いてくれた。


 脱衣所に入ると皆さんバスタオルで体を拭いていたのでアイテムボックスから机を取り出しその上に洋服や下着を、足元にはサンダルや靴を置いていく。

「これ、本当に着ていいんですか?」
 と皆さんに聞かれたのでどうぞと頷くと黄色い声で話しながら洋服を選び始めた。
 それを見てこれは帰るのに時間かかりそうだと思ったが、こう言うのもカウンセリングの一つかも知れないと割り切る事にした。





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