最強のFラン冒険者

なつめ猫

なんということでしょう。まるで呪われてるようじゃないですか?

 俺はグッタリとしたまま、レオナに背負われる形で町へ歩みを進めるラクダの上に座っていた。
慣れない力、神代時代の杖の力を解放した事で俺の魔力は根こそぎ奪われてしまい殆ど魔力がないのだ。
おかげでだるくて仕方ない。
 俺の魔力回復速度は、かなり速いはずなんだけど回復した側から杖が魔力を自動消費してるような感じがする。

「それにしても、神代武器と言うのは面妖ですね」

レオナは、俺の頭の上で浮いて着いてきてる神代の杖を見て呟いていたが、俺もそれは同感だった。杖はずっと光り続けていて俺の魔力をずっと吸収して放出しているのだ。
 しかも置いていこうとしたら、自動追尾システムまでついてる始末。レオナの言うとおりこれは呪いの武器だったかもしれない……とても面妖だ。

 二人してそんな事をしてると古代遺跡に来る時は2時間掛かったのに、町にはわずか1時間足らずで到着してしまった。
 ラクダも草原になって歩きやすくなったのかもしれないな。
 俺たちは町に近づいていくと町の中の風景は一変していた。
 町は湖の中に存在しており湖上都市とも呼べるような物であった。

「まるで、依然ドキュメンタリーで見たことがあるシュミレーターで再現された楼蘭みたいだな」

「クサナギ殿?」
 レオナが不思議そうな表情で俺を見てきた。

「いや、なんでもない」
 レオナは、俺と神衣を行った影響で俺の感情と記憶と知識を垣間見る事が出来るが何故か俺の地球で住んでた頃の記憶は見れないらしい。
 それは勇者コルク・ザルトと聖女アリア・スタンフォールも同じようで彼らが見ることが出来たのは俺がこの世界で生まれた後の記憶と知識だけだ。
 だから神衣の影響で魔術を超える魔法が単体で使えるようになっても俺が得た宇宙構造理論と天体物理学の一部を応用した魔法しか彼らは使う事が出来ない。
 いい意味でストッパーとして機能してるし科学や物理は一系統だとそこまで有用性を発揮できないから問題ないだろう。

 俺やレオナは、砂に埋もれて気がつかなかった橋の上を通って湖上都市へと変貌を遂げた衛星都市ルゼンドに入っていく。北門を抜けると先ほどまで雨が降っていたらしく、町の中は至るところが濡れていた。

「レオナ、とりあ……え……」
 総督府に言ってお金をもらいましょうと言う前に俺はその場で意識を失った。


 そして目を覚まして現状を確認して見ると、そこは衛星都市ルゼンドに到着した初日に泊まったホテルの寝室だった。

「体は……」
 起き上がって体中に力を入れるが特に問題ない。魔力量も完全に回復しているのか体がだるいということもない。ただ、俺の頭に浮いてる白い杖だけが問題なわけだが……。

「アイテムボックス!」
 魔術を使うと杖はそのままアイテムボックスの中に収納された。神代時代の物であっても収納できるらしい。寝室から出ると丁度戻ってきたレオナと顔を合わせた。

「クサナギ殿、町の周辺の砂漠だけではなく他国の国境付近まで緑が広がってると商人が噂してました」

「なるほど……」
 どんだけ俺の魔力使ってたんだ?これはエリア指定して使わないと神代アイテムは使い物にならないな……。

「それでお金は?」
 俺の言葉にレオナは首を傾げて

「クサナギ殿が起きてから貰いに行こうと思っていました」
 たしかに俺が行った方が良いかも知れないな。この町の周辺の砂漠化を緑化させたのも俺の魔力消費の賜物だし追加で請求することも可能だろう。

「そうですか。分かりました、それでは私の体調も戻ったことですし市場に行って、追加請求をするためにどのくらい町の状態が改善したかチェックするとしましょう。砂漠化を止めて緑溢れる土地にしたのは私の成果ですしね!」

「クサナギ殿は、相変わらず考えが下種いですね」
 下種い?これは正当な賃金と言ってほしいものだ。
 だいたい、ここ最近の俺とか働きすぎだろ。
 マジで前世のブラック会社社員も顔を真っ青にして裸足で逃げ出すくらい連日徹夜してヒールしてお金配ってたんだよ?これがホワイト企業だと言うならどこの世界にもブラック企業なんて存在しないと思う。

1時間後、市場を見て回っていて感じた事は、悲壮感こそ無くなったようであったが咳をしてる人が多く見受けられた事だ。初日は砂漠だからそんなもんだと思っていたがこの気候の状態でそれはありえない。

「すいません、少しいいですか?」 
 俺は、前に果物を購入したお店の店員がおばさんじゃなくて若い女性に変わってるのに気がついて声をかけた。

「はい、なんでしょうか?」
 女性は俺を見るなり言葉を返してきた。

「えっと、昨日ここで果物を購入したはずなんですけど今日はその商店の方はいらっしゃらないんですか?」
 俺の言葉に女性は表情を曇らせたことを俺は気がついた。どうやら余計な詮索をしてしまったようだ。

「いないというかお母さんは倒れてしまって寝込んでいるのです。治療魔法師の方に、診てもらおうにも高くてお支払いができないのです」

「ちなみにおいくらなんですか?」

「金貨100枚です……」
 高いな……金貨100枚って日本円に直すと100万円じゃないか。まだまだ教会は改善の余地がありそうだが俺も慈善事業で他人の治療するなんて真っ平ごめんだからな。だけど一度話した相手だし、一人くらいなら治療してやってもいいか……。

「あの、一応……私も治療魔術が使えるので見てみましょうか?」

「本当ですか!?」
 ガタッと立ち上がる店子さん。そして……俺の手を握りながら

「家はすぐそこなんです、案内いたしますね!あ、すいません。私はカリアって言います。お母さんの名前はリアラスです。」
 俺は彼女に連れられる形でおばさんが倒れて寝てると言う家に足を踏み入れた。汚いところですがと娘さんが言っているが、別段汚いと言う感じはしない。部屋は玄関とかまどのある部屋と寝室2部屋らしく寝室の一室におばさんは寝ていた。

 さて、まずはどのような病気がチェックしないといけないな。鑑定を使って調べていくと特に犯罪系スキルは無い。あとは治療方法にあたりそこそこ当たりをつけたいのだが……そこでふと思い出す。
 たしか地球のアラル湖が砂漠化した時に発生した病があった。
 それと同じ事がここでも発生していたのなら?
 この町に入る時に町は湖に囲まれていた。つまり元々は温暖な環境から短い時間で砂漠に晒されたとしたらアラル湖と同じ事が起きているのではないだろうか?
 ということは、塩害による気管支炎系の病気が考えられる。そんな物をこの時代の魔術で直せるのか?普通に無理だ。
 大雑把な医学の知識はあるが詳細な医学知識はない。
 そんな状態で回復術を使う訳にはいかない。原子を組み替えて無害な物にすることが出来れば改善させることも可能なのだが……。

――――――ユウティーシアさん、この杖はね粒子に干渉して細胞を修復したんだよ?

 無意識の内に俺はアイテムボックスから杖を取り出す。そして杖をリアラスに向けてヒールを呟くと杖が光り俺が普段使ってる魔術式が空中に表示されるとその形状を変えていく。
 そして白い光がリアラスの体を包み込むと苦しそうな顔をしていたリアラスの表情はおだやかな表情で寝ていた。

「……」
 不思議な感覚だった。
まるで使い方が本能で分かる様な感じだ、これが神代時代の物の力なのだろう。

「どうですか?」
 恐る恐るカリアが俺に尋ねてくるが

「もう大丈夫です。しばらくすれば目を覚ますでしょう」
 その後、少ないですがお金をと言われたが俺は辞退した。お金がほしくてした訳ではないのだ。どうせ総督府からいっぱいお金もらえるしな。でもなかなか引き下がってくれなかった事もありお店の果物を少しだけ分けてくれればいいからと言ったら……。


―――3時間後

「はいはい!聖女クサナギ無料治療院はこちらですよー」
 レオナが呼び込みをしてカリアが接客対応をしていた。
 どうしてこうなった……。
 俺は頭を抱えた。
 果物をもらうだけのはずが「お母さんの病を治してくれてありがとうございます」と何度も頭を下げられた事で近くの店舗の方で同じ病を発祥してる人から治して欲しい言われてしまい、断りきれずに直してしまった。
 そしたら、普通の治療魔法師では完治しない病を完治させた魔法師という事で、噂が噂を呼び人が集まってきてしまったのだ。
 しかも教会の治療魔法師達も自分達が治せない病を治した魔法師に興味あるらしく見にきて俺を見るなり聖女様!と叫んだのだ。
 どうやら神兵討伐の際にかなりの治療魔法師がここの町から引き抜かれていたらしいのだが、偉い迷惑な話だ。
 しかも率先して教会の連中も総督府の連中も、並んでいる人たちの整理手伝ってるし……。

 これ総督府に治療費の名目として金銭請求出来ないかな?







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